このあたりにも木枯らし一号が吹きました。(R7 11/3)
寒い冬の始まりです。
みなさま、風邪など召されず、ご壮健の活躍を祈念いたします。
自然には、厳しさもある、やさしさもあるという、石川啄木(1886~1912)の二つの短歌(彼は三行詩とも表現)から始めましょう。
いきすれば 胸のうちにて 鳴る音あり 凩よりも さびしきその音
(悲しき玩具 1912年発行)
ふるさとの 山にむかひて 云うことなし ふるさとの山は ありがたきかな
(一握の砂 1910年発行)
前者は、凩を前にして、一層の寂しさや肺結核による不調を感じさせる。
ただ悲しき音に苦しんでいる。
後者は、ただふるさと山に向い、思い出や悲しさやいろいろな思いもあるが、山の姿の安寧と優しさに、そして時には厳しさにもただ感謝している。
詠んでいる私の心も暖かく満たされる。良かったなあ。
啄木と同様に、誰もがいつも相反する気持ちの揺れ動きの中にあってこそ、人生を深く充実して生きている。
人もそれぞれのふるさとの山を持っている。 私の山は—
『おいおい そうじゃないだろう。長い間挨拶も書かずに、何をしていたんじゃ』
これは失礼しました。
啄木さんの歌で、少しばかりの報告をしたつもりですが—
『おいおい、訳の分からないことを言ってないでちゃんとせい』
という訳で私事報告です。
「鬼の霍乱」で月々のご挨拶、長い不在で申し訳ありません。
越えてしまえば大したことはないのです。
越えてしまえば—
生きていれば長い間にはいろいろな不調もあります。
そうした時に、いつもなら自分の頭で、フィーリングで、予測対応をしてきたのです。
しかし、その頭に霞が掛かるという霍乱だったので、自分での対処ができませんでした。
そこに、周りの親愛と英知に恵まれて、霍乱対策のすべてが、ピタリ、ピタリと実行されて、私のレジリエンスがもとに戻ったのです。
本当に有難いことで、感謝、感謝しかありません。
お陰様でレジリエンス化して元気になったこの命、世間様のために「端(ハタ)を少しでも楽にしたい」と働きます。
我が団体は、2002年3月設立で、もう23年以上、エコロジーとウェルビーイングの活動を続けています。
(団体名イー・ビーイングは Ecology+Wellbeing の合成語です)
一言で表現すると「ウェルビーイング社会の実現」を目指しています。
この為に、
地球のレジリエンスの回復
社会のレジリエンスの実現
個々人のレジリエンス
の充実が、必要です。
みなさま、「端を楽にさせる」「働き」でこの三つをご一緒しませんか。
さて、私のレジリエンス回復第一号のご挨拶は、地球のレジリエンス回復の一つとして、大阪・関西万博で目の当たりにした「生物多様性の力」なるものを語ります。

〈私の万博ビックリ体験〉
・5月17日(土)ユスリカ大発生
ウォータープラザにあるレストランで、夕方になるとビックリでした。
大きなガラス面に、ユスリカ、ユスリカ、ユスリカで、外が見通しにくいほどにユスリカが貼りついていたのです。
むかし見たヒッチコックのサスペンスの鳥のように不気味です。
ウォータープラザ近くのトルクメニスタンパビリオンでも、外壁から展示品まで、ユスリカが貼りついて大変。
他のパビリオン等も同様だったようです。
※イ.ユスリカ発生の第一報のとき、自然を切り取った為に、天敵が居なくて、ユスリカ天国になったのだ、と言われました。
・7月12日(土)ユスリカ発生から約2か月後。
この時もう秋かと思う程に、赤とんぼ、鬼ヤンマ・シオカラトンボなどが乱舞していました。
そうなんです。ユスリカを餌とするトンボの大発生で、ユスリカ天国に終止符が打たれたのです。
私たちの食べている弁当にまでトンボに止まられて苦労する程に—
・8月3日(日) トンボ天国の約1か月後
うるさいほどのトンボも減ってきて、落ち着いた風情でした。
聴く所によると、このトンボを求めて、夕方から夜にかけて、烏やコウモリがやってきていたらしいです。
そういえば、甲子園球場の2.3個分の「静けさの森」が万博にはありましたね。(プロデューサー:宮田 裕章氏 慶應義塾大学教授)
万博の敷地内にあるこの森の果たした役割が、生物多様性を守る後背地として機能したからなのかなあと思いました。
動的平衡館(プロデューサー:福岡伸一氏 青山学院大学教授)そのものを、万博会場の自然が「動的平衡」を見せてくれたのです。
ユスリカ ― トンボ ― 鳥 のスペクタクルです。
この連続しない三日間に、偶々その場に居合わせ、生物多様性による遷移に出会えたことに感激しました。(遷移あってますか?)
自然の力は凄いとしか言い表せません。
生物多様性の持つ意味を、生で体験できたのです。
※ロ.ユスリカも自然の動きで吸収されたのです。静けさの森、万歳です。
万博会場におけるこの動的平衡を実際この目で見て、経験できたことは非常にクールでした。
万博会場に出現した切り取られた「静けさの森」(樹木1,500本位の植樹、草花や池の配置されたもの)で動的平衡が成り立ったとすれば、私は、市街地にある街路樹をもう少し増やす(数も樹種も)ことで、自然回復をもっと促せるのでは、と思います。
勿論、一本植えが主体になるとしても場所により2~3本とか5本が植えられていたら嬉しいですよね。
素晴らしい自然を守る一歩を、それぞれの立場で始める必要があります。
こうしたことで残してほしい万博レガシーに、私も一言主張します。
一、静けさの森
二、ミャクミャク君大モニュメント像
三、木造建築の大屋根リング
この三つがあれば嬉しい。
私にとって、啄木の言うところの「ふるさとの山」の一つになるのになあ—
これで、レジリエンス回復の挨拶とします。
理事長 井上健雄
