湯川秀樹氏(1949年日本最初のノーベル賞受賞者※、中間子の存在を予測)にこんな言葉がある。
「未知の世界を探求する人々は、地図を持たない旅行者である。地図は研究の結果としてできるのである。目的地がどこにあるかはまだわからない・・・」
とすれば、現在を生きる私たちだって、地図を持たない旅行者であろう。
彼のいう旅行者とは、研究者を指すので、ちょっと質は異なるが。
私たちは、社会の変化、地球温暖化、AIの爆発的な普及等々の中で正解を求めつつ生きている。
その上、政治家の利己的な野心による他国侵略や関税をかけまわる人などが我が物顔で動き回る中で、正しい方向が見えにくい中で、正しい行動を要求されている。
こうした混迷を極める時代には、いろんな所に足を運び、いろいろな催しに参加や参画なりをすべきである。「人も歩けば棒に当たる」行動力が必要である。
11月の挨拶で、最も大きな現場感や影響力を持っていそうな、大阪・関西万博を取り上げた。
大阪・関西万博に訪れ記憶に残り、人々の人生に立つであろうレガシーを提案した。
「静けさの森(生物の動的平衡を見せてくれた)」を、生物多様性を実感できる場として維持・保存してほしいレガシー主張。
この時、生物の持つ利他性に触れなかったが、本来生物の持つ利他性は重要なことなので、追記しておきたい。
大阪・関西万博のテーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」とある。
People’s Living Lab(未来社会の実験場)として、多様な先端技術を社会で試し、実装につなげるものとして機能していた。
嘗ては、展示物を見る、説明を受け、パンフレットをもらうというものから、
今回の取組みは、映像で大きくイメージを伝え、そしてIT技術を用い、個人の関心度に応じて、学習できる参画型展示が多くなっていた。
ウーマンズ パビリオンなどテーマを持つパビリオンでは、展示よりワークショップや参加型シンポジウム等で取り組み行動を深める設計となっていた。
このパビリオンは、カルティエ財団が支援をしており、美しい服や素敵な小物を持ったモデル(?)さんらしき人も参加しておられ、文化の香りまで楽しめた。
日本館においては、日本国を取り囲む海を活用して「循環型」の取組み価値を体験できる設計だった。
人気キャラクター「ハローキティ」で32種の藻類のオブジェも面白い。
地球温暖化や、食糧問題の切り札としての藻類の提案は、可能性に満ちていた。
また、万博会場で出る生ごみを微生物の力で分解し、バイオガスエネルギーに変えるプラントの仕組みもわかりやすかった。
その上、展示から一層中味を深める見学コースまで用意して、取り組みの実装方向を示していたのである。
12月の挨拶は、第二レガシーとして、「ミャクミャク君」について語りたい。
今回の大阪・関西万博で、テーマとキャラクターがこれほど合っていたのは、秀逸を超えて奇跡である。
テーマ :命輝く未来社会のデザイン
キャラクター:ミャクミャク君
このミャクミャク君は、出生や趣味についていろいろ言われているが、私は、人の体の中にいる細菌を表現していると思う。
これをミャクミャク君Ⅰ号とする。
もう一つは、私たちが直接その機能が見えない最先端AIもミャクミャク君Ⅱ号であろうと考える。
ミャクミャク君Ⅰ号
私たちに見えるからだの中にいる細菌たち、この細菌数は100兆個から1,000兆個と、訳の分からないオーダーである。
私たちが生きている根本は、この常在菌のおかげであると思っている。
人間は、この細菌の働きによって、元気に生活していられる。
この細菌の大半が存在しているのが「腸」である。
この細菌は少し乱暴だが、三種に区分される。
・私たちの健康に資する善玉菌(乳酸菌、酢酸等)20%
・悪玉菌(大腸菌-毒性株-、ウェルシュ菌、黄色ブドウ球菌等)10%
・そして、日和見菌(大腸菌-無毒性-、連鎖球菌、バクテロイデス等)70%
基本的に善玉菌が優位であるが、不規則な生活やストレスから、日和見菌が悪玉菌に引っ張られ、アルカリ性に傾き、有害物質を生み出して、体を壊してしまうのである。
私たちができることは簡単である。
+・食物繊維を摂る
+・発酵食品を摂る
-・タンパク質や脂質中心の食事を減らす
-・糖分・塩分を控える
つまり、プラスを増やし、マイナスの要素を減らせばよいのである。
そうすると善玉菌だけで良いかというと、悪玉菌も日和見菌もリスクマネジメントとして必要であることを申し添える。
ミャクミャク君Ⅱ号
直接人の目に見えないものを、AIソフトとして完成したものが、ミャクミャク君Ⅱ号と考えている。
例① BNYのAIデジタル社員(AIのプラス面)
BNY(バンク・オブ・ニューヨーク・メロン)はAIデジタル社員として100名を任命している。
このAI社員は、それぞれメールアドレスを持ち、内外とのやり取りをして、情報セキュリティ資格レベルまで付与されている。
上司は人間となっている。
こんな部下を持つと面白いのか大変なのか分からないが、今後の活躍次第で、本当の人間を必要としない可能性が高い。
経営者にとっては朗報だが、労働者にとっては災難となる可能性大である。
BNYの金融資産8,800兆円。
例② ウォルマート(AIのプラス面)
世界一の小売業だったウォルマートは、2026年2月に新CEOとしてジョン・ファーナー氏が就任する。
彼の掲げる方針は、AIファーストとしている。
株式も普通株式からナスダックへ変更するとしている。
小売業は、カスタマーファーストを第一とした時代は変わろうとしている。
彼は、ChatGPTと提携し、対話の中から商品購入の仕組みをつくろうとしている。
例③ マレーシア(AIの電力消費による限界面)
マレーシアは、今や経済発展し、国力をどんどん殖やしている。
そして、SDGsの取り組みにも熱心である。
そこで、同国の発展の為に、AIのデータセンターを計画している。
このことで、英国シンクタンクエンガーの報告がある。
それによると、2030年AIのデータセンターの消費電力は68テラワット時として、マレーシアの電力需要の30%を占める。
この為には30年までに450億弗(7兆円)もの再生エネルギー投資を必要としている。
旧エネルギーとの共存等このソリューションは多くの課題を抱える。
こうした見通しから原発がソリューションとして提案されているが、AIの電力需要は、資源配分として相応しいかそうでないか等難しさを増している。
また核開発をするとすれば、核廃棄物の処理や大災害下の安全性など困難な課題を抱えている。
問題の上に問題という地図なき旅行者となる。
今後、人々に目に見えないものの象徴として、健康を支える細菌であったり、仕事上の競争を決め手となる、AIなど目に見えないものが新時代を築くアクターとして出てきたと考える。
テーマ :命輝く未来社会のデザイン
コンセプト :People’s Living Lab(未来社会の実験場)
キャラクター:普通人の目に見えない「細菌を中心とするミャクミャク君Ⅰ
号」、「コンピュータの中で人より賢い解を出すミャクミャク
君Ⅱ号」として登場し、見えないものが見よというメッセー
ジだと思う。
人が見えないものを心眼で見て対処するときに、このAIソフトらしきものを超える英知を持っていると思いたいものです。
今回、ここでは触れないが、落合陽一氏の「さようならホモ・サピエンス」というフレーズを、人々への惜別を意味するのか・・・を考えていきたい。
理事長 井上健雄
※2025年現在、ノーベル賞受賞者個人31名と1団体という成果を出した日本の先駆者

