カテゴリー: 2015年

  • 地方創生を若者、馬鹿者、余所者で!

    中央省庁が旗を振っている「地方創生」に寄りかかり待っているようでは、創生はない。
    なぜなら地方の政治・社会構造を旧のままに置いて、成長はないからである。
    そして地方府の長を地元の名士が順繰りでやっている所に、「清新の風」は吹かない。
    なぜなら既存の利権を維持したままで、地方活性はない。
    旧勢力が頑張っているとしても、それが地方府の社会、財政の悪化、若者の流失を止めていないなら、失政をしているに過ぎない。
    つまり名士のお金持ち仲良しクラブに、改革など期待できる筈もない。

    しかし、旧勢力や公だけが問題だとすれば良いのか、いいや良くない。
    ある意味、民も公に甘え、過剰なサービスを公に要求している事実に気づかねばならない。
    自分らで出来ることを自分たちでするという「しんどい意思決定」をし、そして実行することが求められている。
     「共助」の精神が地方府の無駄金使いを止め、財政健全化への大きな一歩となるのである。
    つまり地方府は、国や県の通達や指示のもとに仕事をするべきでない。
    自分たちの「地方」のあるべき形を考え、考え抜き、そして地方府がデシジョンをすべきなのである。

    そんなおいしいことを、日本のどこに成功例があるのだとおっしゃる方もおられるかも知れない。
    そこで私は、長野県の最南端 下伊那郡の中央に位置する「下條村」を紹介する。
    人口3,963人、面積37.66km2、70%が森林、標高が332m~828mに点在。
    この村が奇跡の村と呼ばれる。

    合計特殊出生率(2011年)  全国1.39人  下條村1.92人

     この奇跡(本当は、民間感覚の誠実な政治。その主、伊藤喜平村長の手腕とまわりの共助)は、1992年村長選挙(投票率96.22%)の伊藤喜平氏当選に始まる。
    ここで伊藤氏の施策を語ることはしない。(ネット等に情報はあふれている)
    出生率がかってに伸びたのでなく、いろいろな施策の総和として1.92を実現したのである。
    もちろん「メゾンコスモス」と名付けられた集合住宅がバネになったとしても、

    • 家賃3.5~3.6万円(若者限定)-国・県の補助なし-紐つきだと自由な選択ができない為
      2LDK(約20坪)、車2台分のスペース有
    • 2006年までに10棟、一戸建て含め178戸
      家賃はさらに値下げされ、3.3~3.4万円
    • 小・中学校の給食費30%補助、2014年から半額補助
      2015年から第3子の保育料無料
    • 第2子出産祝い金5万円、第3子出産祝い金10万円
    • その他、入学祝金を商工会の商品券で配布などあり

    ※ 健全な財政でなければこうした取り組みはできない。

     地方創生の政治のあり方、人について記述した。
    そして私たちの6次産業化も、下條村の伊藤氏などの人物の登場が必要である。
    私たちの進む6次産業化についても、人の果す役割が大きい。
    旧来の一次、二次、三次などの既存の枠組みの中で活動するものでなく、一~三次までを通した形でソリューションを描くものである。
    6次産業化の成功の為に、地域の中で改革や進取の気象に富む人(出来れば若い人)たちが必要である。
    地域を変えるには、若者、馬鹿者、余所者(よそもの)と俗に言われる三者がいる。

    若者 :
    既存の枠に捕われることなく、新しいことにチャレンジできる人。
    そして地域を良くしたいという改革の灯を絶やさない人。
    馬鹿者 :
    頑固一徹で自分の仕事、つくるものに一生を掛けて悔いない人。
    基本的に人の言うことを聞かない人。
    余所者 :
    地域外の人であるが、その地域について地域の人以上の愛着を持ち、地域の良さを地域の人々と創りあげたいと燃えている人。6次化について深い知識を有する人。

    こうした人々と地域創生を6次産業化でしようとするのが、私たち「新資源6次産業化研究会」である。

    (注)今回の挨拶の言いたいことのキーワードとして、7つを太字にしている。

    理事長  井上 健雄

  • 「地域おこしを6次産業化で(1)」

    -当レポートはシリーズで6回位を予定している-

     私たちはこの度「新資源6次産業化研究会」(略称;新資源6化研)をたちあげました。
    当会は、地域の人々を中心に地域の産物の新しい使い方、新しい効用を発見し、それを商品化するための新技術や、その組み合わせによる高付加価値商品づくりを支援するものです。
    これらの一連の動きのもとに、一次産業(農林漁業)からメーカー(二次産業)、販売やレストランそして観光に至るまでの第三次産業の三つを一気通観するブランド化などの仕組みを創造するものです。
    私たちしかできない商品の安全・安心と機能性を評価する第三者評価委員会という商品価値を社会的に認められる枠組みを持っていることです。少し自慢です。

    単に流行りだからの6次化ではありません。
    一次商品の販売や、単に一次加工だけしていては、地域にお金が少ししか落ちません。
    これを二次加工や最終商品で販売すると、経済循環効果により地域経済にとって効果はより大きいものとなる。
    だから地域おこしにつながるのです。

    そうすると、地域の産物だと何でも良いのかとなると、そうではありません。
    その産物は、他の地域にない絶対的な優位であるものが望ましい。
    もし絶対的とまで言えなくても、他地域より相対的に優れているものを必要とします。
    よって地域産物は、地域の豊富なストックであるものが望ましいのです。

    地域住民は、地域のストックだが、住みにくいとか、買い物が不便とか、仕事がないとか、の事情からまず若者がフローとして出ていき、地域の現状は、高齢化ストックの増加とともに、衰退化に向うことになります。
    こうしてみると、地域はこれから大変な問題を抱えていることが分ります。
    このような地域の現状を6次産業化により、若者が帰ってくる、若者が集まってくる元気な地方に変えたいのです。

    まずどこの地域も、基本的に自然資本に恵まれています。
    つまり一次産品を中心に、二次→三次とつなげ、付加価値を上げる取り組みをうまくすれば、どこもがブルーオーシャン(競争のない世界を創造する)だということが分るだろう。
    うまくが私たちの仕事と考えます。

    そして地域が人口減に悩めば、人的資本が少ないかと言えば、必ずしもそうとは思いません。
    木のことをよく知る古老とか、一次加工の伝統的技法、産物のおいしい料理などなど、諸々に名人が隠れておられることもあるだろうし、都会から地域おこしに参加する意欲に溢れる若い人材もいる筈です。
    こうした人材を目覚めさせ、活性化させれば、人的資本もあります。
    そうすると、それを活用した結果として社会的資本も充実することになります。

    ちょっと難しく言えば、私たちの地域おこし、6次産業化の取り組みは、「地域」の人々と汗を流す「構造改革」を行うことにあります。

    理事長  井上 健雄

  • キリギリスに歌わせ、アリは稼ぐ!

    ~ グローバル化からホームバイアス化へ ~

    この厳しく暑かった夏もそろそろ終焉か?
    少なくとも朝夕に渡る風は秋。
    この夏、うるさく鳴いたセミ、キリギリス…せっせと働いたアリさん…も秋を迎える。

    イソップ寓話
    夏、歌い遊んだキリギリス♪♪♪
    冬になって食べ物がない。アリさんに食べ物をネダル。
    アリさん;『夏、楽しく歌ったのだから今度は踊られたら…』

    これはギリシャ危機のギリシャとドイツに似ていなくもない。
    しかし本質は異なる。
    ドイツは、ギリシャにせっせと金を融通していたのである。
    エッ~~!ドイツって、優しい国なのね…
    イヤ!それは違います。

    少し考えてみましょう。
    たとえば、ドイツのインフレ率が1%とする。
    名目金利を2%とすると、2%-1%、つまりインフレ調整すると1%となる。
    しかしこれを、ギリシャでインフレ率を20%(2011年)とすると、実質金利は2%-20%でマイナス18%になります。
    つまり、ドイツで2%の金利を払い100ユーロ借りて、ギリシャで100ユーロ投資します。
    20%のインフレ率ですから、1年後120ユーロになります。
    つまり120ユーロで売って、102ユーロ返済するなら、18ユーロ儲かるという訳です。
    同じユーロですから、ドイツで投資するよりギリシャに投資した方が得になる。
    (ここの所はもう少し詳しい説明がいるんですが、割愛させていただきます)
    『つまり、インフレ率の低い国で金を借りて、高いインフレ率の国に投資すれば良い』
    せっせと貸す事は助けることでなく、儲けることになっています。
    ドイツは賢いアリさん?

    でもギリシャ政府にデフォルトを出されると、稼いだギリシャ債権が紙屑になるので、今度は損失に変わります。
    だから延命策に懸命です。
    こうした事象に対し、予防的になると国を超えたグローバルリズムに変調が出てきます。
    この現象をきっと逆グローバルリズムと呼ぶべきなのでしょうか。
    今後、金(カネ)が自国内で動く率が増えることになります。
    これをホームバイアスといいます。
    世界的にみても、お金はホームバイアスしています。
    北米なら90%前後、日本やオーストラリアで80%。
    なのに欧州は60%前後です。
    つまりEU内で金が自由に動き回って、有利な所に金がいっていることになります。
    強い所はより強く、弱い所はより弱くと…
    EU政府、EU全体のコントロール体がない所では、こうなります。
    グローバル化の社会において、防衛的には、グローバル化とは逆のホームバイアスのかかる社会になっているのです。
    これは興味深く、また示唆的でもあります。

    これが企業内で起これば、「蛸の足食い」になります。
    正常な努力を見極めることが必要です。
    それぞれお考えいただければ面白いかと思います。

    理事長  井上 健雄