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  • 明るい未来へのお誘い 【1月】

    瑞春のご祝辞を申しあげます                                        白梅のあと 紅梅の 深空あり    飯田龍太

    初春とか新年・・・の賀状を認める季(とき)が大好きなんです。                       明るい未来や素敵な出会い等を、連れてくるようで、ちょっとした興奮と、おかしなことに食欲もふえるんです。                                                     私は、「身体は、左脳より賢い派」なんです。世間は、左脳全盛でAI等デジタルツールが幅を利かせています。  もっと身体の声(現実的で一次的欲求的なもの)からスタートすべきなんです。                 私は、心・技・体を総合的に包み込んでいる身体(からだ)が80%制御し、頭は、せいぜい20%位と思っています。今、これが逆になって、左脳社会(つまり大都市社会)になっています。                    例えば、“犬はリールをつけて飼いなさい”のルールがあります。                       地方においてサルやイノシシ、クマまでが出てきて困っています。                       これは奥山で餌がなく里山もなくなり、まち中に餌を求めに来ていると言われてますが、それ以上に私は、屈強な犬がペット化し愛玩動物になり、その上、ロープに繋がれているので野生動物にとっては怖いものがないせいだと考えます。こんなルールで対処できるんですか?もっと身体を中心とした地域毎の考えを巡らすべきだと考えています。     天災は必ず起りますし、気候変動(地球温暖化現象等々)は、日々ボディブローのように地球環境を痛めています、もっと自然に寄り添う対策を打つべきです。大事なことは、『食べる』ことのできる社会を維持することです。           その為には、若者や壮年者・市民の一人ひとりが、今こそリベラルアーツ(一般教養)の一つとして、プラネタリーヘルス(地球の健康)について学ぶべきなんです。『未来のための環境塾』です。これは『大阪市』と『いのち会議』の主催行事で、後援として『関西SDGsプラッフォーム大学分科会』や『大阪大学社会ソリューションイニシアティブ(SSI)』に支援をいただいています。ここでの学問は、単なる学という知識教育だけでなく、問うを大事にしたワークショップ展開を企てることで、知識を身体で知り、そして各自の個性を生かして、行動変容を伴うものになると考えています。知識としてプラネタリーバウンダリー(地球の限界)の状態を知り、そしてプラネタリーヘルスの方策をセミナーで学び、ワークショップで必要な環境行動を起こします。                      今、社会に不足しているブリコラージュ(手入れ、繕う)の思想も学べますよ。その上、友達も増え、コミュニケーション能力やリーダーシップも身につきます。さぁ、新春に意思すべきことは、誰もが「未来のための環境塾」参加することかも知れません。ご一緒しましょう!新年度もよろしくお願い致します。

    理事長 井上健雄

  • 「未来のための環境塾」成長中!【11月】

    「私たちの未来は暗い・・・」
    いいえ、「私たちの地球の未来が、暗い」のである。
    私たちの未来は、それぞれの意志力と行動力で明るく築けるはずだ・・・
    しかし私たちの地球が、壊れかけようとしていることに無関心で何もしなければ、私たちの未来は暗く悲惨なことになるだろう。
    私たち、若者たち、その子どもたち誰もが「地球が限界を超えて疲弊している」ことを十分に理解していない。

    これは危ないことです。本当の危機的状況に目を向けるべきです。
    そして、この限界を超えている状況にしっかり対処し、地球の健全性を取り戻すべきなんです。

    ここ数年~数十年の間にしっかりした対応ができなければ、地球は、私たちを支えるよりも、一層ひどい災厄を加速度的に増やしてしまうだろう。

    私たちは、プラネタリー・レジリエンス(地球の健全性)を取り戻す意思を固め、プラネタリー・レジリエンス(地球の健全性)のために学び、仲間と語り合い、企業とのコミュニケーションを図りながら、地球の健全性を築く方策に取り組まねばならない。
    このために「未来のための環境塾」というプロジェクトが、誕生したのである。

    そして、この活動に参加する人々が、それぞれの能力のケミストリー(親和力)を産みだすことで、チーム生産性やそれぞれの能力アップに資することにもなる。
    さあ、やろうじゃないか!

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    かつて「天災は忘れた頃にやってくる」と言われた。
    しかし私たちは、毎年のように、気象の極端現象に見舞われている。
    一つの災害から復旧に向かっている中で、また次の災害(大雨による洪水等)がやってくることで、人々は無力感で途方に暮れている・・・

    こうした現象は、気候変動による温暖化に原因があるとされている。

    産業革命前には280ppmであったCO2濃度が、現在420ppmとなっていることが、気象の極端現象の引き金となっている。

    温暖化危機をすばやく警告し、ノーベル賞(2007年)を受賞したIPCC(気候変動に関する政府間パネル)も、二酸化炭素(CO2)増加による温暖化を気候極端現象の犯人であると言明している。
    ※注 IPCC 第6次評価報告書(政策決定者向け要約、2023年11月10日修正)に詳しい。

    IPCCが今の緊急課題としている目標は、気温上昇を1.5℃までにとどめることとしている。
    そのために残されたカーボンバジェット(累積CO2排出量の最大量)は、500GtCO2。2050年までにCO2ネットゼロを実現させねばならないとしている。

    温暖化を引き起こしている原因を私のパーシモニアスモデルで表現するとこうなる。

    IP = P × E × A

    IP(Impact of Planet) とは、地球への衝撃
    P(Population)は、人口
    E(Economy)は、産業界の活動
    A(Affluence)は、消費活動(浪費)

    地球への衝撃は、”人口”×”経済活動”×”消費(浪費)活動”の積で表現する。

    つまり衝撃を減らすためには、人口、経済活動、消費(浪費)活動をいかに抑制するかがポイントとなる。

    つまり、CO2を減らすためには、この3つのファクターをいかに抑制するかがポイントとなる。

    一つ目は、人口。

    西暦元年(キリスト誕生)から、たかが2000年と少しで、2.5億人であった世界人口は、81憶人を超えている。
    2.5億人が暮らしていた地球に32倍もの人が住み生活しているのである。地球は1個のままなのに・・・

    二つ目は、産業界の経済活動。

    産業界は人々を豊かにし、衣・食・住や移動等に贅沢な生活を提供してくれた。
    ほら穴や掘立て小屋から立派な住宅、天にまで伸びる高層住宅。そして照明や家電製品等々すべてがエネルギーの大量消費なしには回らないものとなっている。

    三つ目は、消費者の生活行動。つまり、消費よりも浪費というものをまず撲滅すべきである。

    元来の移動は歩きが基本であり、所によりラクダや牛さん馬さんが助けてくれた。しかし今や、自動車や飛行機や宇宙飛行をするまでになっている。
    進歩していることは嬉しい事だが、地球さんの悲鳴が聞こえだしているのも事実である。エネルギー多消費する行動について、深く考えるべき時なんだと思う。

    こうした三つについて考えるべき時なんです。

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    ここでもう少し視野を広げるために、気候変動以外のプラネタリー・バウンダリー(地球の限界)について、もう少し追加説明を加えたい。

    スウェーデンのヨハン・ロックストローム博士の提唱したプラネタリー・バウンダリー図を示す。

     

    9つの項目を設定し、6項目が既に限界を超えているとしている。

    限界を超えているもの

    ●1.気候変動(CO2濃度と放射強制力の増加)により、豪雨や干ばつなど気候の激甚化を招いている
     →今回のセミナーで重点的に学習しその対策まで考えようとしている。

    ●2.生物圏のレジリエンスの喪失(機能的と遺伝的に)
     原生林の破壊などにより、生物多様性や生態系のバランスが失われている。

    ●3.土地利用の変化
     農地や都市拡大、人々の移動のための道路等のために、自然の生態系とその回復力が失われる。

    ●4.淡水利用
     地下水や湖沼などの淡水資源が、農工業に多量利用されて枯渇し始めている。

    ●5.生物・地球化学的循環
     農地での肥料の過剰使用により窒素やリンが環境中に流出。土地や海域への汚染となっている。

    ●6.新規化学物質
     プラスチック・農薬などの化学物質や放射性物質が環境中に広がり、人々の健康等への悪影響。

    残りの3項目についても、大丈夫というよりデータや評価方法等が不十分なため検証中だ。

    ?成層圏オゾンの破壊
     フロンの使用禁止等で現在290ドブソンユニット付近まで回復しています。

    ?大気エアロゾルによる負荷
     工業活動や火災から放出されたエアロゾルの健康被害予測。

    ?海洋の酸性化
     CO2の溶け込みによる酸性化。貝類や甲殻類など炭酸カルシウムを利用する生物に深刻な影響が出始めています。これって大変です。マイクロプラスチックよりもひどいかも。

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    つまり、こうした結果、『無限の地球』であったものが限界を抱えた小さな地球つまり『有限の地球』となり、プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)が出始めたのである。

    プラネタリー・バウンダリーをもう少し分かりやすく言うと、「現在の地球環境を安定的に保てなくなってきている」ということです。安定を越えた危機的なレベルにまで陥っているのです。

    まず、私たちは、市井の一人として、先ほど述べた三つ目の人間の生活行動(ライフスタイル)のあり方を主に考え、行動のチェンジについて提案をしたいと考えている。
    経済活動については、CO2低減に取り組んでいる企業を応援する活動が必要なのだ。

    こうした危急の時にタイムリーに「未来のための環境塾」の開始をできたことは本当に僥倖です。

    地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)を知ってもらい、地球の健全性(プラネタリー・レジリエンス)のために、若者を中心とした人々の活動の場が用意されたのである。

    そして、この「未来のための環境塾」を支えてくれる大学群の支援も凄いものがある。北海道大学、大阪大学、大阪公立大学、関西大学、関西学院大学、近畿大学、長浜バイオ大学等々11大学、大阪ECO動物海洋専門学校の協力・支援をいただけたのである。
    その上、「いのち会議」の共催と、関西SDGsプラットフォーム大学分科会、大阪大学社会ソリューションイニシアティブの後援等々いろんな団体の協力もいただけた。環境先進企業の(株)エフピコ、ニシオホールディングス(株)、浜田化学(株)にも協力をいただけた。

    こうした取り組みのコンセプトを認め、この事業の産官学民協働の取り組みにゴーサインをいただけた大阪市環境局に、感謝しかありません。
    大阪市環境局行政の矜持と胆識に触れた思いです。大学や学校の先生方も大阪市行政の取り組みを評価されリスペクトもされている。有難いことです。

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    私達が、プラネタリー・レジリエンスのために取るべき選択と行動は、この先、何千年にわたって影響を与えることを忘れてはならない。
    今、エエかげんにしてお茶を濁していたら、自分の子ども、その孫に、孫は玄孫と幾千もの後生に恨まれることになるのです。

    若者たちよ!地球環境のレジリエンスを高めようではないか!
    時間を惜しめ!
    地球のために行動しよう!
    暑い最中から北風の吹く時まで、ワークショップに意見や想像力を発揮し「創りあげた啓発企画」を、市民のみな様や仲間に見て貰おうではないか!この成果でもって市民の方やみんなを巻き込もう!

    「未来のための環境塾」を各自、転機の一つとしてジャンプしてくれ!
    未来塾の塾生の成長が、プラネタリー・レジリエンスを築くことを信じて

     

    理事長 井上健雄

  • 今でしょ!未来のための環境塾に。【7月】

    暑い夏に、暑さに追いうちをかける報道(注1)があった。

     

    コペルニクス気候変動サービスによると、6月に今年の5月の平均気温は観測史上最高となり、12か月連続で記録更新したと発表している。年度として少し中途半端となるが、23年6月から24年5月までの年平均気温が産業革命時(注2)より、1.63℃と上回ったと報告している。

    この1.5℃を超える熱ストレスは、労働力の大きな消失を齎すと警告している。

    この熱ストレスによって失われる労働時間は、2030年までに全世界で2.2%にもなり、フルタイムで働く人数だと8000万人も労働力がなくなり、経済損失して2兆4千億ドル(380兆円)と試算されている。

     

    また度重なる山火事が襲うカリフォルニア州では、火災保険が次々と停止され、保険成立ができなくなっている、、、、

    その上、温暖化は農業従事者の労働時間を短くさせ作物の手入れ不足や、海面上昇など耕作可能地を少なくさせるなど、食糧不足を起こし始めている。

     

    新聞1頁分の3分の1にも満たない量なのに、今述べた他にも、ドイツのヨハネス・グーテンベルク大学などが2023年北半球の夏が過去2000年間で最も暑かったことを証明した。それは、長寿とされ2700年以上生きた樹木の年輪分析による気温復元からの結果である。

    こうした努力には頭も下がるし、エビデンスを示されると真摯にその取り組みにリスペクトも抱く。

     

    数千年の時間軸の中で、産業革命後のほんの少しの時間がつくり出した急激な温暖化の問題は、少なくともワンジェネレーションでなく、数世代に亘る世代連携における改革意識と、それを社会的実装力とする実力を持った層との連携こそが、必要だと考えている。

     

    つまり、世代(15年間位)毎の有権者は、同じような価値観を持ち、政治的な意思もはっきりとしてくる。

    ここでは、アメリカのCenter for American Progress(注5)の世代分けから世代構成の変化から考察する。

    つまり、アメリカの大統領選の結果は世代別の価値観が大きいインパクトをもたらすものであり、これら世代別のウェイトが変わってくることが変化の芽となるだろう。

    特に私は、温暖化抑制に厳しい取り組みを要求するZ世代とミレニアム世代のウェイト変化に、新しいライフスタイル要求が出てくると考える。

    これをもう少し深く読み込んでみたのが下記の表である。

     

    2020年から2036年にかけて世代のウェイト変遷があり、特に環境問題、CO2コントロールに厳しい対策を要求するZ世代+ミレニアム世代が、有権者として主力に躍り出るのは、アメリカの大統領選の次次選の2028年が分水嶺となるようだ。

     

    今年の2024年11月に迎える大統領選はX世代、ブーマー世代が多く、環境派にとって苦戦を強いられそうである。

    ただ、現在の30年に1回とか50年に1回といった大災害(大雨、洪水、干ばつ、山火事、、、)がたて続けに起こっている現象を経験したり、報道でよく目にする機会が激増している中で、Z世代を中心に気候正義という言葉が使われ出して早い変化もありうるだろう。

     

    気候正義とは、温暖化は自然現象でなく、人為的なもので少数の強者が作り出したものである。

    この強者こそが加害者であり、私たち若者はそのツケで苦しんでいる。

    これは不公正でかつ社会構造的な暴力であるとしている。

    強者は、こうした不正を正し、生態系や人権に配慮した取り組みをすべきだとしている。

    こうした考え方のリーダーがグレタ・トゥーンベリである。彼女の一人学校ストライキが全世界に広がったことは、世界の驚きであった。

     

    2024年アメリカ大統領選は、バイデン対トランプの対決は、二項対置で言えば、温暖化抑制派 対 リアル炭素賛成派 と評価されるべきだが、そうはなっていない。単なる老老対決でお互いのスキャンダルの応酬に終始している。

     

    アメリカの状況に対し、傍観者的に考察するのではなく、私たちも(日本も)このような世代観と共にZ世代に対し、地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)をまずこの世代に知ってもらい、地球の健康(プラネタリー・ヘルス)を創り出す活動を始めて欲しいと思っている。

    そして、大学生を中心にプラネタリー・ヘルスへの取り組みを本格化して欲しいと考えている。

    そして、各大学での環境負荷を減らすナッジ活動にも取り組んで欲しいと思っている。

    大学生が環境低減のためのナッジの提案を、大学当局も社会的実装とはこうだと一緒に活動してほしい。

     

    こうした経緯のもとに、大阪市環境局の環境学習活動の一環として「未来のための環境塾」が誕生したのである。

    また、僥倖に恵まれて、「いのち会議」さんとの共催になり、その上、大阪大学社会ソリューションイニシアティブさんと、関西SDGsプラットフォーム大学分科会さんまで後援名義をいただけたことなど本当に有難いことです。

    この活動への参加は、一人ひとりの大学生を中心とするZ世代と、ミレニアム世代への情報出し活動を強化し、これらの活動とともに、社会的実装力を持つ人々の深い知識や経験を持つ人々の智慧が望まれています。続発する気候異変は、もう「社会課題」ではなく、あなたと私たち一人ひとりの危機なんですから、、、。

     

    大阪からこうした「未来のための環境塾」が生まれようとしていることは、関西に住む人々の誇りです。一緒に活動しようではありませんか!

     

    こちらから参加の登録をしてください。待っています。

    未来のための環境塾サイトへ

     

    理事長 井上健雄

     


    (注1)日本経済新聞(2024年7月5日朝刊)

    (注2)産業革命以前 1850~1900年の平均気温

    (注3)IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change) 

    「気候変動に関する政府間パネル」

    (注4)ILO (International Labour Organization) 「国際労働機関」

    (注5)Center for American Progress

     

     

  • 小さな努力でヒートショックに立ち向かう           ~来月の世界環境デーを前にして~【5月】     

    今、私たちは日々安穏な生活を送っている。

    しかし、「世界秩序は狂い」始めている。恐いことには、「この狂い」について誰もが修理しようとせず、挙げ句の果て、その狂いに乗じて富の獲得や領土を広げようとしたり、テロを起こし、秩序に支配されたように見えた世界を一気に危なさの惨憺の中にさえ落としてしまっている。

    誰もが修理されない家に住み続けられる筈がないことを知りながら、修理しようとしていない。これは、ロシアやウクライナの戦争やハマスとイスラエルの衝突などは、ひどい傷痕ばかりを出しながら続いている。このことによるCO2の排出量も大変な課題である。

    私たちの日常も同じようなものかも知れない。

    CO2増加による温暖化対応など、本当に取り組んでいるように見えない。ここでも私たちは、一人ひとりが修理せず生活をしているように見える。

    この環境問題への対応は、私たち一人ひとりが当事者であり、手立てをたて実行する責任がある。しかし、こうしたことは、政府や企業が取り組むもので市民は関係ないように振る舞っている。

    地球に生命が誕生して38億年の歴史において、最新の6億年間で生命の大規模な絶滅を5回経験している。この5回目は、ユカタン半島への隕石衝突により、白亜紀、ジュラ紀にかけ恐竜をはじめ、生命の大絶滅を起こしたのである。

    そして今、6回目の生命大絶滅の原因と予想されるものが、現在の私たちの「資源多消費型ライフスタイル」なんです。隕石に匹敵するなんて恐ろしい、、、、

    なぜなら、私たち生活者のライフスタイル(衣・食・住・移動)の4分野だけでも、CO2の50%以上を出しているのだから。

    ここでは食と住について少し提案してみよう。

    ささやかな庶民の生活に水を差すな、とも言われそうですが、やはり「生活習慣を変えること」こそが求められているのだから。

    食について考えるなら、お肉の好きな人もミートタリアン(肉ばかり食べる人)から、せめてフレキシタリアン(肉以外のものを食べる人)になって欲しい。出来ればベジタリアンでしょうね。

    野菜、穀物類はできる限り国内産で旬産旬消をしていただきたいと思います。

    そしてその野菜はベランダでの栽培や、畑を借りるなど自分で汗して作れるような生活を持ちたいものです。

    都市国家のシンガポールには、1万人の都市農民がいると言われています。

    買い物をする時(スーパーやコンビニ等)は、前取りを中心に見切品等をうまく購入すること。食を作る、保温する時には、圧力鍋の沸点の高いもので、省エネができることも覚えておくべき一つとなります。

    もっと大事なことは、必要以上のカロリーを摂らないことです。体重は、BM1などの数値をもとに自分でコントロールすべきです。

    住については、家や部屋の断熱構造を高めることです。窓については二重ガラス等が方向性です。

    夏は、太陽光の制御をポイントとしましょう。植木、簾、カーテン等をうまく活用してください。また、濡れたタオルと扇風機(自然風)で気化熱の活用も一つの手です。

    勿論、家の広さ、方角や立地によりますが、再生エネルギーの取り入れは大事です。

    照明は、LEDの活用とオフィスなどは、シーン制御の全体コントロールとタスク・アンビエントの組み合わせもいいでしょう。

    いろいろ細かいことを一つひとつ実行することで負荷は減ります。

    日本の「早寝早起き朝ごはん」と太陽のある中にという良い慣用句も温暖化が進むベトナムの米農家においては、暑さを避けるために夜中にヘッドランプを付けての田植えを余儀なくされているし、カタールでは5月からA.M. 10:00〜P.M. 3:30まで屋外労働を禁止しています。

    この温暖化によるヒートショックによる経済損失は、現在で2兆4千億円だとしている。

    一つひとつ温暖化対策という修理活動という小さな努力を積み重ねましょう。

    大変だ!しかし今なら間に合います。

                                          理事長 井上健雄

  • 科学発達の光と生態系崩壊の影 【4月】

    私たちは科学の発達の恩恵でいい生き方ができている。それにより、、、、

    『何を言っているのだ!原爆を生み出し広島・長崎の悲惨さを齎したんじゃないか!またロシアのウクライナ侵攻のミサイルや爆撃機が多数の市民を殺戮しているのも科学じゃないか!—-』

    いやおっしゃる通りですが、もう少し、、、、

    『うるさい!おまえの言うことなど—-』

    待ってください!少しだけ、、、、

    『よっしゃ聞いちゃる。なまじなこと言うと怒るぞ!』

    分かりました。始めます。

    今、地域によりますが、草原や山裾にうさぎさんやきつねさんが棲んでいますよね。

    『こら何が、うさぎやきつねの話なんか聞いてねえぞ、、、』

      待ってくださいよ。これからなんですから。うさぎさんたちがどんどん増えて栄えている所はございますか?

    『そんなこと知るか!』

      もう一つ、きつねさんが増えて困っているという話はありますか?

    『ごちゃごちゃ言うな。何が言いたいんやエエ、、、』

      ありがとうございます。本題に入りましょう。

    うさぎさんが繁殖するためには、草原を増やし、草を早く成長させたら餌が増えて、うさぎさんの経済は繁栄するでしょう。また、きつねさんが繁殖するためには、うさぎさんの数を増やせたら、きつねさんの経済は発展するでしょう。

    つまり〇〇をしたら、、、の〇〇が が、うさぎさん、きつねさんにその能力が欠けているために繁栄できないのです。つまり、経済、種の繁栄のためには、まず食糧を確保できれば繁栄できるのです。

    『そらぁ腹が減っては戦ができんからなぁ』

      そうなんです。私たち人間は、新しい材料やエネルギーを発見したから、食糧も増え繁栄できたのです。しかしこの材料やエネルギーは、量に限りがある。使えば使うほど少なくなります。石油でも鉄鋼でもレアメタルでも、、、こうした中で人は、知識という資源を発見したのです。知識は増え続ける資源なので、使えば使うほど増えるのです。しかしこの知識は、キリスト教やイスラム教、仏教等々の聖典の中や、昔々からの伝承の中にあったものだったのです。そこで人は人間として最高の発見ともいうべき「無知」を発見したのです。

    『なんで無知が発見やねん。—-ブツブツ』

      知らないから知ろうとして、石油だって探査技術の発見や掘削技術の進歩から新しい石油を発見したり、新しいエネルギーとして太陽光の利用の太陽光発電や、風を利用した風力発電等を発見し、エネルギー革命を起こし持続的な一歩を歩みだしたのです。人間の科学技術の知識が、今の豊かな知識を築きあげる大きな貢献を果たしたのです。

    『なんや!科学技術礼讃かいな—-』

      いいえ、それだけではありません。勿論、再生エネルギーの活用やコンピューターなど、このベースとなるナノテクノロジーや遺伝子工学、AIなどを知ろうとする大革命の結果、今の繁栄があるのです。しかし、人間社会に富を齎した知識が、一方で地球の生態環境を悪化させ、生態環境の崩壊さえ語られるのが現在なんです。

    『そうや!おまえ!俺の言うことが分かってるやないか。そうやこれからどうするだ?』

      嬉しいです。やっと意見があってきましたね。私たち人間の生活は豊かになったのですが、他の動物さんや植物さんの植生などは悪化してきて、限界に近づいてきているのかもしれません!

    『そうや!初めからそう言えや、俺も応援しちゃるから』

      ありがとうございます。私の今回、申し上げたいキーワードです。地球生命のすべてを守るOne Healthを強調したいのです。

      ワンヘルスとは、

                     地球の健康 (温暖化は一つの病状として回復に取り組むこと)

        (生態系)

     

                     人の健康  (人としての尊厳が守られて自由に発言し行動できる。

    そうして肉体的、精神的健康を守ること)

     

                     動物さんたちの健康  (健康でルーチンな行動ができる等の環境を創り、

    人間と共存する命として扱う)

     

      この三つの健康はすべて絡み合っており一つだけの健康ということはあり得ません。

      こうしたことを次から各論として展開したいのです。

    『おう、ワンヘルスいいやないけ。それなら聞いちゃる。ちょっと次の予告でもしてみろ。』

      ありがとうございます。

      次はまず哺乳動物のサルやブタさんから、チスイコウモリさんとクジラさんについて

    語ってみたいです。

    『あぁ、聞かなよかったな。サルやブタさん、、、あぁ分からん。しっかりした話でないと怒るぞ!』

      分かりました。心して臨みます。5月の挨拶をお楽しみに、、、、

    理事長 井上健雄

  • デコ活をはじめよう! 【3月】

    ちょっと恐い表現をすると、『私たちの社会は、破局の一歩前にいる。』

    グローバルサウスの国々を中心に豊かさへの歩みが始まっている。

    インドのデリーのスラム街の住人が、アメリカンドリームに近づけば近づく程、世界の破局に近づいているのである。

    このように貧しい国々は豊かになろうとしているし、一方で先進国の人々は、日々金持ちの贅沢品であったものを必需品として使いだしている。

    ダウンのコートやブルゾンとして、カシミヤコートまでがリサイクルBOXに入っている時代なんですから・・・

    先進国の人々の生活は、もう既に地球2個分以上の生活をしているのです。

    つまり、1個しかない地球をもう1個分を使うという赤字生活をしているんです。

    これでは、地球さんが悲鳴をあげたくもなるでしょう。

    地球さんは、悲鳴の変わりに気候変動と温暖化というメッセージを私たちに送ってきているのです。

    産業革命当時に比べ、現在地球の平均気温は、1℃上昇しこのままの推移でいくと4~5℃上昇する恐れがあります。IPCCは、まず2050年までの温度上昇を1.5℃内にコントロールしようという国際合意(パリ協定)を成立させました。

    そして各国が、この合意の為に、計画し実行し遵守しようとしているのが現在です。

    しかし人によっては、もう後戻りできるティッピングポイントを超えてしまったという人もいます。

    (否定する声)

     ・・・・・・なにごちゃごちゃ言っているんだ。

     お天道様は、いつも東から上り西に沈み、気候だってちゃんと春夏秋冬があるじゃないか。

     1.5℃位どうだっていいじゃねえか……

    まぁおっしゃることは、分からないでもないんですが、温暖化は脅威乗数なんですよ。

    (否定する声)

     なに脅威乗数ってなんだ!

    温暖化で、食べ物が採れなくなったり、仕事の生産性も落ちることは当然ですがこれら以外にも種々の問題を引き起こしてくるのです。

    つまり温暖化は、陸や山地を乾燥させ山火事を多発させることになりますし、氷を氷解させ海面上昇により沿岸部の人々の生活の場を奪うことにもなるのです。

    その上・・・

    (否定する声)

     まだ、あるのか・・・

    ハイ。残念ながら、温度が上がれば食用作物から、栄養分が失われていくのです。たん白質や鉛や鉄の含有量は、今までに比べ1/5まで減少するとされているんです。

    その上、・・・・・・

    (否定する声)

     まだあるのか・・・

    その上、植物の細胞や酵素は39℃で破壊され植物全体を死滅させる恐れまであるんです。

    (否定する声)

     分かった、分かった。そしたら俺にどうせいと言うんだ!

    立派な決断ありがとうございます。

    私たちのライフスタイルを省資源でエシカルなものに行動変容することです。

    日本の環境省のおすすめは、くらしの中のエコロがけデコ活です。

       デ 電気も省エネ、断熱住宅

       コ こだわる楽しさ エコグッズ

       カ 感謝の心、食べ残しゼロ

       ツ つながるオフィステレワークとされています

    一人ひとりが小さいことでも1億人もの人がしっかり実行すれば資源消費を減らせます。

    もっともっと学びたい方は、各市町村の取り組みを覗いてください。

    例えば大阪市の方なら環境局のなにわエコスタイルのおおさか環境ネットワーク全プログラム一覧などアクセスしてください。

    誰もが本気でプラネタリー・ヘルス(地球の健康)に取り組むことが喫緊の課題です。

    まずご一緒にデコ活運動を始めようではありませんか!

    理事長 井上健雄

  • 私たちの生き方を考える 【2月】

    私たちは、いま生きているいろんな局面において、ティッピングポイントに対峙しています。

    ちょっとした条件が異なると、砂漠にもなるし、線状降水帯が発生すると、河川の氾濫による洪水にもなる…

    熱帯地域で発生する上昇気流は、水蒸気を多く含み大雨を降らせますが、中緯度地域(北緯・南緯とも30度付近)までくると、空気が乾いて乾燥地帯となることが多いのです。

    そうすると日本も北緯35度あたりに位置しているから砂漠化してもおかしくありませんが、幸運なことに、日本はモンスーンによる季節風により湿潤な気候となっています。

    今、偏西風の蛇行現象も大きくなっており、いろいろな変化に遭遇しはじめています。

    ティッピングポイントとは、不可逆的な変化を起こす臨界点を指します。不可逆的な変化が起こってしまえば、もう元に戻れません。

    ですから私たちは、いろんな変化に会いながらも、フィードバック・ループが働く適応システムの世界を、なんとしてでも維持しなくてはならないのです。

    私たちは、今回のコロナパンデミックにより、はじめて「人類」を発見したと思います。

    今までも人類という表現はありました。

    『今、人類が初めて月面に下りたったのであります。』たった二人が月面に立ったのです。

    それにひきかえ、コロナパンデミックスは、私たちみんなが経験しました。すべての人がコロナパンデミックという大河に入ったのです。

    「人類として」

    例えば、私たちが狭い地球で住む1万人の村人として、9,990人がコロナワクチンを打てていたとしても10人の未接種の人の中から1人の人がコロナ感染すると、その流行を抑えることは至難になります。

    本当にこの疫病を防ぐとしたら、惑星レベルでのワクチン配布がされるべきです。

    「人類のヘルス」を守るために。

    前半に述べたのは、人類による地球資源の貪るような消費から、co₂濃度の上昇を招き気候変動が大きくなり、後戻りできないティッピングポイントまできているということです。

    ここにきて、コロナパンデミックのような大疫病に対し「人類」としての対応が必要だということを悟りつつあります。

    つまりこの「どんどん成長を目指す資本主義」の限界が見えてきているのです。

    こうした事態に対し、一人ひとりの人が地球のヘルス(人も動物も植物もそれぞれ生命)を守る重大さを感じて、みなに知らせ、みなを巻き込み、行動を変えて欲しいのです。

    私は、大きな社会システム等について語ることはできませんが、私たち一人ひとりが

    「生命の網の中のプラネタリー・ヘルス」を追求すべきだと感じています。

    この大きな命題への道筋の一歩として、働き方と賃金について考察してみたいと思います。

     

    例としてタンザニアリサーチを紹介します。

    タンザニアで「学校の校庭に植樹」するというプロジェクトがありました。

    この植樹のために2グループ編成されました。

               Aグループには、「最低賃金を支払う」と伝えられた、

               Bグループには、「賃金は支払われません」とした。

    さてここでクエッションです。

    Q:植樹後のグループの満足度が高かったのは、A・Bどちらでしょう。

     先を読まずにまず考えてください。

     もし何人かのグループでいるのなら、グループ討議をしてください。

     

     

     

    タンザニアでの満足度調査の結果は、圧倒的にBでした。

               Aグループの人は、なかなか大変な仕事だった

                労働時間も長かった

                割の悪い仕事だ…

               Bグループの人は、自分のコミュニティに良いことができた

                いい運動になった

                子どもたちに日陰を作れて嬉しい

                充実感を語る人が多かった…

    同じ「植樹」でありながらAとBでは対照的な結果となりました。

    なぜでしょう?

    Aは、お金(最低賃金として)を支払うというインセンティブがつくと、この労働は、市場関係に入ったことを意味します。つまり、市場関係に入ったからには、最適のリターンを求めることは当然かも知れません。

    一方Bは、社会的な価値あることをしたという満足感を感じあう関係となり、社会や子どもたちへの贈り物をできたことを、喜べる機会となったのです。

    私が後半で述べた「生命の網の中のプラネタリー・ヘルス」への道筋の一つとして、タンザニアの植樹ボランティアを紹介したかったのです。

    このように環境を守る一助となり、結果として人の健康への貢献となる社会的価値を創る仕事に、賃金を離れたお布施や贈り物として、些少のお金で回る社会なんかが理想です。

    市場を離れた社会的意義ある仕事をそれぞれの立場でお布施化できないものかと思っています。

    特に環境を守る、次世代を育てる教育や幸福感を感じられる社会づくりへの一つの生き方として新しい生き方を導入できないか等、夢みています。

    エエ年こいて夢なんか見るな!とお叱りはごもっともです。

    しかしご一緒に新しい風を吹かせませんか!

    理事長 井上健雄

  • 新春を寿ぎ みな様のご健康とご多幸を お祝い申し上げます。 【1月】

    日本っていいですね。

    四季があって、正月があって・・・

    この自然と文化伝統が日本なんですね。

    今年もみな様と、パートナーシップをキーワードに、仕事に人生にチャレンジします。

    みな様の厳しい叱声とともに、やさしい笑貌に助けられながら、当団体のパフォーマンス能力を全機させ、社会課題の解決に全力で取り組みます。

    さて、私たちが直面している問題点を挙げると、大きく三つあります。

    1.温暖化による気候変動

    2.世界的な感染爆発

    3.分断を深める国際紛争

    例えば、一つの問題に対応しようとしたら、学びの場のカリキュラムも変化があるべきですが、経済学の講義は、需要と供給の法則から始まっています。(言えば、これは法則でなく、単なる経験則なんですが)

    間違っています。

    経済学もプラネタリーバウンダリー(地球の限界)から学び始めるべきです。

    これは、スウェーデン出身の経済学者、ヨハン・ロックストロームが主張しています。

    これをドーナツモデルとして提案したのが、イギリスの経済学者でオクスフォード大学環境変動研究所上級客員研究員のケイト・レイワースです。

    彼女が主張したことは、環境問題について物理学から学ぶより、生物学をメタファとして活用すべきだという主張です。

    私たちが生きている世界は、生物や進化やエコシステムの複雑なシステムに適合する経済をつくり出すべきとしています。

    気候変動は、もはや斬進的な変化ではありません。

    すでに、いろいろな局面において不可逆的な変化になっているのです。

    もう、躊躇している暇はありません。

    繁栄したいのであれば、複雑な動的システムと融合すべきだと。

    動的システムということは、絶えずバランスをとれる状態に戻してくれるということで、ティッピングポイントや、フィードバック・ループのある適応システムだということです。

    この見方というか、このレンズの考え方にワクワクしませんか。

    動的システムにうまく働きかけ、その反応から、また行動するということで、社会の安定度があがると思います。

    そして、これから人々の働き方について、述べたいと思います。

    資本主義の格差を助長するシステムを続けるべきなのか、民主主義の格差を軽減する仕組みをとるのかの、本当は大変な選択を迫られているのが、現在なのです。

    これも、ケイトさんが経験した例を紹介します。

    タンザニアでの、校庭に植樹プロジェクト報告から。

    この校庭に植樹するのに、二つのグループを作り実験しました。

    □Aグループには、最低賃金を支払うと宣言する。

    □Bグループには、賃金はありませんという。

    Q:A、Bグループの中で、どちらの方が満足度が高かったでしょうか?

    みな様、いかがですか?

    Aグループは、仕事が思ったよりキツかった。労働時間も長い。安い・・・

    Bグループは、自分たちは、コミュニティに有益なことをしたという気持ちになった。いろんな人たちと交わり、楽しかった。こういう機会があればまた協力したい・・・

    つまり、賃金が発生するということは、市場関係に入り、リターンを最適化しようとする。

    そして、働く人は、できるだけ高い賃金を求めるのです。

    一方で、金銭を絡めなければ、私たちは交換し、与え合い、見守り合う関係となるのです。

    私たちは、より大きな社会的価値を探し、その行動に満足するのです。

    私は、NPOで働く人間として、生きていく為に報酬は必要ですが、大事なことは、意味ある仕事、価値ある仕事を通じた社会貢献であると考えています。

    働くということは、私は他者とのつながりの中で、自分の人生を歩み、人間として成長し、成熟していくことだと思います。

    よい人生とは、仕事抜きでは語れないと考えます。

    こうした仕事を私は、パートナーシップ(SDGs Goal17)で、遂行し、パフォーマンスを高め、みな様とともに、楽しみたいのです。

    2024年 元旦 理事長 井上健雄

  • 感謝の一年 【12月】

    ありがたき 今日(けふ)の命の 明るさを

    ほのかな人に ただ恵まれて

    偉・美韻宮

     この短歌は、この1年(実は10か月足らずですが)私たちは、仕事と人に恵まれて、忙しい中にも心を失くさず、楽しめましたことを、歌としました。

     本当にありがとうございます。

     仕事が真の意味において、知事になり、仕事のレベルが少し上がったかなあと思います。

     その感謝の思いをわざと季語なき短歌に詠みました。

     今、仕事はどんな分野の専門性を持ったものでも、SDGs17項目のウエイトが異なるとしても、どの項目についても目配りが必要です。

     また、いろんな要素を組み入れれば入れるほど(もちろん入れ方もありますが・・・)仕事のふくらみとパフォーマンスが上がるのではないでしょうか。

     今年のエポックメイキングなことは、私たちにとって主要プロジェクトであり、社会的価値も高く、やり甲斐もある仕事を委ねていただいたことです。

     そして、その仕事をパートナーシップ(Goal 17)というキーワードで組み立てられたことです。

     パートナーとなっていただいたのは、いろんな機会に協働している信頼できる人々と、古くからの友人や当組織の理事であったりで、それらの人々とパートナーシップを築き、挑戦ができていることが喜びです。

     ここで少し、パートナーの仲間たちを紹介します。

     ホームページ管理・制作関係は、九州在住の若手IT企業家と、大都市幹部職員OBの方にボランティア協力いただいています。

     デジタルを活用した地球の未来を見て感じることのできる(難しく言うと拡張現実-AR-)教育を、小学生を中心に学んでもらうARの指導員として、システムエンジニアを経て、パソコン、スマートフォン等をやさしく学べるパソコンボランティアの方々に。

     また、未来の車、水素カーの普及・啓発には、大学の非常勤講師や彼の教え子の方々が、ツイッター(X)等の発信も含め手伝ってくれています。

     このように、お願いする人々はとても幅広く、いろいろな分野のエキスパートの方々です。

     そして、私たちに最も近い友人や、当団体の理事や関係者、学生の恒常的なボランティアの方々は、12名ほどがコラボレーションしてくれています。

     あわせて総勢20名を越す方々が、専門性の発揮や、新しいことに取り組む機会を楽しんでいただき、その上、自己実現にも活用いただくというwin-winを狙いとしています。

     みな様、ほんとうにありがとうございます。

     私は、働くということを、他者とのつながりの中で、自分の人生を歩み、人間として成長し、成熟していくことだと思います。

     そして、パートナーシップで仕事をすることで、みな様と一緒に成長したいのです。

     良い人生とは、仕事抜きでは語れないです。

     まだまだ、残る四半期にこそ、最高の力を発揮し、良い仕事を創ろうではありませんか。

     良い仕事は、人生を豊かにしてくれますし、周りの人たちにとっても、社会の人々にとっても、楽しさや新しい成功体験等で、人生に夢と希望を少しでも増やすことができるなら、それは最高の喜びです。

    理事長 井上健雄

  • 良い仕事の系譜(その2)-前月の挨拶の質問を受けて- 【11月】

    前月(R5 10/15発行)の「良い仕事の系譜」について、質問を受けたので補足をします。

    10月

    現代の雨乞いは、飛行機を飛ばし、雲を捜し、黒雲の中にヨウ化銀(×ヨカ化銀 間違っていましたごめんなさい)を噴射させ、雲を育て・・・

    ・・・暑さ対策として二酸化硫黄(SO2)で太陽光を遮断しようとする試みである。・・・

    ◎コメントとして、こうした行動、は神をも恐れないジオエンジニアリング行動であり、地球がガバナンスする長(ヲサ)もいないのに、と書いたことに対して、

    質問:たかがこれ位の取組みに対して、科学技術を信じない考え方じゃないか。

       「ジオエンジニアリングとか訳の分からないことを言って」・・・神をも恐れないとかの表現は、「空が落ちてくるって心配した杞の国の人みたいですね。」

     こんな意見をいただきました。

     言われればおっしゃるとおりかもしれませんが、「私の真意をもう少し説明した方がよかった」と考え、今回は10月の挨拶の質問を受けてとしました。

     〔ジオエンジニアリング対応について〕

     今の温暖化の進行速度はあまりにも早く、地球というグローバルコスモスのバランスを支える9つのサブシステム特定し、今地球にどれ位の余力があるというものを示す、プラネタリーバウンダリーによると、生物多様性は、ここ20年で68%を喪い(地球環境レポート2020年より)としているし、窒素生産においても、限界値4,400トンに対し、1憶5,500に達していたりと、悪化の速度が速まっています。

     地球は、46億年の歴史の中で、今まで5回の生命の大量絶滅を経験しておりますよね。

     そして、今の人為的要因による地球温暖化は、地球の生命を大量絶滅させる可能性が高く、「第6次生命大量絶滅」の原因になるのではないかと言われています。

     それも、5次の生命大量絶滅の原因であった隕石ではなく、私たちの生活やそのライフスタイルこそが、その原因になろうとしています。

    そして、貧しい国の人々も良い生活を願っておりますし、しかるに、自分たちの責任ではない温暖化被害として、生活の場を破壊しかねない海面上昇や、降雨の変調による作物の不作にまで、見舞われだしているのです。

    こうした時、温暖化の窮余の一策として、登場するのが冒頭に述べたジオエンジニアリングでなかろうかと、思うんです。

    そこで、自然現象のピナツボ火山爆発に伴う諸々の温暖化低減について、追記します。

    1991年4月2日フィリピンにあるピナツボ火山の鳴動が始まり、2か月後の6月15日に大噴火しました。

    この大噴火で、灰、岩、溶岩が流れ出し、周辺地域を覆い尽くし、その上同じ日に台風(Yunya台風)までが上陸したのです。

    この噴火、洪水により、フィリピンの人々20万人以上の家庭を破壊し、地球の温度は、一時的に0.5度下がり、人為的な地球温暖化の影響を一掃させたのも事実なのです。

    この時ピナツボ火山は成層圏に2,000万トンほどの二酸化硫黄(SO2)を注ぎこんだのです。

    これは、この時まで、人類が大気層に蓄積させた二酸化炭素5.850億トンほどを、相殺する効果もあったのです。

    この二酸化硫黄は日陰を作り、数年間にわたり太陽からの輻射を2~3%暗くしてくれたのです。

    これは良かったといえるかもしれません。

    その一方で、成層圏のオゾンの水準を低下させ、南極上空で見られるオゾンホールを創り出し、オゾン枯渇さえ起こしたのです。

    また、この火山噴火は、乾燥期のはじまりに一致もしているのです。

    この大噴火が、恐ろしい状況を連れてきたとも言えるのです。

    再度温暖化に戻りますが、高緯度に暮らす人にとって、数度温かくなることはそう悪い話ではありません。

    IPCCの主張する「温度1.5℃上昇に抑える」という目標は、すべての人が納得したものではありません。

    「今日の温度でいいじゃないか」と人は言います。

    これを書いている私の今日は、11/8 立冬です。樹木へのこも巻きが始まり、啓蟄まで巻かれていることになります。でも立冬なのに、昼下がりは22℃を超えています。

    虫さんは、越冬より暑くて蒸しあがってしまいますよ。

    立夏より暑いくらいです。

    「一人ひとりにとって正解が異なる適温コントロールをどう考えるか」

     これが、地球の大課題です。

     だから、地球長(ヲサ)が、ガバナンスする体制なしに、温暖化の緊急対策としてジオエンジニアリングに挑戦すると、「〇×火山の爆発誘導がよいとか・・・」の意見になりかねません・・・。

     地球全体の為にどうあるべきを考え、対処できる人や、組織立てや、歴史や、気候の深い分析なしに、突き進むことは、逆に地球の破壊を招く可能性もあると、申し上げたいのです。

     こうした考え方のもとに、正しいソリューションを創り出そうとしているひとこそ、現代の良い仕事の系譜の人になるかと考えます。

    こういった人々が、いろんな局面においてリーダーシップを発揮できる社会をみな様とご一緒に築いていきたいのです。

    理事長 井上健雄

  • 良い仕事の系譜 【10月】

    人類は基本的な社会構造である集団をつくり、生活を営んできた。

    集団にはリーダーがいた。

    それらは集団の中で、戦さに強い者だったり、年長者で作物の育て方等に詳しいものであったり、異能をもって予言をしたり、病気を治したりするシャーマンのような人々であった。

    それらを統括するリーダーが、長(ヲサ)と呼ばれ、長(ヲサ)は、いろいろ迫りくる危機に、それぞれの異能者を中心に対処していたのである。

    例えば、雨が降らない時に、シャーマンは、白装束に髪を振り乱して雨乞いの呪文を唱えたものである。

    降れば、村の祝祭日とし、日々の苦労を忘れる日としたのである。

    降らなければ、長(ヲサ)がシャーマンの努力を讃えた上で、今を生き延びる為に溜池を持つ大富農の水を、村人に配分する提案を出したりする、智慧を持っていた。

    これらは、現代も変わらない。

    危機毎に政治のリーダーがそれぞれの専門の省庁に解決を委ねて行われている。

    しかし、この対応は、いささか部分的にならざるを得ない。

    現代の雨乞いは、飛行機を飛ばし、雲を捜し、黒雲の中にヨカ化銀を噴射させ、雲を育て、雨粒をつくろうとしている。

    ここには、地球長(ヲサ)がいない。

    「降雨を作る」のような「神を操る」ことは、地球から逆に手痛いしっぺ返し等を考えていない。

    米海洋大気局のカレン・ローゼンロフ研究主幹なども心配している。

    その上、暑さ対策として二酸化硫黄(SO2)で太陽光を遮断しようとする試みもある。

    ハーバードやコーネル大学が取り組み始めている。

    このような、人為的に気候に介入する技術をジオエンジニングと呼ぶが、まだまだ断片的で地球のガバナンスができるものではない。

    黒雲づくりや、太陽光遮断は、科学の粋かも知らないが、私はシャーマンの行為を否定しない。

    だって村人すべての総意で動き、駄目な時の対策を長(ヲサ)が用意して、村人の意見集約に成功していると思うから。

    良い仕事の系譜としての、雨乞いのシャーマンと長(ヲサ)に対し、現代の雨乞いや温暖化防止の活動師について触れた。

    私は、今のレベルではシャーマンや長(ヲサ)に、拍手したい。

    なぜなら、試みに対し失敗もあるとし、試み活動の実をあげる方策も準備し、情報の共有化を企っているからである。

    シャーマンや長(ヲサ)ばかり誉めていると、時代遅れと思われるので、最近の技術を活用した良い仕事を紹介する。

    ロビー君である。

    ロビー君は、ローマ近郊のサンタルチア財団病院で、リハビリを担当するらしい。

    彼は、患者と会話したり、色や文字あてレクリエーション等もできる。

    彼はヒューマノイド(人型ロボット)で、AI搭載の学習能力に加え、優しくまばたきしたり、ゆっくり話してくれるのである。

    これは、一つの朗報となるだろう。

    彼はリハビリを担当し、稼いでくれるのだから、たぶん所得税など払ってくれる仕組みを構築できれば、大助かりではないか。

    あの新分野への評価の辛いゴールドマンサックスさえ、2035年、ヒューマノイドの市場規模は、23兆円以上と予想している。

    これが良い仕事の系譜の一つになるかもしれない。

    良い仕事の為には、当然抑えるべきポイントをモデル化し、自分の法則を確立すべきである。

    これについては、今後展開したいと考えている。

    理事長 井上健雄

  • 残暑に八つ当たりしながら・・・ 【9月】

    この夏の残暑は異常だ。

    九月九日は、私の好きな長陽の節句である。

    本来の長陽の節句は、長い夏の暑さを終えて、少しづつ秋の入口の日に、酒に菊の花びらを浮かべ飲めば、健康回復と長寿に資する、ということで大事な日である。

    私はいつも日本酒を熱燗にして菊の花を浮かべ、この風流に親しんだものだ。

    しかるに、この暑さは風流に程遠い。

    まず、菅 茶山の詩を自己流に解釈し、節句を皮肉ってみよう。

    (1)酩酊して佳節(仮説)に酬(こた)へ

       醒(さ)め来(きた)れば已に曙光

       捜頭(かざ)せし前日の菊

       猶枕辺(ちんぺん)に在りて香(かんば)し

         菅 茶山(くわん ちゃざん)

    〔訳:自己流〕

       佳節(長陽の節句)を肴に酒を飲んだけど

       あまり暑くて飲みすぎてしまい

       気がついたら、朝の曙光が射しこんでいたので驚いた。

       頭に挿したり飾っていた菊が、枕元やそこらこちらに散らばっているじゃないか。

       香りだけが残暑を嘆く私を慰めてくれている・・・

    このように、暑い夏は、風流を薄め、詩人を少なくし、熱中症ばかりを増やしている。

    何やら淋しくありませんか。

    節句を祝いたいのだが、祝えば別のものになりそうだ。

     

    何かを得たいと思ったら、何かを失う。しかし人は新しいものを得たがるものだ。

    幕末の勤皇の志士 久坂 玄瑞(くさか げんずい)の歌を紹介する。

    (2)竜田川 無理に渡れば 紅葉が散るし 渡らにゃ聞かれぬ 鹿のこゑ

    久坂 玄瑞

     

       こうした矛盾する思いに私が出す結論は、久米 正雄の句としたい。

    (3)生き身の 我が血は紅(あか)し 田端(でんぱた)の蚊

    久米 正雄

    この句は久米の親友であり僚友でもある芥川 龍之介の自決を悲しんだものである。

    君は自決して死んでしまったが、後に残された者は、悲しみ哀悼を捧げるのみである。

    しかし、蚊に刺されたら、生きている肉体は痒いし、自分の血に気づくだろう。

    生というものは、美しくもあり、悲しさもあり、痒さもあるという複雑さを語っている。

    最後には冬を連れてきて明るく強く踏み出す人間を紹介する。

    (4)雪降れば 亦 心温かく

       机上の薔薇(そうび)枯るるといへど

       吾が孤独の星座

       つねに風沙に開く

    林 芙美子

     

    夏で始まり、秋も出し、締めは冬ですね。

    これはいいでしょう。なにか元気が湧いてきませんか。

    自分が目標とする生き方は、常に風が吹き、砂まじりの中にいるが、進みゆくことで、目標の実現を企ることができるとしている。

    この九月の暑さに負けつつ、何とか自分の生き方を高めたいと、4人の先達 菅 茶山→久坂 玄瑞→久米 正雄→林 芙美子の詩や歌をひっぱり出して、暑さに負けようとしている自分を叱咤激励してみました。

    書いて見れば、一年の流れの大局が分り、耐えられたり、新しい道ができたりするんですよ。

    本当に凄い。

    こんな気持ち、みな様にも分って貰えますかね・・・

    理事長 井上健雄

  • 社会課題の解決のために新たな神話をつくりませんか? 【8月】

    私は今、ちょっと嬉しい。

    来月お盆すぎに休みを予定している。

    北の地で、気鋭の学者である友人に会い、遠出の食事会もする。

    新鮮なウニも食べたい・・・良質なタンパク質で美味しい。

    ミネラルも豊富、ビタミン類の葉酸も、活力一杯だ!

    嬉しい楽しみである・・・

    非日常的な交わりは、夢の助燃材でもあり、時空を広がり、日々の生活を豊かに生き活きさせてくれるものである。勿論、日常的な交わりも同様である。

    本論に入る前に、人間の始祖争いを見てみよう。

    人類の歴史を振り返れば、頭も良く、身体も大きく力強いネアンデルタール人と、ホモ・サピエンスの消長は不思議だ。

    最強の彼らより遅れ、体も小さく、ひ弱であったホモ・サピエンスが登場し、瞬く間にネアンデルタール人に勝ってしまった。

    弱い者が勝ち、強い者が滅んだのである。何故か?

    答えは「弱い」にあったと思う。

    弱さを知り、相手や周りの情報を手に入れ、どういう戦いをすればよいか考え、チーム・サピエンスが勝ったのである。

    サピエンスは、大集団を統御するすべも手に入れていたのである。

    ホモ・サピエンスの勝利は、7万年前から人類が獲得し始めた認知革命にある。

    サピエンスは、身振りや声等による情報のやり取り能力を身につけ出していたのである。

    これが認知革命です。

    話がよく飛ぶようであるが、2025 EXPOのシグネチャープロジェクトなるものについて触れる。

    その一つに慶應義塾大学教授 宮田裕章氏「いのちを響き合わせる」Co-beingがある。

    2025 EXPOのテーマは、いのち輝く未来社会のデザイン(Designing Future Society for Our Lives)

    宮田氏によると「・・・現在は経済だけでなく、健康、環境、教育、人権等の多元的な軸で世界を再構成する文明の転換点である。・・・いのちを響き合わせて、世界を共に創る Human Co-being時代が始まる。」としている。

    このEXPOの成功も、質の異なったものがチームとして動くCo-beingを創りあげれば、成功するだろう。

    このホモ・サピエンスの始祖が発明したco-beingは、恐怖や死を前に協働する、敵への対応であったと思う。

    7万年の時空を超えて、人々のウェルビーイングや平和の為にEXPO 2025でCo-beingが入っているのは、なかなか象徴的ではないか。

    7万年前に始まった認知革命、そして始祖は1万2千年前に農業革命を起こし、現人類は500年前から科学革命の真っただ中にいる。

    これからの科学革命の進化は、GAFAM等を中心に、オープンGPTの進化が社会を変えることになる。

    私は、こんな少ない巨人たちに世の中を席捲させてはならないと思う。

    しかし、人々の中途半端な知識や似非は排除・淘汰されていくことは目に見えている。

    例えば今、医療の最先端では、ガン診断の画像分析が進み、医師が見るよりも大量の画像を分析したAIの方がガン発見をする確率は圧倒的に高い。

    保険業界は、医師の診断よりAIの画像分析をするよう圧力をかけ始めている。

    こうした「データイズム」が幅を効かすことはどうなんだろう。

    私は、生き物は、単にデータの集積の分析等から計算機のような反応をするかのようなアルゴリズムに支配されたものとは思わないし、そう思いたい。

    社会の一人ひとりは客観的な、もっと上質な知の蓄積を求められている。

    それも、一段レベルの上がったもので、能の世界の言葉なら「離見の見」というものである。

    「舞台に立つ者は、常に自分が観客からどう見えているかを意識しなさい」ということである。

    リベラルアーツとして、世阿弥の風姿花伝を読み、能を楽しむのもいいだろう。

    離見の見を表した俳句として、私は

    五月雨を 集めて早し 最上川

    という芭蕉の句が好きである。

    蓑笠をかぶった旅人が、一粒一粒の雨は小さくても、これが降り続いて、大河の最上川の流速の早さを変えることに、驚き、川面を見つめポツリと立っている・・・

    その旅人をもっと上から眺めている旅人を詠んだものだろう。

    私たちは、AIの進展する世界において、真面(まとも)な仕事をしていく為には、リベラルアーツ(考える引き出しを増やし、人生を豊かにするもの、文化、芸術、算術等・・・)を磨き抜き、今まで使っていたOS(行動パターン)をバージョンアップさせるか、ニューOSを創造すべき時代になっている。

    これは、心、意識のOSという意味も持っている。

    それを私は大望と表現している。

    人々と共に、社会を良くしていきたいという大望こそが、社会が求めるニューOSであり、新時代を開く扉であると考えている。

    私は、いろんな領域にあって優れたエッジを持った人々と、それぞれの領域を超えたソリューションを世に提供したいと思っている。

    これは、今まで人が踏み込まなかった事柄を新たな想像力で組み立てる神話なのかもしれない。

    社会課題の解決物語が神話となれば嬉しいです。

    伝わればいいのですが・・・

     

    理事長 井上健雄

  • 学生の頃、帰京による三つの発見 【6月】

    北半球にある日本は、まだ季節がうまく(?)回っている。

    春夏秋冬があり嬉しい。

    6月の声を聞くと、夏休みが待ち遠しかった。

    6月は学生時代にトリップさせてしまうマジックワードです。

    先月の挨拶に、子ども時代を登場させたので、今月は大学生です。

    私は4年間、横浜・東京で下宿生活をする青年として、いろいろな発見をし、楽しい実りある生活をした。

    4年の生活で発見したものの一つは、ふるさとです。

    生誕から高校生(大学まで)まで、京都で過ごしていましたが、その頃はふるさととは感じませんでした。

    しかし、新しい場所に棲み、生活をすることで、帰る場所として、故郷が登場したのです。

    この発見は、結構大きなものでした。

    なにかにつけ、京都というものが住みついたのです。

    そして二つ目の発見は、夏休みに永遠の時間を見つけたことでした。

    (アホ言え。それまでグータラと夏休みを過ごしてきたクセに…)

    そうじゃないんです。

    はじめ一人ぼっちの生活をし、夏休みに故郷に帰る。

    京都での休暇は、今までとは違ったんです。

    日常的な京都が異次元の世界を見せてくれたんです。

    京に帰り、まずしたことは、一人歩きです。

    すきなコースは、加茂川を中心に、上賀茂~植物園~御所~町なかの高瀬川を巡るんです。

    そして、八坂さん、清水さんと歩き回る中に、変わらないものが巾を効かす京都を見つけたのです。

    永遠という言葉を見つけたのです。

    この非日常感は、ちょっと飛躍した表現かもしれませんが、永遠という時間を発見したのです。

    三つ目の発見は、東京は、帰る度に新しく街再生として新ビルが建ち続け、まちの様子が一変する地域がたくさんできていました。

    翻って、京都はちょこちょこと新しい建物や新名所的なものはできてはいましたが、変化の速さはゆっくりしたものでした。

    この発展する東京、停滞する京都という対比でしたが、その時考えたのですが、この対比の勝者は、京都になるような気がしたことです。

    変化を見せる東京には新規性ばかりで人を呼ぶ忙しい姿に見えてきました。

    一方京都は、町の中心を流れる加茂川を軸にして、北に北山、東に東山、西に西山と山城の国であり、周辺に神社・仏閣があり、真ん中に御所があるという不変の構造で、静かに佇んでいたのです。

    その上、京の三大祭りとして、初夏の葵祭り、真夏の祇園祭り、秋の時代祭りがあり、その不動の構造に祭りが、その構造を活き活きさせる装置となっているのです。

    面白くファンタスティックな街であることを発見しました。

    50年もすれば、この永遠の時間を持つ京都は日本一、いや世界一の観光都市になるだろうと思ったものでした。

    なかなかそうはなっていませんが、可能性に満ちていると思います。

    私は、街は町としての記憶を持つものだと思います。

    その町の記憶が、人々に夢や楽しみ等、不思議な豊かな時間を生み出してくれるのだと考えます。

    このような発見が、私をして、京都を中心に、関西に生活拠点を持つことを進めたのです。

    そして、変わるものより、変わらざるものの価値に目覚めたのです。

    変わらざるものの代表は、自然の山川、木々、花々であり、伝統的な神社・仏閣等であります。

    こうした思いが、私が主宰する団体をして、環境問題に取り組ませたのでしょう。

    DEI(Diversity, Equity & Inclusion)に関心を持つ由縁かもしれません。

    これが夏を迎える6月の思い出です。

     

    理事長 井上健雄

  • 「どうらく」のすすめ 【5月】

    読者のみなさまにおすすめです。

    「どうらく」をしてください。

    「何々?お酒や、趣味の骨董に感(かま)けていいんか?」

    「私、夜遊びと買い物どうらくだけどいいですか?」

    「私たち、お肉大好きで、肉フェチしていいんだよね」

    ・・・

     「みなさま、私の奨める『どうらく』は、それらとちょっと違うんですよ。」

     「何言うてんねん!どうらくのすすめと言ってるくせに…」

     「私の『どうらく』を漢字で書くと『動楽』となります。」

     「おまえ、騙したな…」

     「人聞きの悪いこと、言わんでください!!…」

     

     ちょっと、あいさつの出足を遊ばせてもらいました。

     私の、この「動楽」の発想は、音を楽しむ、つまり音楽にあります。

     音を楽しみ、歌ったり、ピアノを弾いたり、作曲したり、音に合わせて踊ってみたり、本当に楽しいですよね。

     音楽と同じように、動くことを楽しんでほしいと思っているんです。

     少し考えてみてください。

     みなさま、子どものころを思い出してください。

     坂を見ると駆け上がったり、駆け下りたり、川で石投げしたり、塀の上から飛び降りたり、走り回ったりしていませんでしたか?

     外に出ているときは、動き回っていましたよね。

     そして、夕方遅くなって、腹ペコになって帰っていたと思います。

     つまり、元気いっぱい。健康で細く、しなやかでした。たいていの子どもたちは…

     しかし、最近の子どもたち、そして大人の人々、少し高齢になった人たちを見ていると、動楽をしているようには見えません。

     動かないと、2型糖尿病になったりしてインスリンの働きが低下したり、分泌量が減少し健康寿命を短くしてしまいます。

     少し難しいことを追加しますね。

     よく運動する人は、筋肉細胞内にGLUT4(グリコーストランスポーター)という、糖を輸送するタンパク質が、普通の人の2倍くらい分泌され、インスリンがスムーズに出て、血糖値を低下させてくれるんです。

     高血糖の状態が続けば、糖尿病になるんです。

     つまり、動かないと、身体は年齢と共に、どんどん悪くなるんです。

     そこで、動き、体力をつけましょう、と言っているんです。

     行動できる体力を養成しましょう。

     体力とは、

     ①全身持久性体力というものです。それには心肺体力を高める、有酸素運動がいいんです。

      有酸素運動とは、酸素を使って体内の糖質や脂質をエネルギー源とする筋肉への負担の軽いものです。

      代表的なものとして、ウォーキングやジョギング、自転車漕ぎなどです。

     ②筋力をつけましょう。

      私たちの身体で、最も大きい器官である筋肉をつけ、筋肉太らせることです。

      普通、筋肉は体重の40%(成人男性)~30%(成人女性)も占めているのです。

      年をとると、下半身の筋肉の減少が起こりやすいのです。老化は足からと言いますね。

      この最大の器官を鍛えることが、健康の第二歩とも言えます。

     もうちょっと説明を加えると、行動体力には、あと

     ③バランス能力

     ④柔軟性

     ⑤敏捷性

     があります。

     体力には、行動体力以外に、防衛体力というものがあり、病気やストレスへの抵抗性や、環境などへの適応力というものもあります。

     体力を支えるのは、全身持久力と筋力となります。

    WHOが提唱する「健康上の問題で日常生活が制限されない状態」を健康寿命といい、この寿命を延ばす答えが運動となるんです。

    少し乱暴ですが、太り気味の人が高血圧になったら、降圧剤を飲むより、運動することで、糖尿病も、軽いうちに運動して汗かいて、脂肪を燃焼させたりして改善できるんです。

    もっといいことは、運動すれば、脳を刺激して、認知機能を改善させるBDNF(Brain-Derived Neurotrophic Factor)脳由来神経栄養因子という物質ができることも分かっているんです。

     私は、この動楽を、健康活動№1と名付け、「健活活動」を提唱しています。

     ねえ、一緒にしませんか。

     そして、健康な身体でもって、社会貢献活動をしましょう。

     認知症予防になるし、健康寿命は延び、まわりも元気にさせます。

    これこそ、動楽です。

    動楽するに、もう遅い、はありません。

    筋肉は裏切りません。やればやる程しっかり筋肉をつけてくれます。

    こまめに、きびきび運動しましょう。

     

    理事長 井上健雄

  • 一人ひとりのDEI、そして国家間のDEIへ 【3月】

    3月下旬を迎えました。

    2月の疾風怒濤から、やっと抜け出られたようです。

    あぁ良かった・・・

    私の忙中の中において、天皇誕生日(2/23)を迎えられた、徳仁陛下のお言葉に心救われました。

    「寒さの中にも日ごと春に向かっているのを感じます。皆さん一人ひとりにとって穏やかな春となるよう願っています。皆さんの健康と幸せを祈ります。」

    こんな易しい言葉で、心に響く言葉、本当に日本国を象徴する人の深さと、優しさに包まれました。

    ありがとうございます。

    日本は、資本主義国ではありますが、聖徳太子の「和をもって尊し」の言葉があり、子どもの育成についても空海は「子は日本の宝なり」と言われました。

    こうした伝統こそが日本であり、みなが支え合い、助け合い、生きていくべきだと思います。

    一方で、先日、イーロン・マスクの娘さんが、親に注意をしていました。

    「私を産むって決めたのは、パパでしょ。その上、私にパパの考えを押し付けないで・・・」

    なかなかの親子で面白い。いや、すこし寂しいかなぁ。

    とはいえ、私たち大人は、「麒麟も老いては、駑馬にも劣る」という言葉を戒めとすべきである。

    私たちは、若者が自分の力を信じて前進することを妨げるべきではないのだろう。

    このように、アメリカはガチガチの個人主義で自由競争万歳の国である。

    しかし、日本はもう少しゆるやかな社会であるべきだと考えている。

    今、アメリカを中心とする西洋民主主義、資本主義、自由競争、核家族主義が、世界を席巻しつつある。日本も含めて。

    この考え方の異端として、ロシアの家族主義、専制国家観があり、このあたりの考えは中国やイラン、サウジアラビアなども同様である。

    この大きなイデオロギーの対立は、なかなか解決は困難である。

    嘗て私たちは冷戦を解く為に、米ソが環境問題に取り組んだ経緯を知っている。

    従って、私たちはSDGsという言葉を通じ、地球温暖化対策や、国や地域の平等、人の平等の概念でもって、融和をはかるべきでないだろうか。

    この融和には、三つの概念の理解と浸透が求められる。

    それは、DEIである。

    一、Diversity(多様性)

    一、Equity (公平性)

    一、Inclusion (包摂性)

    DEIの意味するところは、社会の中において挑戦する一人ひとりに対して、機会の公平性を追求し、だれもが取り残されない社会実現を目指すものです。

    こうしたあらゆる個人の自己実現を応援しようとするものですが、私は、国家間も主義主張を超えて、共存できる範囲から少しづつ広げられたらいいなぁと思います。

    楽観的過ぎるかもしれませんが。

    大きな大きな度量でInclusionしましょう。

    個々、いろんなリスクを感じながらも、パートナーシップの相乗効果にチャレンジしていこうではありませんか。

    ポジティブに希望的に。

    理事長 井上健雄

  • 私の二月、ギフチョウ、人間について【2月】

    2月は、好きな歳時や歳事が多い。

    節分、立春、雨水。人寄りには、バレンタインデー。

    天皇誕生日、誕生日です。

    嬉しい。

    春を迎えるには、早くはやくなんです。

    キーワードは、立春なんです。

    立てば、歩いて、早く、来て 欲しい春 なのです。

    まだ、3~4週間ぐらい必要でしょうか。

    早春の女神「ギフチョウ」が飛ぶのは…

    大阪府では、絶滅危惧種Ⅱ類に指定されているんですかね。残念。

    黄色がかった白色と黒色のツートンカラー、翅の下側の赤やオレンジ、灰色の模様が入りとてもおしゃれです。

    ギフチョウは、寒さ残る春にカタクリ花の蜜を求めて飛ぶんです。

    カタクリの花は、早い春の雑木林の中で、木々の葉が開いて、日光をさえぎってしまう前に花を咲かせ、実をむすび、翌年へのエネルギーを貯えてしまうんです。

    この花が咲く頃に、ギフチョウが、年一回の恋の季節です。

    そして、春爛漫には、もうギフチョウはいません。

    彼女らの残した幼虫が、カンアオイの葉を食べて育ち、六月には下草や落葉の中にもぐり込み、かたいサナギになり、翌年の三月末に蝶になるまで、10か月の眠りに入るんです。

    幼虫が餌とするカンアオイの葉は、夏から秋には新しい葉を出さないんです。不思議です。

    このように、ギフチョウの成長には、カタクリの花、カンアオイの葉などがかかせず、絶妙のタイミングにギフチョウが存在するのだと思います。

    本当は、絶妙のタイミングというより、生物は、生物の中、そのものに中に、季節を持っているのだと思います。

    一方で、私たち人間は、生物としての人間の外に、季節があるのだと思います。

    人間は、熱帯でもツンドラ地帯でも、砂漠にだって住むことができます。

    人間は、周りの環境をコントロールして、適応しているだけで、遺伝子の中に季節を持っていないのです。

    そうすると、人間の自然離れが加速し、一層の自然破壊を招く恐れがあります。

    そこで、人間は花鳥風月と自然への賞賛を文化として、取り入れたのだと思います。

    そして、進展する温暖化抑止の思いも含め、生物多様性の尊重と重視への動きもあります。

    生物多様性の尊重は、アニマルのウェルフェアとしての力強い流れを形成しつつあるのかと考えます。

    今月は、ギフチョウの乱舞するイメージとともに、いろんなイマジネーションを膨らませて、春の歳時エッセイと致しました。

    理事長 井上健雄

  • 新春を寿ぎ、皆様のご健康とご多幸をお祝い申上げます【1月】

                               

     利他の春 SDGs 課題とし 語り明かして 夢をうつつに 

    (偉 美韻宮)

     

     未来について、私たちが分かることはただ一つ。

     今とは違うということだけである。

     未来を予測するより、私たち自身で「未来を創りだせばよい」と思う。

     予測できる未来なんて、本来意味がないんですから・・・

     少なくとも、今、人生のルールが変わりつつあります。

     それは、人生の長期化、一方でライフスタイルの短期化、そして、変化の加速化です。

     例えば、加速化について・・・

     自動車なり電話なりが「5,000万人のユーザーを獲得する」のに何年かかったかのデータでは、

    飛行機

    68年

     

    自動車

    62年

    50年以上

    携帯電話

    12年

    10年以上

    YouTube

    4年

     5,000万ユーザーの為に

    Face book

    3年

     

    Twitter

    2年

    5年以内

    Pokemon Go

    19日

    19日で!!!

     社会の変化は、一層加速し、ライフスタイルは短期化する。一方で人の人生は長期化する。

     恐ろしいことです。人の頭は基本的に変化を嫌うものですから・・・

     こうした状況に、変化を創り出そうというのが、この新年挨拶の思いなんです。

     その為に未来を創り出す感性能力として、3つあげたいと思います。

    (1)求められる性格特性

     ・好奇心にあふれている。大ニュースばかりでなく、ベタ記事にも関心がある人

     ・楽観力のある人。何事もやればなんとかなるだろうと思える人

       ポイントは、楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する能力です。

     ・持続性のある人。一つのことを考え続けられる人。

    (2)求められる人は、経験を深い智慧にまで高めた価値ある三つのスキルセットを持つ人です。

     ・テクニカルスキル その人が担当している仕事、いつも新しい観点を取り入れ変革していく業務遂

      行能力のあること。

      小さな瑣事にしても全気全念で取り組める能力です。

      例)プログラミング、イラストレーター等を駆使できる。

     ・ヒューマンスキル ヒアリングに秀れ、他人とコミュニケーションがスムーズにとれる。

        リーダーシップやファシリテーション力。勿論、人間としてのやさしさや品格も必要でしょう。

     ・コンセプチュアルスキル

      物事を抽象化したり、論理構築力等、概念形成能力が秀れていることです。上記の二つのスキルと

      の連動が必要です。

    (3)最近、求められることは、社会的能力として、ネットワーク力のあることです。

      広くて多様なネットワークが必要です。

      いろんな人や意見を聞いて、+αはもとより、思いもよらない新ソリューションをつくりだすこと

      のできるネットワーク力です。

     私たちは、感性能力として、

    (1)求められる性格特性

    (2)三つのスキルセット 

    (3)ネットワーク力 

    をもって、新しい未来を創造すれば良いのです。

     このネットワーク力こそ、最高の魔法である。寄りそって、足し算の世界から掛け算の世界に連れてってくれるのです。

     過去の経験を重荷とすることなく、土台として、新しい世界を切り開くって、なんて素晴らしいことでしょう。

    これらを一言で表現すると

    「私たちは、そこにある未来を良くしていこうとする強い意志のある人々と共にネットワーク力で良い社会づくりを進めたいのです。」

     今年も、みな様にご教導とご励声をお願いし、精一杯の考働により、社会課題の解決に邁進したいと思います。本年もよろしくお願い致します。

    理事長 井上健雄

  • 一時一事、一事一心(いっときいちじ いちじいっしん)【12月】

    今年も1ヵ月となりました。

    この11ヵ月、結構走り続けたと思います。

    ちょっと息抜きも必要としています。

    年末は、早めに休み、晦日くらいから卯年のスタートを切ろうかなと思っています。

    ピョンピョンいけるように・・・

    この頃になると、いつも口遊む句があります。

    いざゆかん 雪見にころぶ ところまで(芭蕉)

    これは、昨年、私信でもお伝えしましたが、芭蕉44才「笈の小文」の句です。

    昔の寒さ、大雪、下駄の間に雪が入り、本当に転びそうになる・・・

    たぶん名古屋の夕道邸で酒を飲み、頬染めて、お連れの女性と雪見に出掛けたのでしょう・・・

    大阪では雪舞いは稀で、積もることはまずありません。

    雪遊びの世界を、今も鮮やかに見せてくれるこの句は、本当に大好きです。

    年末は、いろいろな仕事の整理やレポート等・・・

    また、来年に向けてプランニングが始まります。

    こうした慌ただしい時こそ、一つひとつをしっかり進めるべきなんです。

    一時一事(いっときいちじ)です。

    ことを為すときは、そのことに全注意をはらい、そのことを実行するのです。

    物事を成す場合の順番、つまりシークエンスを心得て、遂行することです。

    一事をしながらよそのことを思ったり、気をとられたりしてはいけません。

    一事一心(いちじいっしん)でなければなりません。

    どんな些事だって、全身全霊でやることです。

    瑣事(小さな、つまらないこと)だといって、ゾンザイに扱う人は、いい仕事などできません。

    仕事にしても、日常生活においても日々キチンと自分を律してこそ、人間の生活というに値するのです。神は細部に宿るというではありませんか。

    もう一度繰り返します。

    一時一事。一事一心です。

    これを、年明け3月の年度末を迎えるにあたりの戒めとします。いや、毎日のことですね。

    皆様にはいろいろお世話になり、有難うございました。感謝の心で一杯です。

    💓よいお年をお迎えください。💓

    理事長 井上健雄

  • 食欲の秋をCareして楽しむ 【11月】

    もう11月。澄みはじめた空気に山の端がきれいに見える。

    そして夕闇が迫ると夕日の沈みにあわせて雲があかね色から黄金色に光る雲となり、沈む間際には広大な海を黄金色にしてくれる。

    あぁ 秋だ。

    夕方に、大自然が見せる美しさ、その動きのダイナミックさは、本当に一大スペクタクルである。

    この一瞬のあとは、冷涼な季節が連れてくる食欲の秋を楽しむという贅沢もある。

    寒くなるとスキヤキや焼き肉などが欲しくなります…。

     こうした書き出しに始まった文章は、無粋な教訓を垂れるのは止め、多言を弄せずに少し乱暴なオッちゃんとの会話を掲載したい。

     

     「この肉の提供者(?)は牛さんであり、羊さんであり、豚さんなんですね。

     こうした牛さんたちの問題は、二酸化炭素でなく、げっぷのメタンで合ったり、排せつ物のウンチの亜酸化窒素が大問題なんですね。

     この反芻動物のウンチとげっぷだけで、CO220億トンの温暖化効果があると言われています。」

     『オイ!お前!オイラに肉を食うなというのか!』

     「そうではありません。今食べている量を10とするなら、半分にするとか、20%くらいとか、量を減らしていただけたらと思っているんです。その方が健康にもいいじゃないですか、と申し上げているんです。」

     『余計なお世話だ。俺は、俺のやり方で健康なんだ』

     「いえいえ。霜降りなんておいしいし、良質のタンパク質ですから、時偶、食べていただくととても良いと思います。

    しかしですね。人間の腸には100兆個もの細菌がいて、短鎖脂肪酸を作っているのです。」

    『うるさい。お前、短鎖なんとか…そんなんどうでもいいんや。結論を言え!』

     「怒っておられますね。端折って申しますと、肉食が過ぎると腸内細菌とのやり取り等から、炎症物質のアラキドン酸ができるんですよ。これが、ガンのもととなるんですよ。

     ああうまい。満腹じゃ。まではいいんですが、メタンや亜酸化窒素を出して気候正義を守らず、地球温暖化を進め、年齢とともに自分の身体までガン発症率を高めて、損ですよ。と申し上げているんです。」

     『ほんま、お前、厭な奴っちゃな。そこで、野菜を食べ、肉なら魚や鶏にせいと言うんか!』

     「意外ともの分かりよろしいでんな。そうだす。そしてよう頑張った時とか記念日に、ミートタリアンになって思い切り食べてください。

    そうすれば、エビデンスとしてLDHを減らし、HDLを…」

     『もうエエ!分かった 分かった』

     「私は、これからは、体はCure(治す)する前に、Care(予防を気にかける)の時代に入っているということを申し上げたかっただけですけどね…」

    理事長 井上健雄

  • 捨てて強くなるか、もっともっとか 【10月】

    昔、むかしから現代にいたるまでの長い歴史の中で、三つの事例を考えてみましょう。

    (ちょっと大げさですかね?)

    (一)昔むかしから。

    今から5,200万年以上前に、ウマの先祖のエオピップスという動物がいた。

    それは、前肢4本の指、後肢3本の指を持っていた。

    この指があれば、物をつかんだり、樹上にも登れるだろうが、エオピップスは中央の1本指だけを発達させたのである。

    つまり、蹄(ひづめ)を手に入れたのです。

    獰猛な肉食動物から逃げる足の為に、他の指を捨てたのです、

    この例は、ダチョウも同様です。

    飛ぶことを捨て、草原を速く走る足と肉食動物を蹴散らす脚力を発達させたのです。

    (二)何千万年も前の戦略を現代にも取り入れて成功している企業。

    スターバックスです。

    スターバックスは、1971年シアトルに誕生しました。

    その時の店名は、スターバックス・コーヒー・ティー・アンド・スパイスというものでした。

    店内で、ホットドッグやパスタ等も出していた為に、コーヒーの香りを消してしまう猥雑な軽食屋となり、売上も低迷し、閉店の危機に…

    そこで、コーヒーとその香りを中心に、他の品揃えを捨てたのです。

    今や、コーヒー文化との親和性の高いSDGsの取り組みを強化し、フェアトレードや、フォレストアライアンス(RA)やウツ(UTZ)社会・環境に責任を持った生産・供給の為の世界プログラムなどに力を入れている。

    こうしたことが、スターバックスの文化を高め、コーヒーを軸に一つのカテゴリーを築き上げたのです。

    (三)アメリカのGE

    現代のGAFAを凌ぐ、アメリカを代表する企業です。

    このGEでは、1980年代から20年間トップに君臨したジャック・ウェルチが、アメリカに解雇と整理ブームを惹き起こし、会社を成長させたのである。

    彼は、会社の建物は残すが、人間のみを解雇で放り出す「ニュトロン(中性子爆弾)・ジャック」と呼ばれた。

    彼は業界で1~2位に入らない企業は止めると宣言し、大整理を行った。

    強いものに集中するのだから、(一)や(二)のようにも思える。

    次に、この天才経営者のあとに、CEOに就任したのは、ジェフ・イメルトであった。

    彼は、称賛され続けるために、売上拡大の為のM&Aによって、規模・コスト・複雑さを拡大し続け(GEキャピタルへの依存を高め続け)た。

    イメルトは、ウェルチ時代から売上げ60%の拡大、利益を倍増させたのである。

    しかし、イメルトは大きな社会事象にも直面している。

    9.11、エンロン事件、原油高騰、住宅バブル崩壊…

    この事象がGEの弔鐘となったのである。

    これら事象に対して、規模だけなら整理して切り抜けられたが、イメルトは金融を中心とした会計力を駆使し、利益を上げ続けることを選んだ。

    このイメルトの後を、GEのヘルスケアのCEOだったジョン・フラブリーに任されたのである。

    二人の称賛された成績の後には、何のレガシーも残されていなかった。

    大きな社会事象の影響から、拡大基調の流れが縮小基調に入ったことに対し、十分な手術の手が打てずに、フラリーは1,400億ドル(日本円で19兆以上)の市場価値を失ったのである。

    エンロンの2倍以上で、リーマン・ブラザーズの損失さえ小石のようである。

    自然や社会情勢について、基本的な変化がない限り、イケイケドンドンで成功するが、ひと度変化に遭遇すると、大きな齟齬をきたすものである。

    かつて白亜紀に全盛を極めた恐竜は、地球は一つの大陸で、気温は高く、CO2濃度も高く、植物は巨大化し、それを食べる草食恐竜も巨大化し、それを食べる肉食恐竜も巨大化したのである。

    しかし、白亜紀の終わり頃に、地球はマントル流によって分裂し、大陸移動を始めるのである。

    そして山ができ、雨が降り、川が氾濫する変化の時代となって、ユカタン半島への大隕石とともに、

    大型化時代は終焉を迎えたのである。

    現代社会はある意味でこれらに匹敵する大変革期に入ったのである。

    答えは、小型化で自分の強みを発揮できるポジショニングを磨くこととなる。

    それはある意味適切な捨て続ける戦略こそが永遠の課題となる。

    我がNPOもその未来に進んでいる。

    これは、論理の飛躍でなく、壮大な未来のための一歩なんです。 ご一緒に、未来に進みましょう。

    理事長 井上健雄

  • 食べる投資 【5月】

    人は、金を稼ぐために健康を害し、

    今度は、病を治すために稼いだ金を使う。

    将来の心配ばかりして、現在を楽しむことをしない。

    その結果、人々は現在にも未来にも生きていない。

                    ダライ・ラマ14世

     

    この言葉は、深い問いかけがありますよね。

    明日、未来のことを考え、今日現在を省みない。

    永遠に生きる訳でもないのに…

    長い人生の先には、誰も知らない未来があるだけである。

    そんな未来に立ち向かうには、健康な身体の基盤を形成する「フード・インベスティメント(食に対する投資)」こそが、重要であります。

    例えば、重症疾患(脳梗塞や脳溢血、心筋梗塞、重症呼吸不全など)の人で、発症前の健康な状態に戻ることができるのは、ほんの一部の人だけです。

    予防の生き方(食事、行動習慣、治療行為等)をすれば、健康長寿が手に入るということです。

    この予防投資は、医療費の節約ともなるし、経済的な活動や社会でボランティア活動などの活気ある社会づくりの一助ともなります。

    食とは、アンチエイジングのキーファクターです。

    アンチエイジングとは、身体の内部の老化現象を遅らせること。

    つまり、病気になりにくく、元気な健康状態を維持すること。

    積極的は予防医療である。

    つまり、口に入れるものは全て自分への投資なんです。

    投資というからには、「食べて良いものを食べ、食べてはいけないものは食べない」ということです。

    このレポートは、食品名や料理を紹介するものではなく、投資としての食を語るものです。

    料理メニューの紹介ではなく、最近の知見により健康基盤をつくる材料や、その栄養素について説明します。

     

    特長

    栄養素・効果

    良いもの(1)

    納豆

    (推奨)毎日1パック

    発酵微生物パワー

    悪玉腸内細菌抑制

    ビタミンK:

    骨粗しょう、発ガン予防

    ナットウキナーゼ:

    血液サラサラ

    たんぱく質の一種 スペルミン:

    細胞の代謝促進、体内の炎症防止

     魚

    (推奨)週に3~4日

    体の炎症抑制

    血管や神経を健全に保つ

    脳内の神経伝達をスムーズにする

    魚のファーストフードとして、魚缶詰の活用も

    DHA、EPAのオメガ3系脂肪酸:

    血液サラサラ、動脈硬化予防、

    炎症を防ぎつつ認知症予防にも効果

    ビタミンD:

    体の炎症を防ぎ、アレルギー抑制、

    ウィルス抑制、ガン発症の抑制

    ココナッツオイル

    (推奨)食卓に常備

         低温圧搾法のものを選ぶ

    脳のコンディションを上げる

    腸管から即血液中に吸収され、肝臓で代謝され、ケトン体になる

    ケトン体は脳細胞のエネルギーとなる

    糖質抑制のサポートともなる

    ラウリン酸: 抗ウイルス

     (中性脂肪酸の一種が50%もある)

     免疫力アップ、アルツハイマー症改善

    良いもの(2)

    食物繊維

    (推奨)葉物野菜、海藻、

         きのこ

         男性20g/日

         女性18g/日

    腸内細菌叢を整える

    善玉菌、悪玉菌、日和見菌

    (ひとりの人間に、100兆個以上、1.5~2kg)

     

    セロトニン(幸せホルモン):

     メンタルヘルスの強化

     不安やうつ改善

    良いもの(3)

    食事だけでは不足しやすいもの

    -サプリメントで-

    加齢やアルコール摂取で減少するもの

    ビタミンD:

    1日必要量2000~5000IU

     骨の健康、免疫増強、糖尿病予防 

    亜鉛:

    一日必要量15mg

     細胞を酸化ストレスから守る

    マグネシウム:

     一日必要量200~500mg

     カルシウム濃度のコントロール

     ATP産生の補酵素

     

    江戸時代一の観相学の大家の言葉

    美食に溺れると人相の良い人も運気が下がり、

    粗食節食に徹すると、人相の悪い人も運気が上がる

                        水野南北

     

    いつの時代も、食こそが栄養の基盤であり、栄養知識を身につけて実践することが、健康という資産を作りあげる投資となります。

    みなさま、「食べる投資」をやってみましょう。

    人生変わりますよ! より健康になります! 

    大袈裟ではありません!

    動物としての人間にとって、健康資産として、食と同様に大事な「運動」も健康資産です。

    運動については、前にも触れていますが、次回以降にバージョンアップして紹介します。

    理事長 井上健雄

     

  • ゲーム・チェンジ 【4月】

    2月の花は、樹の花が多く、梅、木蓮、寒椿…

    そして3月の挨拶も桜…と上ばかり見ていることが多かった。

    4月にもなると、下を見て歩くべきである。

    芝生やちょっとした野原を歩いていると、薺(ナズナ)や、繁縷(ハコベ)、ホトケノザなどの春の七草など、いろいろ小さな花々が、ちょっと気取って咲いているではないか!

    これから萌えいづる草花を楽しみに過ごそうではないか!

     

    過日、日経ビジネス(R4 2/18号)に、脱炭素経営トップ70社ランキングがあった。

    「脱炭素」という巨大ゲーム・チェンジの荒波を、乗り切る企業70社が示されている。

    トップ3は、日本の超一流企業とされる。

    1.トヨタ自動車(モビリティ)

    2.花王(消費財)

    3.日立製作所(社会インフラ)

    (主になポイント)

    ・トヨタは、2030年に世界でEV350万台販売という野心的な大目標を打ち出した。

     ・花王は、アタックZEROに「バイオIOS」基材を用いて最小限で最高の品質を実現。

     ・日立は、重点をデジタル化と脱炭素に絞り込み、 社内炭素税とも呼ばれる、インターナル・カーボン・プライシング(ICP)を導入し、昨夏5,000円/tとしていた炭素価格を15,000円/tまで引き上げている。

    どれも、それぞれの企業にとって野心的で、大きな目標へのチャレンジであるが、これで本当に今までやってきた事業のゲーム・チェンジになるのかは、疑問です。

     

    ゲーム・チェンジとは何であるかの2社を記します。

    フィンランドの石油会社ネスラ社を考察する。

    同社は1948年創業の石油会社であった。

    原料を国外に頼る小国のエネルギー会社は、原油価格などに振り回され、業績は安定せず、いつも破綻の危機にあった。

    そこで、CEOのピーター・パナッカーは、ネスラ社を2007年より再生燃料へシフトすべく大規模投資を決意したのである。

    しかし当時は、市場も投資家も従業員までもが、戦略に疑問を持ち、厳しい状況にあった。

    それでもピーター・パナッカーは、脱炭素の流れから、再生燃料へのシフトに命運をかけたのである。

    4万軒以上のレストランの廃食油や、動物油などから原料を調達し、世界の3つの工場で再生燃料の生産を軌道に乗せたのである。

    SAF(Sustainable aviation fuel 持続可能な航空燃料)を強化し始めて、空港に精通する専門家を新たに採用し始めたのである。

    2021年8月現在には、同社の株をフィンランド政府やESGファンドが、71.6%まで保有するまでになったのである。

    そして、SAFの割合を50%から、100%利用までめざしているのである。

    石油会社が、石油事業をアメリカやロシアに売り、再生燃料会社になり、また、SAF以外には廃プラスチックのケミカルリサイクルへの注力を開始している。

    サプライチェーンの強化の為に、各種回収会社との提携や買収などにより、回収ネットワークを世界中に張り巡らそうとしている。

    つまり、原料の石油を買って売るビジネスから、廃油等の再生燃料化ビジネス、脱炭素ビジネス会社へと、大きなゲーム・チェンジに成功したのである。

     

    同様に、石油会社でグリーン敗戦したデンマークのオーステッドは、洋上風力発電の世界最大手にまで変身を遂げている。

    「脱炭素」と言った時、それは、脱既存ビジネスになることも厭わない覚悟がいるのです。

    こういう意味で、日本の脱炭素経営は、ゲーム・チェンジになっていない。

    理事長 井上健雄

  • もうすぐ春爛漫 【3月】

    春なんですから、ちょっと「春」を楽しみ、喜びたい。

    静岡県 河津町 河津川沿いの桜並木は、壮観。

    菜の花の黄色と河津桜の濃いピンク、明るい空、そして青い山並みといろんな色に出会えますよ。

    本州で一足早く咲くこの河津桜はもう葉桜・・・

    私の住む大阪の桜(ソメイヨシノ、ヤマザクラ…)も蕾を膨らませています。

     

    こうした自然の変遷を、内村鑑三は「寒中の木の芽」という詩でうたっている。

     

    (一)春の枝に花あり

             夏の枝に葉あり

             秋の枝に果あり

             冬の枝に慰めあり

    (二)花散りて後に

              葉落ちて後に

              果失せて後に

              芽は枝に顕わる

     

    (三)嗚呼憂いに沈むものよ

             嗚呼不幸をかこつものよ

             嗚呼冀望の失せしものよ

             春陽の期近し

     

    (四)春の枝に花あり

              夏の枝に葉あり

              秋の枝に果あり

              冬の枝に慰めあり

     

    なんと素晴らしい年月の展望ではないか。

     

    清少納言なら

     ただ過ぎに過ぎたるもの 帆かけたる舟 人の齢 春夏秋冬

     

    なかなか粋で生意気だが、友だちになりたいとさえ思う。

     

    もっと突き抜けた人生なら、白隠禅師であろう。

     六月に松風を買わば 人間(じんかん)恐らく価(あたい)無からん

     

    (私の解)旧暦の蒸し暑い夏の盛りに、松の枝々を縫って、涼しさと少しの湿度に松の香りをのせて、一陣の風が訪れてくれる。この風を賞味せずに人里に住んでいてもつまらないよ。

     

    季節毎の感慨は、人生を豊かに味わい深くしてくれる。

    やはり、春は春を嗜むべきである。

    理事長 井上健雄

  • 節を分ける 【2月】

    日本は本当にいい国である。
    春夏秋冬いつもよろし。
    冬について、
             いざゆかむ 雪見にころぶ ところまで (芭蕉 44才)
    この句は、「笈(おい)の小文」に記されたものである。
                       (注)今年の私のプライベート年賀状の一部でもある。
    昔は雪も深く、下駄履き散歩は、粋で楽しみでもあったらしい。下駄にくっついた雪が大きくなり、転んだりするのを楽しんでいる様子が目に浮かぶ。
    芭蕉、この時一緒に転びたい女性があったのかもしれない。
    私は隠れ恋歌だと考える。
    さて、冬が終わりそうになり、春が来ようとしている今が、節を分ける日である。
    これを短くすると「節分」 2022年2月3日を指す。
    単に節分と言ってしまうと、豆まき、恵方巻と単純化されるので、変化の微妙さを明示したいが為に「節を分ける」としたのです。
    立春は、二十四節気の最初の節気で太陽の黄経315°。
    太陽の運行に基づいて、一年を二十四節気に分けたものである。
    この節を分けるとは、冬から春への変化をすべての人々が切望したからである。
    春から夏の立夏、夏から秋の立秋、秋から冬への立冬とあるが、それぞれの前日を節分として祝うことは余りない。
    季節は、このようにいろいろな節目をもって人々を遇してくれる。
    そしては、年齢に応じたものから、思想や生物の不思議などいろんな節目に迎えられている。

    そんな節を分けるいろいろを、4例示したい。
    ・孔子なら「吾 十有五にして学に心志し、三十にして立ち、四十にして惑わず、五十にして天命を
    知り、六十にして耳 順い、七十にして心の欲するところに従いて矩(のり)を踰えず(こえず)」
    ・ヘルマン・ヘッセなら「しがみつくことで強くなれると考える者もいる。しかし時には手放すことで
    強くなれるのだ。人生の義務はただ一つしかない。それは幸福になることだ。
    君自身であれ!そうすれば、世界は豊かで美しい!」
    ・体長1mm以下のクマムシさんは、100℃の高温や極低温でも生存でき、人間が即死する放射線でも
    大丈夫。 そして、水深1万mの高水圧もOK. 考えられないタフな虫ですね。
    ・人間の細胞の数は60兆個と言われてきたが、最近、37兆個というレポートが出た。細胞の一つの
    大きさは、 10ミクロンほどで、顕微鏡でしか見えない。
    小さい方の細胞数37兆個×10ミクロンとすると、37万kmとなる。
    地球の一周は、4万kmだから、地球の9周分ある距離となる。60兆個なら地球15周。
    地球6周分の長さの差が、最近になって出てきた。こうした研究者の活動にリスペクトしか
    ありません。
    恐ろしくありませんか。60兆個を37兆個とする、どんなロジックとエビデンスがあるのでしょう。

    世の中に本当に分かっているということは、ほんの少ししかないということですよね。
    いろんな社会的な意義、出来事、多様な事象、いろんな研究がある。本当に人生は、素敵で面白い。
    何にだって意味があるし、何にだって生き甲斐がある。
    もっと分かりやすく表現すれば、節を分けることを見つけ、自分を輝かせることに一心不乱になることだと思います。
    皆さんご一緒しませんか?「節を分ける」変化を見つけ、変化に対応し、ある時は変化に抗い、ある時は変化を創りだし、プリコラジュを楽しみましょう。
                                         理事長 井上健雄

  • 若い人よ! 小さな革命家になれ!!! 【成人式挨拶】

     2015年の公職選挙法改正で、2021年から18歳以上に選挙権が与えられた。
    なぜ、法改正がされたのか?
    一つは、世界189カ国のなかで、170の国が、18才以上に選挙権を与えていること。
    もう一つは、若い世代に政治への関心を持ってもらいたいためらしい。
    なぜか日本は、奈良時代(8世紀)に中国を見本として、20才を一人前と認めた。
    しかし、武士の世の中では、13~16才の間の「元服」が成人の儀式であった。
    今の制度(改正前)になったのは、1945年敗戦の後である。
    英国では、選挙権は18才、被選挙権は21才であったが、
    2006年法改正により、18才でも立候補できるようになっている。
    このように制度変更は、いろいろあるが、「人が議員たるにふさわしい資質を備えているか」について、有権者が判断すればいい。
    年齢で、ふさわしい能力が手に入るのなら、それはいいが、誰もが成熟するわけではない。
    ボケる人もいる。
    学ぶ姿勢や社会課題への向き合い方などが、しっかりして、他人の意見に耳を傾けることができれば、いいのである。
    年をくっており、それなりの履歴の人たちが、汚職や違反をしていたり、余りにも偏った考え方や発言をする人もいる。
    従って、本当に大事なのは、選ぶ人の資質なのかもしれない。
    環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんが、彼女が国政に出て、未来の人たちの権利を守ろうとするなら、いくつであっても選挙権を与えればいい。
    今、未来の子どもたちの権利を奪う温暖化に対応しない人々が、罪に問われないのは、おかしいことだから…
    大人たちが、若者たちの権利を守ろうとしないのであれば、君たちは革命家を目指すべきかもしれない。
    私は、若い人に希望を持っている。
    未来は、空いっぱいに広がっている。
    想像力をもって、決意と勇気をもって行動することである。
    疲れたら、休むのもいい。
    もし、決断したことが、思いと異なっているのなら、葛藤の上で変えてみてもいい。
    自分で悩むのもいいが、親しき人々にアドバイスを貰うこともいいだろう。
    思っていたより、異次元ジャンプできる意見を聴けるかもしれない。
    真っ直ぐに、真剣に悩んでいれば、自ずから道は拓ける。
    「希望」とは、場所でなく、そこに向かう必要な生き方なんです。
    希望は、簡単につぶれたり、なくなるものではありません。
    希望は、息づいているのですから。
    もう一度言います。
    大事なことは、自分だけの人生のストーリーを紡ぎだすことにある。
    それは、自分の生活に小さな革命を起こすことである。

    理事長 井上健雄

  • 社会課題にどう取り組むべきか【11月】

    現代社会においては、GDPでは満たされないニーズが拡大している。
    GDPは、ハーバード大学の経済学者サイモン・クズネッツが1934年に提唱したものである。
    GDPは、一定期間内に国内で生み出されたモノとサービスの総額であるが、このGDP指標もすでに80年余りを経過し、この指標だけでは人々の幸福感などが入っていないので、新指標が求められている。
    アラブ首長国連邦は、2016年に、幸福大臣の役職を新設したし、ニュージーランドのグラント・ロバートソン財務相は、幸福予算を編成している。
    ロバートソンによると、成功という概念もGDPからもっと広く深いものへの変更が必要だとしている。
    ケンブリッジ大学のデビット・ランシマンは、投票権について言及している。
    平均寿命の延びによる高齢者優先にならないように、6才以上の人に選挙権を与えるべきだとしている。
    これは暴論的だが面白い。結構考えるべき余地もある。日本もこんな教授がどんどん出ればいい…

    日本でも、経済社会システム総合研究所会長小林喜光氏は、経済プラス健康や生活、そして持続可能性を確立させるウェルビーイング・キャピタリズム(快適資本主義)を主張されている。
    そして、小林氏は、経済のフロンティアが、重さのない世界に移行しているが、日本はこれらの変化に対応できず、日本病に陥っているとしている。
    つまり、モノからコトへ。そして、コトから心への変化に対応できていないと言う。
    嘗て、重工業化や自動車・電機産業で稼ぎ、成功したが、半導体位からつまずき始め、医薬品、サービスの分野では、世界の後塵を拝している。
    世界と同じように商品開発やイノベーションを志しているようで、その取り組みの方法論が、古く、貧しいように感じる。
    このように、産業界の動きが、世界にキャッチアップ出来ない中で、気候変動は、社会構造や民主主義の基盤までを崩す勢いにまでなっている。
    しかし、こうした課題に直面した時、モグラ叩きのように、表面の課題に取り組むのではなく、構造的な問題にまで入り込み、総合的な状況分析の上、錐のようにスモールな一つのソリューションに入るべきなんです。
    こうした巨視的なスケールから個別課題の検討のための一助として、ポール・ホーケンの「ドローダウン」を紹介したい。
    この本は、地球温暖化を逆転させる100手法について、述べている。
    ポール・ホーケンの著作は、どれも人々を元気づけてくれます。
    勿論、突っ込み不足や、不完全な情報もありますが、うまく活用し、それぞれの課題探求のモデル例位に考えて、未来への希望と人間能力への信頼を手に入れる独創的デザインづくりに邁進して欲しいと思います。

    理事長 井上健雄

  • 健康の極意  【12月】

    自然は凄い。
    海水1Lに30億個のウィルス。1gの土に100億から1,000億の微生物(その種類にして6,000~5万種も)。
    人間も凄い。
    発生学的に言えば、受精卵から最初に作られた臓器は腸でないかと言われている。
    その大腸には100兆個を超える常在細菌が生息している。
    人の細胞は、37兆2,000億個。人の遺伝子の数は2万1,306個(ジョンズ・ホプキンス大学が2018年ネイチャー誌で発表)。
    人は、人の細胞と遺伝子に数倍する常在細菌とがコラボレーションして成り立っている。
    この常在細菌が、臓器等とインタラクティブなコミュニケーションを築き、私たちの健康を最適化させてくれているのです。
    腸の役割の主なものは以下である。
    〇人に利用可能な栄養素を作る
    〇糖や脂質などのエネルギー代謝を維持する
    〇消化器の機能を維持する
    〇内分泌の調整
    〇メンタル・脳機能の維持・調整等をしている
    人は微生物と共生している存在なんです。
    従って、抗生物質や殺菌剤などよくよく考え、使うべきなんです。
    農薬で汚染されたものを食べると、この常在菌が死んだりして、菌のかく乱が起こり、健康に変調を起こしたりする。
    あのO-157の事件だって、抗生物質ばかり投与されて牛の腸内の大腸菌が、ベロ毒素を出すO-157に変化した結果なんですから…
    腸内物質叢のバランス失調が、発達障害の原因の一つになったり、パーキンソン病・認知症も腸の異常で起こるといわれています。
    少し短絡的な論理ですが、人にとって腸の環境改善に役立つ食物の摂取こそ大事なんです。
    俗にいう「マ・ゴ・ハ・ヤ・サ・シ・イ」です。
    マ…豆
    ゴ…ゴマ
    ハ…ワカメ
    ヤ…野菜
    サ…魚
    シ…シイタケ
    イ…イモ
    特に、植物に含まれる多糖類レジスタントスターチが、腸の健康にいいんです。
    今回は、健康の極意として腸を中心に説明しました。
    常在細菌や、常在ウィルスなど、まだまだ十分な解明が進んでおりませんが、健康のポイントは、「菌、ウィルスの多様性が高い」ことにあります。単なる善玉菌・悪玉菌と区別せず共存することです。
    皆様、あなたの内臓も、そこここの自然も、大事にしましょう。本当に同じレベルなんですから。
    地球の健康があなたの健康に、そしてあなたの健康が地球の健康につながっているのです。
    言い換えると、プラネタリーヘルスは、ヒューマンヘルスともなります。この辺りを今後展開していきます。

    理事長 井上健雄

  • 老年よ大志を抱け 【9月】

    少し大袈裟なタイトルとなった。
    でも、考えて欲しい。
    2007年に生まれてくる子どもの半数が、百才超えをするというデータ※がある。
    (例) ドイツ                102才
    イギリス               103才
    アメリカ、イタリア、フランス、カナダ 104才
    日本                 107才
    ※Human Mortality Database, University of California, Berkeley (USA) and Max Planck Institute for Demographic Research (Germany). Available at www.mortality.org
    今、80才の人は、昔の80才に比べるとずっと健康だし、2000年を過ぎて生まれた子どもたちの80才はもっと健康だろう。
    人生は、 ①学業期 ②職業期 ③引退という3ステージから、近年は、①学業期 ②職業期 ③もう一つの職業期 ④引退という、4ステージ化している。
    百才時代となると、長い時間を前にして、喜び勇んでいいのか、健康の心配をしなくていいのか、経済的に大丈夫かな…と不安に苛まれているのでしょうか。
    今までよりプラス10~15以上生きられるのですから、マルチステージをしっかり熟(こな)せる能力が必要なんです。
    こうした能力をつけるプログラムを私たちは開発し始めています。
    (1)健康のための運動(注:フレイル予防を含む)運動こそ脳を鍛える
    (2)医の知見 認知症は老化で起こる。60才で1%、75才で7%、85才で35%
    イースト菌の長寿効果
    (3)食の知見 孤食から縁食。野菜と果物そして、脂分の多い魚
    (4)心の健康  協働の効果
    (5)生物多様性の学びから食の基本となる農や、スマート農法の学習
    すべての素材を活かす農のプレゼン
    (6)高齢者も使えるテクノロジー・デジタル学習 デジタル使えば広がる知識、深まるグループ活動
    私の老年とは、健康な時間を保つ為に、道路のそうじ、樹木の手入れ、子ども食堂などのボランティア等の社会課題解決をほんの少しの報酬で嬉々として活動する人と定義している。
    私は、建築物なら、サグラダ・ファミリアを思い起こします。
    1882年3月19日に着工し、現在まだ進行中です。
    この10年前には、完成まであと300年といわれていました。
    (今、建築技術の進歩と、IT(3Dプリンター、CAD、CAM)等々の技術の発展で、2026年の完成という予測が出ています…)
    このように、壮大な時間が大聖堂を完成させるのです。
    何十万㎡もある超大型複合施設でさえ、3~5年、あるいは20年の歳月もあれば完成です。
    大聖堂とは次元が異なります。短い時間で完成するのは、短い寿命でしかありません。
    人も、百才を生きて大聖堂になるのなら、長い研鑽と社会貢献活動が必要です。
    あとは、「や・さ・し・さ」かな!
    一緒に各自の「大聖堂」を創りませんか。
    それには、変わることが必要です。腸管内部の上皮細胞なら、数か月で入れ替わります。皮膚は4週間、血液なら4か月、骨の細胞でさえ4年ですべてが入れ替わっているのですから。
    死や衰えを招く病気の多くは、根底に細胞の老化があります。したがって入れ替え作戦がポイントです。
    変わり続けることで生きているのです。
    変わり続けることが命をビビッドに作ってくれるのです。
    老人は変身の大志を抱くべきなんです。
    マルチステージを楽しく生きる為に、多様性に満ちたネットワークこそ最高のソリューションです。
    人生の探索者になりましょう。エクスプローラーは探索者という意味です。
    その為に何でも冒険の旅に出ましょう。
    今、私たちは高齢者のQOL向上;生きがい・健康活力のエンパワメントの研究活動に取り組み始めています。
    大きな夢、やる気、社会貢献意欲のある方と一緒に、高齢者が百才まで健寿を保つプロジェクトを始めます。
    サア、みなさん、エクスプローラーになり多様性に満ちたネットワーク活動、ご一緒しませんか!

    理事長 井上健雄

  • 日本にロビンフッドは出てくるだろうか? 【8月】

    作成 R3年8月12日

    こういう名前をご存じだろうか?

    ブルガリア系移民2世のウラジミール・テネフ氏と、インド系移民二世のバイシュ・バット氏である。

    この二人こそが操業13年でナスダック上場し(R3 7/29)、時価総額290億$(約3兆円)のロビンフッドという証券会社をつくりあげたのである。

    この時価総額は、日本の名門企業、創業から90年以上の野村ホールディングス(1.77兆円)の約2倍である。

    前々回にテスラとトヨタを比較したように、今回はロビンフッドと野村ホールディングスを比較すると、アメリカの斬新なビジネスモデルに対し、旧来のモデルの経営は敗退していくように見える。

    どんな立派な企業も、どんな秀でた人々も、古いモデルに固執している限り、新時代を切り開くパイオニアの前には無力な存在でしかないのです。

    ロビンフッドのやったことは、業界においては全く異例の取り組みだったのです。

    「売買手数料無料」を打ち出したのです。

    このことは、ある程度の資産を持つ富裕層を対象としたビジネスに、資産を余りもたない10~20代の若者を呼び込み、成功したのです。

    若者にゲームをやっている感覚でトレードができるようにし、その上、利用者にテスラ株を1株ずつプレゼントといったキャンペーンで、爆発的に利用者を増やしたのです。

    ※参考:テスラ1株といっても、当時のレートで3万円くらいしたものです。

    たった一社のこの取り組みは、証券最大手のチャールズ・シュワブでさえ手数料無料化を打ち出すまでの革新につながりました。

    もっと特徴的なのは、スマートフォンですべての手続き~実際のトレードの決済まで~が完結する仕組みを提供していることです。

    また、暗号資産(仮想通貨)での取引もできるので、一層支持を広げています。

    こうした手数料無料サービスはなぜ出来るのか?

    それは、トレードのアロケーションをロビンフッドが持っているということにあります。

    ロビンフッドは、既存の売買方式(日本なら、東京証券取引所を通じて売買する)ではなく、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーに対し、「あなたの会社から買うようにするから、その分リベートを出してくださいね」。という仕組みを作って、手数料無料を実現させているのです。

    さすがスタンフォード大学の数学科卒ですね。

    ロビンフッドは、デビッドカードも発行しているので、今後もっとスケールのでかい資産運用会社になるでしょう。

    日本でも、ロビンフッドらしきものが出てくることを期待したい。

    理事長 井上健雄

  • 「G」はいらないのか? 【7月】

    作成 R3年8月11日

    こう書き表すと、ある人は、あの巨大化したグーグルについてのコメントと思われるかもしれない。

    ある人は、ガバナンスがいらないなんて、ちょっと無政府的で厭だなあ…とか。

    まず、最初に否定したかった「G」は、ゼネラル(general)なんです。全体的な、一般的な、雑多なとかの意味をもつものです。

    ゼネラルが、前についている企業の消長遷移を考えたい。

    GM(ゼネラルモーターズ)や、GE(ゼネラルエレクトリック)である。

    一時、隆盛を極め、そして没落の憂き目にあって、今、立ち直ろうとしている。

    GMは、買収を続け、世界の最大手の自動車会社となったが、リーマン危機で破綻し、欧州やタイなどからの撤退、米国内も縮小するという手術をしている。

    GEだって、16年間GEを率いたジェフ・イメルトは、カリスマ経営者ジャック・ウェルチ氏の事業拡大の整理をできず、電力や放送、ペット保険にまで手を広げ、苦境に陥り、祖業の照明まで辞めざるを得ない苦境に陥ったのである。

    この二つの企業を立ち直らせたのは、名称についている「G」つまり、あれもこれもをやめて、強い部門に力を集中させ、業績の回復を成し遂げたのである。

    さて今回、検討を加えたいと考えているG、グーグルに入ります。

    グーグルも検索大手から、ある種のゴッド(G)企業へと変わろうとしている。

    グーグルは、これまで200社以上の買収をしています。そして成功打率は5割を越えていると言われ、投資額は3兆円以上。知識も時間もお金で解決してしまうのだから、凄いですね。

    (買収代表例)2005年アンドロイド、2006年ユーチューブに2000億円、2013年ディープマインド

    この3社だけでも凄いパフォーマンスです。

    グーグルは、おいしいものに金を湯水のように使い、ゼネラル・ゴッドの道に進んでいるように見える。

    人が検索する前に欲望を察知するAI知能のディープマインド社とグーグルの、個人情報の収集能力の積は脅威です。

    ここでディープマインド社の能力の一つであるアルファゼロの能力を紹介します。

    「アルファゼロ(alpha zero)」というAIは、囲碁も将棋もチェスもそれぞれ最強というソフトに勝って世界最強なんです。

    将棋を例にしても、アルファ碁は機械学習で、3000万局ぐらい練習しています。

    一方人間は、一生懸命、一生やり続けても、10万局なんです。

    つまり、グーグルは,検索を柱とした企業からディープマインド社のAIを活用し、検索をする前に人々に答えを提供しようとしているかに見えます。

    旅行好きな人には、その人が動くであろう2~3か月まえに2~3のコースを食事や観劇や秘境の旅などレアものを含め、その人の性格や好みに合った提案をしてくると思います。

    また、週末の金曜日には、ブラウザを立ち上げるとおすすめのレストランと店主の挨拶まで聞けるものとなります。

    このレコメンドが出来るということは、人々の一人ひとりの個人情報を、グーグルに掴まれているということになります。

    人々の志向をその人が形にする前に推奨できるなんて、ある種の神ですよ。

    私は、人間が創り出した神は要りません。せめて、雑談AIや、俳句を詠むAI位でいいんじゃないですか?

    こうした事態の根本に、私たちが無料だと思って使ってきた検索内容から個人の志向を特定し、それを他社に売って、あるいは自社のために使うなんて、そんなこと知らなかったんですから…

    DX(デジタル・トランスフォーメーション)もCX(カンパニー・トランスフォーメーション)も、どんなトランスフォーメーションも好きにやればいい。

    だけど、集積した個人情報から人にリコメンドする神になるのは、許さない。

    これに対して、アップルのティム・クックの提案を私は支持します。

    アップルの創業者のスティーブ・ジョブズは、「ユーザーは、自分のデータがどう収集され、活用されているかについて、知る権利がある」としている。

    アップルにとって「プライバシー保護は、アップルの背骨の哲学である」とティム・クックは主張し、Google、Facebook、Amazonらに対し、立ち位置が違うことを表明しています。

    例えば、アップルのSiriもその質問と我々の身元をヒモづけないまま、情報を検索し解答してくれます。

    最高にプライベートなヘルスケア・アプリの情報については、端末内のセキュリティチップで暗号化され、Touch IDやFace IDなど認証されない限り、アクセスできないのです。

    グーグルに限らず個人情報を一手に握ったG(ゴッド)企業を創り出してはならないと考える。

    アップルを応援したい。アップル頑張れ!フレー フレー フレー。

    理事長 井上健雄

  • 恐るべきテスラ 【6月】

    (作成 R3年8月6日)

    2003年に設立されたテスラは、2021年7月1日の時価総額を、約22兆2,300億円と発表した。

    一方、1937年創業のトヨタ自動車の時価総額は、21兆6,532億円(2021年7月28日終値)。

    創業わずか18年のテスラが、巨象トヨタより優位に立った。

    しかるに、テスラの2019年の車の引き渡し台数は、約36万7,500台。

    トヨタは、1,074万台なんです。

    販売台数で3.4%に過ぎないテスラが、何故そんなに高く評価されているのだろう。

    世界は、未来を見つめ、EV革命(注)の旗手テスラを選んでいるのです。

    私が思うに、テスラは自動車というカテゴリーを超えて、コンピューターに車輪がついている、というイメージです。

    つまりテスラの特徴は、インターネットでクラウドにつながり、2ヵ月毎にソフトウェアがアップデートされることです。

    その都度、機能をアップするのです。

    例えば、シカゴを大寒波が襲った時、テスラは事前に気象予報を察知し、充電効率が落ちないシステムのアップデート情報を発信したのですよ…。

    このように、ソフトウェアのアップデートだけでなく、ハードウェア、半導体の交換も定期的に行っているんです。

    これらの点検・交換なども、ディーラーはありませんが、ウーバーのようなアプリを備えていて、利用者は近くのサービスパーソンを呼べばいいんです。

    燃費向上もブレーキソフトを変えることで、成果が出るんです。

    その上、私がもっと凄いなあと思うのは、自動車メーカーなら保有しているテストコースも、販売店もないローコスト経営なんです。

    テスラは、公道を走っている100万台に搭載されているカメラやセンサーのデータを取得し、自社のサーバーに保存するプラットフォームを持って、研究・改善を進めているのです。

    広報・宣伝についても、ハリウッドのセレブや、有名スポーツ選手などが競って買ってくれるので、何も要らないのです…少しおいし過ぎますが…

    これらの重大な変化は、「車は、移動のためのサービスの一つとなる時代」に入ってきているということです。

    この時代が、MaaS(マース)と呼ばれるものです。

    Mobility as a Serviceです。

    MaaSという言葉は、フィンランドにあるMssS Global社のサンポ・ヒータネンCEOが提唱しているものです。

    なぜ、フィンランドという小国が、こうしたサービスに先駆できたのか?
    自国に自動車メーカーがないため、車を買う度にお金が外国に出て行ってしまう。

    そこで、国がMaaS事業を支援し、世界初のMaaSのプラットフォームを作りました。

    月額499ユーロで、鉄道やバスといった公共交通機関が利用放題、その上、タクシーやレンタカー、シェアサイクルも基本無料。 アプリで交通手段を横断して利用も予約もできる。

    これは、音楽のプラットフォーム「Spotify」のようなものです。

    世界の人々が、この新時代の先陣争いの覇者の一人として、テスラを見ているのではないでしょうか。

    恐るべしテスラです。

    自国に闘うリソースのない国が、知恵で次世代型移動サービスを生み出したのです。

    私たち日本はどう戦い、私たちNPOはどうするべきか?

    こうした疑問に満ちた月日を過ごせることは楽しくチャレンジングなことです。

     

    (注)EV革命(Electric Vehicle)自動車業界100年に一度の革命で、電気自動車の時代を迎えていること。つまり、エンジンからモーターへの技術革新を意味する。

    理事長 井上健雄

  • 「食」に至りつくまでのムダ 【5月】

    あらゆる動物は、植物あるいは植物を食べる動物を食べ、生きている。

    この食物連鎖が成り立つもとは、植物だけが太陽光から炭水化物(糖類)を合成する能力を持っていることにある。

    この炭水化物は、あらゆる動物の基本エネルギーになっている。

    酸素の代替がない様に、植物エネルギーの代替もない。

    植物エネルギー形成のために、地球から14,960万㎞離れた星からの太陽光こそが生命の源となっている。

    太陽から地球に届くエネルギー量は、発生エネルギー量の10億分の1にも満たない。

    その上、光合成に使われているエネルギーは、その1%にも満たない。

     

    「食」に至りつくまでのムダ対策1

    植物が、太陽光から効率的に糖分を増やす能力を強化することが出来れば、増え続ける人口や気候変動にも対処能力が上がることになる。

    太陽光から植物が糖分を合成する能力を高める研究に活路を見いだすべきである。

    ビル・ゲイツが支援するイリノイ大学や、さらにその上をいくエセックス大学では、タバコの収穫量を27~47%増やすことに成功している。

    太陽光から14,960万㎞離れた太陽光の効率利用により、植物の糖分を増やすという光合成の効率upが、静かに進行しているのである。

     

    「食」に至りつくまでのムダ対策2

    私たち人間の住める居住可能地域の50%が農地であり、その中の80%が牧畜に使われている。

    人口増加が進む現在、居住可能面積の効率的使用は不可避である。

    人間の利用できる土地の1/4が、鶏200億羽、牛15億頭、羊10億頭を飼育する為に使われている。

    牛肉1kg生成には、15,000ℓの水が必要だが、小麦1kg生成には、1,500ℓの水で十分である。

    つまり、動物肉食から植物食への転換も重要である。

    動物を殺す残酷さだけでなく、野生動物にはパンデミックの菌を持つものもある。

    食用作物の30%を家畜が食べていることは、増大する人口への障害ともなっている。

    その上、食肉生産には、世界の水使用の70%が使われている。

    ひとつのソリューションとして、培養肉へ移行すれば、こうした不合理は随分正されることになろう。

    成牛を育てるのに、海洋に駆逐艦を浮かべられるほどの水が必要なのだ。

    食肉生産の為の温室効果ガスは、排出量の14.5%を占めているし、森林破壊の原因でもあり、大量の種の絶滅等を引き起こしている。

     

    「食」に至りつくまでのムダ対策3

    スマート・テクノロジー(数万個のカメラ、センサーでモニタリング、ビッグデータからのAI学習等)を駆使した農業へのチャレンジも実績を収めつつある。

    スマート農業は、露地栽培に比べ、一定面積への作付量が40倍、収穫量は350倍などの成果を出しており、水の使用量も1%以下に抑えることが可能だ。

    「食」と食卓の移動距離も短い都市における垂直工場の持つ可能性は高い。

     

    「食」に至りつくまでのムダ対策4

    この貴重な作物の輸送中や店頭に出された時、あるいはストック時などに、腐敗等の劣化を防ぐための、植物由来100%の材料を開発する人工のメカニズムも普及し始めている。

    この仕組みは、野菜や果物が生来的に持っている皮の研究・利用にある。

    皮は、「角皮素」と呼ばれるもので、一番外側の層で水を逃さない脂肪酸でできた蝋状のものである。

    この角皮素を植物由来で人工的に作り、植物の寿命を長く保てたり、おいしさの日数コントロールにも役立てられるようになってきている。

     

    こうした4つの対策も皆様の念頭に置いていただきたいと思います。

    これらのことに人々の理解が深まれば、新技術への配慮が高まり、新技術の実装化により、動物へのウェルフェアや、人々の健康に資するものになりそうです。

    ある意味「食品ロス削減」の根っこの課題でもあると思います。

    理事長 井上健雄

  • 地方自立分散型社会へのコンセプト 【4月】

    先月の挨拶でドバイの「砂の浪費」の凄さに驚かれていた方も多いと思う。

    世界の砂は、無尽蔵に見えて本当は枯渇しつつある資源であることが良く分かる。

    世界中の砂の総量は、1ゼタバイトといわれる。2の70乗である。

    しかし、もっと恐ろしいのは情報の量である。

    2020年私たちの情報総量は、44ゼタバイトと推定されている。

    世界中の砂総量の44倍もの情報があふれ流れているということである。

    こんな状況で人は、本当に必要な情報に巡り合うことができるのだろうか?

    そしてその情報も真実からニセ情報までが同じような顔をして流れている。人が勝つには英智しかない。

    イヤイヤ、棋士とAIとが勝負してもアルファ碁が勝っている。

    あの羽生さんが言っていたが、人が一生かかって勝負したり、学んだり、研究したりする棋譜の数は、10万回位が限界らしい。

    しかしアルファ碁なら3,000万回の棋譜を学び覚えており、もう生身の人間では勝負にならない領域に達しているという。

    モノには限界があるが、情報には限界がないのだろうか。量子コンピュータも稼働し始めているし・・・

    しかし、AIだっていい情報を手に入れない限りいい答えは出せない。

    未来を予測するとしても量的なものはある程度、大丈夫だろうけど、定性的なものはどうかなぁ・・・と思っても、AIも、絵を描くらしいし・・・

    しかし、たかが人間が創るものだし、いまの人間の能力では細胞の一つも作れないし、蚊の一つだって作れやしない。これが偉大なる自然というものである。

    人間が都市に住み脳で考える社会は、AIに負けるとしても、自然一杯の地方の生活、農業、林業、水産業の営みまで考えると、まだ自然が優位にある。

    自然との共生の中で人は育ち、「落花悲しからず、泥土となりて次代を育てる」のように人々に夢や希望の種を残すべきなのである。

    これが都市脳化社会から地方自立分散型社会へ転換のコンセプトである。

    理事長 井上健雄

  • 無限にあると思える砂が枯渇する! 【3月】

    地球上の人類の重さは4億トンと言われてる。

    一方で、サハラ砂漠から、毎年巻き上げられる砂塵は、20~30億トンと推定されてる。

    この砂塵は北は欧州大陸を超えて北欧へ、そして氷河を茶色にし西へは大西洋を越えて、北米、カリブ海や南米大陸まで降りそそぐ・・・人類の重さの5~8倍もの砂が・・・

    フロリダやカリブ海における朱色の夕日は、本当は砂塵を夕陽が赤く染めているに過ぎないのである。

    夕陽の描写は、あのカズオ・イシグロの『日の名残り』が美しい。読んで欲しい。

    おっと、おっと、私が言いたいのはこれではない。私が心配しているのは世界中の砂資源がなくなるのではないかと不安に思っていることである。サハラの砂塵だけで20~30億トンもあるのに。

    砂の市場規模は、7兆円をこえ、採掘される地下資源の85%を占める。

    毎年世界で470億~590億トンの砂が採掘されており、70%は建設用コンクリートの骨材として消費されている。

    500億トンの砂で、高さ5m巾1mの壁をつくると地球を125周も巻くことになるし、体積にすれば、東京ドーム2万杯となるらしい。

    しかもこの量は、世界中の川が、1年間に運ぶ土砂の2倍を超えているらしい。

    自然が提供できる量は、半分しかない。つまり河岸、砂丘、砂浜の堆積層から殆どが違法採掘されている。このことが地球環境を壊し始めている。

    発展の速度で世界の1~2を争い砂を大量消費しているのは、東の上海と西のドバイである。

    例えば、ドバイの自然というものは、街を取り巻く砂漠と星空しかないと言われる。

    このドバイには世界一がアホ(?)ほどある。

    幅275m、高さ150mまで噴き上がる噴水。『ドバイ・モール・ファウンテン』である。

    総面積約111.5万㎡、東京ドーム23個分のショッピングセンター『ドバイ・モール』がある。

    年間来店客数は8000万人超えている。

    圧巻は『ブルジェ・ハリファ・タワー』。

    160階建て、828mの高さで東京のスカイツリーの1.3倍、360°異次元展望・・・

    このブルジェ・ハリファの建設の為に、約76万トンのコンクリート、39000トンの鋼鉄、102000㎡のガラス、基礎杭として11万トンのコンクリートが投入されている。

    その上、このペルシャ湾には、宇宙からも見えるという『パーム・ジュメイラ』をはじめ、人口島があと2つもある。一つの敷地は5.7k㎡サッカー場800面相当となる。

    砂は、オーストラリアから輸入されている。

    またゴルフコースには、アメリカのノースカロライナ州産の白い砂を輸入。砂漠の砂ではさらさらで、ゴールボールが沈んでしまいバンカーとならない。

    また、競馬場のダートの砂はドイツ産であり地元のものより吸収性が高く馬へのダメージも少ない。

    こうしたことで、ドバイの1人あたりの水消費量は年間740㎥、世界平均の1.5倍。

    その水も海水の淡水化の為に、総電気量の30%が使われている。

    こうした発展は、地球上に無限にあると思える砂まで枯渇の危機に陥らせているのである。あぁ恐ろしい・・・

    理事長 井上健雄

  • 一人ひとりの力【2月】

    昔は、顔の見える触れあえる人間関係が主であった。

    今は、Zoomなどにより映像や声で会いもするが、実際にHugなどできない。

    これはグローバル現象だけでない。ICTの浸透により隣席からメイルが来たりする。

    なにかもどかしいようであるが、コロナ渦も含め、これが今後の新常態である。

    そうするとリアルの一人ひとりが弱く小さくなったように思ったりもするが、決してそうではない。

    例えば、アメリカの前大統領トランプの軽挙妄動が民衆をして米議事堂に侵入、暴動を起こさせている。

    この暴動で4人が死亡52人が逮捕されたとあるが、この暴徒の殆どが白人であったことでこの数字だ。これが黒人なら警官は一斉射撃を辞さなかったであろう。数十数百人の死傷者を出すことになっただろう。

    これは一つの嘘だけでなく、限りなく吐き続けられた嘘が、こうした結果を生み出したのである。

    つまり真実がフェイクと退けられ、フェイクがオルタナファクトとなっている。恐ろしいことである。

    トランプは不動産業者時代、黒人にアパートを貸さない、経営するカジノで黒人従業者の冷遇、14~16才の黒人・ラティーノに死刑を求めた人種差別主義者であった。

    こうした一人が大統領であった。それがアメリカを狂わせたのである。

    今回バイデン大統領が誕生したが、こうした亀裂にどう向きあい修復できるのかが、この政権の課題である。こうした修復活動が始まる前に、ミネアポリスでジョージ・フロイドさんが白人警官に殺され、BLM(ブラック・ライブス・マター)運動が再び湧き起こったのである。20年5月末である。

    ほんの少数の人から始まったこれは、やはり革命である。

    BLM運動に呼応して、テニスプレイヤーである一人の大坂なおみさんが、全米オープン決勝までの7戦の為に7つの異なるマスクを用意して、人種差別と警察暴力への抗議をした。勝ち続けるという大きなプレッシャーまで背負い戦ったのである。

    本当に!本当に!!勇気ある行動である。

    こうした活動もあって、バイデン大統領が登場する礎にもなったのであろう。

    現代は、マイクロムーブメントの重なりが、世の中を大きく変えていく大きな力となっている。

    たった一人で学校ストライキを始めてたグレタ・トゥンベリは、気候危機ジャスティスの革命者である。

    BLM以外でも、地産地済、有機栽培、メイドイン・USA、サード・ウェーブ・コーヒーなどは、小さく、足元から、より丁寧な方向に、消費者の志向を変えていく活動である。これも小さな革命である。

    この小さな革命のスタートは一人ひとりの個人の思いにある。

    小さな革命ということは、それはそれで独立的な生き方(インディペンデント・ライフ)を実現させているのである。

    ちょっと気取った表現をすると一人ひとりが「Wear Your Values」自分の価値と思うものを身につけだしたのである。

    このように考察してくると、一人ひとりが身につけ始めた価値観が、社会を染め、サード・ウェーブ・コーヒーを認め、米大統領選の行方まで決めだしたと言えるのでないだろうか。

    革命は、自分が参加しようが参加しまいが起きるとしても、やはり参加して革命を起こす方が面白い。起こしませんか!革命を!!

    Wear Your Values!!!

    理事長 井上健雄

  • リモートを楽しむ  【12月】

    今、会社の働き方や医療の不文律を変えたのは、社長でもなく、政府でもなく、ウィルスです。

    働き方として、リモートワーク、Zoom会議、ワーケーションが広がり、また、医療では、リモート診断、AI薬剤、モニタリング技術(診療アプリ)など稼働し始めています。

    こうした変化対応は、決して一時的なものでなく、これが新しいノーマルとなり、世の中を変えていきます。

    新常態となったのです。

    新常態について、チャールズ・ダーウィンの「自然淘汰説」※が最も近い考え方であります。

    生き残るモノは、強いからではなく、環境によりよく適応したものが生存し、繁殖するというものです。

    つまり、環境が変われば、チームが変わるということです。

    今回、ウィルスが社会のあり方というゲームを変えたのです。

    この文を考えている時、新型コロナウィルスワクチンを開発中の米製薬大手ファイザーと独ビオンテックが、90%超に効果があるというワクチンを創ったとの報道があった。

    めでたい。

    うまく行くことを願っています。

    春以降に日本でも接種が可能になるといいんですが…

    しかし本当の安心は、なかなか難しいと思います。

    コロナウィルスのRNAのRは変異しやすいので、どんどん新種が出来やすく、新種のRNAウィルスに対応するには、新しいワクチンが必要となるからです。

    また、ワクチン競争が始まるということになります。

    そうなると私たちは、既存の治療に耐える体力を養成しておくことが、コロナ対応備えの要諦です。

    次に大事なことは、どう新常態に適応するかです。

    私は、孔子さんの取組みを推奨したい。

    これを知る者はこれを好むものに如かず。

    これを好む者は、これを楽しむ者に如かず。

     コロナの制約をうまく使って、新しい楽しみの創造へと向かうことだと思います。

    通勤が要らない(自宅で、あるいは地方で、また都心のホテルでもと働く場の選択肢が増える)ことを喜びとしましょう。勿論、職種等によるのですが・・・

    通信環境とパソコンがあれば、日本中、いや世界中どこででも仕事ができる時代です。

    国立公園の中で、仕事もバケーションも楽しむという、ワーケーションもできる。

    身体的には、体を全機させ、免疫力を高める食事、そして年齢に応じてサプリメントの活用もいいでしょう。

    こうした楽しみを十分に活かして、新しい組み立てにより、仕事を創造したり、身体を強くしたり、仙人になったりして楽しみましょう。

    楽しめばすべてが好転しますよ!

    ※ハーバート・スペンサーの適者生存(Survival of the fittest)と、自然淘汰は違います。

    スペンサーの示したのは、社会は低次元から高次へと進歩していくというものです。

    ダーウィンは、環境に適しているか否かを問うている。

    理事長 井上健雄

  • 気候危機にそれぞれの対策を 【11月】

    海、2018年IPCCは、1.5度の温度上昇でサンゴでは70%が消滅する。2.0度となると99%となり、ほぼ絶滅である。たった0.5度で壊滅です。いろいろな種においてこうなるということです。

    ランセット委員会によると2015年大気も汚染が広がり、世界で900万人の死者が出ている。

    その中でもインドでは、250万人の死者となっている。

    インド、ニューデリーは、WHO基準の45倍と最悪の状態である。

    それらこれらで、2015年のパリ協定は2030年までにCO2を25%(2010年比)減らす。2050年までに45%減らすべきと提案した。

    また、この温度上昇の被害は、CO2を大量に出した富裕層ではなく、つつましい生活をしている貧困層に深刻な打撃を与えるという逆転現象となっている。

    今までの統計上分かっていることを整理すると次のようになる。

    「所得が。10%増えるとCO2排出は、9%増えるという事実がある。」

    つまり先進国が、CO2を出して発展途上国がそのダメージを受けている。

    一方で、中国が出しているCO2の多くは、消費している先進国にも責任がある。

    (勿論、中国の責任を除外するものではない。2010年度世界のCO2排出量323億tのうち、90.4億tで世界一の排出量である。)

    この炭素排出量を消費国に割り当てると、

    北米 22.5tCO2/一人あたり

    西欧 13.1tCO2/一人あたり

    中国 6tCO2/一人あたり

    南アジア 2.2tCO2/一人あたりとなり、消費勘定も先進国は考えるべきである。

    (日本単独 9.4tCO2一人あたり)(注)当該数値は、日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット2019年よるもので、中国生産の消費地勘定は入っていない。

    これを要約すると世界で最も排出量の多い上位10%は、世界のCO2排出量の50%を占めていることになる。

    一方で最も排出量の少ない50%は、世界CO2排出量のおよそ10%を占めるに過ぎないとしている。※

    ※Good Economies for Hard Times by Abhijit V, Banerjee & Ester Duflo

    こうした気候変動は、地球上で公平に起きているわけではない。

    従って対応すべき行動は一様ではない。

    こうした温暖化の対策として、私たちはCO2の排出を下げるそれぞれの工夫こそが大事である。

    正しい認識例の為にいくつかの紹介をした。

    大事なことは、その認識のもとに、私たちは正しい行動を心がけるべきである。

    例えば、日本の環境省の奨めるプランを個人レベルにおいて実行していくことだと私は考える。

    環境省は3つの社会づくりを提言している。

    1.脱炭素社会 再生エネルギー、原子力等

    2.循環型社会 消費→再生→循環→消費

    3.分散型社会 都市と地域の交流 リモートワーク等

    この中でも、私は、3つ目の都市集中型システムの是正として、地域分散型システムの形成を考えている。

    というのも、自然は分散されない賭けを嫌うからである。

    目指すは、地域創生健康事業を各プレイヤーと連携して創り上げたいと考える。

    これの母体として、E-Beingの多様な人々の集まるサステナウェブを展開する。

    皆さまも参画されませんか?

     

    理事長 井上健雄

  • 秋風をうけて 【10月】

    おっ、もう10月のそれも10日も過ぎているぞ。

    いや~この夏は暑かったですね。

    でも10月の風は秋です。

    たまには、風流にいこうではありませんか。

     

    菊の香や 奈良には古き 仏たち  芭蕉

     

    菊の開花期は、春菊、夏菊、秋菊、寒菊とありますが、私は秋菊。

    そして小菊が好きです。

    菊と言えば、9月9日の重陽の節句も好きです。

    しかし、日本の温暖化のあまり、9月は夏です。

    寒い間にやって来る立春は、春に思いを馳せて大好きですが、冷涼な秋の行事を残暑に楽しむのは野暮です。

    重三(3月3日)、重五(5月5日)、重七(7月7日)、重九と日本には、四つの節句があり嬉しいです。

    最初の三つが女・子供の祭りであり、重陽の節句は熟年者のお祭りです。

    平安時代には、9月9日(旧暦)の前夜から、菊の花に綿をかぶせておいて、翌朝、菊の香の露を吸い込んだ綿で身体を拭くと若返ると言われていました。

    英照皇太后は、孝明天皇から下された菊の着せ綿を終生大事にされていました。

    身を拭う時には、きっと涙も拭われたことでしょう。

    もう少しすれば、銀杏の黄葉を称えようではありませんか。

    私は、小学校のある時期、大徳寺(京都)の前を自転車で走り抜けていた頃があります。

     

    北は黄に 銀杏とみゆる 大徳寺  召波

     

    こうした歌は当時知りませんでしたが、秋の深まりに黄金色の焔に気持ちを高ぶらせたものです。

    ああ懐かしいです・・・

     

    理事長 井上健雄

  • スキルそして異次元ジャンプ【7月】

    前月は現代社会で多く求められている話す力(コミュニケーションスキル)について述べた。

    話す力(コミュニケーション能力)はいろいろな方面から重要視されている。

    経団連の新卒採用にあたって特に重視するポイントとして、コミュニケーション能力が、10年以上連続してトップにある。

    嘗ての学校内において、成績トップや運動№1が尊敬を集めていた。現在はコミュニケーション能力の高い人に人気がある。

    スキルというものは磨けば磨くほど洗練される。

    誰もがほぼ一線でスタートできるのがスキルである。ボクシングなら拳にグローブをつけ、相手の上半身と側面のみを攻撃するものであり、ジャブ、ストレート、フック、アッパーの打ち方、避け方、そして守る時のステップ、フェイント、クリンチなどのディフェンス力等々がある。

    野球も、投手ならストレート、フォーク、スプリット等々コントロール力、打者なら内角、外角、高低への対処力等々である。

    一世を風靡したスキルの古典的漫画として「あしたのジョー」や「巨人の星」がある。

    これらの主人公は、スキルを磨いた人である。ボクシングの矢吹 丈、野球の星 飛雄馬だ。

    一方で彼らのライバルの力石 徹は天才+@であったし、花形 満も天才でありセンスに恵まれ、IQや家格まで秀れていた。

    これらの漫画は、スキルの矢吹 丈、星 飛雄馬と天才の力石 徹、花形 満との闘いの物語である。

    スキルの努力家が天才に勝つという、だれもが納得するストーリーである。

    うさぎと亀の競争と同じで、うさぎが勝てば物語にならない。

    ここでスキルの重要性を述べてきたが、コロナウィルスを機に社会は大きく変わろうとしている。

    今まで同質競争している時であれば、スキルの優れたところが勝ちを納めた。

    しかし、現代社会のように変革期にあるときは、このスキルだけでは闘えない領域が、圧倒的に増えてきている。

    スキルだけでは、越せない新しい世界がある。

    それに立ち向かうには、独創的な創造力・新技術等が求められる。

    私たちの生きている世界は「破壊の時代」であり、今の体勢を壊し新しいものを構築するカンパニー・トランスフォーメーション(CX)が求められているのである。

    危険も一杯ですが、チャンスの時代でもある。

    自己を全機させて挑戦し、協働し、夢を実現させようではありませんか!

    理事長 井上健雄

  • コミュニケーション能力【6月】

    最近、コロナ対策として、対面を避けリモートワークやWEBミーティングなどが増えている。

    昔はやった「飲みニケーション」は何処へ。

    会って、一緒に歌えばクラスターなどとなんともやりにくい。

    デジタルコミュニケーションがふえる中でのコミュニケーションは、一層の科学的な取り組みが必要だ。

    今のコロナの時代のキーワードとしてDXが注目されている。

    DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、企業を取り巻く市場環境のデジタル化に対応するため、企業の行う経済活動やそれに伴うビジネスモデル、組織、文化、制度といった企業そのものをデジタル化により変革していく取り組みである。

    つまり、ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるという概念である。

    しかし、対面とリモートワークによる情報の総量は前者を4とすると後者は1の情報量しかないとされている。

    こうした状況の中でリモートコミュニケーションの成果を高めるために、コミュニケーションを科学的に組み立てる必要がある。

    今や、デジタルにあってもZOOMやTeamsなど声や顔を目の前に話し合える。

    この時、大切なことは笑顔である。

    「笑う門に福来る」

    人は赤ちゃんさえ、笑いかけられれば笑おうとする。

    これは、イタリアのパルマ大学のジャコーモ・リッツォラッティ氏のグループが1996年に発見したミラーニューロンと言われるものである。

    哲学者アラン(仏)も、「人々は幸福だから笑うわけではない。笑うから幸福なのだ。」としている。

    こうした笑顔の重要さを知ってコミュニケーションの要諦を始めよう。

    まず、コミュニケーションの望む心構えのルール(Ⅰ)について。

    (Ⅰ)-① 顔が見えるときは歯を出して笑って見せる。

    ・声だけの時も、声に笑顔にのせる。

    ・字だけの時はそれぞれが一工夫必要だ。

    ※人格、気品、親しさなどを出す…

    (Ⅰ)-② プレゼンや面接の時には背筋を伸ばす。

    これだけで、テストステロンという男性ホルモンが増加し、決断力、積極性が出て、採択率や共感力を高めることになる。

    これは、カルガリー大学のゴティの研究(1987年)で証明されている。

    つまり、笑って、背筋を伸ばせば、コミュニケーション力がぐ~んとアップするということだ。

    次なる、コミュニケーションルールとして、協調の約束事(Ⅱ)を提示する。

    (Ⅱ)-① 相手の問いかけに応じて適切な返辞を返す。

    (Ⅱ)-② ファクト(事実)を話すファクトの法則です。憶測や嘘は駄目。

    (注)ファクトの土台のもとにオピニオンがあるので逆ではない。

    (Ⅱ)-③ 相手の話題に関連する話題で展開する。

    (Ⅱ)-④ 順序よくあいまいさを避けて生産的なものとする。

    これら①~④の展開の中で「3アイ」もうまく絡めてください。

    (イ)相づち

    (ロ)合いの手

    (ハ)愛情(相手への)

    これはポール・グライスという言語学者が1975年に発表している協調の原理といわれるものだ。

    このコミュニケーションのキャッチボールから、ビジネスのソリューション、社会ソリューションが生まれるのを期待したい。

  • コロナウィルスとの戦い(Ⅲ)~生命の危機が語るもの~【5月】

    今、世界ではCOVID-19の嵐が吹き荒れている。

    令和2年5月2日ジョンズホプキンス大学の数値によると、世界の感染者数は、3,344,435人、死者238,788人にもなり、まだ増加の足は止まらない。

    この感染者数は、世界人口で除すると、0.03%である。

    世界的パンデミックとして、あらゆる人々がその対応に追われるのである。

     

    少し観点を変えて、環境省レッドリスト2020掲載種数表によると

    A B C D E F G H
    分類群 評価対象種数 絶滅 野生絶滅 絶滅危惧種 準絶滅危惧  情報不足 B~F計 G/A×100
    哺乳類 160 7 0 34 17 5 63 39%
    鳥類 700 15 0 98 22 17 152 22%
    爬虫類 100 0 0 37 17 3 57 57%
    ~~~
    維管束植物 7,000 28 11 1,790 297 37 2,163 31%
    人間 688,960万人 コロナ死亡 24万人 0.0035%

     

    ※維管束を持つ植物はシダ植物(広義)、裸子植物及び被子植物であり、これらをまとめて維管束植物という。https://ja.wikipedia.org/wiki/維管束

     

    哺乳類さんたちは、39%もの種が絶滅しそうだったりしているということです。

    爬虫類さんたちは、57%もの種がなくなりかけています。

    維管束植物さんたちだって31%もの種がなくなりかけています。

    人間が、声なき動物や植物さんたちの声を聴かずして、自分たちだけの不幸をあげつらうばかりでは動物さんたち、植物さんたち、またここで言及しなかった菌類さんたちだって「俺たち生きてるぜ」と主張するに違いない。

    ラテン語のBacterium(複数形:Bacteria)は、日本語で細菌である。

    彼らの絶滅しそうな率は、5.3%である。有用菌もあり、いろいろおつきあいが難しい。

    これらの人間以外の他生物さんたちの絶滅率22~57%に対し、人間の死亡率は0.0035%。

    他生物さんたちは、人間の1万倍以上もの絶滅率に瀕しているのである。

    今回は、SARS-COV2(COVID-19)さんがパンデミックの原因者である。

    これも、動・植物さんたちの声なき声を代表して、COVID-19として人類に生物代表としての共存を主張しているのかもしれない。

    人類が「人新世」の時代を驕ることなく、動・植物さんたちと、おっと菌類さんたちとも一緒になって住み良い地球を築くことが求められている。

    理事長 井上健雄

  • コロナウィルスとの戦い(Ⅱ) ~局地戦から地球環境そしてアニマルウェルフェアについて~【4月】

    前回の挨拶で「ウィルスとの戦い」において、人類とウィルスの生命史の長さからの強さ・優位性について、また、AI情報の取り入れ方について考察した。

    この回では、もう少し具体的な事実からコロナウィルスに迫ってみたい。

    近年“なぜインフルエンザウィルスがこれほどまでに猛威を振るい始めたのか”

    人類は、他の生命体よりほんの短期間で人口を爆発的に増加させ、ここたった100年位で地球の生態系や気候に大きな影響をもたらしている。

    恐竜時代を白亜紀といったように、現在はアントロポセン「人新世(じんしんせい)」と呼ばれるらしい。

    これは、ノーベル化学賞受賞のドイツ人化学者パウル・クレッツェン氏の考案である。

    人新世は、人類にとってあまり名誉ある行動の結果ではなく、資本主義や自由主義や利己主義を謳歌した結果であるように思える。

    人新世とは、不穏な未来を予感させる。

    ほんの一例でも、世界の湿地の50%が失われた。カリフォルニア州では90%、日本でも50%が消失している。

    田畑は休耕期をなくし通年耕作化し、カモなどの水禽類の越冬地は狭く過密になっている。

    なのに、人は増える一方で都市の人口密度は高まるばかり。

    そして、食糧培養の圧力が高まり、動・植物に多大な迷惑をかけ続けているのが現状である。

    例えば、ブラジル東南部のマンディケイラ農場では800万羽の鶏を飼育し、毎日540万個の卵を生産。

    自然光や外気がほとんど入らない閉鎖式鶏舎で身動きできないほどに多数の鶏をケージに入れている。

    餌は、遺伝子組み換えトウモロコシを与えられ、無理やり太らされている。

    40~60日間飼われると、ベルトコンベアーで自動的に食肉処理されている。

    かつては80日間は飼われていたものが、成長促進剤の投与で20日間も命を縮められている。

    豚にしても、世界で8億頭ほどがこうした仕打ちにあっている。

    つまり、嘗て庭先で飼われていた「庭鶏」が「工場トリ」に変わっている。

    豚さんも牛さんも、みな同じような扱いになっている。

    鳥インフルエンザや豚コレラは鶏さん、豚さんたちの今の境遇から逃げ出す手段じゃないかとまで思ってしまう。

    私は、動物さんたちの権利、活き活き生きる権利をもっと増やしていくことが必要だと思う。

    これがアニマルライト(動物の権利)、アニマルウェルフェア(動物の福祉)と呼ばれるものである。

    やはり、地球は、生物の多様性を欲している。

    今回、人間がオオコウモリまで食べたことが、新型コロナウィルス感染の広がりにつながったのではないかと言われている。

    今のように、地球上において人間様だけが偉ぶって、温暖化を招き、アニマルライトを侵している。

    この事態は、自然からの竹箆(しっぺ)返しと考えるべきでないだろうか。

    1918年 1957年 1968年 1977年 2020年
    スペイン風邪 アジア風邪 香港風邪 ソ連風邪 COVID-19
    H1N1型 H2N2型 H3N2型 H1N1型
    スペイン風邪と同じ

    こう考えると、人口の都市集中はいつでもパンデミックの危険を内包している。

    大局から考えると、今回の新型コロナウィルス対策は「地球温暖化をいかに止め、人間が都市集中せず、生物多様性を尊重し、動・植物をいかに自然の中で育てていくか」ということが、遅いように見えるかもしれないがこの疾病の小康後、本格的に取り組むべき着実な対策と言えるだろう。

    これらこそが、人新世の不穏な未来を回避する本道である。

    理事長 井上健雄

     

  • コロナウィルスとの戦い(Ⅰ)~悠久の流れの中で【3月】

    人類は、COVID-19との戦いに勝てるだろうか?

    白衣と手袋をつけたヒーローたち、そしてエッセンシャルワーカーの皆様に心からの感謝を送ります。

    マスコミでは、医学界の重鎮、大学教授、政治リーダーなどのメッセージや、スポーツ界等々のカリスマたちの音楽やコロナ対策への自己宣言、お家でできる体操など、いろいろな動きが出ている。

    やはり、日本は捨てたもんじゃないなぁと肝銘の日々を過ごしている。

    冒頭に投げかけた問いに触れよう。

    ほんの少し前の「20万年前」にアフリカに誕生した人類と、微生物(※1)は「40億年」生き抜いてきた強者との勝負である。

    この微生物の中でもインフルエンザウィルスは、HIV(※2)と同じくRNA(※3)ウィルスに属し、哺乳類が100万年かかる進化を1年でやってのけるらしい。

    つまり、絶えず変種を作り出しているので、ワクチンを作ってもうまく完成したころには姿を変えて効かなくなることもある。

    今回のCOVID-19は途轍もない強敵である。

    論点を少し変えて、この強敵が経済面に与えるインパクトはどんなレベルにあるのだろうか。

    米国の著名投資レイ・ダリオ氏が語っている。(資産規模17兆円)

    「私はリーマンショックの際にもプラスで乗り切った。リーマン後からAIの専門家を招き、人工知能を駆使して好成績を収めてきた。しかし、このコロナショックでは、年初来21%ダウンとなってしまった。当方のAIによると、このコロナショックは統計学的に1,600億年程度に一度の発生確率だ・・・」

    地球46億年の歴史の中で、こんな数値がでるのもちょっと馬鹿げていますよね。

    私には、経済系に特化したAIの限界のように思います。

    同じAIでも、米国の医療系企業メタバイオのベン・オッペンハイム氏は、同社のAIがパンデミックの兆候を2020年1月上旬に予見したとしています。

    WHOがパンデミックを発令したのは、2カ月遅れの3月11日です。

    オッペンハイム氏は、この情報を関係する複数の国・企業・人々に伝え、警告を出しています。

    先の、レイ・ダリオ氏は、AIに耳を傾け大失敗し、オッペンハイム氏の方は、AIに耳を貸す人がなく大惨事が広がってしまったことを後悔している。

    結局、AIというよりも情報の集め方・読み方・分析にもっと叡智であったり、人間力が必要であり、その結果として世界中の叡智を集めた挑戦と行動が求められている。

     

     

    ※の注について、読んでもらわなくても話は通じるはずです。飛ばしてもらって結構です。

    ※1 微生物は、ウィルス10nm~100nm<細菌1μm<真菌・原虫などを指す。

    例えば、インフルエンザウィルスは直径0.1μm

    n(ナノ)10憶分の1を表す単位

    μ(マイクロ)100万分の1を表す単位

    ※2 HIV(Human Immunodeficiency Virus)

    ※3 RNA(ribonucleic acid)リボ核酸 アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラ

    シル(U)の4種で構成されている。この4番目のウラシルが変異の元となっているらしい。

    参考:DNA(deoxyribonucleic acid)デオキシリボ核酸 アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チシン(T) の4種で構成されている。

    理事長 井上健雄

  • 「日本の農業」道普請【2月】

    春風に 夢いだきつつ 道普請  井美韻宮

    日本の暦は、万物の変化を本当にうまくとらえている。

    立春(2/4) 雨水(2/19) 啓蟄(3/5) 彼岸(3/17) 春分(3/20)

    こうした変化が、日本の奥ゆかしさ、複雑性、緻密性などを生みだしている。

    日本人はこのように感情的あるいは抒情的なセンスに秀れている。

    一方で、知の勝った方向には、疎いようである。

    ここで「知」について、農業の収穫量の比較から考えてみよう。

    コメの1haあたり収量の変化(A)   日本とイスラエルの1ha当たりの収量の経年変化(B)

    kome日本とイスラエルの1ha当たりの収量の経年変化つまりこの(A)表が語ることは日本では1960年から1970年にかけて米の収量が4.88tから6tまで伸びているが、1970年以降は6tから伸びていない。これは減反政策の結果である。

     

    人智に叛いた減反政策が、日本の農業を工夫なしにしたのではないだろうか。

    この傾向はほかの農作物の収量にも影響を及ぼしている。

     

    (B)表のピーマン、ニンジン、トウモロコシ…等の単位当たり収量の日本とイスラエルの比較を見て欲しい。殆どの品目について1960年代は、拮抗していたものが近年は大きく差をつけられている。そしてイスラエルの収量のギザギザは、収量が安定してないという見方もあるが、私は毎年毎年のチャレンジの結果だと思う。一方、日本の横ばいの線は、伝統を守るだけのチャレンジ性に欠けるのでないか。

    このようなことは、日本だけを見ていては分からない。

    日本で「農業とはお年寄り」というイメージ、そして伝統的、保守的な傾向が強すぎるのではないだろうか。

    例えば、イスラエルでは、農業は仕事、そして稼ぐことの出来るものだと考えられている。

    日本で、農業を「稼ぐ」視点で取り組むべきだと主張すると、「農業は、多面的機能」を持っていると応える。

    「土砂崩れを防ぐ」「景観の保全」「洪水を防ぐ」「生物多様性の住処」「子供たちの体験学習の場」…等々の重要な価値への矜持持ちを出すことになる。

    これも大変結構なことで誇りを抱くべき仕事ではあるけれど、一方で国際化の中で、農作物は、売って買われて、儲かることなしに持続性はない。

    その上、今は、3E時代でもあり、環境(entertainment)エネルギー(energy)、経済(economy)を同軸にwin-winの構造を築くことが求められている。

    とはいえその解決策は、組織化や株式会社化ではない。

    あのアメリカだって200万以上の農業経営体があっても、97%は家族経営である。目をヨーロッパに転じても96%は家族経営なのである。

    私は、日本の農業の問題点の一つは、農産物の栽培方法にあると思っている。

    さあ、春風に乗って農の道普請を始めようでないか。

    理事長 井上健雄

  • 志と知識【12月】

    ある国のある町で、資源ごみ回収のごみ箱が新装された。500個も。その費用は3億円、つまり一個、60万円※(注)もするらしい。ちょっと考えれば、『こんなとこに金をかけるなよ』と言いたくなる。しかしこの取り組みで従来より、年間1億5700万円の費用消減に貢献したと言う。

    『えぇーどうして?』

    このごみ箱には、センサーがあり、太陽光パネルで発電し無線通信ができるようだ。

    つまり、一杯になったごみ箱だけを回収する運用が、できるようになり、週7回以上も回収車を走らせていたものが週2回に削減できたそうだ。

    単なるごみ箱から、一杯になったらセンサーが「一杯だよ!」と中央指令室知らせる「ウェブゴミ箱」になったからコスト削減を実現できたのである。

    その削減額は1億5700万円となり、2年もすれば投資も回収し、10年も稼動できれば13億円以上のお釣りでてくるのである。これはアメリカ、フィラデルフィア市の成功例である。これにウェブカメラを設置すれば不法投棄も取り締まれるし、地域防犯にも役立つ。

    なんか結構づくめでないか。資源ごみを集める前にお金が浮いてくるなんて...

    これがIoT(Internet of Things)なんです。

    とすれば、マンホールの蓋にセンサーアンテナをつけるだけで、豪雨時に都市浸水を未然に防ぐことも可能になるだろう。

    日本でもいろいろな取り組みがある。農業の世界でIoT導入が増えてきて、新しいソリューションを提供し始めている。

    例えば、田んぼの水位と水温のチェックは毎日の重要な仕事である。

    また、田んぼや畑の栽培作業スケジュールも順序よくやっていく為のスケジュール管理は、外国人の人も増えてきているので必要に迫られている。これらのためにGPS機能やフィールドサーバーが出てきているし、害虫に対してLAMP法(遺伝子検査法)などの提供も出てきている。

    5Gの世界に入った今、これらの先端の機器・技術・知識を持って望まなければ危うい時代に入ってきている。

    こうした取り組みのある中において、昔ながらのお茶づくりもある。東頭(とうべっとう)という茶園である。昔ながらの方法で標高800mの斜面でお茶づくりをして、100g一万円のお茶を作り、それが飛ぶように売れている現実もある。

    だから本当に必要なのは、5GやIoTと言うより情報感度であり、自分のやっていることの一層の完成をめざす志であろうと思う。

    ※太陽光パネルやセンサーそして発信装置がついたものが60万円になる訳ではない。中央コンピューターで情報集積や最適ロジを決める等の総合システム投資を、ゴミ箱の数で割ったのが60万円になったということである。

     

    理事長 井上健雄

  • サードプレイスを考える【11月】

    ある就活中の学生が、産休育休制度や福利厚生制度を重要視して会社選びをしている。

    30才までに結婚して子どもを産みたいなら、それでいいでしょう。しかし、いま恋人もいないし婚約者もいないとしたら、結婚しないかもしれないし、結婚しても子どもをつくらないこともあるだろう。とすれば、こうした制度の充実した会社より、バリバリ働けて所得が高い会社の方が、良いのかもしれません。自分も会社も社会もいろんな変数のぶつかり合いの中で様々な変化や進化をしています。こうした時、人は時々にどう考え、どう行動したらいいのでしょう。

    その上、かつては「一生ものだった雇用契約」が、近年では「追って指示があるまで」という短期契約等の「束の間の契約」になってきている。

    これは過剰流動性と言われる現象で、社会を不安定にし、様々な社会問題を起こし始めています。適度の流動性は人々に自由感を与えるが、この状態はそうではない。先の学生が、意思決定するには自分の望みと社会の変化の中で、どういう変数を組み合わせて方程式をつくりあげていくかの問題です。一筋縄ではいかないのが現代です。

    就活の学生に較べ、無事に会社を務め終えた高齢者は幸せです。「つまり追って指示があるまで」が定年まで続いたからです。しかしこうした人も収入が、殆ど入らない時期がやってきます。定年です。

    厄介なことに人生100年、あと30年生きるための必要な貯金や不動産など資産を持っていればOKですが、そうでないのなら、なかなか困難な状況に陥ることになるかもしれません。

    こうした状況を『リキッド・モダニティ』の著者ジークムント・バウマンは、現代社会を定数項のない方程式のようだと言っています。例えばX×Y=Z という簡単な方程式でさえ、どれか二つの値を定めないと解は出ません。

    にもかかわらず、この「X、Y、Zの全てが定まっていないのが現代社会」だと言っているのです。

    現代は、若者であれ、高齢者であれ、こうした過剰流動性の中で生き抜いていかねばなりません。その為に家庭や職場というファーストプレイスやセカンドプレイスとは別にサードプレイスを築きあげることをお奨めします。

    サードプレイスとは、一つの集団や生活基盤に頼らずにコミュニティにおいて自宅や職場とは別に、リスクを分散して生きて行ける第三の居場所のことです。このサードプレイスをつくるかそれらに参加することにより、過剰流動性に対処することになります。これからの過剰流動性時代における合理的な意思決定の一つになるのかなと思います。

    そのサードプレイスへの参加条件は、自発的な協働ができる自分のできることが貢献となる関係性を築く、そして何よりも相手、仲間をリスペクトできることで成立します。

    今、社会を支えている多くの条件や社会の価値観が、大きく変化しています。こうした時、あまり「決め込まないで」で「いまを選んでいる」人にならなくてはなりません。

    例えば、インフルエンサーやユーチューバーになるという「一人イノベーションの実践者」になるとか、いま、自分の興味あることを、学び続けそのパフォーマンスを伝えることで仕事を創出するとかです。

    日暮れて道遠しかも知れませんが、遅くはありません。サードプレイスづくり今から始めてください。サードプレイスは、単なる場所や人々の繋がりだけではありません。自己陶治と協働の精神で物事に取り組む人に自然と形成されてくるものです。

    まず隗より始めよ!

    理事長 井上健雄

  • インバウンド観光のかんどころ【10月】

     

    観光先進国のベルギーでは、インバウンド客の増加策(マーケティング)に金を使うより、きてくれた人にどう満足して帰って貰うかの、観光マネジメントに重点を置き始めている。

     

    今、日本の社会を見渡してみると、殆どが販売促進に力を入れている「売上」中心主義である。

    そのため車のアクセスを良くしたり、バカ派手な看板、安さや利便性ばかりを追求している。

    結果、街の景色や良さが、どんどん崩れていっている。今、立ち止まってやるべきことは、その地の文化や歴史を守りそれをしっかり伝えていく、伝統食を味わって貰う、語り部が、生の情報を発信する等...が必要なんです。

    つまり販促に力を入れる事と観光マネジメントは、同じようで同じではないんです。

    例えば大学受験について考えよう。大学合格は、高校までに学んだことをしっかり記憶して簡単なことから答えていく時間マネジメントが大事なんです。

    このルールに最適化した人が合格して大学生になるのです。しかし、これでは大学生を最初から未来社会の一人として負け戦さに参加させるようなものとなる。高校と大学では、明らかにルールが異なり、大学は、新しい企画を創ったり、他者と協働して、みなで新しいものを産みだしていくことが、求められている。大学は、先生に教えてもらう場ではなく、自立して自主的に学ぶものなんです。

    習ったものを答えとして出して成功した時代から、習ってない答えのないものに挑戦していくこれからの時代は、学生にとって使う頭や武器が異なるんです。

    旧来の学んだことに答えて成功した人に、異なるゲームをやれと言うんですから、これって凄い皮肉ですよね!上手くいきません。自分の頭で考えて答えを、想像し創造する時代になっています。

    つまり適確な質問(or疑問)疑問を発する能力により、答えの輪郭を形成としてゆく時代なんです。インバウンド観光について学ぶのなら下の一~四までの大局を学び、その上で小局に着手することが、ポイントとなります。

    一、国や地方自治体の観光政策を知った上で地域創生に取り組む

    二、観光産業における主要事業分野の中身を知る(学際活動やインターネット等による)

    三、観光経営論としてブランティング戦略やIT戦略を知る

    四、企業管理論として人材管理やリーダーシップ、リスクマネジメントを学ぶ

    こうした観光マネジメントの大局を押さえたうえで、小局に着手すべきなんです。

    日本は、販売促進的なことばかりに力を入れて地方創生と言う名のもとに、今までなかった農産物を売り出したり、道の駅を大型化したりの的外ればかりをしています。

    しかし本当に大事なことは、商品化されない部分をどれだけ持っているか、どれだけ発掘しているかがその地域の価値なんです。

    「Anywhere」どこにでもあるものでなく、「Somewhere」として、そこにしかないものを見出し、保存し、伝えていく事に、観光マネジメントの本質があるのです。

    例えば、京都なら祇園祭(八坂神社)、大阪なら天神祭(大阪天満宮)、東京なら神田祭(神田明神)などは、観光マネジメントとして一つの完成形となっています。

    しかし、私たちが取り組むべきことは、ここまで大きなものでなくても、地域の人々を知っていて、楽しみとして参加する祭り、これをソーシャル・キャピタルとする努力が必要なんです。長野県飯田市において「いいだ人形劇フェスタ」という世界中の人形劇アーティストが参加する、また地域の高校生が人形劇を演じたりして裾野を広げています。だから40年の歴史ですが、ちゃんと育ってきています。もっと新しい例ですが、金沢卯辰山工芸工房というものもあります。加賀百万石の誇る伝統工芸の継承と発展、地域の文化振興を目的とした施設です。このように歴史を掘り起こしをして、その価値を新たなソーシャルキャピタルとして醸成していくことこそが、インバウンド観光の優先事項だと思います。

    理事長 井上健雄

  • 選ばれる【9月】

    一頃、大学で流行っていた「〇〇大学(ミス)コンテスト」は、最近は全く様相を変えてる。
    昔なら美人だとかスタイルがいいとかで少数の審査員が、点数をつけていたものですが、今はAKBの総選挙のような投票制になっている。
    皆に投票してもらえることが、大事なんです。友達も多く、何かにチャレンジしているとかの売りを多く持っていることが、支持してもらう基準になります。
    例えば...
    ・歌が好きで老人施設に行って歌を歌ったり、踊ったりの慰問をしている
    ・恵まれない子どもたちを励まそうと給食ボランティアをしている
    ・引きこもり系の人が、トライアスロンをしていたいからと、クラウドファンティングをしてファンティングに成功したとか…
    今までにない自分を創るために「自己投資」の姿を見せることで、皆の共感を呼び投票に繋がるのです。
    こうしたコンテストに選ばれた人たちは、『私は、本当に何の特徴もない平凡な学生だったんですが、ノミネートされたことでいっそう努力をするようになり、人生を選び直せたんです。感謝しています。』と発言しています。皆さまもチャレンジして、新しい自分を獲得するのも面白いかも知れませんね。
    新しい自分って、きっと一層魅力的ですよ。
    ポイントは、「今」を精一杯生きていることを行動で示すこと、それが「価値」なんです。
    例えば「美人」だけで評価されているのであれば、年を取ればそれはお荷物になります。
    また会社で威張っていた人も退職してしまえば、単なるうるさいアホ爺さん。
    つまり年を取る人生の後半は、誰もが自分自身がリスクになるんです。
    ミラン・クンデラさんが「老人は、自分の老齢に無知な子どもである。この意味において人間の世界は未熟な惑星なのかもしれません。」と言っていたようです。少なくとも「選ぶ側」であった人たちが、「選ばれる立場」になった時、その自覚と選ばれる価値がいるんですよ。
    選ばれる価値とは、ポジティブ・シンキングと、周りの人々へのリスペクトを根底にもつ人なんです。これらが少ないとしたら、さあ自己投資の旅に出発しましょう。収穫は、グレイトですよ?

    理事長 井上健雄

  • 今こそ「赤の女王伝説」をもう一度【令和元年5月】

     ルイス・キャロルの小説「鏡の国のアリス」(1871年発表)に「赤の女王」仮説なるものがある。
     その中に、It takes all the running you can do, to keep in the same place.という言葉が語られている。
     (訳)出来る限りの全力で走り続けて、やっと同じ場所に居られるんですよ…
     この本を読んだ時、不思議な感じがした。
     走れば違う局面に至る筈なのにと…
     しかしよくよく考えてみれば当たり前のことだと分ります。
     グローバル化の進展により、企業の外側の世界が、どんどん早く激変をしているからです。
     例えば、平成の20年間位はほぼゼロ成長の時代であった。
     良い企業は、年々3~5%成長くらいはしている。
     業績の悪い企業は倒産したり、売上の半減や数十分の一に下げ、利益の方は赤字続き…
     結局、世の中の成績のいい企業は3%成長しても、悪いグループで-2~3%ダウンしている。
     ならしてしまえばゼロ成長となっている。
     同じところ(売り上げや利益)に立つだけでも、必至の頑張りがあって、維持できるという訳なんですよね。
     日本もかつて高度経済成長の時があり、毎年給料や業績が3割アップの時代もあった。
     猫も杓子も潤った時代もあったのです。
     これは人口がふえ続ける人口ボーナスの時代にあったのです。
     現在は総人口が減り続ける、人口オーナスの時代に入っている。
     人口オーナスの時代、平均寿命が上がれば、出生率が下がるのは人口問題のセオリーである。
     ここで日本と欧州の人口予測を世界銀行に国連データから村上芽氏(日本総研)のデータで見てみる。

    2017 2100 減少率
    日本

    欧州

    1.2億人

    7.4億人

    8,450万人

    6.5億人

    -33%

    -12%

     こうした時代は、同じ成績を保とうとしても今までの5~10倍の早さで走らねばならない。
     その早さに、乗れないのなら、新しいステージを創造することが求められている。
     この早さを方向を間違えず、走り切る体力、智力、徳力を磨かねばなりません。
     私達は、この体力、智力、徳力を協働するサステナウェブとのネットワーキングをテコに、赤の女王仮説を克服しようと考えます。
     さぁ ご一緒しませんか!

    理事長  井上 健雄

  • レジリエンス【4月】

     レジリエンスとは「しなやかな強さ」。
     「疾風に勁草を知る。」という言葉ありますよね。
     強い草とは、強烈な風が吹いた時に分るというような意味です。
     後漢書でしたかね……。
     強い風が吹いても前後左右に揺れるから風にうまく流して、大風のあとも凛然としている。
     そんな対処能力をレジリエンスというらしい。
     もともとは物理用語がさまざまなさまざまな分野で使われるようになってきたと思います。
     「生態系」「心理学」そして「教育」「防災」「温暖化対策」……などなどです。
     今、社会、企業、地域や個々人にとってレジリエンスは大課題となってきています。
     特に東日本大震災などを教訓として政府は、国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)の取り組みを加速させている。
     しかし国の方向はどうもハード中心のようで、そのハードが壊れたらどうするかが弱いようです。
     「津波がくるぞ!」を耳にした時、学校の子どもは?家のおじいちゃんは?夫は?仕事の仲間は?……
     いろいろ心配事は山ほどあるでしょう。
     しかしまず「津波てんでんこ!」自分が避難すべきだと津波災害史研究家の山下文男氏が提唱されている。

    てんでばらばらに個々人は高台にむかって逃げろ

     これを最優先すべきだと。
     「津波てんでんこ」が社会、地域、個人の約束毎になっていれば

    1. 自分の命は自分が守る
    2. 自分が逃げれば他者も逃げてくれる
    3. 「てんでんこ」の約束を交していれば、約束していたしと自責感も低減してくれます……

     こんな「津波てんでんこ」、「命てんでんこ」のような言葉、考え方が被害をおさえることになります。
     国のハードプラス地域や個々人のソフト対応がレジリエンスの高い国、郷土、人をつくりあげていくものだと思います。

     オーストラリアの「レジリエンス教育」プログラムを見てみると、日本と同様いじめ問題への対処としてスタートしました。
     そこで本当に大事なことは、いじめられている子、いじめている子だけを対象とするだけでなく、ほかの子ども、クラス全体、先生、学校、地域など多くのシステムの参加者に働きかけて問題解決を計ることだったのです。

     このような考え方を持った上で、個人のレジリエンスは三つのCを充実させることです。
    一. コミットメント(commitment)
       どんな状況でも真正面に向き合う。逃げない
    一. コントロール(control)
       状況に影響を与える努力をし続ける
    一. チャレンジ(challenge)
       変化は当たり前のことと前向きに取り組む

     この三つに加えて問題をチャンスに変える二つのスキルというものがあります。
    一. 問題解決型の対処
    一. 支えの交流

    多くの人々と協働する為には、それぞれの人々との間にある対立や認識のズレを解消することが必要です。その上で仲間と高い目標に向かい助け合い、励ましあわねばなりません。そのためコミュニケーション能力を養成し適切に行動する技術を持つことが支えの交流の基礎となります。

    レジリエンスとは、社会全体で問題を受けとめ、その問題に関る成員のすべてが一緒になって問題に対処することで、持続可能性と幸せをつくりだすことだと思います。

    理事長  井上 健雄

  • 一刻者への道【3月】

     昨年も沢山の人々に出会いました。
     そして今年もいろんな人びとに遭遇するでしょうし、楽しみです。
     私が、出会った人々を分類するとすれば3パターンになると思います。
       一、出会えて良かった、一緒に仕事ができて良かった、という人 ―70%
       一、余り一緒の時間を過ごしたくない人            ―25%
       一、もう会いたくない人                   ― 5%

     一番ウェートの高い人々はこんな人たちでした。
     リスペクトできる人、何か心の底に熱い思いのある人、ポジティブ思考でいつも学び続けている人…出会いに感謝いっぱいです。
     人生を豊かにしてくれる人々です。
     宝塚歌劇のモットー「清く 正しく 美しく」のような人たちです。

     一方で25%程の人々は、余り人生の時間を共にしたくはありません。
     これらの人は、意思決定ができない人、周りの専門家の意見を聞けない人、また上の人の意見には何があっても従う人です。
     これらの特徴は、状況によりある程度許容できることもありますが、許せないのは次のような時です。
     それは何か事があった時、ささやかな勇気をも示せない人です。
     これでは、生きている意味があるようには思えません。

     最後の5%位の人は、会いたくない人です。
     この人たちは、何が起こっても自分は絶対に責めないで、他人を責める、他罰主義の人たちです。
     他罰主義で、人に謝ることを強制する人です。
     この多様性の時代に自説に凝り固まって毒を吐く人です。
     これらの人は最低です。
     私は侮蔑します。
     こういう人とは時間を共有したくありません。
     100人の人が居れば、5人位は、そんな人です。
     残念です。
     こういう人は、一時期お山の大将をしても、本当の友人がいない人で、晩年淋しい人生だと思います。
     少しでも自罰主義を取り入れて自分が悪いんだと思えればいいんですが…

     しかし、この5%の人だって私を磨き強くしてくれるのだから、余り拒絶せずケセラセラで行きたいとは思います。
     私ほどの歳になれば、人は老年というらしいが、私はまだ老年とは思っていない。
     しかし私は老獪な「一刻者」と呼ばれたら嬉しい。
     老獪とは年を取って狡く悪賢いという意味であるが、年を取って賢く、また悪賢くないなんて深さも幅も足りません。
     生きている一刻一刻を必死に生きれば、人より奥深い経験や巾広い知識を融合させ、何かに対処する場に老獪な奥の手を創造できる。
     こうした「一刻者」に到達する道筋こそが面白い人生であろう。
     多様な人々を受け入れ、感謝の念とともに、今年も前進します。
     よろしくお願いします。

    理事長 井上健雄

  • 日本の二月を楽しむ

    久方の 天の香具山 この夕べ
        霞たなびく 春立つらしも    柿本人麻呂

     もう少しすると「春立ち」が見えますよ。
     春が立つと、麦も稚芽(わかめ)を出して、茶色の畑を緑に変えてくれます。
     但し、まだ北風が強く温度も低いので、もう少しガマンしなさいよと「麦踏み」をするのです。
     今は運動靴が多いのですが、本当は地下足袋がい~んだ。
     一歩また一歩とゆっくり麦の根元を踏みしめてあげましょう。
     このことで、麦の穂の出方を均一にし、生長にもいいんですよ。

     春立ちを眺め、麦踏みをしていると、もう梅の便りです。

    よそにのみ あはれとぞ見し 梅の花
          あかぬいろかは 折りてなりけり    素性法師(そせいほうし)

     なかなか浪漫的でいいですね。
     こうした歌を貰う女性の艶やかさ、美しさも目に浮かぶようです。
     そして野山に出かけると

    小諸なる古城のほとり 雲白く遊子悲しむ
    緑なす繁縷(はこべ)は萌えず 若草も藉(し)くに由なし
    しろがねの衾(ふすま)の岡辺 日に溶けて淡雪流る
    あたたかき光はあれど 野に満つる香(かをり)も知らず …
                        千曲川旅情の歌 島崎藤村

     芹(せり) なずな 御形 はこべら 仏の座 すず菜 すずしろ これぞ七草。
     これらが野山に里に緑を出しはじめると、今度は「耳」が淋しがりはじめます。
     そこで…

    うぐいすや 梅踏みこぼす 糊だらい    与謝蕪村

     見る情報を満喫すると、香りを求め、そして鶯の鳴き声を求める。
     鶯の鳴き声から、この景色が森とした静寂まで表現しているって、いいですね。

     四つの歌で早春を味わいましたが、日本って本当いいですね。
     和歌や詩や俳句で二月一杯に楽しんでみました。
     年の始めぐらい、優雅と暮らすものでしょう。
     一度、歌会でもしましょうか!

  • 初春お祝い申しあげます【1月】

    初春(地の春 人の春 万物の春)お祝い申しあげます

    今年もパッションに溢れ、クリエイティブに精進致します。
    人は、増え続ける過去と、減り続ける未来を、前にしても、明日こそ、来年こそと望みます。
    わが団体は、今こそのいまに挑戦し続けます。
    こんな心境も芽生えています。

    生年百二十三に満たざるに
    常に千歳の憂いを懐く
      (略)
    楽を為すは当に時に及ぶべし
    何ぞ能く来茲を待たん
            -漢代古詩-(一部改変)

    イノシシHP用

    わが団体のクリード;
     一、能く未来に挑戦し、環境成果を納め
     二、今日の生を楽しみ、僥倖の日々を過ごす

    よく働き、よく遊べ です。
    今年も皆さまのご励声とご笑貌に包まれる一年でありたいと祈念致しております。
    ご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申しあげます。

    理事長  井上 健雄

  • コモンズの勝利にむけて【12月】

     コモンズの悲劇とは、多数の人々が利用できる共有資源が乱獲されて、資源の枯渇を招いてしまうという経済原則である。
     これを英語で表現するならFirst-come-first-served principle(早い者勝ちの法則)。
     不等式ならこうなる。個人が享受できる利益>皆で平等に負担するコスト。
     裏切者が得をする、というものである。
     これは1698年、ギャレット・ハーディンという生物学者が発表したものである。
     世の中が世知辛くなると、コモンズの悲劇が増えてくるようです。

     一方で東日本大震災後、志津川湾の養殖施設のすべてが失われるという悲しい出来事が、コモンズを豊かにするという状況を生みだした。
     これは震災後、養殖いかだの数をコントロールし、良いカキづくりに取り組んだ結果である。
     このことにより、収穫まで2~3年を要していたものが、1年で収穫できるまでになっている。
     これは一種の「コモンズの勝利」として表現できるものだろう。
     この状況は、このカキ養殖を世界自然保護基金(WWF)が設立した「水産養殖管理協議会(ASC)」の国際認証を取得する方向の結果でもあろう。

     2009年、ノーベル経済学賞を女性として、初めて受賞したエリノア・オストロム(インディアナ大学教授)のガバニング・ザ・コモンズ(コモンズの統括効果)と呼ばれるものがある。
     共有資源を自主的に管理するルールを述べたもので、オストロム教授は、共有資源の自主管理の協力行動を、繰り返しゲーム理論を用いて説明し、ゲーム理論の新しい応用領域を開拓している。
     人間は、第三者の強制なしに、いかに共通利益創出の為の協力を実現するルールを、自らが、構築できるかを探究せねばならないのである。
     コモンズの勝利は、政治経済学と呼ばれる分野でもあり、神経経済学ともいわれる文系・理系の枠組みを超えた「知の再構築」という多様な学問分野の交流により実現できる成果である。

     今、生物多様性への関心も高まってきている。
     生物多様性を要約すると、地球資源と人々の生活との葛藤である。
     一人ひとりの人々が、食べて生きることと、公共財としての地球資源の一つである生物多様性をどう守るかという問題である。
     ○○ファッショ、××ファッショでは、解決できない。統合的な知が求められている。
     多様な視点をもった多様な人々が、公共財のガバナンスをどうするかということである。
     多様な人々の意見の総和において、コモンズの勝利にむかうものでなければならない。

     2019年は、公共のガバナンスが大きな課題となるだろう。
     私たちは、コモンズの勝利にむけて邁進しようではありませんか!

    ASCは、オランダに本部を置き、乱獲や海洋汚染を防ぐ目的で2010年に設立されたもの。
    ここでの認証を受けると、環境にやさしい水産物であることをアピールできる。

    理事長 井上 健雄

  • 「おしゃれ」にはじめて「たべもの」でしめる【11月】

     「山風に笠取られたるカカシかな」
     今年の台風21号は、こんな生易しいものでなく、大木まで倒すまでのひどいものだった。この台風とともに秋へと季節交代が始まっている。
     昼はまだ汗ばむ程だが、朝・夕は冷涼な風に驚かされることもある。
     哀愁、淋しさ、夕暮、等々は、秋と相性がいい。
     しかし秋に「紅葉」の言葉一つで鮮やかに紅に染まったもみじ、柿の葉色の変化、爽やかな黄金色のイチョウの葉・・・
     幻想的な景色を思い浮かべさせる。

     こうした瞬間を描き出した歌がある。
     見わたせば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮     藤原 定家
     この歌そのものは晩秋における寂しい景色であるが、「花」「紅葉」がないとしつつ
     そこに見えない咲きそむる花、鮮やかに紅に染まった紅葉をふっと思い起こさせる作用があり晩秋の景色に、幻の一幅の絵を見せてくれるのである。
     ちょっと上品に景色や歌を楽しめば、次は食欲の秋である。

     繁盛するラーメン屋がある。
     混雑時には席につくまで60分待ち、待ち時間はウェイティングバーでカクテルを飲み席についたら前菜をつまみながらワインを飲み、そして ラーメン(20$/杯)を食べて最後にデザートを食べて二人で合計150$を払う。
     これはニューヨーク『一風堂(2008年)』である。

     予約がなかなか取れない寿司屋。おまかせと獺祭一本を入れると二人で1,500$。
     これはシンガポール マンダリン オーチャードの『はしだ』である。
     私は寿司には余り趣味でないので『はしだ』さんについては不如意である。

     一風堂はラーメン。博多一風堂(1985年)がスタートである。
     河原 成美(1952年生まれ)氏が創業者。
     ここのHPを見るとこれが「ラーメン屋」かと思うおしゃれなカフェである。
     そして「注文をまちがえる料理店」なるプロジェクト等も実施している。
     2017 9/16 東京六本木で、働く人はみな認知症の方々で運営されました。
     なかなか味な企画ではありませんか。
     勿論、味も良く、汁なし担担麺などメニューもいろいろ工夫されました。
     私は札幌の狸小路店が初めて入った店だったので、今回これらの情報を知ると吃驚です。

     はやるにははやる訳があるのです。
     従来の姿から、その土地に相応したオリジナルの一皮むけた姿が受けているのである。
     10月の挨拶で書いた淘汰圧をこうしたこの事例は、見事に成長・成功につなげている。
     私たちもしっかり「はやる」を始めましょう。

    理事長 井上健雄

  • 牙のない象と牙をもつ人【10月】

     アフリカ象は現存する陸上動物の中で最大のものである。体重は5.8~7.5t。
     大きいものは10tをこえる。
     アフリカ象の牙は、大きいものなら、長さ3mを超え重さ50kgを超える。
     牙は外敵から身を守り、仲間うちへの威厳であったり、水を求め地面を掘ったりする道具でもある。
     この立派な牙を持つ象が少なくなってきている。

     象の牙は野生動物にとっては脅威であるが、密猟者にとっては工芸品の素材であった漢方薬などの最たるお宝である。(40kgをこえれば一本100万円を超える・・・)
     このアフリカ象は、アジア象に比べ立派な牙の為に密猟の対象となり、牙がない象へと進化している。
     まさしくダーウィンの言う、強いモノが生き残るのでなく、生き残ったモノが強いのである。
     密猟というものに対応する牙なし象って可愛いかも知れないが、可哀想でもある。
     特にメス象において牙を持たない象が、地域により98%を占めていると報告されている。

     この淘汰圧は、人間界にもあてはまる。
     しかしこの淘汰圧は、業界、働く業種によって異なる。
     この淘汰圧を逆転させているのが起業家やベンチャーリストであったり、出過ぎたクイは打たれない独自性の強い個性派であろう。
     つまり「右におなじ」とか「他者のモノマネ」である「誰でも考えること」では生存ができない。
     いかに尖り、ニッチイスであったり他所のマネされない独創性、これが生存のキーとなる。

     この地球上に人間がいなくなって動物たちばかりなれば、この象たちも長い立派な象牙を自慢にするようになるだろう。
     人は淘汰圧に負けない自分の牙を磨くことが、求められている。
     人間はどんな老齢になってもその老齢には無知なる子供であるように、
     人は一度しか生まれないのでいつも、いつも新しい生活に挑戦していると言える。
     この新しい生活を学ぼうとすれば、いろんな知識武装や学びはあるがやはり一人一人の創造性こそが人の生存の基盤であり力となるのである。
     人は他に勝るオリジナリティの高い牙を持つべきである。

    理事長 井上健雄

  • 砥石とともに【9月】

     私たちはいつもいろいろな仕事、いろいろな注文、いろいろな錯覚に満ち溢れた中にいる。
     いろいろな仕事(まともなもの)は、優先順位をつけて、大義にそって効率的に正確にやらねばならない。

     いろいろな注文、これはまずその注文の正当性をチェックしなければならない。
     正当な注文には迅速に対応する。しかしその要求が、それまでに合意されたものをひっくり返すものであったり、タイミングや協働を考慮し ないものであったりすると厄介である。
     厄介の最たるものは、個人の恣意的な思いつきである。
     これまでの経緯を記したものによる例証や時限をきめていたものが突然の前倒しには協働者の多い場合は不可能となるし、思いつきには殆ど 対応の仕様もない。

     しかし、このマイナスの注文こそが私たちを「磨く砥石」と考えねばならない。
     (少し不幸なことであるが・・・)
     小さな自制心に欠けてしまうと大きな自制心までなくしてしまうことになるからである。
     自分自身が仕事のコントロールするMC(マスターオブセレモニー)と位置づける能力が必要となる。

     こうした状況の中でも自己実現をはかることは、不安や怖じ気づいたりするものであるが、この火の中を潜(くぐ)りぬけた人だけのいっ そう自分を獲得するとしたら砥石こそ自己完成の道である。

    理事長 井上健雄

  • 仕事の品質【8月】

     ある地区に二つの大学がある。
     一つは名門大学、一つは州立大学である。
     二つは同じような学部を持ち、大学教育認証機関によって認められている。
     名門大学は、高いレベルの学術論文や、世間に評価される有名教授を擁している。
     一方は、貧しい家庭の子供たちが初めて大学に進学するところである。
     こうした時、どちらの品質が優れているか、皆さんいかがお考えですか?

     そりゃ名門大学ですよ、となる。
     しかし、どれが正解とも言い難いのである。
     なぜなら、学びに対する顧客の欲求に応えている点で、同じとも言える。
     名門大学は、「学生に成功のための教育」を行っている。
     対し州立大学は、「貧しい人たちの生き残りのための教育」を行っているのである。
     その大学の使命によって、品質が規定されるのである。
     州立大学が、名門大学の1/3の費用で学べる構造をやめて、授業料を上げて成功のための教育に向かうのが正しいかとなると、それは疑問である。

     このように「品質」というものは使命との相関が高いものである。
     私たちのする一つの受託事業の品質というものを考えてみよう。
     端的に言えば、市民欲求を汲み取り整理し、デザインした委託者の要求するものであったり、真の顧客(市民・地球や環境)の要求するものとかが、それが私たちの品質となるのだろう。
     つまり市民、行政の求めるものを実現させる、社会的実装こそが、私たちの仕事の品質となる。
     とは言え顧客自身が、明確に意識していない要素を考慮に入れずにすませば楽であるが、それはまた仕事と言えないだろう。

     当然どの仕事をとっても、顧客は多岐多様である。
     顧客は、市民から地球、特定の仕事を依頼した専門家、金元の会社、行政であったり、いろいろである。
     話は少し比喩的になるが、未来について、私たちに分かることは一つしかない。
     今と違うということだけである。
     とすれば、未来は予測するより、創り出せばよいのである。
     私たちが良い仕事をする為には、独善に陥らず、協働して答えを求め続け、そこから新しい創造を生みだす姿勢こそが、仕事の品質を高めることになる。
     いいコラボレーションをつくって創造してまいりましょう。

    理事長  井上 健雄

  • 西日本豪雨から考える【7月】

    (サバイバル備忘版 H30年7月17日)

     先日、西日本を襲った豪雨で、悲惨な被害が続いている。気象庁は「平成30年7月豪雨」と命名。
     亡くなられた方の御冥福を祈るとともに、被災された方々にお見舞いを申し上げます。
     これらの惨状を今後、ほんの少しでも小さく出来ればと考察した。

     この豪雨の原因は、停滞した梅雨前線に向かって、大量の水蒸気を含んだ空気が流れ込んだことにある。
     また、地球温暖化による海水温の上昇により、蒸発量が増えたことも被害を一層大きくしている。
     河川の要因として、豪雨により本流の水かさが増し、ダム決壊を防止の放流が重なり、支流の水が行き先を閉ざされ、逆流して各地を浸水させている。バックウォーター現象と呼ばれるものが洪水の大なる原因となった。
     こうした危険性を予知されていたが、対策は地域・予算・景気などに左右され、数十年以上も店晒しされてきたのである。
     空の世界の要因として、入道雲が発達し、積乱雲がたくさんできるバックビルディング現象のマルチセルを起こし、線状降水帯において長時間の豪雨となった。
     台風7号の影響や、偏西風の蛇行なども無視できない要因であった。
     これら様々の原因が重なりあい、大災害となっている。

     大雨から身を守る為には、

    1.気象情報をウォッチ 自助
    変化への準備、ハザードマップによりどこへ逃げるかの確認
    避難場所・ルートの確認
    ※これは今までと違うぞ!という勘も…
    2.注意報 自助+共助
    高齢者等弱者の早めの避難
    3.警報 自助+共助+公助
    市町村の勧告・指示に従って行動
    4.特別警報 自助+共助+公助
    直ちに避難 or 屋内の安全な場所

     その上で、個人、家族は自分たちの身を守る考え方を提示したい。

     それは、生存のための時間巾「3の法則」と呼ばれるものである。  自助

    1.人は空気なしに3分しか生きられない
    3分で御陀仏 空気
    2.人は適切な体温を維持できなければ3時間位しか生きられない
    3時間で御陀仏 体温
    3.人は水分を摂ることなしに3日しか生きられない
    3日で御陀仏
    4.人は3週間何も食べられなければ生きられない
    3週間で御陀仏 食料

     これが災害等時における、時間巾の基本的な考え方である。
     この「3」のそれぞれの対策が、命を守ることになる。

    -サバイバルマニア「つぼっち」さんより-

    空気3分 防塵マスク:地震等の粉塵を吸わない
    3M使い捨て防じんマスク 排気弁付き(10枚2000円前後)(例)
    ゴーグルも用意したい
    体温3時間 ヒートシートエマージェンシー・ブランケット(例)
    これらは人体から発せられた熱の90%を反射させて、体温を守ってくれるものです(1000円前後)
    水分3日間 志布志の自然水(例)
    非常災害備蓄用(2L×6本)賞味期限5年(1500円前後)
    ※家族の人数により増加させましょう
    食料3週間 お米はアルファ化米がおすすめ。
    アルファ化米は水を入れることでもとのご飯に戻る。
    冷水でもOK。
    尾西食品のアルファ米12種類セット(3500円前後)(例)
    ハウスのレトルトカレー5袋 賞味期限3年(1000円前後)(例)
    その他 LEDヘッドライト(ジェントス実用点灯8A 3000円前後)(例)

    両手が使える

    モバイルバッテリー24000mAh LEDランプ付き(3000円前後)(例)

    モバイル・ケイタイの予備電源として

    大人用からだ拭き(50枚入り)

    cf. 断水など水は貴重なもの、出来る限り少なく使用
    身体を衛生的に保つ(200円前後)(例)

    救急セット 応急手当用8点セット(2000円前後)(例)
    猫の砂5L×4袋(2000円強)(例)  cf. 人使用として

    トイレの処理 便器にゴミ袋をつけて用足し後、猫の砂をかける

     こうやって書きあげてくると、普段いかに便利な生活を送っているかが分かります。
     私たちは、普段の生活を続けられることに常に周り(国や地域や近隣の人々…)に感謝し、地域社会への参画や貢献もすべきだし、国の国民を守る活動(自衛隊の方々の献身など…)にも支持し、感謝しなければなりません。
     このように自らを助ける自助があり、近隣コミュニティが果す共助があり、そして地域・国として公助が複層的にあって、はじめてレジリエンスの高い社会が実現できるのだと思います。
     災害にあわれた被災者の方々に対し、出来る限りの支援行動をすべきです。
     皆さん一緒に頑張りましょう。

    ※今回の放流から: ダムが決壊すると放流以上の甚大な被害が出る為に、限界まで貯まった水を流すこと。

    ①また当該ダムが多目的ダムとして発電や生活用水貯水を行っており、大雨予報に対し全放流ができなかったこと。
    ②ダム行政として造ることが優先され、強いダム創りまで及ばなかったこと。

    理事長 井上 健雄

  • ビジネスの世界を甦(よみがえ)らすファインアート【6月】

     現代は、VUCAの時代と言われる。

    V:Volatility -不安定- U:Uncertainty -不確実-
    C:Complexity - 複雑 - A:Ambiguity - 曖昧 -

     この4つのキーワードをつなげると、論理的・理性的に振舞うことが問題解決になるかと言えば、怪しいということになる。
     これまで論理的スキルは、問題を解決する一番の方法で、MBA卒業生たちが重宝された理由でもある。
     それがブーカ(VUCA)時代になると、論理スキルで分析しようにも読めない、分析麻痺を起こしてしまう。
     つまり、今まで論理的・理性的な情報スキルが、ブーカ時代に限界を迎えている。
     その一、そのスキルで出る答えは正解のコモディディ化となり、差別化を消失させている。
     その二、要素還元主義の論理思考アプローチからは、全体を捉えられないからである。

     しかし、こうしたブーカ時代に何の策も持たないリーダーが、新しい仕事に取り組むとなると、悲惨なことになる。
     せめて論理的思考や分析でもできれば、少しは救いとなるが、そんな素質もなく乱暴なビジネスモデルで猪突猛進、周りは死屍累々となる。
     デフォールト(初期設定)が間違った取り組みほどヒドイことはない。

     今、世界ではRCAが注目されている。
     英国の美術系大学院大学で、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートのことである。
     RCAはQS※世界大学ランキングのアート・デザイン分野で世界一(2015年)に選出されている。
     そしてここ数年、RCAは企業向けビジネスを拡大させつつある。
     「グローバル企業の幹部トレーニング」を設け、フォード、ビザ、グラクソ・スミスクライン等々の将来を担う幹部教育を行っている。
     もう遠い昔の2008年から、ハーバード・ビジネス・レビューは、The MFA is the new MBA.という記事を載せている。
     企業において、MFA(Master of Fine Arts)美術学修士が求められているのである。
     MBAで学ぶ分析的スキルより、MFAで学ぶ統合的コンセプチュアルスキルの重要性が高まっているのである。
     時代は「真・善・美」なんだ。特に美意識が求められている。
     ビジネス、学習、社会の組み立て、ソリューションもこの方向に進んでいる。
     そういえば、ダイソンの創業者、ジェームズ・ダイソンもRCAでプロダクトデザインを学んでいる…
     私たちも「美意識」をもって仕事を遂行しようではないか。

    ※QS:イギリスの高等教育機関の調査会社クアクアレン・シモンズ社のこと

    理事長 井上健雄

  • 価値混在のなかでの協働【5月】

     今、世の中は、コラボレーションの結果による解が求められていると思います。
     でも、どうもうまく動いているようには見えません。

     協働といえば、個性的な考え方や働きを、それぞれが本音で出して、それらが高いレベルに止揚してソリューションを創りあげていくものです。
     しかし現状は、コラボレーションという名の取り組みであっても、ある団体の一担当とか、また権威の名を借りた偽者とか…が仕切っている狂動もある。
     また、悪意などないのだが、古い価値観を振り回し、遅れている知識でもって、分け知りに仕切るなど、無知の弊害等も多い。
     それでも、各自がいい仕事をしていると錯覚をしているから、厄介だ。

     但し、いい出来の人は、会話の中から自分の主張についていろいろアンテナを張っており、客観化する能力に長けている。
     つまり、話しあう程に分りあえ、うまい協働をできる人もいる。

     厄介な人は、イノベーションに縁遠い職種であったり、内部プロセスに時間を要するセクションの人である。
     閉口するしかない。
     その上、これらの人がネットワークの充実とか言うのだから、呆れる。
     ネットとは、上下のない平等の世界なのに、お上意識で取り組むのである。
     これらの人への対処は、フォロワーシップと、高次の目標を再確認して、方向性を一致させることである。

     こうした価値混在の中での取り組み指針は、一つは、伝統を知り、それを学び、実践していくことである。
     例えば、日本で1300年もの間、繰り返されてきた「式年遷宮」などである。
     20年毎に遷宮を行うことで、技術の継承がうまく進む単位である。
     (現在のように長命の時代は、あと10~20年延ばしても、と考えたりもするが…)

     このように良い伝統を守り、継続する価値もあれば、一方で、改革が求められている世界もある。
     教育である。
     労働者として、言われたことをしっかりやり遂げることができる人。
     管理者となって、労働者を「ニコポン」で運営する人。
     こんな人々を作ってきたのが、今までの教育である。
     しかしこれらは、ロボットやAIがやってくれる時代になります。
     言われたことをやる、ニコポンマネジメントはもう要らないし、障害にさえなります。

     ではどうするか。
     「スクール」から離れることが、解決手段となります。
     つまり「アンスクーリング」です。
     もう子供たちにお仕着せのプログラムは不要です。
     彼・彼女らに必要なのは、セルフディレクテッド・ラーニングとすべきなんです。
     自分で学びたいものを決めて、どのように学ぶかも自分で決めるのです。
     すべて自己決定です。
     アンスクーリングとは、学校の枠組みを超えて「生きると学ぶ」が同軸にあるものです。

     まとめると、みながまっさらの目で見るまっさらに考えるまっさらに協働を試みる
     これらを実行することで、価値混在の中においてもみなが認めあい、リスペクトしあえる、パフォーマンスの高い社会の実現ができるのではないでしょうか。
     そして詰まるところ、クリエイティビティとパッションが個人の最強の武器となり、価値混在のなかでのリーダーシップとなるのだと思います。

    ※止揚(独 aufheven)

    事物が発展する場合、低い段階の否定によって高い段階へ進むが、その時も低い段階の実質は保存されることをいう。

    理事長 井上 健雄

  • うつりかわり【4月】

    年年歳歳花相似
    歳歳年年人不同  劉希夷
    (毎年美しい花は同じように咲くが、この花を見る人は毎年変わっている…)

     かつて、「紅顔の美少年」を誇りとした私も、いつの間にか「白髪厚顔のクソジジイ」になりました。
     美しく表現すれば、

    花の色は 移りにけりな いたずらに
    わが身世にふる 眺めせしまに     小野小町

    となるでしょう。
     時の身体への変化は美しくなくとも、こころへの変化は深く、それでいて淡い成熟を伴ってくれます。
     懊悩を超えた先に澄明で清快にあらわれる心根をもたらしてくれます。

     世の中はいつも、様々で、様々な変化が起きています。
     例えば、音楽教育の移り変わりを見ても、2002年に和楽器が中学校の必修となっています。
     グローバル化が進めば進むほど、ローカリティ(地域)が一層見直されるということだろう。

     また2017年、小・中学校の学習指導要領に「協働」が新たな学年目標として示された。
     かつては、合唱でもみんな同じ気持ちで同じ方向を向いて歌おうという、心を合わせるという協同でした。
     しかしこれからは、お互いに自分が感じたこと、考えたことを伝えあって、歌唱表現を高めていこうという風になっています。
     昭和の私の時代は、協同で同じように歌おうでした。
     それが厭で、合唱は好きではありませんでした。
     今の協働なら、破調を覚悟で得意気に歌うでしょう。

     つまり今後は、個を持った人々による創造をチームレベルで仕上げていく協働が求められている。
     さぁ私たちも、しっかりとした個性を磨きあげるとともに、新しいことを切りひらく創造性を高め、それらをチームとしての協働で新しい時代に立ち向おうではありませんか。Wao!

    理事長  井上 健雄

  • 生物多様性とは…【3月】

     1927年。
     野球ファンなら、この年の夏の終わりにニューヨークヤンキースのベーブルースが60本のホームランを放ち、大リーグ記録を塗り変えている。
     日本では大正文壇の寵児、芥川龍之介が自殺、35才であった。
     まぁ、一般的にそう取り立てられることのない年と言える。

     しかし私は、この年(1927年)に違ったことで注目している。
     それは、この年、アメリカから食用ガエルの餌として、アメリカザリガニが輸入されていた。
     100匹中、27匹だけが生きて到着し、鎌倉の養殖池に捨てられた。

     水の外来生物として、ブラックバス(オオクチバス)、鯉やアメリカザリガニは、駆除対象である。
     そして大捕食者のブラックバスをやっつけると、中位捕食者のアメリカザリガニが解放され、大爆発してしまうという困った現象を引き起こしたりするのである。
     このアメリカザリガニは、ため池などに侵入すると、底の泥を攪拌し、水も茶色にしてしまう。
     そうすると水中に太陽光が届きにくくなり、水草も貧弱となり、光合成も進まず、溶存酸素を少なくし環境を悪くしてしまう。
     またその食性は、人間の如く、若い間は動物食が好きで、ヤゴやゲンゴロー、二枚貝など水中昆虫を全滅させた例もある。
     二枚貝などがやられると、貝に産卵するタナゴ類も少なくなる。
     そして大きくなると、植物食に向かうのである。
     動物を減らし、植物も減らしてしまう、困ったカニなんである。

     その上、最近はアメリカザリガニを美しく(?)変身させた「タイゴースト」などが、登場している。
     この種は、タイの観賞魚養殖家によって産みだされた。(異説もある)
     ヒゲが白かったり、甲羅に色々な色(赤や青等)が入っていたり、ハサミが真赤だったりするのである。
     このカニ、発売当初200万円もの高値であったし、今でも数十万円のものから数千円のものまで流通している。

     こうした一方で、繁殖力の強さから、このアメリカザリガニを養殖し、将来の食料不足に備えようとする動きもある。
     こうして見てくると、アメリカザリガニは、駆除すべき動物なのだが、これからの食料資源として考えるべき広がりもある。

     鯉も同様である。
     鯉も外来魚といわれている。(最近の研究では、日本の古来からの鯉(ヤマトゴイ)もいたと発表されている)
     鯉は生命力が強く、長寿で20年以上、そして70年も生きるものもいる。
     30cmを超える大きさにもなると、天敵もなくなる。
     そして世界の侵略的外来種ワースト100に載せられているが、海から離れた地域では、古くから貴重な動物性タンパク源として重用されている。
     立場により対応は異なる。

     これらの侵略的外来種ワースト100の範疇に、ワカメ、ホテイアオイ、虎杖(イタドリ)、葛も入っている。
     ワカメ、イタドリ、葛は日本では食用として活用されているが、他ではあまり食用として用いていない為、単なる厄介物としての汚名をきている。
     こうした傾向は上記のコイやニジマスも同様である。

     生物多様性尊重は、今の科学発展の中であったり、食習慣であったり、また時代とともに変化していく。
     みんな生き残って地球の中にそれぞれの地歩を築いて欲しい。
     それが駄目と言うなら、それぞれの生き場所を用意してあげることが私たちの役目かも知れない。

    理事長 井上 健雄

  • 蘊蓄からNEXTへ【2月】

     昔、ローマ時代には紫色の石は二日酔いに効くと思われていたそうだ。
     色として、貴ばれる紫は、鉄イオンが放射能を受けて電子状態が変化したものにしか過ぎないのに…

     この石は、中国でも注目され一世を風靡し、また社会問題ともなった。
     何晏(かあん)という人が強壮強精薬 五石散(ごせきさん)として創薬したものである。

     この紫石は日本の秋田、新潟、宮城等でも産出されたが、現在ではほぼ絶産となっている。
     今はブラジルやウルグアイ、ジンバブエから輸入されている。

     この石、2月の誕生石、紫水晶である。
     英語名はアメシスト。
     ギリシャ語は、アメテュストスつまり“アルコールがない”という意味である。
     アルコールがない、つまり二日酔いに効くとされたようだ。
     そう言えば2月生まれの人は大酒飲みが多く、二日酔いにもならず元気である。
     紫水晶の粉でも飲んでいるのだろうか。

     さて2月は、小売業の世界においては「閑散のニッパチ」と呼ばれ、2月8月の対策は、前月のプロモーション、売り切り重点、次月からの積極攻勢の為の仕込みを中心としながら、人材育成に励む時なのである。
     忙しい月でない時に何をしているかが、事業の成否を決める最も重要な時である。

     こうした繁閑がある仕事は計画性が立て易くあるが、また残念ながら仕事は忙しい時に忙しいことが重なるという、繁の対策こそが重要である。
     今は、個々人の体力と頑張りで進んでいるが、繁の中における次の繁の計画品質がもう一つ落ちたりする恐れがある。
     このソリューションは、最初に述べたように「閑の時」に「繁」をむかえ打つ予測ドキュメントづくりを進めることにある。
     そして、もうあと少し足りない時に、協働を組織したり、応援体制を敷けるネットワークである。
     とすれば、私も2月を暇そうに蘊蓄を垂れたりせず、明日に向いNEXTを創ることが求められているのである。

     あぁ蘊蓄から繁忙の2月になってしまった。
     みなさん、協働のみなさん、一緒に頑張りましょう。

    理事長 井上 健雄

  • 謹賀新年【1月】

    謹んで新春のご祝辞を申しあげます

    今年もイー・ビーイングは挑戦します

    (一)「やってみる」をベースに進みます
    (二)一人ひとりが世界を舞台に自己表現できる武器をモノにしていきます
    (三)中強度の継続した運動で長寿遺伝子をONにします
    私たちは、今、発達しつづけるテクノロジーを、テクニックとして身につけ、その上で、それを世に役に立つスキルとしてプレゼンスしてまいります。

    理事長  井上 健雄

  • ビジネス力とは【12月】

    -テクニックをマスターし、スキルを磨く-

     先日、不思議なことがあった。
     目の検査を受けたのだが、動体視力が優れている5をマークした。(30代に比べてもやや優れていると)
     これはびっくり。
     毎日静止したパソコンを見、本を読み、書いているだけなのに。

     何事も自分の思いとは別に、身体の方は、勝手に良かったり悪かったりする。
     つまり自己認識を客観認識に移し変える能力がないと、自己錯誤や自信過剰などでケガをするということだ。
     そこで何をするにつけても「基本の反復」をしっかりやることである。
     例えば仕事なら、その仕事の「基本の反復」をしっかりやることで、自己認識のレベルが分るというものだ。

     ビジネスは、(基本)反復+応用という経験が最も大事なんです。
     その経験は、極限まで力を尽してのみ経験となる。
     ちゃらちゃらとやったというだけでは、経験とは言わない。
     そしてその経験に創造が加わることにより、パフォーマンスがあがり、それが自信となるのです。
     自信は、自分の中にひっそり存在するものでなく、オーラとなり相手に必ず伝わり、自分のパフォーマンス力を一層高めてくれるのです。

     ワード、エクセル、グラフが出来る、ホームページができる。
     これはビジネスの基本として大事です。
     しかし、テクニックだけで飯を食える訳ではありません。
     その技術を実務の中でどのように表現し、応用し、展開できるか。
     つまりその状況の中で正しい選択ができる能力-状況スキル-こそが、ビジネス力となるのです。

    この力でもって未来に臨もうではないか!

    理事長  井上 健雄

  • ふる暦から新暦へ【11月】

    うかうかと 年寄る人や ふる暦   芭蕉(注)不詳

     11月の声を聞きますと、来年のカレンダーが本屋さんに勢揃いです。
     年初にキラキラとしていたカレンダーも、11月ともなると、古びて何処か寂しげです。

     ボヤボヤとして年を取っていく人は、古カレンダーのように、来年には居場所がなくなってしまうこの頃です。
     農作物を中心とした社会では、正確な暦を持っているかそうでないかで、その民族の栄枯盛衰を左右したものです。
     中国、エジプト、アラビア、ローマ…など。
     ということですから、暦はどんどん進化してきた訳です。

     暦を進化させたのも人ですし、うかうかと古暦になってしまうのも人です。
     私たちも古暦にならないように、新しい暦を創りあげていかねばなりません。
     1年の新しい暦なら、新年度計画となりますし、3年位先までの暦なら、短・中期計画ですし、5年以上先まで見越したものなら、中・長期計画です。
     少なくとも短年度としての新年度計画を、ビジョンからプロジェクト、行動計画にまで展開したものを示すことです。

     この計画の時にまず留意すべきことは、「組織は強いから生き残るのではなく、適応するから生き残るのだ」ということです。
     つまり、変化対応をし続けている組織体こそが、生き残るというものです。

     次に必要なことは、
     一、今の事業ポートフォリオの見直し
     一、ITを戦略の核に据え、人の行動規範を変えてゆく
     一、重さのないサービス事業(例:第三者評価)の深掘り

     つまり、変化対応をベースにこれらの三点を、組織版・個人版として、チェックし、是正し、充実させていくべきなんです。
     こうした取り組みの前提に、一人ひとりの志こそが組織の成長であり、個人の成長となることを忘れてはなりません。
     志こそが組織の根幹であり、根源なんです。
     組織・人ともども新カレンダーに向かって挑戦です。

    理事長  井上 健雄

  • 自分の足で立つ【10月】

     物事の結果をコントロールする情熱をもって生れてくる、それが人である。

     ある地域の老人ホームで、大学による実験が行われた。
     それは、観葉植物を配り、それに水やりや面倒を見るようにと告げられた(A)グループと、観葉植物は施設で面倒を見るから放っておいて結構ですよという(B)グループの二つである。
     そして半年後

    死亡した人の比率
    Aグループ 観葉植物の世話をするグループ 15%
    Bグループ 何もしないグループ 30%

     もう一つの実験

    (A)学生の訪問について曜日、時間等希望を聴かれたグループ
    (B)学生が要望を聴かずに定期的訪問

    Aグループ 学生の訪問に要望を出したグループ 薬の服用が少なく健康
    Bグループ 学生の計画で定期的な訪問 薬をたくさん服用し不健康

     つまり、自分で状況をコントロールしている層が、死亡率も低く、健康的で薬も少なくしか飲まなかったのである。

     ところが、自分で状況をコントロールしていた層に悲劇が起った。
     この大学による実験が終った後、Aグループの死亡率がBグループよりも圧倒的に高くなったのである。
     自分で状況をコントロールしていると思っていた層が、本当は表層しかコントロールしていないことに気づいて対処していれば、こうはならずにすんだであろう。
     施設側も、もう少し深く考えればこんな不用意な実験を受け入れなかったかも知れない。

     人は本当に自分の足で立ち、歩き、そして自分の頭で考えて行動しているかを、しっかり問うべきである。
     自分の足で、自分の頭でという所を、デジタル化振興への取り組みから考えてみよう。
     自分の得意分野に集中しているだけでは、Aグループの最後に最悪の結果が出たように、集中分野の上位概念をしっかりコントロールする能力を涵養しておかないと、競争には勝てない時代に入っている。

     今、デジタルの世界は3層に分れ、それぞれが進化をしている。

     ①のICT層の上層の制空権は、もう日本勢は駄目であろう。
     トッププレーヤーとして、3Aと呼ばれるアルファベット(グーグル)、アップル、アマゾンがいる。

     ③の地上戦は、ドイツ、日本の得意分野(トヨタの改善は抜群に秀れている)であるが、上空、特に、中空を押えられるともう勝てない時代に入っている。

     そうすると、私たち日本の戦う分野は、②のICT-FAのインターフェース層を制することがポイントとなる。
     今後、FA層は、②の分野からFAへのファイアウォールを築くべきなのである。
     ②のこの層は、ドイツのシーメンスが一歩先んじているし、フィンランドはデジタルヘルスケアの実験を既に開始している。
     日本の強いFA層を活かす中空の制空権を手に入れることが、日本の成長のキーとなるのである。
     FA層が自分の足で立つということは、②のICT-FAを押えることなのである。

     こうしたグローバルな動きから、私たちの立ち位置を見直すことが、自分の足で立つということなのである。

    理事長  井上 健雄

  • 課題挑戦について【9月】

     世の中、いろいろな課題に満ちあふれている。

    A「売上げが足らない。頑張って契約取ってこい」
    B「○○の現状、今こんな問題を抱えている。我々はどう解決すべきか」

    <Aのケース>
     日常的な問題で、頑張れ頑張れ…で答えが出るかも知れない。
     しかし、この売上げが足らないのが何年も続いているのなら、その仕事が時代に向きあえているのか、顧客の為のソリューションを提供できているかを、真剣に考えねばならない。

    <Bのケース>
     これはなかなか構造的な問題であるので、本格的に『なぜなぜ5回』を繰り返さねばならないと思うかも知れない。
     しかし、これは解答しようと思う人が、問題を本当にチャレンジすると足もとを掬われるかも知れない。
     なぜなら、課題設定者は、深い本質まで入り込み課題解決を期待していないケースが多々あるからである。
     つまり、本質の問題に入ると、自分たちがその本質にどう取り組んでいたかが問われるからである。
     こうした人たちは、本質に手をつけず、手近な改善だけの答えを待っているに過ぎないかも知れない。

     こうした例が、単に民間の一企業とかであれば、それはその企業が波間に沈むことで新陳代謝が進むから、それはそれで結構である。(本当は良くないが…)
     しかし、この本質に手を染めず、適当な所でお茶を濁そうとするのが地方行政や国であった場合、困るのは市民であり、国民なのである。

     <Bのケース>にあげたものは、単純かも知れないが、これこそが改革派と岩盤規制の守旧派の争いだとすると、改革派は不利である。
     なぜなら、圧倒的に多いのが守旧派であるからである。

     今回の加計問題は、この様相とは異なるかも知れない。
     特区というものを創り、変革を起こそうとする本物の活動なら、それは賞賛すべきかも知れない。
     しかし、獣医学部の新設位を特区でしか取り組めないのなら、日本は腐ってきているとしか言いようがない。
     こんな状況で、世界に伍していける学生を日本は、ひきつけることが出来るのだろうか。
     若い優秀な学徒は、ハーバードやMIT、ケンブリッジ、オックスフォード、インド工科大学等々へ出かけてゆくに違いない。
     学んだあとに帰るべき国が、日本となるかどうかだ。

     今こそ、若い人たちに魅力ある国、まち、学校、コミュニティを創らねばならない。
     現代の閉塞状態を破るには、やはり一人ひとりが改革の手をあげることから始めるしかない。
     新進の人々は、私たちは、挫折を恐れずにどんどんプログレスしようではないか。
     この前進が、守旧派を乗り越えていくと信じながら。

    理事長 井上 健雄

  • 新しい時代の曲り角のために【8月】

     前月に紹介しました製品としての「氷」は、アイス1.0からアイス2.0、そしてアイス3.0の世界に入っています。
     製品、商品というものは、いつも新しく創られたり、提供の仕方等々、日々変化に遭遇する時代に入っています。

     そこで新しい時代の曲り角へ飛び移るための製品・商品の備える枠組のDICEEを紹介しよう。
     Guy Kawasakiによる。

    Deep(深い)

    顧客が最初気づかないような機能や特徴を持つ。
    どんどん使えば、深く、いろいろな楽しみ方ができる等、満足できるサービス機能を多く持っている。
    (例)スマホ

    Intelligent(知的)

    つくったものが人々の悩みや問題を理解していることが分かるものを提供する。

    (例)フォード自動車は「マイキー」というオプションシステムを開発しており、親が子供に車を貸す時、速度やステレオの音量の上限を設定できる。

    Complete(完全)

    革新的な製品は、たんなるデバイス、ウェブサービスだけでは終わらない。
    ワンストップショッピングならぬワンストップサービスとして完結出来るものである。

    (例)キンドル・ダイレクトパブリッシングは電子書籍の販売、オンデマンド印刷、出版サービス、マーケティングサポートなどが含まれている。

    Empowering(力をもたらす)

    革新的な製品は、生産性ばかりでなく創造性まで高めてくれる。
    その製品・商品といると元気になれるようなものでなければなりません。
    (例)マッキントッシュ

    Elegant(エレガント)

    パワーがありながらシンプル。
    何があるかではなく、何がないかがポイントとなる。
    ノイズを回避し、デザインやユーザーインターフェースにこだわりを持つ。

     このDICEEクエッションに応えられるなら、あなたの商品、あなたの仕事は、次の曲り角への飛び移りは成功するだろう。
     「深く幅広いDICEEクエッション」をお忘れなく。

    ※Guy Kawasaki: アップルのチーフエバンジェリストなどを経て、オンラインデザインサービスのキャンパのチーフエバンジェリスト、カリフォルニア大学バークレイ校で教鞭もとる。
    1,000万人を超えるソーシャルメディアフォロワーを持つ。

    理事長  井上 健雄

  • 「氷」【7月】

     暑い。とけそう~~~……。
     「温暖化の酷暑ここに至れり」と思う。

     日本には、もっとしっかりした四季がありました。

    春一番 木々は根を緊め おのれ鳴らす(憲吉)
    夏立つや 衣桁にかはる 風の色(也有)
    目に青葉 山ほととぎす 初鰹(素堂)
    秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ 驚かれぬる(藤原敏行朝臣)
    こがらしや 広野にどうと 吹き起こる(蕪村)

     こうした四季はあるにはあるのですが、四季なので3ヵ月ごとの交代と思っておりました。
     今や、夏のシェアが、50%になるかの勢いです。
     人々の心待ちする春・秋が、短くて残念です。
     かつての一年に比べ、損している気がします。
     慰めは暖冬化により冬が、過しやすくなっていることでしょうか。
     雪月花の雪に乏しい関西では、雪を愛でる風流は、北の国まで足を伸ばさねばなりません。
     子どもの頃、私たちの身の回りにあった四季は、何処へ行ったのでしょう。

     夏に文句を言っても始まりません。
     そこで、「氷」で頭も体も冷やしましょう。
     この氷、19世紀初め頃には、ニューイングランド州の寒い寒い所の凍った湖や池から氷を切り出して、切り出し氷が良く売れて、寒い地方が栄えました。
     これがアイス1.0の世界です。
     そして次は製氷屋さんが、シーズンに関係なく水を凍らせて氷を作り、トラックで運び売りました。
     アイス2.0の世界です。
     次に電気冷蔵庫の登場です。各家庭で氷がつくれるようになりました。
     アイス3.0の世界です。

     この氷の歴史を見ていると、ぞ~っと寒くなりません。
     アイス1.0で栄えた人は、アイス2.0の世界では成功しておりません。
     アイス2.0の世界で儲けた人が、電気冷蔵庫を開発した訳ではありません。
     「氷」を売るとしても、新しい時代にどのようにしてその氷を提供するかなんです。
     商売繁盛を極めている時に、次のアイスに向けてスタートしているかなんでしょう。
     皆さまも今の仕事の次の仕事を考えていますか。
     いつも私たちは、新しい時代の曲り角の手前にいるということを忘れてはなりません。

    (注)下線について、8月の挨拶をご覧ください。

    理事長  井上 健雄

  • 土手坊主【6月】

     子供のお守りをして稼いだ金で売れ残りの松の苗を200本買い、土手に植えた子供がいた。
     育ち具合が心配で、いつも土手を見ていた。
     人はそれを見て笑い「土手坊主」とあだ名した。

     もう一つ。
     精米をする時、足で杵を押しながら臼のまわりを歩いて本を読んでいる子がいた。
     1回りすれば一節を読み了えるというもの。
     そこでのあだ名は「ぐるり一遍」であった。

     ある時は、本を読みながら歩き、時には大声で読誦したりしている変な子がいた。
     あだ名は「キ印金さん」と呼ばれた。  ※天明の頃です。差別用語ではありません。

     サァみなさんは、何回目のあだ名でこの人が分りましたか。
     天明7(1787)年7月23日生。
     いわゆる天明の大飢餓の頃に生を受けたのである。
     5歳の頃、酒匂川(さかわがわ)氾濫、田畑の大半が流失する等、極貧を経験。
     報徳思想をもって貧しい農家や藩財政の立て直し等、日本が世界に誇るべき英雄であります。
     この三つのあだ名の持ち主こそ、二宮尊徳である。

     この土手坊主が、酒匂川に200本の松の苗を植えた時、13才である。
     氾濫防止としての植樹である。
     なんという慧眼の士であったことか。
     私は尊徳さんを尊敬している。
     追い追い、この小文で、報徳思想の一端を紹介したいと考えている。

    ……
    身命の長養は衣食住の三つに在り
    衣食住の三つは田畑山林に在り
    田畑山林は人民勤耕に在り
    今年の衣食は昨年の産業に在り
    来年の衣食は今年の艱難に在り
    年年歳歳報徳を忘るべからず

     どうです。この縦軸思想は心に沁みますね。
     過去があり、現在があり、そして未来がある。当り前だけど凄いな。
     思えば、私が、大学入試の時「独立自尊」について考える所を記述せよというものがあった。
     この福沢先生の思想は、尊徳さんの「わが道は人の心という田畑を開墾することなり」の「心田開発」に非常に近しいと考える。
     あぁ昔が懐かしいな……

    理事長  井上 健雄

  • 福のかたち【5月】

     ここにある一つの果樹がある。
     20個の蕾がつきました。

    (a)「いいぞいいぞ、全部大きくなってくれ!」

    ・20個の実が取れます。

    (b)「果樹さんありがとう。少し大変でしょう。7~8輪を摘みましょう」

    ・12~13個の実が取れるでしょう。

     私たちは、(a)のケース(b)のケースどちらを選びますか。
     私は(b)を選びたい。
     これが「惜福」という考え方です。
     なぜなら

    (1)数は少なくなるが大きな実がとれる
    (2)果樹を疲れさせず、来年も元気に実をつけてくれるでしょう

     今にすべての成果を求めれば、明日にその力が続くかどうか、考えるべきなんでしょう。
     そして摘果したものを地の栄養とするも一つだし、その摘果物(例えばみかん)は摘果のものにこそ、ヘスペリジンという機能物質があり、アレルギーに効果的という情報から産学連携の取り組みもあるでしょう。
     摘果のお裾分けもあり、これは「分福」です。福を、土さんに、またアレルギーの人に、また隣人に分けることになります。
     そして「植福」というものがあります。
     これは、ある学問の機会のなかった人に、学問の手解きをしてあげる。
     そして、学校に通えるようにしてあげる……
     今、はやりのSDGs17の4番目のQuality Educationになります。

     新しい福をつくってあげる。
     また今、芽ばえようとしている福の手助けをしてあげる。
     私はこの三つの福に、上下も何もありません。
     個人的な生き方は、惜福に生き、少し大局観が出てきた時に小局着手の分福を考える。
     そして人の幸せという観点から植福に心がけます。
     これは時間がいるものですが、一つひとつ植えていければと考えています。
     サァ!頑張るぞう!

    理事長  井上 健雄

  • 16年目に入りました!【4月】

     お陰様で、イー・ビーイングは、この春で16年目に入ります。
     みな様、感謝一杯です。

     「少年老い易く、学成り難し。一寸の光陰軽んずべからず…」
     青雲の志を抱き、勤め人を早めに辞して15年。
     少年は、髪に霜を置くまでに至りました。

     親方日の丸(会社)時代は、「瞬発力で成果をどんどん求める旅」でしたが、NPOとなると、人々の理解を得ることに、また行政の方々と一つひとつの了解の積み重ねや、すり合わせ等の「持粘力を育てる旅」となりました。
     瞬発力から持粘力へのギアチェンジは、なかなか厄介ですが、持粘力こそが、今後どの事業にとっても成否の鍵となるでしょう。
     その為にも、高邁な精神を磨り潰されない様に、風景や紆余曲折を楽しむ心境を育ててきた、15年とも言えます。

     『坂の上の雲』を見つめてきた時代と異なり、『坂の下の泥濘(ぬかるみ)』に気をつける、人口オーナス・低成長・格差社会に入っています。これが私たちの置かれた新常態です。
     こうした時代だからと言って、おじけづいてはなりません。
     こういう時だからこそ、「今までより勇敢にチャレンジし、一日いち日というチャンスを歴史の一頁にするべき」だと思います。

    理事長 井上 健雄

  • 2017重点課題 ~食料、AI、クリエーション~【1月】

     大異変でも起きなければ、2017年、私の読みはこうである。

    国内経済 GDP成長率 0.5~1%伸び
    為替   1$→115円
    株価   20,000円(高値)

     冒頭のエクスキューズをつければ、何も「読み」じゃないじゃないか!とお??りを受けそうですが、平常ならこういうことですという主張です。
     つまんない……とお考えでしょう。
     が、どの位が標準レベルかと掴んでいれば、修正も対応も出来ます。
     読みなしの臨機応変は、単なるうろつきの彷徨にしかなりません。

     社会的雰囲気として、どんどん荒(すさ)み、格差が広がっています。
     しかしまだ、リカバリー・ショットが打てる時代です。
     つまり、今生きる人の、また企業の志が、問われています。
     私たちにとって、今年度を含めこれから重要と考える三つを紹介します。
     食料、AI、仕事のクリエーションです。

     食料は、地球環境の温暖化に伴なうどか雨、干天、異常気象…等々、自然に寄り添う農業の不確定要素が増えています。
     そこで、ハウス栽培や完全閉鎖型植物工場の取り組みも必要となります。
     勿論、自然に寄り添う農業も一工夫、二工夫して臨まなければなりません。

     AIは、まずホワイトカラーのパフォーマンス向上の鍵となります。
     その為にはオフィスすべての仕事をタテ、ヨコ、ナナメから、分析し統合し、仕事のトータルパフォーマンスを上げるAIデザインが必要です。
     AIのシンギュラリティーは、もう到来しているのです。

     最後に、どんなに頑張ろうとも、今までにない取り組みなしに将来の展望は開けません。
     そこで、クリエーションです。
     大構想から小工夫までいろいろありますが、チームとしてクリエーションを積み上げれば、画期的なソリューションがやってくることは確かです。
     灰色予測を持ちながら、ポジティブに前進する。
     これが粋というものです。
     今年度、この三つのキーワードをベースに知的に励み、新しい展望を創りあげましょう。

    理事長  井上 健雄

  • 謹賀新年【1月】

    1701

    初夢に見たいもの
    一富士、二鷹、三茄子とあります。
    一・二は分かるんですが、なぜ茄子(なすび)かと…
    一説に、家康が駿河の国の自慢としたものとあります。

    私は素直に、一(富士)無事丈夫で、二(志)高く、三(事を)成すと読みたいのです。
    この意味を、みなさまにお贈りしたいのです。

    異常なことが常態となる「新常態」の時代です。
    器局を育て敬戒に生きたいと祈念します。

    みな様の徳に輔けられ、見識に導かれ、深敏さを高めていければと思っております。
    本年もよろしくご指導、ご励声お願い致します。

    理事長  井上 健雄

  • すべてを変えゆく時の中で

     2016年6月23日 国民投票 Brexit イギリスのEU離脱。
     2017年1月20日 President Donald John Trump誕生

     上記の二つは、起こるべくして起こっている。
     何故だ?何らかの間違いやポピュリズムで起こったのでないか。そんな声も多い。
     しかしこれは起こるべくして起こったのである。

     現在がどういう状況にあるかを考えてみよう。
     第2次世界大戦後から現在までの、せいぜい60年を3期に分けて考える。

    1期 1950~1980: 戦後の経済の大成長期
    2期 1980~2010: アングロ・アメリカンによるグローバリゼーションの進展
    現在(3期) 2010~現在: グローバリゼーションへの非難、疲れの時代

     現在、アメリカとイギリスが進めた市場原理主義の経済政策、ネオリベラリズムへの嫌悪感が出てきているのです。
     何故グローバリゼーションの勝者でもあるべきアメリカとイギリスが、保守化しようとしているのだろう。
     それは簡単。
     グローバリゼーションによる国内の不平等が拡大し、今まで支配的だったグループを下層へ転落させたことにあります。

     例えばアメリカでは、支配的な地位にあった白人グループの死亡率は上昇し、社会不安の増大に伴ないナショナリズムの方向への回帰が出てきたのです。
     イギリスも同様に、EU内で疲弊した白人階級を中心に、国民国家の再構築を目指しだしたのです。

     このグローバリゼーションの波に乗って上昇しているのは、ドイツです。
     なぜドイツだけが大量に移民を受け入れているのか。
     福祉概念というより、労働力補充というパワー戦略なのです。
     出生率は、日本と同じ1.4なのです。その現象をシリア難民、中東難民の受け入れで補っているのです。

     これは経済的には、労働力として成功しているかに見えますが、ドイツ国民と移民は生活慣習が異なります。
     例えばシリアは、内婚率35%。内婚率が高いということは、閉じた集団を指します。
     ドイツ国内にいるトルコ系移民は、内婚率10%。この10%の数値でさえ、社会的な統合をうまくまとめることに失敗しています。
     なぜならドイツは完全な外婚制(イトコ婚の禁止)なんですから。
     人口減少というパワー減を、こうした社会的習慣などが異なる集団と受け入れることで、パワーを保とうとしていることになります。
     これらは、先々の分裂や崩壊を示唆するものでしかありませんか。EUの将来を暗示するものでもあります。

     こうした戦略を取るドイツと袂を分かとうとしたのが、イギリスのBrexitなんです。
     今、EUには、Europa〔独語〕(ドイツ的ヨーロッパ)は、あっても残念ながらEurope〔仏語〕はないのです。
     こうした意味で、ドイツに追随しているフランスにもいずれEU離脱がくるかも知れません。(つまりEUにおいてEU化というよりドイツ帝国化が進んでいるのです)

     このように考察をしてくると、ドナルド・トランプ氏の国内回帰、保護貿易など孤立主義も、今の時代の先駆的現象だと言えるでしょう。
     もし冒頭の現象において、イギリスのEU残留、ヒラリー・クリントンの勝利があったとしても、EU分裂の流れとアメリカの国内回帰は、一層すすんでいくでしょう。
     時代は変わっています。奥深いところで静かに、そして滔滔と流れています。
     私たちもこの深い静かな流れにおいて、私たちは、しっかり大義とともに進んでまいりましょう。

    理事長  井上 健雄

  • 研鑽する日々について

     人びとは、基本的に膨大なインプットを積み上げ、徐々にアウトプットを形成していくものである。
     例えば長く続く音楽家にとってさえ、一人の娘、一人の息子を音楽家(食べられるとか、一流に…)育てることは至難である。
     小さい頃より家庭教師をつけたり、楽器を与え、防音の部屋をつくり、長じては音大や世界コンクールでの入賞を目指す旅をさせたりすることは、大変なものいりである。

     基本的にインプットとアウトプットは釣り合わないものである。
     しかし、才能なり、執念なり、継続の力なりをもって一たび成功を納めると、アウトプットはどんどん大きくなる。
     これらの成功者は、一人ひとり個性的であるが、共通するものは向上心である。

     例えば、あのウラディミール・ホロヴィッツは、80歳近くなっても新人のコンクールを聞きに来ていて、○○さんの第2パーツの7番目の音を聞いて、これが求めていたものだと思わず手を打ってしまったという話がある。
     いくら年を積み重ねたとしても、好奇心と新しい音を求めている。
     彼は消えているような最弱音から雷のようなフォルテッシモまでの音量、音色を自在にあやつり、88鍵を支配する演奏は、感動に尽きます。
     ショパンも勿論いいですが、私はスーザ作曲の「星条旗よ永遠なれ」のホロヴィッツ編曲と超絶演奏など絶品だと思います。
     1989年11月5日。ピアノ史の一つの時代が終わりました。
     さみしいです。

     ホロヴィッツにかまけすぎました。
     もう一度、教育のインプット、アウトプットの話です。
     人はえてして少ない教育時間で大きな収入を望むものであるが、これは基本的に失敗で終わるものである。
     子ども達は少なく勉強して、おいしく生きたいと思う。
     しかし少なく勉強すれば、一層少ない収入で我慢するしかない。

     かれらは誤解している。
     6・3制の義務教育という言葉がある。
     これはかれらが教育を受ける義務があると思っている様だが、そんなものはない。
     義務があるのは親であり、子供は教育を受ける権利があるだけである。
     そうすると権利だからと往々にして乱用する。
     面白くない授業だと騒ぐとか、はたまたサボるとか、権利を放棄して得意がるとか…
     いいでしょう。時代は自己責任なんです。
     つまり勉強せず、いろいろなことに分らないことをそこらじゅうに残して社会に出ていく。
     そうすると文脈の中に分らない言葉が沢山でてきて、意味が分らなくなり、トンチンカンになったり、落伍して職を失くしたりする…

     いろんな無駄なことを覚えたり考えたりして研鑽してきた人は、Aが無駄になってもBやCやD…がある。
     そしてそこでパフォーマンスを納めていけるのである。
     できる人は、リスクをヘッジする沢山のリベラル・アーツに囲まれているのである。
     学生として、社会人として、深いリベラル・アーツを身につけた人には、豊かな選択肢と豊かな人生がある。
     どんなに年を取っていても、今日は明日の自分より若いのである。
     今、この瞬間を一所懸命勉強して未来に向いましょう。

    理事長  井上 健雄

  • とりとめのない話

    (生命の歴史とヒトの住むべきところ)

     私たちは、30億年前にプロテインワールド仮説による細菌としてスタートしている。
     ザーッと時を超えて4億年前、私たちは魚に進化した。
     そして時を駆けて1,000万年前において、私たちはやっとチンパンジーと同列の世界にいた。
     そして今、私たちはヒトとして生活している。

     ヒトをしてヒトたらしめたのは、脳の重さだと言われているが、実際どうだか分らない。
     脳の重さならネアンデルタール人の方が私たちヒトより大きかった。
     私たちヒトは、ここ1万年は脳は小さく進化しているのである。
     つまり脳が大きい種はエネルギーを使うので、今後数10年~数百年先に訪れるであろう大飢餓に備えているのかも知れない。
     または、大多数の人々がAI等に使われる人びとであったり、考えることを求められない人がふえる傾向に合致しているのかも知れない。
     小脳化は、なんか考えると恐ろしい…

     地球の生命の歴史40億年の中でも、取りわけ好きな年代がある。
     カンブリア紀である。
     5億4千百万年前から4億8千5百万年前の時代である。
     この頃に、生物の爆発的進化が起ったのである。
     そして、いろいろな動物のボディプランが出来あがったのである。
     そしてそれまで流体骨格であったボディに、骨が登場してきたのである。
     この骨が運動、身体の保護と支持という生命力維持の3つの役割を果したのである。

     なぜカンブリア紀に生命爆発をしたかというと、海水中のリン酸濃度が増加したとある。
     つまりヒトの骨格はリン酸カルシウムでできている。(勿論、炭酸カルシウムの骨格もあればシリカ骨格もある)
     骨が出来て、そして眼の発達もあり、動物の爆発が起こったと考える。
     それぞれの種が、ボディプランを実現できる環境を、地球が生みだしていたのである。
     こんな時代に生まれていれば、自分の考えるボディプランが今も続いているかも知れない。
     勿論三葉虫なんかではありませんよ。

     このように考察してくると、ヒトは地球を離れて生存もできないし、自然を壊してしまうことは、ヒトとしての生命を止めてしまう大惨事である。
     大都市は、地球自然に巣くうパラサイトであり、自然と共生社会を築くエコビレッジこそが、中間解ながらのソリューションになるのだろうか。

    (注)
     生命の起源は、DNAワールド仮説からRNAワールド仮説、プロテインワールド仮説等、様々ある。
     今は、タンパク質がまずはじめに存在し、その後タンパク質の有する情報がRNAおよびDNAに伝えられたとするプロテインワールド仮説が主流らしい。

    理事長  井上 健雄

  • どう生きることが自分なのか

     北朝鮮は武装、それも核武装を速めているし、日本は平和憲法のもと攻める軍隊を持たないとしている。
     金正恩の命令一下というか、北朝鮮が「核爆弾落とすぞ!」と言われたらどうする。
     「平和憲法の下、平和主義だ!」と言ったところで、何が起こるか分らない恐ろしい状況となる。
     核を持っている国は、いつも相手に「落とすぞ」と叫び、優位性を保ち防衛している。
     持たない国は、(例)「アメリカさんお願い」となる。
     とすれば、武装したほうが良いのかな、となる。

     しかし1億年以上かけて、武装解除して成功しているものもいる。
     あのかたつむりである。
     裸でいると鳥なんかにすぐやられるので、巻貝で身体をまく方法を持っていたのである。
     一方で、なめくじは一生裸でいることを選んだのである。
     ダーウィンの進化論で考えれば、どちらが進化した形なのでしょう。
     なめくじは、裸でも、殻がないから狭いところに逃げこめるし、カルシウムで殻を作る手間もいらないから、こりゃいいやで、かたつむりの出た3億数千年前から遅れること1億年後の2億年前頃に登場したのである。

     これは大した決断であった。
     鳥より恐い人間にエスカルゴにされることなく、人に厭われ、歩く跡を銀色に光らせて堂々としている。
     武装解除は、素晴しい成果を納めていると言える。

     人間(国)の争いも、武装解除こそが最適解であろう。
     あのかたつむりさえ、1億年かけて進化したのだから、人間の進化にはどれ位の時間を要するのだろう。
     その間に「○○国が××国の属国にされる」とした事態が頻発するようなら、それも悲しい。
     その上、時間をかけるということは、エントロピーを増大させることであり、時間は人を死なせ、構造物は風化し倒され、熱あるものは冷める。
     この法則に対し、時間をかけ何かを願うことは矛盾している。

     カミュが、人はいつも死に向かっているので、明日こそは、来年こそはと願う。これを不条理としている。
     不条理とは、実存主義用語で人生に意義を見出す望みがないことを指す。
     私も若い時(と言っても晩生(おくて)だった高校生の頃)不条理かぶれし遊び倒し、本ばかり読んでいたものである。恥ずかしい。

     今なら、時間の矢はエントロピー増大の一方向に走るとも、その一瞬いっしゅんをかけがえない時間として楽しみ、少しの色気も出して世の為、人の為に働きたいと思う。
     今、NPO活動に喜々として携わっていることが、私の生きる、活きる道だからである。

    理事長  井上 健雄

  • 緑陰に山思う

     緑滴(したた)る。
     清涼感に富む夏山を表現する言葉である。
     こうした時季には、山に入り涼を楽しみたいものです。

    「知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しみ、知者は動き、仁者は静かなり、…寿(いのち)ながし」

    論語・雍也篇

     日本には山がある。
     日本人がビシッと立っている為には、背骨である山がしっかりしていなければならない。
     その背骨の健康を、山の達人・智慧ある人、速水亨氏(速水林業代表)の言を聞いた。

     山の維持は、少なくとも50年先を見てお守りするものである。
     これではなかなか企業では面倒見切れないだろう。
     でも素人が考えれば、木を持っていれば毎年自然に成長する、おいしい資産でしょうと。少なくとも今の金利よりいいんじゃないかと。
     しかしモノの値段はグローバル化の中で、外材輸入や違法伐採の流通で、値が崩れ落ちているという話だ。
     1m3の山元立木価格は、1980年に42,927円したものが、2012年には6,856円にまで降下しているという。
     80年比16%。
     時間をかけて山を整備しても、木の価格が1/6になれば、大赤字、と言うより経営である。
     その上、速水氏の山で1万m3(3年分の伐採量である)もの木が一晩で倒れてしまう台風被害も日常茶飯事である。

     こうした山を維持するのは、個人や一企業では大変困難なことである。
     国としてか、世界政府のようなもので山(自然)のあり方を考え、保全しなければならない。
     あの環境破壊の国、中国でさえ北京オリンピックにはFSC認証材を使ったのである。
     日本もそうあって欲しいが、そんな流れではないらしい。
     これだけとれば、どちらが成熟した先進国なのか疑わしい。

     木の知識もその専門家によると、まだまだ未知の領域らしい。
     一般的に、針葉樹の森は山崩れし易く、保水力も弱いという。
     しかし針葉樹、広葉樹にそんな差はないとの事です。
     あるとすれば、それらが生えている地質、水系の方に問題があるのである。
     その上、針葉樹と広葉樹には人間の扱い能力に歴史的な、と言うか天文学的な時間差がある。
     針葉樹は3億年前位に地球に登場して、1億数千年前に種として安定してきたらしい。今540種ぐらいである。
     これに対し広葉樹は、1億数千年前に、針葉樹に遅れること1億年以上たって登場している。そして20万種もある。
     人間は、広葉樹をコントロールできる状態ではなく、それは神の領域だと表現されている。
     つまり進化のステージの真っ盛りらしい。
     恐ろしい程、気の遠くなる時間のとらえ方で山を考えておられる。
     単純にず~と昔から木があり、山があったと思う自分にあきれてしまう。

     グローバル時代と言えば、空間的・距離的にも地球レベルに広がっているのに、企業の収益単位の時間は、極端に短い。
     ファイナンスの世界では、10年ならすごい長期なのである。
     50年を軸とする林業時間は、ケタ外れているとも言える。
     このように考えてくると、現代人が生物や植物と本当に共生する素地があるのか。

     緑陰に書を広げたが、山の深さ、地球の不思議に思考は止まり、唯、畏敬のみが残る。
     人は、深く、広く、自然との共生の中に人類の生存を考えねばならないのである。

    理事長  井上 健雄

  • コラボレーションの心得

     コラボレーション(ここでは組織の枠を超えたものを中心とする)を持ちかけられることが多い。また、コラボレーションの仕組みづくりに参加することもある。
     コラボをしようとする人は、それぞれ掲げる旗への共鳴とリスペクトが必要である。
     但し、各自の旗に夢中になり他の旗を認めないと、それはそれで問題をひき起こすので、十分な注意力が必要である。
     その上、それぞれが閉ざされた組織・仕事にいる人がコラボを頑張ろうとすると、共鳴板の大きさに限定され、お互い響きあわずコラボにならないことが多い。
     もともとコラボは、開かれた頭の人たちの領域であることを弁えたい。

     そこで私は、コラボづくりをしようとする人に、以下の5つの徳を納めることをおすすめする。

    1. コラボで実現したい目的・目標を明確に持っている
    2. 自分にかかわる人たちに対しいつも誠実である
    3. 自分の殻を破る勇気を持つ
    4. 自分のうなづけないことに対しても寛容である
    5. あらゆるケースにおいて礼節を保つ

     そして、コラボ参加者として、いいコラボを欲している人にも、アドバイスがある。

    1. 自己の掲げる旗と周りの旗とを調和させながら(上位)目標を実現させる意欲を持つ
    2. ポジティブ・シンキング&アナウンスメント(何でもいい方に取り積極的に考え、発言する)
    3. アクティブ・リッスン(相手の言うことに耳を傾け積極的に聴く)
    4. ポジティブ・リアクション(相手の言うことにまずYes、その上で少しのButを)
    5. 周りの人々へのリスペクト(会に集う人々を尊敬する)

     こうした条件を考慮に入れた人々が、コラボレーションのパフォーマンスを得ることができるのである。

     このことから分る事は、コラボレーションの為には自分の枠を変えられる、他人の考えへの共鳴力が必要だということである。
     そして一番大事なことは、「強い燃えるビッグピクチャーを持っていること」、それがスタートである。

    理事長 井上 健雄

  • なにわECOスクエア感動中!

    1606今年度、新しい仕事として、「なにわECOスクエア」の運営を受託しました。
    始めはてんや-わんやの大騒ぎでしたが、やっと軌道に乗りつつあります。
    この施設には、棚田の水田や畑、なすびや砂糖黍、おいも…、蓮池、河骨(こうほね)、野草広場や雑木林…。
    不耕起で古代米への挑戦やなにわの伝統野菜等々。そうそう、鶴見の蓮根はとてもおいしいんですよ。
    鶴見緑地の一隅に自然が一杯。
    青サギさんはじめ、いろいろな鳥さんも沢山訪れる憩いの場。
    生物多様性と農事とのうまいバランスを保ちながら維持したいと考えています。

    田植え(6/12)には、子供さん連れのご家族、エコボランティアさんスタッフ等が80人以上、みなさんが泥まみれになりながら楽しく苗をうえました。
    小さなお子さんが「どろが楽しい~~」などと。
    除草剤など使わないので、草引きもお願いしております。堆肥づくりもしています。
    残念なのは、設備の老朽化か何かで水の循環がうまく行かず、植物の成長がちょっと心配です。

    そんなこんなで今年の夏は、なにわECOスクエア三昧です。
    最も暑い夏と予測されていても、へっちゃらです。
    この暑さをなにわECOスクエアとともに風流に浸って涼しく過ごそうと思っています。
    そこで、清少納言

    1606
    -蓮池にて-
    清楚で可憐な蓮の花

    夏は夜。月の頃はさらなり。
    闇も猶。螢の多く飛び違いたる、
    また、ただ一つ二つなどほのかにうち光りて行くもをかし

    清少納言より少し前の在原業平を語ったとされる伊勢物語。
    プレーボーイ源至(みなもとのいたる)の女車があります。
    夜、家路につこうとする女人の顔を見ようとして、車の中に螢を放って簾(す)越しに顔を見たとある。
    夜目、遠目、傘の内と女性が美しく見える三要素。
    夕闇、簾越し、螢の淡い光。
    この人が本藍染めの花薊(はなあざみ)の柄の本木綿の浴衣を粋に着こなして…
    これで美人に見えないとしたら、なんとする…

    このなにわECOスクエアに出会い、私たちも、また一つの天職に巡り合ったという感じです。
    自然との対話を楽しみ、感動しています。
    みな様もこちらにいらっしゃったら「来た!見た!感激した!」と言われることでしょう。
    藍染め、コットン等、環境学習講座もいろいろあります。まずエコボランティアに登録してください。
    なにわECOスクエアでお待ちしております。

  • 能力の伸びは青天井

     人の能力は、どこかでピークをむかえ、徐々に下降する人が多い。
     良くて平原状態を維持する。
     しかし私は、人はいくつになっても成長すると思う。

     この成長する能力の中身は異なる。
     この例を羽生永世名人の言によると、将棋の強い要素として、三つをあげている。

    一、読む(数手先から何百手の先まで)能力
    二、ひらめき
    三、大局観

     読みは、若い10~20代位までの人々の特権である。
     勉強して、研究して、対局して身につける能力の時代である。
     この能力は、若い頃が最高だと言う。
     そして30~40代になると、読んで読んだあとの総合的判断としてのひらめきが生まれる。
     これが、勝負の決め手となる鬼手とか、○○マジックと呼ばれたりする。

     しかし強く勝ち続ける為には、50~70代にかけて醸成される大局観というものがあるらしい。
     羽生さんがこの能力をきちんとつけると、大変なことになるだろう。私たちは彼の次元を超えた偉業が待ち遠しい。
     つまり能力は、いくつになっても成長するものらしい。

     十五世名人大山康晴さんは、読むのでなく局面を眺める感じで、最善手を打たれたという。
     この大局観は、読みとひらめきの時代を一流で過ごした人に訪れるものである。
     これは他の仕事においても同様だと考える。
     読むとかひらめきは大脳皮質の働きだが、大局観になると大脳の基底核の働きだと言われる。脳の中で動いている所が異なっているらしい。
     つまり答えだけが浮びあがる状態だそうだ。
     だから強い人ほど感性が優れ、美しい棋譜で勝つのである。

     「俺は大局観に秀れている」と自慢する人がいる。
     若い時代に真剣な研鑽を積んでいない人の大局観は、偽である。
     一人ひとりが自分の年代にあった能力に磨きをかけて欲しい。
     そこにいろいろな青天井が待っている。

  • 頭はどこで使う

     この世の中、不思議が多い。
     この間ある雑誌を読んでいたら、30代で!老後に備えた資産形成を始めている人は62%。
     日本って随分心配性の人がいるものだと思います。
     考えるなら保険と資産運用じゃないでしょうか。
     私が学校を出て就職した頃は、自分が亡くなったり、病気にでもなれば(これらクリアーして今も元気にピンピンしてますが)周りに迷惑かけるかと、生命保険に入っただけです。

     資産形成だと言って、戸建てを無理してローンで買っても、役に立つのでしょうか。

    <例>
    土地を1500万で購入
    家を2000万かけて作る
    15年目位に850万のリフォームをする

    そして、20年経ち子供たちも家を出たので都心の小さなマンションへ
    この時、資産の販売代金は土地代の1500万円のみ。
    資産形成は、

    1500万 × 100 ≒ 34%
    1500万+2000万+850万
    つまり投資金の34%しか回収できないことになります。

     考えるべきは、人口動態なりもっと社会に目を向けての対策が必要です。

     家を買う時の制度的矛盾に目を向けてみましょう。
     家を買えば消費税がかかります。
     しょうがないか!でも毎年固定資産税も取られますよね。
     消費したものに尚、税金。
     おかしくないですか。これって矛盾してますよね。
     私ならこう考えます。
     20~30年で建て替えねばならないものならば消費税のみとして、50~100年持つ優良資産なら固定資産税のみという考えです。
     時代は、新築偏重の社会から、長期優良資産形成への変化の過程に入っているんですから。
     従ってこうした声を上げ、主張することが、単なる資産形成に励むより生産性が高いのではないでしょうか。

     政治的発信・行動よりもう少し早いソリューションなら、省エネ化を進めるべきです。
     無断熱の住宅を改修し、断熱構造にすると、省エネはもとより医療費が、年間47,000円下がったというデータもあると聞いています。(cf. 積水ハウス和田勇会長兼CEO(談))

     つまり、家だけを見ていても問題は、解決しません。
     政治、エネルギー、健康などいろいろなファクターの分析、組み合わせに解があるのです。
     そして将来への不安への本当の解は、自分の頭に投資することです。(クレグレも整髪剤やRiUPに金をかけることではありませんよ)

    理事長  井上 健雄

  • 海が危ない されど漁業

    地域おこしを6次産業化で(6)

     私たちは、新資源6次産業化に取り組んでいる。
     農産物から山林の林産物。そして漁業における海苔など、多岐に亘る。
     産品はいろいろあれど、ベースは地域創生であり、地域に事業や職を生みだすものをと考えている。

     北風もピュッと吹きますが、あぁ春ですね。太陽の角度も変わり暖かみを加えています。
     海の中のわかめさんも、これから旬なんです。寒中から春先にかけて生えてくるわかめの新芽、本当においしいんです。
     まず、のりについて始めます。
     ご存知のようにのり養殖は、9月中旬に陸上で採苗(びょう)した網を、10月上旬から海上で育苗開始するものです。
     11月から4月半ば位まで、網を交換しながら生産するものです。

     この養殖の成否のポイントは、秋口からのスムーズな水温低下にあり、養殖ののりの品質を上げ、生産量も増やします。
     しかし、近年の地球温暖化により高水温停滞期が長くなり、のり養殖が苦戦しています。

     つい先程、日経ビジネスの最新号(2016年2/29号)で「のり凶作も原因分らず」という漁協の代表理事組合長の記事があった。
     組合長さんは「ここ40年やっていて、ここまで悪いのは初めてです」つまり不作ではなく凶作だとされている。
     海水温まで1℃位高くなっています。
     千葉の水揚げ量は、7~8億もある漁協における話です。深刻です。
     普通は11月~1月までに7億円位の水揚げがあるものですが、今年は1,000万円ほど。70分の1です。
     240人おられる組合員のうち、10人が今シーズンの水揚げ量0。

     水温が下がらなくても、木枯らし1号が吹けば、暖かい海水も撹拌されて海水温は下ります。
     この木枯らし1号も遅れたのです。
     のり養殖は、経験が役に立ちにくく、海流の蛇行や木枯らしの吹き具合、採苗・育苗の様子など年々変り、1年1年を新入生のように、自然に対処するしか方法がないのです。
     つまり、あまり経験が役に立ちにくい仕事なんです。

     こうした状況で、漁業関係は大変厳しい現実に直面されている。
     そこで、私たちはのりやひじきなどより深い5~10mほどの水深に良く生えるわかめに注目しています。
     そのわかめでも、今十分に活用されていない海草の根、めかぶをしっかり活用する方法を、 新資源6次産業化として取り組もうとしている。
     わかめが成長すると岩についた根の部分近くをめかぶといい、栄養価も高いのです。
     このめかぶ、茎、根の部分が今、十分活用されていません。
     これを、地域(漁協・県・住民)の方々と都市ののりメーカーさんとが組んで、地域に仕事の創出と事業興しと、利用市民には新たな機能性をもったわかめを提供したいと考えているのです。
     灰干しわかめなどもやってみたいなと思っています。
     わかめ、のりなどいろいろお悩みの方は、私どもに一報ください。

    ※千葉県HP「ちばの輝き」より
    1996-2006年の年平均は、1976-1985平均に比べ約1℃上昇している。

  • 生物多様性、ヒトを守り健康をつくる

    植物とは、動物との対比では、草や木のように根があって場所が固定されて生きるものです。
    また、太陽との関係において、光合成する生物を植物といいます。

    この植物は、生き残る為に昆虫や鳥、また菌(病原菌)とたたかう備えとして、いろいろな智慧を持っています。
    植物さんと菌との戦いを見ましょう。
    菌の侵入は、植物の葉の裏の気孔から入ろうとするのが常道です。菌は、エリシターと呼ばれる物質を出して、入り口を探すのです。
    すると植物は、エリシターを感知すると気孔を閉じて、菌の侵入をブロックするのです。
    しかし閉じられたとしても、菌は細胞壁の弱い所から破り入ってきます。
    そこで細胞内にバリケード物質をつくり防御をはかります。
    このバリケード物質の最たるものが酸素です。
    この大量発生は、オキシディティブバースト(酸素大爆発)と呼ばれています。

    菌にしたってもう酸素なんか恐くないものが多くなると、植物は、病害虫の最たるアリさんまで取り込んで、アリさんに住居を与え、花の蜜まで与えます。
    そうするとアリさんは、葉っぱを食べようとする毛虫などを追っ払ったり、やっつけてくれます。その上、宿主に絡みつくツルなども噛み切ってくれるという、強力なボディーガードになってくれるのです。共生です。
    本当に不思議です。

    しかし、これだけでひるむような虫や、やわい菌ばかりではありません。
    そこで、植物は自己の中にいろいろなものを生成し、自己防衛力を高めているのです。
    たとえばミカンの皮にはリモネンという精油成分があります。洗剤にも用いられるものですが、もともとミカンの果実を守るための抗菌物質です。
    お茶のカテキンにしても病害虫から身を守るためのものです。
    人間の体にいい物質として、ブルーベリーのアントシアニンやフラボノイド、ポリフェノールなども本を正せば植物が、我が身を守る抗菌物質なんです。
    それが人間にとって、活性酸素の生成を抑制し、血液をきれいにする。また血小板の凝固を抑制し血液さらさら効果など、人の健康にいろいろと役立ってくれているのです。

    少し強引かも知れませんが、生物多様性が守られた環境そのものに、ヒトは、生かされていると言えます。
    少し安直ですが、『生物多様性を守ることは、凄く大事なことだ』と、申し上げたいのです。

    理事長  井上 健雄

  • 地方創生を若者、馬鹿者、余所者で!

    中央省庁が旗を振っている「地方創生」に寄りかかり待っているようでは、創生はない。
    なぜなら地方の政治・社会構造を旧のままに置いて、成長はないからである。
    そして地方府の長を地元の名士が順繰りでやっている所に、「清新の風」は吹かない。
    なぜなら既存の利権を維持したままで、地方活性はない。
    旧勢力が頑張っているとしても、それが地方府の社会、財政の悪化、若者の流失を止めていないなら、失政をしているに過ぎない。
    つまり名士のお金持ち仲良しクラブに、改革など期待できる筈もない。

    しかし、旧勢力や公だけが問題だとすれば良いのか、いいや良くない。
    ある意味、民も公に甘え、過剰なサービスを公に要求している事実に気づかねばならない。
    自分らで出来ることを自分たちでするという「しんどい意思決定」をし、そして実行することが求められている。
     「共助」の精神が地方府の無駄金使いを止め、財政健全化への大きな一歩となるのである。
    つまり地方府は、国や県の通達や指示のもとに仕事をするべきでない。
    自分たちの「地方」のあるべき形を考え、考え抜き、そして地方府がデシジョンをすべきなのである。

    そんなおいしいことを、日本のどこに成功例があるのだとおっしゃる方もおられるかも知れない。
    そこで私は、長野県の最南端 下伊那郡の中央に位置する「下條村」を紹介する。
    人口3,963人、面積37.66km2、70%が森林、標高が332m~828mに点在。
    この村が奇跡の村と呼ばれる。

    合計特殊出生率(2011年)  全国1.39人  下條村1.92人

     この奇跡(本当は、民間感覚の誠実な政治。その主、伊藤喜平村長の手腕とまわりの共助)は、1992年村長選挙(投票率96.22%)の伊藤喜平氏当選に始まる。
    ここで伊藤氏の施策を語ることはしない。(ネット等に情報はあふれている)
    出生率がかってに伸びたのでなく、いろいろな施策の総和として1.92を実現したのである。
    もちろん「メゾンコスモス」と名付けられた集合住宅がバネになったとしても、

    • 家賃3.5~3.6万円(若者限定)-国・県の補助なし-紐つきだと自由な選択ができない為
      2LDK(約20坪)、車2台分のスペース有
    • 2006年までに10棟、一戸建て含め178戸
      家賃はさらに値下げされ、3.3~3.4万円
    • 小・中学校の給食費30%補助、2014年から半額補助
      2015年から第3子の保育料無料
    • 第2子出産祝い金5万円、第3子出産祝い金10万円
    • その他、入学祝金を商工会の商品券で配布などあり

    ※ 健全な財政でなければこうした取り組みはできない。

     地方創生の政治のあり方、人について記述した。
    そして私たちの6次産業化も、下條村の伊藤氏などの人物の登場が必要である。
    私たちの進む6次産業化についても、人の果す役割が大きい。
    旧来の一次、二次、三次などの既存の枠組みの中で活動するものでなく、一~三次までを通した形でソリューションを描くものである。
    6次産業化の成功の為に、地域の中で改革や進取の気象に富む人(出来れば若い人)たちが必要である。
    地域を変えるには、若者、馬鹿者、余所者(よそもの)と俗に言われる三者がいる。

    若者 :
    既存の枠に捕われることなく、新しいことにチャレンジできる人。
    そして地域を良くしたいという改革の灯を絶やさない人。
    馬鹿者 :
    頑固一徹で自分の仕事、つくるものに一生を掛けて悔いない人。
    基本的に人の言うことを聞かない人。
    余所者 :
    地域外の人であるが、その地域について地域の人以上の愛着を持ち、地域の良さを地域の人々と創りあげたいと燃えている人。6次化について深い知識を有する人。

    こうした人々と地域創生を6次産業化でしようとするのが、私たち「新資源6次産業化研究会」である。

    (注)今回の挨拶の言いたいことのキーワードとして、7つを太字にしている。

    理事長  井上 健雄

  • 「地域おこしを6次産業化で(1)」

    -当レポートはシリーズで6回位を予定している-

     私たちはこの度「新資源6次産業化研究会」(略称;新資源6化研)をたちあげました。
    当会は、地域の人々を中心に地域の産物の新しい使い方、新しい効用を発見し、それを商品化するための新技術や、その組み合わせによる高付加価値商品づくりを支援するものです。
    これらの一連の動きのもとに、一次産業(農林漁業)からメーカー(二次産業)、販売やレストランそして観光に至るまでの第三次産業の三つを一気通観するブランド化などの仕組みを創造するものです。
    私たちしかできない商品の安全・安心と機能性を評価する第三者評価委員会という商品価値を社会的に認められる枠組みを持っていることです。少し自慢です。

    単に流行りだからの6次化ではありません。
    一次商品の販売や、単に一次加工だけしていては、地域にお金が少ししか落ちません。
    これを二次加工や最終商品で販売すると、経済循環効果により地域経済にとって効果はより大きいものとなる。
    だから地域おこしにつながるのです。

    そうすると、地域の産物だと何でも良いのかとなると、そうではありません。
    その産物は、他の地域にない絶対的な優位であるものが望ましい。
    もし絶対的とまで言えなくても、他地域より相対的に優れているものを必要とします。
    よって地域産物は、地域の豊富なストックであるものが望ましいのです。

    地域住民は、地域のストックだが、住みにくいとか、買い物が不便とか、仕事がないとか、の事情からまず若者がフローとして出ていき、地域の現状は、高齢化ストックの増加とともに、衰退化に向うことになります。
    こうしてみると、地域はこれから大変な問題を抱えていることが分ります。
    このような地域の現状を6次産業化により、若者が帰ってくる、若者が集まってくる元気な地方に変えたいのです。

    まずどこの地域も、基本的に自然資本に恵まれています。
    つまり一次産品を中心に、二次→三次とつなげ、付加価値を上げる取り組みをうまくすれば、どこもがブルーオーシャン(競争のない世界を創造する)だということが分るだろう。
    うまくが私たちの仕事と考えます。

    そして地域が人口減に悩めば、人的資本が少ないかと言えば、必ずしもそうとは思いません。
    木のことをよく知る古老とか、一次加工の伝統的技法、産物のおいしい料理などなど、諸々に名人が隠れておられることもあるだろうし、都会から地域おこしに参加する意欲に溢れる若い人材もいる筈です。
    こうした人材を目覚めさせ、活性化させれば、人的資本もあります。
    そうすると、それを活用した結果として社会的資本も充実することになります。

    ちょっと難しく言えば、私たちの地域おこし、6次産業化の取り組みは、「地域」の人々と汗を流す「構造改革」を行うことにあります。

    理事長  井上 健雄

  • キリギリスに歌わせ、アリは稼ぐ!

    ~ グローバル化からホームバイアス化へ ~

    この厳しく暑かった夏もそろそろ終焉か?
    少なくとも朝夕に渡る風は秋。
    この夏、うるさく鳴いたセミ、キリギリス…せっせと働いたアリさん…も秋を迎える。

    イソップ寓話
    夏、歌い遊んだキリギリス♪♪♪
    冬になって食べ物がない。アリさんに食べ物をネダル。
    アリさん;『夏、楽しく歌ったのだから今度は踊られたら…』

    これはギリシャ危機のギリシャとドイツに似ていなくもない。
    しかし本質は異なる。
    ドイツは、ギリシャにせっせと金を融通していたのである。
    エッ~~!ドイツって、優しい国なのね…
    イヤ!それは違います。

    少し考えてみましょう。
    たとえば、ドイツのインフレ率が1%とする。
    名目金利を2%とすると、2%-1%、つまりインフレ調整すると1%となる。
    しかしこれを、ギリシャでインフレ率を20%(2011年)とすると、実質金利は2%-20%でマイナス18%になります。
    つまり、ドイツで2%の金利を払い100ユーロ借りて、ギリシャで100ユーロ投資します。
    20%のインフレ率ですから、1年後120ユーロになります。
    つまり120ユーロで売って、102ユーロ返済するなら、18ユーロ儲かるという訳です。
    同じユーロですから、ドイツで投資するよりギリシャに投資した方が得になる。
    (ここの所はもう少し詳しい説明がいるんですが、割愛させていただきます)
    『つまり、インフレ率の低い国で金を借りて、高いインフレ率の国に投資すれば良い』
    せっせと貸す事は助けることでなく、儲けることになっています。
    ドイツは賢いアリさん?

    でもギリシャ政府にデフォルトを出されると、稼いだギリシャ債権が紙屑になるので、今度は損失に変わります。
    だから延命策に懸命です。
    こうした事象に対し、予防的になると国を超えたグローバルリズムに変調が出てきます。
    この現象をきっと逆グローバルリズムと呼ぶべきなのでしょうか。
    今後、金(カネ)が自国内で動く率が増えることになります。
    これをホームバイアスといいます。
    世界的にみても、お金はホームバイアスしています。
    北米なら90%前後、日本やオーストラリアで80%。
    なのに欧州は60%前後です。
    つまりEU内で金が自由に動き回って、有利な所に金がいっていることになります。
    強い所はより強く、弱い所はより弱くと…
    EU政府、EU全体のコントロール体がない所では、こうなります。
    グローバル化の社会において、防衛的には、グローバル化とは逆のホームバイアスのかかる社会になっているのです。
    これは興味深く、また示唆的でもあります。

    これが企業内で起これば、「蛸の足食い」になります。
    正常な努力を見極めることが必要です。
    それぞれお考えいただければ面白いかと思います。

    理事長  井上 健雄

  • Zero to One

    金正恩が最高人民会議で○○××なる言葉を3度出したら、韓国軍は迎撃ミサイルの発射のボタンを押すとか、物騒な世の中になるかも知れない…
    これは現実の問題である。

    2013年12月、アマゾン・ドット・コムは、「8615473132」という特許を取得している。
    これは予測発送の特許であり、それは例えば、○○氏のプロフィールや購買履歴、ほしい物リストのデータを基に、○○氏が注文する前に○○氏の居住エリアに商品を送り出してしまうものである。
    その成果をあげる為に、プロモーションメールやWeb広告で刺激するプログラムも用意されている。
    将来的に、配送コストをいかに下げるかの競争に対し、トラックに余裕のある時に○○氏の居住エリアのデポや○○氏の自宅に向けて商品を動かせる仕組みである。
    到着までに注文がなければ空振りとなり、返送などの物流コストを圧迫することになるので、アマゾンでは日々の取引データの蓄積、アルゴリズムに磨きをかける実験に入っているのである。

    その他、コールセンターにかかってくる詐欺師の電話を1/10に激減させた予測システムや、将来の健康保健者の発症確率を予測し、医療費削減プログラムに取り組んでいる団体とかもある。

    もう一つ書き記したい。
    2013年12月には時価総額9,700億円に達したパランティール・テクノロジーズは、ビッグデータ分析専門コンサルタントである。
    個々の顧客はFBIとかCIAなどだけでなく、ニューヨーク市警などである。
    あらゆるバラバラの情報を収集し、分析し、ビジュアルマップやヒストグラムチャートを作りあげる。
    情報とはSNSや電子メール、クレジットカード履歴、航空チケット購入記録等々、個人の言語分析までしてまる裸にしてしまう。
    ここの共同経営者のピーター・ティールは、ZERO to ONEの著者としても有名なカリスマ・ベンチャーキャピタリストでもある。
    この著書は、1を2や10に、100にするのではなく、まったくない所・物、つまりゼロを1にするべきだと強調している。
    競争に勝つとか競争に陥るものを作るのは、無能さにあるとしている。
    この考えは、素晴しい。
    私もZero to Oneを心がけたい。

    理事長  井上 健雄