1927年。
    野球ファンなら、この年の夏の終わりにニューヨークヤンキースのベーブルースが60本のホームランを放ち、大リーグ記録を塗り変えている。
    日本では大正文壇の寵児、芥川龍之介が自殺、35才であった。
    まぁ、一般的にそう取り立てられることのない年と言える。
 しかし私は、この年(1927年)に違ったことで注目している。
    それは、この年、アメリカから食用ガエルの餌として、アメリカザリガニが輸入されていた。
    100匹中、27匹だけが生きて到着し、鎌倉の養殖池に捨てられた。
 水の外来生物として、ブラックバス(オオクチバス)、鯉やアメリカザリガニは、駆除対象である。
    そして大捕食者のブラックバスをやっつけると、中位捕食者のアメリカザリガニが解放され、大爆発してしまうという困った現象を引き起こしたりするのである。
    このアメリカザリガニは、ため池などに侵入すると、底の泥を攪拌し、水も茶色にしてしまう。
    そうすると水中に太陽光が届きにくくなり、水草も貧弱となり、光合成も進まず、溶存酸素を少なくし環境を悪くしてしまう。
    またその食性は、人間の如く、若い間は動物食が好きで、ヤゴやゲンゴロー、二枚貝など水中昆虫を全滅させた例もある。
    二枚貝などがやられると、貝に産卵するタナゴ類も少なくなる。
    そして大きくなると、植物食に向かうのである。
    動物を減らし、植物も減らしてしまう、困ったカニなんである。
 その上、最近はアメリカザリガニを美しく(?)変身させた「タイゴースト」などが、登場している。
    この種は、タイの観賞魚養殖家によって産みだされた。(異説もある)
    ヒゲが白かったり、甲羅に色々な色(赤や青等)が入っていたり、ハサミが真赤だったりするのである。
    このカニ、発売当初200万円もの高値であったし、今でも数十万円のものから数千円のものまで流通している。
 こうした一方で、繁殖力の強さから、このアメリカザリガニを養殖し、将来の食料不足に備えようとする動きもある。
    こうして見てくると、アメリカザリガニは、駆除すべき動物なのだが、これからの食料資源として考えるべき広がりもある。
 鯉も同様である。
    鯉も外来魚といわれている。(最近の研究では、日本の古来からの鯉(ヤマトゴイ)もいたと発表されている)
    鯉は生命力が強く、長寿で20年以上、そして70年も生きるものもいる。
    30cmを超える大きさにもなると、天敵もなくなる。
    そして世界の侵略的外来種ワースト100に載せられているが、海から離れた地域では、古くから貴重な動物性タンパク源として重用されている。
    立場により対応は異なる。
 これらの侵略的外来種ワースト100の範疇に、ワカメ、ホテイアオイ、虎杖(イタドリ)、葛も入っている。
    ワカメ、イタドリ、葛は日本では食用として活用されているが、他ではあまり食用として用いていない為、単なる厄介物としての汚名をきている。
    こうした傾向は上記のコイやニジマスも同様である。
 生物多様性尊重は、今の科学発展の中であったり、食習慣であったり、また時代とともに変化していく。
    みんな生き残って地球の中にそれぞれの地歩を築いて欲しい。
    それが駄目と言うなら、それぞれの生き場所を用意してあげることが私たちの役目かも知れない。
理事長 井上 健雄
