カテゴリー: 2022年

  • 一時一事、一事一心(いっときいちじ いちじいっしん)【12月】

    今年も1ヵ月となりました。

    この11ヵ月、結構走り続けたと思います。

    ちょっと息抜きも必要としています。

    年末は、早めに休み、晦日くらいから卯年のスタートを切ろうかなと思っています。

    ピョンピョンいけるように・・・

    この頃になると、いつも口遊む句があります。

    いざゆかん 雪見にころぶ ところまで(芭蕉)

    これは、昨年、私信でもお伝えしましたが、芭蕉44才「笈の小文」の句です。

    昔の寒さ、大雪、下駄の間に雪が入り、本当に転びそうになる・・・

    たぶん名古屋の夕道邸で酒を飲み、頬染めて、お連れの女性と雪見に出掛けたのでしょう・・・

    大阪では雪舞いは稀で、積もることはまずありません。

    雪遊びの世界を、今も鮮やかに見せてくれるこの句は、本当に大好きです。

    年末は、いろいろな仕事の整理やレポート等・・・

    また、来年に向けてプランニングが始まります。

    こうした慌ただしい時こそ、一つひとつをしっかり進めるべきなんです。

    一時一事(いっときいちじ)です。

    ことを為すときは、そのことに全注意をはらい、そのことを実行するのです。

    物事を成す場合の順番、つまりシークエンスを心得て、遂行することです。

    一事をしながらよそのことを思ったり、気をとられたりしてはいけません。

    一事一心(いちじいっしん)でなければなりません。

    どんな些事だって、全身全霊でやることです。

    瑣事(小さな、つまらないこと)だといって、ゾンザイに扱う人は、いい仕事などできません。

    仕事にしても、日常生活においても日々キチンと自分を律してこそ、人間の生活というに値するのです。神は細部に宿るというではありませんか。

    もう一度繰り返します。

    一時一事。一事一心です。

    これを、年明け3月の年度末を迎えるにあたりの戒めとします。いや、毎日のことですね。

    皆様にはいろいろお世話になり、有難うございました。感謝の心で一杯です。

    💓よいお年をお迎えください。💓

    理事長 井上健雄

  • 食欲の秋をCareして楽しむ 【11月】

    もう11月。澄みはじめた空気に山の端がきれいに見える。

    そして夕闇が迫ると夕日の沈みにあわせて雲があかね色から黄金色に光る雲となり、沈む間際には広大な海を黄金色にしてくれる。

    あぁ 秋だ。

    夕方に、大自然が見せる美しさ、その動きのダイナミックさは、本当に一大スペクタクルである。

    この一瞬のあとは、冷涼な季節が連れてくる食欲の秋を楽しむという贅沢もある。

    寒くなるとスキヤキや焼き肉などが欲しくなります…。

     こうした書き出しに始まった文章は、無粋な教訓を垂れるのは止め、多言を弄せずに少し乱暴なオッちゃんとの会話を掲載したい。

     

     「この肉の提供者(?)は牛さんであり、羊さんであり、豚さんなんですね。

     こうした牛さんたちの問題は、二酸化炭素でなく、げっぷのメタンで合ったり、排せつ物のウンチの亜酸化窒素が大問題なんですね。

     この反芻動物のウンチとげっぷだけで、CO220億トンの温暖化効果があると言われています。」

     『オイ!お前!オイラに肉を食うなというのか!』

     「そうではありません。今食べている量を10とするなら、半分にするとか、20%くらいとか、量を減らしていただけたらと思っているんです。その方が健康にもいいじゃないですか、と申し上げているんです。」

     『余計なお世話だ。俺は、俺のやり方で健康なんだ』

     「いえいえ。霜降りなんておいしいし、良質のタンパク質ですから、時偶、食べていただくととても良いと思います。

    しかしですね。人間の腸には100兆個もの細菌がいて、短鎖脂肪酸を作っているのです。」

    『うるさい。お前、短鎖なんとか…そんなんどうでもいいんや。結論を言え!』

     「怒っておられますね。端折って申しますと、肉食が過ぎると腸内細菌とのやり取り等から、炎症物質のアラキドン酸ができるんですよ。これが、ガンのもととなるんですよ。

     ああうまい。満腹じゃ。まではいいんですが、メタンや亜酸化窒素を出して気候正義を守らず、地球温暖化を進め、年齢とともに自分の身体までガン発症率を高めて、損ですよ。と申し上げているんです。」

     『ほんま、お前、厭な奴っちゃな。そこで、野菜を食べ、肉なら魚や鶏にせいと言うんか!』

     「意外ともの分かりよろしいでんな。そうだす。そしてよう頑張った時とか記念日に、ミートタリアンになって思い切り食べてください。

    そうすれば、エビデンスとしてLDHを減らし、HDLを…」

     『もうエエ!分かった 分かった』

     「私は、これからは、体はCure(治す)する前に、Care(予防を気にかける)の時代に入っているということを申し上げたかっただけですけどね…」

    理事長 井上健雄

  • 捨てて強くなるか、もっともっとか 【10月】

    昔、むかしから現代にいたるまでの長い歴史の中で、三つの事例を考えてみましょう。

    (ちょっと大げさですかね?)

    (一)昔むかしから。

    今から5,200万年以上前に、ウマの先祖のエオピップスという動物がいた。

    それは、前肢4本の指、後肢3本の指を持っていた。

    この指があれば、物をつかんだり、樹上にも登れるだろうが、エオピップスは中央の1本指だけを発達させたのである。

    つまり、蹄(ひづめ)を手に入れたのです。

    獰猛な肉食動物から逃げる足の為に、他の指を捨てたのです、

    この例は、ダチョウも同様です。

    飛ぶことを捨て、草原を速く走る足と肉食動物を蹴散らす脚力を発達させたのです。

    (二)何千万年も前の戦略を現代にも取り入れて成功している企業。

    スターバックスです。

    スターバックスは、1971年シアトルに誕生しました。

    その時の店名は、スターバックス・コーヒー・ティー・アンド・スパイスというものでした。

    店内で、ホットドッグやパスタ等も出していた為に、コーヒーの香りを消してしまう猥雑な軽食屋となり、売上も低迷し、閉店の危機に…

    そこで、コーヒーとその香りを中心に、他の品揃えを捨てたのです。

    今や、コーヒー文化との親和性の高いSDGsの取り組みを強化し、フェアトレードや、フォレストアライアンス(RA)やウツ(UTZ)社会・環境に責任を持った生産・供給の為の世界プログラムなどに力を入れている。

    こうしたことが、スターバックスの文化を高め、コーヒーを軸に一つのカテゴリーを築き上げたのです。

    (三)アメリカのGE

    現代のGAFAを凌ぐ、アメリカを代表する企業です。

    このGEでは、1980年代から20年間トップに君臨したジャック・ウェルチが、アメリカに解雇と整理ブームを惹き起こし、会社を成長させたのである。

    彼は、会社の建物は残すが、人間のみを解雇で放り出す「ニュトロン(中性子爆弾)・ジャック」と呼ばれた。

    彼は業界で1~2位に入らない企業は止めると宣言し、大整理を行った。

    強いものに集中するのだから、(一)や(二)のようにも思える。

    次に、この天才経営者のあとに、CEOに就任したのは、ジェフ・イメルトであった。

    彼は、称賛され続けるために、売上拡大の為のM&Aによって、規模・コスト・複雑さを拡大し続け(GEキャピタルへの依存を高め続け)た。

    イメルトは、ウェルチ時代から売上げ60%の拡大、利益を倍増させたのである。

    しかし、イメルトは大きな社会事象にも直面している。

    9.11、エンロン事件、原油高騰、住宅バブル崩壊…

    この事象がGEの弔鐘となったのである。

    これら事象に対して、規模だけなら整理して切り抜けられたが、イメルトは金融を中心とした会計力を駆使し、利益を上げ続けることを選んだ。

    このイメルトの後を、GEのヘルスケアのCEOだったジョン・フラブリーに任されたのである。

    二人の称賛された成績の後には、何のレガシーも残されていなかった。

    大きな社会事象の影響から、拡大基調の流れが縮小基調に入ったことに対し、十分な手術の手が打てずに、フラリーは1,400億ドル(日本円で19兆以上)の市場価値を失ったのである。

    エンロンの2倍以上で、リーマン・ブラザーズの損失さえ小石のようである。

    自然や社会情勢について、基本的な変化がない限り、イケイケドンドンで成功するが、ひと度変化に遭遇すると、大きな齟齬をきたすものである。

    かつて白亜紀に全盛を極めた恐竜は、地球は一つの大陸で、気温は高く、CO2濃度も高く、植物は巨大化し、それを食べる草食恐竜も巨大化し、それを食べる肉食恐竜も巨大化したのである。

    しかし、白亜紀の終わり頃に、地球はマントル流によって分裂し、大陸移動を始めるのである。

    そして山ができ、雨が降り、川が氾濫する変化の時代となって、ユカタン半島への大隕石とともに、

    大型化時代は終焉を迎えたのである。

    現代社会はある意味でこれらに匹敵する大変革期に入ったのである。

    答えは、小型化で自分の強みを発揮できるポジショニングを磨くこととなる。

    それはある意味適切な捨て続ける戦略こそが永遠の課題となる。

    我がNPOもその未来に進んでいる。

    これは、論理の飛躍でなく、壮大な未来のための一歩なんです。 ご一緒に、未来に進みましょう。

    理事長 井上健雄

  • 食べる投資 【5月】

    人は、金を稼ぐために健康を害し、

    今度は、病を治すために稼いだ金を使う。

    将来の心配ばかりして、現在を楽しむことをしない。

    その結果、人々は現在にも未来にも生きていない。

                    ダライ・ラマ14世

     

    この言葉は、深い問いかけがありますよね。

    明日、未来のことを考え、今日現在を省みない。

    永遠に生きる訳でもないのに…

    長い人生の先には、誰も知らない未来があるだけである。

    そんな未来に立ち向かうには、健康な身体の基盤を形成する「フード・インベスティメント(食に対する投資)」こそが、重要であります。

    例えば、重症疾患(脳梗塞や脳溢血、心筋梗塞、重症呼吸不全など)の人で、発症前の健康な状態に戻ることができるのは、ほんの一部の人だけです。

    予防の生き方(食事、行動習慣、治療行為等)をすれば、健康長寿が手に入るということです。

    この予防投資は、医療費の節約ともなるし、経済的な活動や社会でボランティア活動などの活気ある社会づくりの一助ともなります。

    食とは、アンチエイジングのキーファクターです。

    アンチエイジングとは、身体の内部の老化現象を遅らせること。

    つまり、病気になりにくく、元気な健康状態を維持すること。

    積極的は予防医療である。

    つまり、口に入れるものは全て自分への投資なんです。

    投資というからには、「食べて良いものを食べ、食べてはいけないものは食べない」ということです。

    このレポートは、食品名や料理を紹介するものではなく、投資としての食を語るものです。

    料理メニューの紹介ではなく、最近の知見により健康基盤をつくる材料や、その栄養素について説明します。

     

    特長

    栄養素・効果

    良いもの(1)

    納豆

    (推奨)毎日1パック

    発酵微生物パワー

    悪玉腸内細菌抑制

    ビタミンK:

    骨粗しょう、発ガン予防

    ナットウキナーゼ:

    血液サラサラ

    たんぱく質の一種 スペルミン:

    細胞の代謝促進、体内の炎症防止

     魚

    (推奨)週に3~4日

    体の炎症抑制

    血管や神経を健全に保つ

    脳内の神経伝達をスムーズにする

    魚のファーストフードとして、魚缶詰の活用も

    DHA、EPAのオメガ3系脂肪酸:

    血液サラサラ、動脈硬化予防、

    炎症を防ぎつつ認知症予防にも効果

    ビタミンD:

    体の炎症を防ぎ、アレルギー抑制、

    ウィルス抑制、ガン発症の抑制

    ココナッツオイル

    (推奨)食卓に常備

         低温圧搾法のものを選ぶ

    脳のコンディションを上げる

    腸管から即血液中に吸収され、肝臓で代謝され、ケトン体になる

    ケトン体は脳細胞のエネルギーとなる

    糖質抑制のサポートともなる

    ラウリン酸: 抗ウイルス

     (中性脂肪酸の一種が50%もある)

     免疫力アップ、アルツハイマー症改善

    良いもの(2)

    食物繊維

    (推奨)葉物野菜、海藻、

         きのこ

         男性20g/日

         女性18g/日

    腸内細菌叢を整える

    善玉菌、悪玉菌、日和見菌

    (ひとりの人間に、100兆個以上、1.5~2kg)

     

    セロトニン(幸せホルモン):

     メンタルヘルスの強化

     不安やうつ改善

    良いもの(3)

    食事だけでは不足しやすいもの

    -サプリメントで-

    加齢やアルコール摂取で減少するもの

    ビタミンD:

    1日必要量2000~5000IU

     骨の健康、免疫増強、糖尿病予防 

    亜鉛:

    一日必要量15mg

     細胞を酸化ストレスから守る

    マグネシウム:

     一日必要量200~500mg

     カルシウム濃度のコントロール

     ATP産生の補酵素

     

    江戸時代一の観相学の大家の言葉

    美食に溺れると人相の良い人も運気が下がり、

    粗食節食に徹すると、人相の悪い人も運気が上がる

                        水野南北

     

    いつの時代も、食こそが栄養の基盤であり、栄養知識を身につけて実践することが、健康という資産を作りあげる投資となります。

    みなさま、「食べる投資」をやってみましょう。

    人生変わりますよ! より健康になります! 

    大袈裟ではありません!

    動物としての人間にとって、健康資産として、食と同様に大事な「運動」も健康資産です。

    運動については、前にも触れていますが、次回以降にバージョンアップして紹介します。

    理事長 井上健雄

     

  • ゲーム・チェンジ 【4月】

    2月の花は、樹の花が多く、梅、木蓮、寒椿…

    そして3月の挨拶も桜…と上ばかり見ていることが多かった。

    4月にもなると、下を見て歩くべきである。

    芝生やちょっとした野原を歩いていると、薺(ナズナ)や、繁縷(ハコベ)、ホトケノザなどの春の七草など、いろいろ小さな花々が、ちょっと気取って咲いているではないか!

    これから萌えいづる草花を楽しみに過ごそうではないか!

     

    過日、日経ビジネス(R4 2/18号)に、脱炭素経営トップ70社ランキングがあった。

    「脱炭素」という巨大ゲーム・チェンジの荒波を、乗り切る企業70社が示されている。

    トップ3は、日本の超一流企業とされる。

    1.トヨタ自動車(モビリティ)

    2.花王(消費財)

    3.日立製作所(社会インフラ)

    (主になポイント)

    ・トヨタは、2030年に世界でEV350万台販売という野心的な大目標を打ち出した。

     ・花王は、アタックZEROに「バイオIOS」基材を用いて最小限で最高の品質を実現。

     ・日立は、重点をデジタル化と脱炭素に絞り込み、 社内炭素税とも呼ばれる、インターナル・カーボン・プライシング(ICP)を導入し、昨夏5,000円/tとしていた炭素価格を15,000円/tまで引き上げている。

    どれも、それぞれの企業にとって野心的で、大きな目標へのチャレンジであるが、これで本当に今までやってきた事業のゲーム・チェンジになるのかは、疑問です。

     

    ゲーム・チェンジとは何であるかの2社を記します。

    フィンランドの石油会社ネスラ社を考察する。

    同社は1948年創業の石油会社であった。

    原料を国外に頼る小国のエネルギー会社は、原油価格などに振り回され、業績は安定せず、いつも破綻の危機にあった。

    そこで、CEOのピーター・パナッカーは、ネスラ社を2007年より再生燃料へシフトすべく大規模投資を決意したのである。

    しかし当時は、市場も投資家も従業員までもが、戦略に疑問を持ち、厳しい状況にあった。

    それでもピーター・パナッカーは、脱炭素の流れから、再生燃料へのシフトに命運をかけたのである。

    4万軒以上のレストランの廃食油や、動物油などから原料を調達し、世界の3つの工場で再生燃料の生産を軌道に乗せたのである。

    SAF(Sustainable aviation fuel 持続可能な航空燃料)を強化し始めて、空港に精通する専門家を新たに採用し始めたのである。

    2021年8月現在には、同社の株をフィンランド政府やESGファンドが、71.6%まで保有するまでになったのである。

    そして、SAFの割合を50%から、100%利用までめざしているのである。

    石油会社が、石油事業をアメリカやロシアに売り、再生燃料会社になり、また、SAF以外には廃プラスチックのケミカルリサイクルへの注力を開始している。

    サプライチェーンの強化の為に、各種回収会社との提携や買収などにより、回収ネットワークを世界中に張り巡らそうとしている。

    つまり、原料の石油を買って売るビジネスから、廃油等の再生燃料化ビジネス、脱炭素ビジネス会社へと、大きなゲーム・チェンジに成功したのである。

     

    同様に、石油会社でグリーン敗戦したデンマークのオーステッドは、洋上風力発電の世界最大手にまで変身を遂げている。

    「脱炭素」と言った時、それは、脱既存ビジネスになることも厭わない覚悟がいるのです。

    こういう意味で、日本の脱炭素経営は、ゲーム・チェンジになっていない。

    理事長 井上健雄

  • もうすぐ春爛漫 【3月】

    春なんですから、ちょっと「春」を楽しみ、喜びたい。

    静岡県 河津町 河津川沿いの桜並木は、壮観。

    菜の花の黄色と河津桜の濃いピンク、明るい空、そして青い山並みといろんな色に出会えますよ。

    本州で一足早く咲くこの河津桜はもう葉桜・・・

    私の住む大阪の桜(ソメイヨシノ、ヤマザクラ…)も蕾を膨らませています。

     

    こうした自然の変遷を、内村鑑三は「寒中の木の芽」という詩でうたっている。

     

    (一)春の枝に花あり

             夏の枝に葉あり

             秋の枝に果あり

             冬の枝に慰めあり

    (二)花散りて後に

              葉落ちて後に

              果失せて後に

              芽は枝に顕わる

     

    (三)嗚呼憂いに沈むものよ

             嗚呼不幸をかこつものよ

             嗚呼冀望の失せしものよ

             春陽の期近し

     

    (四)春の枝に花あり

              夏の枝に葉あり

              秋の枝に果あり

              冬の枝に慰めあり

     

    なんと素晴らしい年月の展望ではないか。

     

    清少納言なら

     ただ過ぎに過ぎたるもの 帆かけたる舟 人の齢 春夏秋冬

     

    なかなか粋で生意気だが、友だちになりたいとさえ思う。

     

    もっと突き抜けた人生なら、白隠禅師であろう。

     六月に松風を買わば 人間(じんかん)恐らく価(あたい)無からん

     

    (私の解)旧暦の蒸し暑い夏の盛りに、松の枝々を縫って、涼しさと少しの湿度に松の香りをのせて、一陣の風が訪れてくれる。この風を賞味せずに人里に住んでいてもつまらないよ。

     

    季節毎の感慨は、人生を豊かに味わい深くしてくれる。

    やはり、春は春を嗜むべきである。

    理事長 井上健雄

  • 節を分ける 【2月】

    日本は本当にいい国である。
    春夏秋冬いつもよろし。
    冬について、
             いざゆかむ 雪見にころぶ ところまで (芭蕉 44才)
    この句は、「笈(おい)の小文」に記されたものである。
                       (注)今年の私のプライベート年賀状の一部でもある。
    昔は雪も深く、下駄履き散歩は、粋で楽しみでもあったらしい。下駄にくっついた雪が大きくなり、転んだりするのを楽しんでいる様子が目に浮かぶ。
    芭蕉、この時一緒に転びたい女性があったのかもしれない。
    私は隠れ恋歌だと考える。
    さて、冬が終わりそうになり、春が来ようとしている今が、節を分ける日である。
    これを短くすると「節分」 2022年2月3日を指す。
    単に節分と言ってしまうと、豆まき、恵方巻と単純化されるので、変化の微妙さを明示したいが為に「節を分ける」としたのです。
    立春は、二十四節気の最初の節気で太陽の黄経315°。
    太陽の運行に基づいて、一年を二十四節気に分けたものである。
    この節を分けるとは、冬から春への変化をすべての人々が切望したからである。
    春から夏の立夏、夏から秋の立秋、秋から冬への立冬とあるが、それぞれの前日を節分として祝うことは余りない。
    季節は、このようにいろいろな節目をもって人々を遇してくれる。
    そしては、年齢に応じたものから、思想や生物の不思議などいろんな節目に迎えられている。

    そんな節を分けるいろいろを、4例示したい。
    ・孔子なら「吾 十有五にして学に心志し、三十にして立ち、四十にして惑わず、五十にして天命を
    知り、六十にして耳 順い、七十にして心の欲するところに従いて矩(のり)を踰えず(こえず)」
    ・ヘルマン・ヘッセなら「しがみつくことで強くなれると考える者もいる。しかし時には手放すことで
    強くなれるのだ。人生の義務はただ一つしかない。それは幸福になることだ。
    君自身であれ!そうすれば、世界は豊かで美しい!」
    ・体長1mm以下のクマムシさんは、100℃の高温や極低温でも生存でき、人間が即死する放射線でも
    大丈夫。 そして、水深1万mの高水圧もOK. 考えられないタフな虫ですね。
    ・人間の細胞の数は60兆個と言われてきたが、最近、37兆個というレポートが出た。細胞の一つの
    大きさは、 10ミクロンほどで、顕微鏡でしか見えない。
    小さい方の細胞数37兆個×10ミクロンとすると、37万kmとなる。
    地球の一周は、4万kmだから、地球の9周分ある距離となる。60兆個なら地球15周。
    地球6周分の長さの差が、最近になって出てきた。こうした研究者の活動にリスペクトしか
    ありません。
    恐ろしくありませんか。60兆個を37兆個とする、どんなロジックとエビデンスがあるのでしょう。

    世の中に本当に分かっているということは、ほんの少ししかないということですよね。
    いろんな社会的な意義、出来事、多様な事象、いろんな研究がある。本当に人生は、素敵で面白い。
    何にだって意味があるし、何にだって生き甲斐がある。
    もっと分かりやすく表現すれば、節を分けることを見つけ、自分を輝かせることに一心不乱になることだと思います。
    皆さんご一緒しませんか?「節を分ける」変化を見つけ、変化に対応し、ある時は変化に抗い、ある時は変化を創りだし、プリコラジュを楽しみましょう。
                                         理事長 井上健雄

  • 若い人よ! 小さな革命家になれ!!! 【成人式挨拶】

     2015年の公職選挙法改正で、2021年から18歳以上に選挙権が与えられた。
    なぜ、法改正がされたのか?
    一つは、世界189カ国のなかで、170の国が、18才以上に選挙権を与えていること。
    もう一つは、若い世代に政治への関心を持ってもらいたいためらしい。
    なぜか日本は、奈良時代(8世紀)に中国を見本として、20才を一人前と認めた。
    しかし、武士の世の中では、13~16才の間の「元服」が成人の儀式であった。
    今の制度(改正前)になったのは、1945年敗戦の後である。
    英国では、選挙権は18才、被選挙権は21才であったが、
    2006年法改正により、18才でも立候補できるようになっている。
    このように制度変更は、いろいろあるが、「人が議員たるにふさわしい資質を備えているか」について、有権者が判断すればいい。
    年齢で、ふさわしい能力が手に入るのなら、それはいいが、誰もが成熟するわけではない。
    ボケる人もいる。
    学ぶ姿勢や社会課題への向き合い方などが、しっかりして、他人の意見に耳を傾けることができれば、いいのである。
    年をくっており、それなりの履歴の人たちが、汚職や違反をしていたり、余りにも偏った考え方や発言をする人もいる。
    従って、本当に大事なのは、選ぶ人の資質なのかもしれない。
    環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんが、彼女が国政に出て、未来の人たちの権利を守ろうとするなら、いくつであっても選挙権を与えればいい。
    今、未来の子どもたちの権利を奪う温暖化に対応しない人々が、罪に問われないのは、おかしいことだから…
    大人たちが、若者たちの権利を守ろうとしないのであれば、君たちは革命家を目指すべきかもしれない。
    私は、若い人に希望を持っている。
    未来は、空いっぱいに広がっている。
    想像力をもって、決意と勇気をもって行動することである。
    疲れたら、休むのもいい。
    もし、決断したことが、思いと異なっているのなら、葛藤の上で変えてみてもいい。
    自分で悩むのもいいが、親しき人々にアドバイスを貰うこともいいだろう。
    思っていたより、異次元ジャンプできる意見を聴けるかもしれない。
    真っ直ぐに、真剣に悩んでいれば、自ずから道は拓ける。
    「希望」とは、場所でなく、そこに向かう必要な生き方なんです。
    希望は、簡単につぶれたり、なくなるものではありません。
    希望は、息づいているのですから。
    もう一度言います。
    大事なことは、自分だけの人生のストーリーを紡ぎだすことにある。
    それは、自分の生活に小さな革命を起こすことである。

    理事長 井上健雄