カテゴリー: 2021年

  • 社会課題にどう取り組むべきか【11月】

    現代社会においては、GDPでは満たされないニーズが拡大している。
    GDPは、ハーバード大学の経済学者サイモン・クズネッツが1934年に提唱したものである。
    GDPは、一定期間内に国内で生み出されたモノとサービスの総額であるが、このGDP指標もすでに80年余りを経過し、この指標だけでは人々の幸福感などが入っていないので、新指標が求められている。
    アラブ首長国連邦は、2016年に、幸福大臣の役職を新設したし、ニュージーランドのグラント・ロバートソン財務相は、幸福予算を編成している。
    ロバートソンによると、成功という概念もGDPからもっと広く深いものへの変更が必要だとしている。
    ケンブリッジ大学のデビット・ランシマンは、投票権について言及している。
    平均寿命の延びによる高齢者優先にならないように、6才以上の人に選挙権を与えるべきだとしている。
    これは暴論的だが面白い。結構考えるべき余地もある。日本もこんな教授がどんどん出ればいい…

    日本でも、経済社会システム総合研究所会長小林喜光氏は、経済プラス健康や生活、そして持続可能性を確立させるウェルビーイング・キャピタリズム(快適資本主義)を主張されている。
    そして、小林氏は、経済のフロンティアが、重さのない世界に移行しているが、日本はこれらの変化に対応できず、日本病に陥っているとしている。
    つまり、モノからコトへ。そして、コトから心への変化に対応できていないと言う。
    嘗て、重工業化や自動車・電機産業で稼ぎ、成功したが、半導体位からつまずき始め、医薬品、サービスの分野では、世界の後塵を拝している。
    世界と同じように商品開発やイノベーションを志しているようで、その取り組みの方法論が、古く、貧しいように感じる。
    このように、産業界の動きが、世界にキャッチアップ出来ない中で、気候変動は、社会構造や民主主義の基盤までを崩す勢いにまでなっている。
    しかし、こうした課題に直面した時、モグラ叩きのように、表面の課題に取り組むのではなく、構造的な問題にまで入り込み、総合的な状況分析の上、錐のようにスモールな一つのソリューションに入るべきなんです。
    こうした巨視的なスケールから個別課題の検討のための一助として、ポール・ホーケンの「ドローダウン」を紹介したい。
    この本は、地球温暖化を逆転させる100手法について、述べている。
    ポール・ホーケンの著作は、どれも人々を元気づけてくれます。
    勿論、突っ込み不足や、不完全な情報もありますが、うまく活用し、それぞれの課題探求のモデル例位に考えて、未来への希望と人間能力への信頼を手に入れる独創的デザインづくりに邁進して欲しいと思います。

    理事長 井上健雄

  • 健康の極意  【12月】

    自然は凄い。
    海水1Lに30億個のウィルス。1gの土に100億から1,000億の微生物(その種類にして6,000~5万種も)。
    人間も凄い。
    発生学的に言えば、受精卵から最初に作られた臓器は腸でないかと言われている。
    その大腸には100兆個を超える常在細菌が生息している。
    人の細胞は、37兆2,000億個。人の遺伝子の数は2万1,306個(ジョンズ・ホプキンス大学が2018年ネイチャー誌で発表)。
    人は、人の細胞と遺伝子に数倍する常在細菌とがコラボレーションして成り立っている。
    この常在細菌が、臓器等とインタラクティブなコミュニケーションを築き、私たちの健康を最適化させてくれているのです。
    腸の役割の主なものは以下である。
    〇人に利用可能な栄養素を作る
    〇糖や脂質などのエネルギー代謝を維持する
    〇消化器の機能を維持する
    〇内分泌の調整
    〇メンタル・脳機能の維持・調整等をしている
    人は微生物と共生している存在なんです。
    従って、抗生物質や殺菌剤などよくよく考え、使うべきなんです。
    農薬で汚染されたものを食べると、この常在菌が死んだりして、菌のかく乱が起こり、健康に変調を起こしたりする。
    あのO-157の事件だって、抗生物質ばかり投与されて牛の腸内の大腸菌が、ベロ毒素を出すO-157に変化した結果なんですから…
    腸内物質叢のバランス失調が、発達障害の原因の一つになったり、パーキンソン病・認知症も腸の異常で起こるといわれています。
    少し短絡的な論理ですが、人にとって腸の環境改善に役立つ食物の摂取こそ大事なんです。
    俗にいう「マ・ゴ・ハ・ヤ・サ・シ・イ」です。
    マ…豆
    ゴ…ゴマ
    ハ…ワカメ
    ヤ…野菜
    サ…魚
    シ…シイタケ
    イ…イモ
    特に、植物に含まれる多糖類レジスタントスターチが、腸の健康にいいんです。
    今回は、健康の極意として腸を中心に説明しました。
    常在細菌や、常在ウィルスなど、まだまだ十分な解明が進んでおりませんが、健康のポイントは、「菌、ウィルスの多様性が高い」ことにあります。単なる善玉菌・悪玉菌と区別せず共存することです。
    皆様、あなたの内臓も、そこここの自然も、大事にしましょう。本当に同じレベルなんですから。
    地球の健康があなたの健康に、そしてあなたの健康が地球の健康につながっているのです。
    言い換えると、プラネタリーヘルスは、ヒューマンヘルスともなります。この辺りを今後展開していきます。

    理事長 井上健雄

  • 老年よ大志を抱け 【9月】

    少し大袈裟なタイトルとなった。
    でも、考えて欲しい。
    2007年に生まれてくる子どもの半数が、百才超えをするというデータ※がある。
    (例) ドイツ                102才
    イギリス               103才
    アメリカ、イタリア、フランス、カナダ 104才
    日本                 107才
    ※Human Mortality Database, University of California, Berkeley (USA) and Max Planck Institute for Demographic Research (Germany). Available at www.mortality.org
    今、80才の人は、昔の80才に比べるとずっと健康だし、2000年を過ぎて生まれた子どもたちの80才はもっと健康だろう。
    人生は、 ①学業期 ②職業期 ③引退という3ステージから、近年は、①学業期 ②職業期 ③もう一つの職業期 ④引退という、4ステージ化している。
    百才時代となると、長い時間を前にして、喜び勇んでいいのか、健康の心配をしなくていいのか、経済的に大丈夫かな…と不安に苛まれているのでしょうか。
    今までよりプラス10~15以上生きられるのですから、マルチステージをしっかり熟(こな)せる能力が必要なんです。
    こうした能力をつけるプログラムを私たちは開発し始めています。
    (1)健康のための運動(注:フレイル予防を含む)運動こそ脳を鍛える
    (2)医の知見 認知症は老化で起こる。60才で1%、75才で7%、85才で35%
    イースト菌の長寿効果
    (3)食の知見 孤食から縁食。野菜と果物そして、脂分の多い魚
    (4)心の健康  協働の効果
    (5)生物多様性の学びから食の基本となる農や、スマート農法の学習
    すべての素材を活かす農のプレゼン
    (6)高齢者も使えるテクノロジー・デジタル学習 デジタル使えば広がる知識、深まるグループ活動
    私の老年とは、健康な時間を保つ為に、道路のそうじ、樹木の手入れ、子ども食堂などのボランティア等の社会課題解決をほんの少しの報酬で嬉々として活動する人と定義している。
    私は、建築物なら、サグラダ・ファミリアを思い起こします。
    1882年3月19日に着工し、現在まだ進行中です。
    この10年前には、完成まであと300年といわれていました。
    (今、建築技術の進歩と、IT(3Dプリンター、CAD、CAM)等々の技術の発展で、2026年の完成という予測が出ています…)
    このように、壮大な時間が大聖堂を完成させるのです。
    何十万㎡もある超大型複合施設でさえ、3~5年、あるいは20年の歳月もあれば完成です。
    大聖堂とは次元が異なります。短い時間で完成するのは、短い寿命でしかありません。
    人も、百才を生きて大聖堂になるのなら、長い研鑽と社会貢献活動が必要です。
    あとは、「や・さ・し・さ」かな!
    一緒に各自の「大聖堂」を創りませんか。
    それには、変わることが必要です。腸管内部の上皮細胞なら、数か月で入れ替わります。皮膚は4週間、血液なら4か月、骨の細胞でさえ4年ですべてが入れ替わっているのですから。
    死や衰えを招く病気の多くは、根底に細胞の老化があります。したがって入れ替え作戦がポイントです。
    変わり続けることで生きているのです。
    変わり続けることが命をビビッドに作ってくれるのです。
    老人は変身の大志を抱くべきなんです。
    マルチステージを楽しく生きる為に、多様性に満ちたネットワークこそ最高のソリューションです。
    人生の探索者になりましょう。エクスプローラーは探索者という意味です。
    その為に何でも冒険の旅に出ましょう。
    今、私たちは高齢者のQOL向上;生きがい・健康活力のエンパワメントの研究活動に取り組み始めています。
    大きな夢、やる気、社会貢献意欲のある方と一緒に、高齢者が百才まで健寿を保つプロジェクトを始めます。
    サア、みなさん、エクスプローラーになり多様性に満ちたネットワーク活動、ご一緒しませんか!

    理事長 井上健雄

  • 日本にロビンフッドは出てくるだろうか? 【8月】

    作成 R3年8月12日

    こういう名前をご存じだろうか?

    ブルガリア系移民2世のウラジミール・テネフ氏と、インド系移民二世のバイシュ・バット氏である。

    この二人こそが操業13年でナスダック上場し(R3 7/29)、時価総額290億$(約3兆円)のロビンフッドという証券会社をつくりあげたのである。

    この時価総額は、日本の名門企業、創業から90年以上の野村ホールディングス(1.77兆円)の約2倍である。

    前々回にテスラとトヨタを比較したように、今回はロビンフッドと野村ホールディングスを比較すると、アメリカの斬新なビジネスモデルに対し、旧来のモデルの経営は敗退していくように見える。

    どんな立派な企業も、どんな秀でた人々も、古いモデルに固執している限り、新時代を切り開くパイオニアの前には無力な存在でしかないのです。

    ロビンフッドのやったことは、業界においては全く異例の取り組みだったのです。

    「売買手数料無料」を打ち出したのです。

    このことは、ある程度の資産を持つ富裕層を対象としたビジネスに、資産を余りもたない10~20代の若者を呼び込み、成功したのです。

    若者にゲームをやっている感覚でトレードができるようにし、その上、利用者にテスラ株を1株ずつプレゼントといったキャンペーンで、爆発的に利用者を増やしたのです。

    ※参考:テスラ1株といっても、当時のレートで3万円くらいしたものです。

    たった一社のこの取り組みは、証券最大手のチャールズ・シュワブでさえ手数料無料化を打ち出すまでの革新につながりました。

    もっと特徴的なのは、スマートフォンですべての手続き~実際のトレードの決済まで~が完結する仕組みを提供していることです。

    また、暗号資産(仮想通貨)での取引もできるので、一層支持を広げています。

    こうした手数料無料サービスはなぜ出来るのか?

    それは、トレードのアロケーションをロビンフッドが持っているということにあります。

    ロビンフッドは、既存の売買方式(日本なら、東京証券取引所を通じて売買する)ではなく、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーに対し、「あなたの会社から買うようにするから、その分リベートを出してくださいね」。という仕組みを作って、手数料無料を実現させているのです。

    さすがスタンフォード大学の数学科卒ですね。

    ロビンフッドは、デビッドカードも発行しているので、今後もっとスケールのでかい資産運用会社になるでしょう。

    日本でも、ロビンフッドらしきものが出てくることを期待したい。

    理事長 井上健雄

  • 「G」はいらないのか? 【7月】

    作成 R3年8月11日

    こう書き表すと、ある人は、あの巨大化したグーグルについてのコメントと思われるかもしれない。

    ある人は、ガバナンスがいらないなんて、ちょっと無政府的で厭だなあ…とか。

    まず、最初に否定したかった「G」は、ゼネラル(general)なんです。全体的な、一般的な、雑多なとかの意味をもつものです。

    ゼネラルが、前についている企業の消長遷移を考えたい。

    GM(ゼネラルモーターズ)や、GE(ゼネラルエレクトリック)である。

    一時、隆盛を極め、そして没落の憂き目にあって、今、立ち直ろうとしている。

    GMは、買収を続け、世界の最大手の自動車会社となったが、リーマン危機で破綻し、欧州やタイなどからの撤退、米国内も縮小するという手術をしている。

    GEだって、16年間GEを率いたジェフ・イメルトは、カリスマ経営者ジャック・ウェルチ氏の事業拡大の整理をできず、電力や放送、ペット保険にまで手を広げ、苦境に陥り、祖業の照明まで辞めざるを得ない苦境に陥ったのである。

    この二つの企業を立ち直らせたのは、名称についている「G」つまり、あれもこれもをやめて、強い部門に力を集中させ、業績の回復を成し遂げたのである。

    さて今回、検討を加えたいと考えているG、グーグルに入ります。

    グーグルも検索大手から、ある種のゴッド(G)企業へと変わろうとしている。

    グーグルは、これまで200社以上の買収をしています。そして成功打率は5割を越えていると言われ、投資額は3兆円以上。知識も時間もお金で解決してしまうのだから、凄いですね。

    (買収代表例)2005年アンドロイド、2006年ユーチューブに2000億円、2013年ディープマインド

    この3社だけでも凄いパフォーマンスです。

    グーグルは、おいしいものに金を湯水のように使い、ゼネラル・ゴッドの道に進んでいるように見える。

    人が検索する前に欲望を察知するAI知能のディープマインド社とグーグルの、個人情報の収集能力の積は脅威です。

    ここでディープマインド社の能力の一つであるアルファゼロの能力を紹介します。

    「アルファゼロ(alpha zero)」というAIは、囲碁も将棋もチェスもそれぞれ最強というソフトに勝って世界最強なんです。

    将棋を例にしても、アルファ碁は機械学習で、3000万局ぐらい練習しています。

    一方人間は、一生懸命、一生やり続けても、10万局なんです。

    つまり、グーグルは,検索を柱とした企業からディープマインド社のAIを活用し、検索をする前に人々に答えを提供しようとしているかに見えます。

    旅行好きな人には、その人が動くであろう2~3か月まえに2~3のコースを食事や観劇や秘境の旅などレアものを含め、その人の性格や好みに合った提案をしてくると思います。

    また、週末の金曜日には、ブラウザを立ち上げるとおすすめのレストランと店主の挨拶まで聞けるものとなります。

    このレコメンドが出来るということは、人々の一人ひとりの個人情報を、グーグルに掴まれているということになります。

    人々の志向をその人が形にする前に推奨できるなんて、ある種の神ですよ。

    私は、人間が創り出した神は要りません。せめて、雑談AIや、俳句を詠むAI位でいいんじゃないですか?

    こうした事態の根本に、私たちが無料だと思って使ってきた検索内容から個人の志向を特定し、それを他社に売って、あるいは自社のために使うなんて、そんなこと知らなかったんですから…

    DX(デジタル・トランスフォーメーション)もCX(カンパニー・トランスフォーメーション)も、どんなトランスフォーメーションも好きにやればいい。

    だけど、集積した個人情報から人にリコメンドする神になるのは、許さない。

    これに対して、アップルのティム・クックの提案を私は支持します。

    アップルの創業者のスティーブ・ジョブズは、「ユーザーは、自分のデータがどう収集され、活用されているかについて、知る権利がある」としている。

    アップルにとって「プライバシー保護は、アップルの背骨の哲学である」とティム・クックは主張し、Google、Facebook、Amazonらに対し、立ち位置が違うことを表明しています。

    例えば、アップルのSiriもその質問と我々の身元をヒモづけないまま、情報を検索し解答してくれます。

    最高にプライベートなヘルスケア・アプリの情報については、端末内のセキュリティチップで暗号化され、Touch IDやFace IDなど認証されない限り、アクセスできないのです。

    グーグルに限らず個人情報を一手に握ったG(ゴッド)企業を創り出してはならないと考える。

    アップルを応援したい。アップル頑張れ!フレー フレー フレー。

    理事長 井上健雄

  • 恐るべきテスラ 【6月】

    (作成 R3年8月6日)

    2003年に設立されたテスラは、2021年7月1日の時価総額を、約22兆2,300億円と発表した。

    一方、1937年創業のトヨタ自動車の時価総額は、21兆6,532億円(2021年7月28日終値)。

    創業わずか18年のテスラが、巨象トヨタより優位に立った。

    しかるに、テスラの2019年の車の引き渡し台数は、約36万7,500台。

    トヨタは、1,074万台なんです。

    販売台数で3.4%に過ぎないテスラが、何故そんなに高く評価されているのだろう。

    世界は、未来を見つめ、EV革命(注)の旗手テスラを選んでいるのです。

    私が思うに、テスラは自動車というカテゴリーを超えて、コンピューターに車輪がついている、というイメージです。

    つまりテスラの特徴は、インターネットでクラウドにつながり、2ヵ月毎にソフトウェアがアップデートされることです。

    その都度、機能をアップするのです。

    例えば、シカゴを大寒波が襲った時、テスラは事前に気象予報を察知し、充電効率が落ちないシステムのアップデート情報を発信したのですよ…。

    このように、ソフトウェアのアップデートだけでなく、ハードウェア、半導体の交換も定期的に行っているんです。

    これらの点検・交換なども、ディーラーはありませんが、ウーバーのようなアプリを備えていて、利用者は近くのサービスパーソンを呼べばいいんです。

    燃費向上もブレーキソフトを変えることで、成果が出るんです。

    その上、私がもっと凄いなあと思うのは、自動車メーカーなら保有しているテストコースも、販売店もないローコスト経営なんです。

    テスラは、公道を走っている100万台に搭載されているカメラやセンサーのデータを取得し、自社のサーバーに保存するプラットフォームを持って、研究・改善を進めているのです。

    広報・宣伝についても、ハリウッドのセレブや、有名スポーツ選手などが競って買ってくれるので、何も要らないのです…少しおいし過ぎますが…

    これらの重大な変化は、「車は、移動のためのサービスの一つとなる時代」に入ってきているということです。

    この時代が、MaaS(マース)と呼ばれるものです。

    Mobility as a Serviceです。

    MaaSという言葉は、フィンランドにあるMssS Global社のサンポ・ヒータネンCEOが提唱しているものです。

    なぜ、フィンランドという小国が、こうしたサービスに先駆できたのか?
    自国に自動車メーカーがないため、車を買う度にお金が外国に出て行ってしまう。

    そこで、国がMaaS事業を支援し、世界初のMaaSのプラットフォームを作りました。

    月額499ユーロで、鉄道やバスといった公共交通機関が利用放題、その上、タクシーやレンタカー、シェアサイクルも基本無料。 アプリで交通手段を横断して利用も予約もできる。

    これは、音楽のプラットフォーム「Spotify」のようなものです。

    世界の人々が、この新時代の先陣争いの覇者の一人として、テスラを見ているのではないでしょうか。

    恐るべしテスラです。

    自国に闘うリソースのない国が、知恵で次世代型移動サービスを生み出したのです。

    私たち日本はどう戦い、私たちNPOはどうするべきか?

    こうした疑問に満ちた月日を過ごせることは楽しくチャレンジングなことです。

     

    (注)EV革命(Electric Vehicle)自動車業界100年に一度の革命で、電気自動車の時代を迎えていること。つまり、エンジンからモーターへの技術革新を意味する。

    理事長 井上健雄

  • 「食」に至りつくまでのムダ 【5月】

    あらゆる動物は、植物あるいは植物を食べる動物を食べ、生きている。

    この食物連鎖が成り立つもとは、植物だけが太陽光から炭水化物(糖類)を合成する能力を持っていることにある。

    この炭水化物は、あらゆる動物の基本エネルギーになっている。

    酸素の代替がない様に、植物エネルギーの代替もない。

    植物エネルギー形成のために、地球から14,960万㎞離れた星からの太陽光こそが生命の源となっている。

    太陽から地球に届くエネルギー量は、発生エネルギー量の10億分の1にも満たない。

    その上、光合成に使われているエネルギーは、その1%にも満たない。

     

    「食」に至りつくまでのムダ対策1

    植物が、太陽光から効率的に糖分を増やす能力を強化することが出来れば、増え続ける人口や気候変動にも対処能力が上がることになる。

    太陽光から植物が糖分を合成する能力を高める研究に活路を見いだすべきである。

    ビル・ゲイツが支援するイリノイ大学や、さらにその上をいくエセックス大学では、タバコの収穫量を27~47%増やすことに成功している。

    太陽光から14,960万㎞離れた太陽光の効率利用により、植物の糖分を増やすという光合成の効率upが、静かに進行しているのである。

     

    「食」に至りつくまでのムダ対策2

    私たち人間の住める居住可能地域の50%が農地であり、その中の80%が牧畜に使われている。

    人口増加が進む現在、居住可能面積の効率的使用は不可避である。

    人間の利用できる土地の1/4が、鶏200億羽、牛15億頭、羊10億頭を飼育する為に使われている。

    牛肉1kg生成には、15,000ℓの水が必要だが、小麦1kg生成には、1,500ℓの水で十分である。

    つまり、動物肉食から植物食への転換も重要である。

    動物を殺す残酷さだけでなく、野生動物にはパンデミックの菌を持つものもある。

    食用作物の30%を家畜が食べていることは、増大する人口への障害ともなっている。

    その上、食肉生産には、世界の水使用の70%が使われている。

    ひとつのソリューションとして、培養肉へ移行すれば、こうした不合理は随分正されることになろう。

    成牛を育てるのに、海洋に駆逐艦を浮かべられるほどの水が必要なのだ。

    食肉生産の為の温室効果ガスは、排出量の14.5%を占めているし、森林破壊の原因でもあり、大量の種の絶滅等を引き起こしている。

     

    「食」に至りつくまでのムダ対策3

    スマート・テクノロジー(数万個のカメラ、センサーでモニタリング、ビッグデータからのAI学習等)を駆使した農業へのチャレンジも実績を収めつつある。

    スマート農業は、露地栽培に比べ、一定面積への作付量が40倍、収穫量は350倍などの成果を出しており、水の使用量も1%以下に抑えることが可能だ。

    「食」と食卓の移動距離も短い都市における垂直工場の持つ可能性は高い。

     

    「食」に至りつくまでのムダ対策4

    この貴重な作物の輸送中や店頭に出された時、あるいはストック時などに、腐敗等の劣化を防ぐための、植物由来100%の材料を開発する人工のメカニズムも普及し始めている。

    この仕組みは、野菜や果物が生来的に持っている皮の研究・利用にある。

    皮は、「角皮素」と呼ばれるもので、一番外側の層で水を逃さない脂肪酸でできた蝋状のものである。

    この角皮素を植物由来で人工的に作り、植物の寿命を長く保てたり、おいしさの日数コントロールにも役立てられるようになってきている。

     

    こうした4つの対策も皆様の念頭に置いていただきたいと思います。

    これらのことに人々の理解が深まれば、新技術への配慮が高まり、新技術の実装化により、動物へのウェルフェアや、人々の健康に資するものになりそうです。

    ある意味「食品ロス削減」の根っこの課題でもあると思います。

    理事長 井上健雄

  • 地方自立分散型社会へのコンセプト 【4月】

    先月の挨拶でドバイの「砂の浪費」の凄さに驚かれていた方も多いと思う。

    世界の砂は、無尽蔵に見えて本当は枯渇しつつある資源であることが良く分かる。

    世界中の砂の総量は、1ゼタバイトといわれる。2の70乗である。

    しかし、もっと恐ろしいのは情報の量である。

    2020年私たちの情報総量は、44ゼタバイトと推定されている。

    世界中の砂総量の44倍もの情報があふれ流れているということである。

    こんな状況で人は、本当に必要な情報に巡り合うことができるのだろうか?

    そしてその情報も真実からニセ情報までが同じような顔をして流れている。人が勝つには英智しかない。

    イヤイヤ、棋士とAIとが勝負してもアルファ碁が勝っている。

    あの羽生さんが言っていたが、人が一生かかって勝負したり、学んだり、研究したりする棋譜の数は、10万回位が限界らしい。

    しかしアルファ碁なら3,000万回の棋譜を学び覚えており、もう生身の人間では勝負にならない領域に達しているという。

    モノには限界があるが、情報には限界がないのだろうか。量子コンピュータも稼働し始めているし・・・

    しかし、AIだっていい情報を手に入れない限りいい答えは出せない。

    未来を予測するとしても量的なものはある程度、大丈夫だろうけど、定性的なものはどうかなぁ・・・と思っても、AIも、絵を描くらしいし・・・

    しかし、たかが人間が創るものだし、いまの人間の能力では細胞の一つも作れないし、蚊の一つだって作れやしない。これが偉大なる自然というものである。

    人間が都市に住み脳で考える社会は、AIに負けるとしても、自然一杯の地方の生活、農業、林業、水産業の営みまで考えると、まだ自然が優位にある。

    自然との共生の中で人は育ち、「落花悲しからず、泥土となりて次代を育てる」のように人々に夢や希望の種を残すべきなのである。

    これが都市脳化社会から地方自立分散型社会へ転換のコンセプトである。

    理事長 井上健雄

  • 無限にあると思える砂が枯渇する! 【3月】

    地球上の人類の重さは4億トンと言われてる。

    一方で、サハラ砂漠から、毎年巻き上げられる砂塵は、20~30億トンと推定されてる。

    この砂塵は北は欧州大陸を超えて北欧へ、そして氷河を茶色にし西へは大西洋を越えて、北米、カリブ海や南米大陸まで降りそそぐ・・・人類の重さの5~8倍もの砂が・・・

    フロリダやカリブ海における朱色の夕日は、本当は砂塵を夕陽が赤く染めているに過ぎないのである。

    夕陽の描写は、あのカズオ・イシグロの『日の名残り』が美しい。読んで欲しい。

    おっと、おっと、私が言いたいのはこれではない。私が心配しているのは世界中の砂資源がなくなるのではないかと不安に思っていることである。サハラの砂塵だけで20~30億トンもあるのに。

    砂の市場規模は、7兆円をこえ、採掘される地下資源の85%を占める。

    毎年世界で470億~590億トンの砂が採掘されており、70%は建設用コンクリートの骨材として消費されている。

    500億トンの砂で、高さ5m巾1mの壁をつくると地球を125周も巻くことになるし、体積にすれば、東京ドーム2万杯となるらしい。

    しかもこの量は、世界中の川が、1年間に運ぶ土砂の2倍を超えているらしい。

    自然が提供できる量は、半分しかない。つまり河岸、砂丘、砂浜の堆積層から殆どが違法採掘されている。このことが地球環境を壊し始めている。

    発展の速度で世界の1~2を争い砂を大量消費しているのは、東の上海と西のドバイである。

    例えば、ドバイの自然というものは、街を取り巻く砂漠と星空しかないと言われる。

    このドバイには世界一がアホ(?)ほどある。

    幅275m、高さ150mまで噴き上がる噴水。『ドバイ・モール・ファウンテン』である。

    総面積約111.5万㎡、東京ドーム23個分のショッピングセンター『ドバイ・モール』がある。

    年間来店客数は8000万人超えている。

    圧巻は『ブルジェ・ハリファ・タワー』。

    160階建て、828mの高さで東京のスカイツリーの1.3倍、360°異次元展望・・・

    このブルジェ・ハリファの建設の為に、約76万トンのコンクリート、39000トンの鋼鉄、102000㎡のガラス、基礎杭として11万トンのコンクリートが投入されている。

    その上、このペルシャ湾には、宇宙からも見えるという『パーム・ジュメイラ』をはじめ、人口島があと2つもある。一つの敷地は5.7k㎡サッカー場800面相当となる。

    砂は、オーストラリアから輸入されている。

    またゴルフコースには、アメリカのノースカロライナ州産の白い砂を輸入。砂漠の砂ではさらさらで、ゴールボールが沈んでしまいバンカーとならない。

    また、競馬場のダートの砂はドイツ産であり地元のものより吸収性が高く馬へのダメージも少ない。

    こうしたことで、ドバイの1人あたりの水消費量は年間740㎥、世界平均の1.5倍。

    その水も海水の淡水化の為に、総電気量の30%が使われている。

    こうした発展は、地球上に無限にあると思える砂まで枯渇の危機に陥らせているのである。あぁ恐ろしい・・・

    理事長 井上健雄

  • 一人ひとりの力【2月】

    昔は、顔の見える触れあえる人間関係が主であった。

    今は、Zoomなどにより映像や声で会いもするが、実際にHugなどできない。

    これはグローバル現象だけでない。ICTの浸透により隣席からメイルが来たりする。

    なにかもどかしいようであるが、コロナ渦も含め、これが今後の新常態である。

    そうするとリアルの一人ひとりが弱く小さくなったように思ったりもするが、決してそうではない。

    例えば、アメリカの前大統領トランプの軽挙妄動が民衆をして米議事堂に侵入、暴動を起こさせている。

    この暴動で4人が死亡52人が逮捕されたとあるが、この暴徒の殆どが白人であったことでこの数字だ。これが黒人なら警官は一斉射撃を辞さなかったであろう。数十数百人の死傷者を出すことになっただろう。

    これは一つの嘘だけでなく、限りなく吐き続けられた嘘が、こうした結果を生み出したのである。

    つまり真実がフェイクと退けられ、フェイクがオルタナファクトとなっている。恐ろしいことである。

    トランプは不動産業者時代、黒人にアパートを貸さない、経営するカジノで黒人従業者の冷遇、14~16才の黒人・ラティーノに死刑を求めた人種差別主義者であった。

    こうした一人が大統領であった。それがアメリカを狂わせたのである。

    今回バイデン大統領が誕生したが、こうした亀裂にどう向きあい修復できるのかが、この政権の課題である。こうした修復活動が始まる前に、ミネアポリスでジョージ・フロイドさんが白人警官に殺され、BLM(ブラック・ライブス・マター)運動が再び湧き起こったのである。20年5月末である。

    ほんの少数の人から始まったこれは、やはり革命である。

    BLM運動に呼応して、テニスプレイヤーである一人の大坂なおみさんが、全米オープン決勝までの7戦の為に7つの異なるマスクを用意して、人種差別と警察暴力への抗議をした。勝ち続けるという大きなプレッシャーまで背負い戦ったのである。

    本当に!本当に!!勇気ある行動である。

    こうした活動もあって、バイデン大統領が登場する礎にもなったのであろう。

    現代は、マイクロムーブメントの重なりが、世の中を大きく変えていく大きな力となっている。

    たった一人で学校ストライキを始めてたグレタ・トゥンベリは、気候危機ジャスティスの革命者である。

    BLM以外でも、地産地済、有機栽培、メイドイン・USA、サード・ウェーブ・コーヒーなどは、小さく、足元から、より丁寧な方向に、消費者の志向を変えていく活動である。これも小さな革命である。

    この小さな革命のスタートは一人ひとりの個人の思いにある。

    小さな革命ということは、それはそれで独立的な生き方(インディペンデント・ライフ)を実現させているのである。

    ちょっと気取った表現をすると一人ひとりが「Wear Your Values」自分の価値と思うものを身につけだしたのである。

    このように考察してくると、一人ひとりが身につけ始めた価値観が、社会を染め、サード・ウェーブ・コーヒーを認め、米大統領選の行方まで決めだしたと言えるのでないだろうか。

    革命は、自分が参加しようが参加しまいが起きるとしても、やはり参加して革命を起こす方が面白い。起こしませんか!革命を!!

    Wear Your Values!!!

    理事長 井上健雄