カテゴリー: 2018年

  • コモンズの勝利にむけて【12月】

     コモンズの悲劇とは、多数の人々が利用できる共有資源が乱獲されて、資源の枯渇を招いてしまうという経済原則である。
     これを英語で表現するならFirst-come-first-served principle(早い者勝ちの法則)。
     不等式ならこうなる。個人が享受できる利益>皆で平等に負担するコスト。
     裏切者が得をする、というものである。
     これは1698年、ギャレット・ハーディンという生物学者が発表したものである。
     世の中が世知辛くなると、コモンズの悲劇が増えてくるようです。

     一方で東日本大震災後、志津川湾の養殖施設のすべてが失われるという悲しい出来事が、コモンズを豊かにするという状況を生みだした。
     これは震災後、養殖いかだの数をコントロールし、良いカキづくりに取り組んだ結果である。
     このことにより、収穫まで2~3年を要していたものが、1年で収穫できるまでになっている。
     これは一種の「コモンズの勝利」として表現できるものだろう。
     この状況は、このカキ養殖を世界自然保護基金(WWF)が設立した「水産養殖管理協議会(ASC)」の国際認証を取得する方向の結果でもあろう。

     2009年、ノーベル経済学賞を女性として、初めて受賞したエリノア・オストロム(インディアナ大学教授)のガバニング・ザ・コモンズ(コモンズの統括効果)と呼ばれるものがある。
     共有資源を自主的に管理するルールを述べたもので、オストロム教授は、共有資源の自主管理の協力行動を、繰り返しゲーム理論を用いて説明し、ゲーム理論の新しい応用領域を開拓している。
     人間は、第三者の強制なしに、いかに共通利益創出の為の協力を実現するルールを、自らが、構築できるかを探究せねばならないのである。
     コモンズの勝利は、政治経済学と呼ばれる分野でもあり、神経経済学ともいわれる文系・理系の枠組みを超えた「知の再構築」という多様な学問分野の交流により実現できる成果である。

     今、生物多様性への関心も高まってきている。
     生物多様性を要約すると、地球資源と人々の生活との葛藤である。
     一人ひとりの人々が、食べて生きることと、公共財としての地球資源の一つである生物多様性をどう守るかという問題である。
     ○○ファッショ、××ファッショでは、解決できない。統合的な知が求められている。
     多様な視点をもった多様な人々が、公共財のガバナンスをどうするかということである。
     多様な人々の意見の総和において、コモンズの勝利にむかうものでなければならない。

     2019年は、公共のガバナンスが大きな課題となるだろう。
     私たちは、コモンズの勝利にむけて邁進しようではありませんか!

    ASCは、オランダに本部を置き、乱獲や海洋汚染を防ぐ目的で2010年に設立されたもの。
    ここでの認証を受けると、環境にやさしい水産物であることをアピールできる。

    理事長 井上 健雄

  • 「おしゃれ」にはじめて「たべもの」でしめる【11月】

     「山風に笠取られたるカカシかな」
     今年の台風21号は、こんな生易しいものでなく、大木まで倒すまでのひどいものだった。この台風とともに秋へと季節交代が始まっている。
     昼はまだ汗ばむ程だが、朝・夕は冷涼な風に驚かされることもある。
     哀愁、淋しさ、夕暮、等々は、秋と相性がいい。
     しかし秋に「紅葉」の言葉一つで鮮やかに紅に染まったもみじ、柿の葉色の変化、爽やかな黄金色のイチョウの葉・・・
     幻想的な景色を思い浮かべさせる。

     こうした瞬間を描き出した歌がある。
     見わたせば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮     藤原 定家
     この歌そのものは晩秋における寂しい景色であるが、「花」「紅葉」がないとしつつ
     そこに見えない咲きそむる花、鮮やかに紅に染まった紅葉をふっと思い起こさせる作用があり晩秋の景色に、幻の一幅の絵を見せてくれるのである。
     ちょっと上品に景色や歌を楽しめば、次は食欲の秋である。

     繁盛するラーメン屋がある。
     混雑時には席につくまで60分待ち、待ち時間はウェイティングバーでカクテルを飲み席についたら前菜をつまみながらワインを飲み、そして ラーメン(20$/杯)を食べて最後にデザートを食べて二人で合計150$を払う。
     これはニューヨーク『一風堂(2008年)』である。

     予約がなかなか取れない寿司屋。おまかせと獺祭一本を入れると二人で1,500$。
     これはシンガポール マンダリン オーチャードの『はしだ』である。
     私は寿司には余り趣味でないので『はしだ』さんについては不如意である。

     一風堂はラーメン。博多一風堂(1985年)がスタートである。
     河原 成美(1952年生まれ)氏が創業者。
     ここのHPを見るとこれが「ラーメン屋」かと思うおしゃれなカフェである。
     そして「注文をまちがえる料理店」なるプロジェクト等も実施している。
     2017 9/16 東京六本木で、働く人はみな認知症の方々で運営されました。
     なかなか味な企画ではありませんか。
     勿論、味も良く、汁なし担担麺などメニューもいろいろ工夫されました。
     私は札幌の狸小路店が初めて入った店だったので、今回これらの情報を知ると吃驚です。

     はやるにははやる訳があるのです。
     従来の姿から、その土地に相応したオリジナルの一皮むけた姿が受けているのである。
     10月の挨拶で書いた淘汰圧をこうしたこの事例は、見事に成長・成功につなげている。
     私たちもしっかり「はやる」を始めましょう。

    理事長 井上健雄

  • 牙のない象と牙をもつ人【10月】

     アフリカ象は現存する陸上動物の中で最大のものである。体重は5.8~7.5t。
     大きいものは10tをこえる。
     アフリカ象の牙は、大きいものなら、長さ3mを超え重さ50kgを超える。
     牙は外敵から身を守り、仲間うちへの威厳であったり、水を求め地面を掘ったりする道具でもある。
     この立派な牙を持つ象が少なくなってきている。

     象の牙は野生動物にとっては脅威であるが、密猟者にとっては工芸品の素材であった漢方薬などの最たるお宝である。(40kgをこえれば一本100万円を超える・・・)
     このアフリカ象は、アジア象に比べ立派な牙の為に密猟の対象となり、牙がない象へと進化している。
     まさしくダーウィンの言う、強いモノが生き残るのでなく、生き残ったモノが強いのである。
     密猟というものに対応する牙なし象って可愛いかも知れないが、可哀想でもある。
     特にメス象において牙を持たない象が、地域により98%を占めていると報告されている。

     この淘汰圧は、人間界にもあてはまる。
     しかしこの淘汰圧は、業界、働く業種によって異なる。
     この淘汰圧を逆転させているのが起業家やベンチャーリストであったり、出過ぎたクイは打たれない独自性の強い個性派であろう。
     つまり「右におなじ」とか「他者のモノマネ」である「誰でも考えること」では生存ができない。
     いかに尖り、ニッチイスであったり他所のマネされない独創性、これが生存のキーとなる。

     この地球上に人間がいなくなって動物たちばかりなれば、この象たちも長い立派な象牙を自慢にするようになるだろう。
     人は淘汰圧に負けない自分の牙を磨くことが、求められている。
     人間はどんな老齢になってもその老齢には無知なる子供であるように、
     人は一度しか生まれないのでいつも、いつも新しい生活に挑戦していると言える。
     この新しい生活を学ぼうとすれば、いろんな知識武装や学びはあるがやはり一人一人の創造性こそが人の生存の基盤であり力となるのである。
     人は他に勝るオリジナリティの高い牙を持つべきである。

    理事長 井上健雄

  • 砥石とともに【9月】

     私たちはいつもいろいろな仕事、いろいろな注文、いろいろな錯覚に満ち溢れた中にいる。
     いろいろな仕事(まともなもの)は、優先順位をつけて、大義にそって効率的に正確にやらねばならない。

     いろいろな注文、これはまずその注文の正当性をチェックしなければならない。
     正当な注文には迅速に対応する。しかしその要求が、それまでに合意されたものをひっくり返すものであったり、タイミングや協働を考慮し ないものであったりすると厄介である。
     厄介の最たるものは、個人の恣意的な思いつきである。
     これまでの経緯を記したものによる例証や時限をきめていたものが突然の前倒しには協働者の多い場合は不可能となるし、思いつきには殆ど 対応の仕様もない。

     しかし、このマイナスの注文こそが私たちを「磨く砥石」と考えねばならない。
     (少し不幸なことであるが・・・)
     小さな自制心に欠けてしまうと大きな自制心までなくしてしまうことになるからである。
     自分自身が仕事のコントロールするMC(マスターオブセレモニー)と位置づける能力が必要となる。

     こうした状況の中でも自己実現をはかることは、不安や怖じ気づいたりするものであるが、この火の中を潜(くぐ)りぬけた人だけのいっ そう自分を獲得するとしたら砥石こそ自己完成の道である。

    理事長 井上健雄

  • 仕事の品質【8月】

     ある地区に二つの大学がある。
     一つは名門大学、一つは州立大学である。
     二つは同じような学部を持ち、大学教育認証機関によって認められている。
     名門大学は、高いレベルの学術論文や、世間に評価される有名教授を擁している。
     一方は、貧しい家庭の子供たちが初めて大学に進学するところである。
     こうした時、どちらの品質が優れているか、皆さんいかがお考えですか?

     そりゃ名門大学ですよ、となる。
     しかし、どれが正解とも言い難いのである。
     なぜなら、学びに対する顧客の欲求に応えている点で、同じとも言える。
     名門大学は、「学生に成功のための教育」を行っている。
     対し州立大学は、「貧しい人たちの生き残りのための教育」を行っているのである。
     その大学の使命によって、品質が規定されるのである。
     州立大学が、名門大学の1/3の費用で学べる構造をやめて、授業料を上げて成功のための教育に向かうのが正しいかとなると、それは疑問である。

     このように「品質」というものは使命との相関が高いものである。
     私たちのする一つの受託事業の品質というものを考えてみよう。
     端的に言えば、市民欲求を汲み取り整理し、デザインした委託者の要求するものであったり、真の顧客(市民・地球や環境)の要求するものとかが、それが私たちの品質となるのだろう。
     つまり市民、行政の求めるものを実現させる、社会的実装こそが、私たちの仕事の品質となる。
     とは言え顧客自身が、明確に意識していない要素を考慮に入れずにすませば楽であるが、それはまた仕事と言えないだろう。

     当然どの仕事をとっても、顧客は多岐多様である。
     顧客は、市民から地球、特定の仕事を依頼した専門家、金元の会社、行政であったり、いろいろである。
     話は少し比喩的になるが、未来について、私たちに分かることは一つしかない。
     今と違うということだけである。
     とすれば、未来は予測するより、創り出せばよいのである。
     私たちが良い仕事をする為には、独善に陥らず、協働して答えを求め続け、そこから新しい創造を生みだす姿勢こそが、仕事の品質を高めることになる。
     いいコラボレーションをつくって創造してまいりましょう。

    理事長  井上 健雄

  • 西日本豪雨から考える【7月】

    (サバイバル備忘版 H30年7月17日)

     先日、西日本を襲った豪雨で、悲惨な被害が続いている。気象庁は「平成30年7月豪雨」と命名。
     亡くなられた方の御冥福を祈るとともに、被災された方々にお見舞いを申し上げます。
     これらの惨状を今後、ほんの少しでも小さく出来ればと考察した。

     この豪雨の原因は、停滞した梅雨前線に向かって、大量の水蒸気を含んだ空気が流れ込んだことにある。
     また、地球温暖化による海水温の上昇により、蒸発量が増えたことも被害を一層大きくしている。
     河川の要因として、豪雨により本流の水かさが増し、ダム決壊を防止の放流が重なり、支流の水が行き先を閉ざされ、逆流して各地を浸水させている。バックウォーター現象と呼ばれるものが洪水の大なる原因となった。
     こうした危険性を予知されていたが、対策は地域・予算・景気などに左右され、数十年以上も店晒しされてきたのである。
     空の世界の要因として、入道雲が発達し、積乱雲がたくさんできるバックビルディング現象のマルチセルを起こし、線状降水帯において長時間の豪雨となった。
     台風7号の影響や、偏西風の蛇行なども無視できない要因であった。
     これら様々の原因が重なりあい、大災害となっている。

     大雨から身を守る為には、

    1.気象情報をウォッチ 自助
    変化への準備、ハザードマップによりどこへ逃げるかの確認
    避難場所・ルートの確認
    ※これは今までと違うぞ!という勘も…
    2.注意報 自助+共助
    高齢者等弱者の早めの避難
    3.警報 自助+共助+公助
    市町村の勧告・指示に従って行動
    4.特別警報 自助+共助+公助
    直ちに避難 or 屋内の安全な場所

     その上で、個人、家族は自分たちの身を守る考え方を提示したい。

     それは、生存のための時間巾「3の法則」と呼ばれるものである。  自助

    1.人は空気なしに3分しか生きられない
    3分で御陀仏 空気
    2.人は適切な体温を維持できなければ3時間位しか生きられない
    3時間で御陀仏 体温
    3.人は水分を摂ることなしに3日しか生きられない
    3日で御陀仏
    4.人は3週間何も食べられなければ生きられない
    3週間で御陀仏 食料

     これが災害等時における、時間巾の基本的な考え方である。
     この「3」のそれぞれの対策が、命を守ることになる。

    -サバイバルマニア「つぼっち」さんより-

    空気3分 防塵マスク:地震等の粉塵を吸わない
    3M使い捨て防じんマスク 排気弁付き(10枚2000円前後)(例)
    ゴーグルも用意したい
    体温3時間 ヒートシートエマージェンシー・ブランケット(例)
    これらは人体から発せられた熱の90%を反射させて、体温を守ってくれるものです(1000円前後)
    水分3日間 志布志の自然水(例)
    非常災害備蓄用(2L×6本)賞味期限5年(1500円前後)
    ※家族の人数により増加させましょう
    食料3週間 お米はアルファ化米がおすすめ。
    アルファ化米は水を入れることでもとのご飯に戻る。
    冷水でもOK。
    尾西食品のアルファ米12種類セット(3500円前後)(例)
    ハウスのレトルトカレー5袋 賞味期限3年(1000円前後)(例)
    その他 LEDヘッドライト(ジェントス実用点灯8A 3000円前後)(例)

    両手が使える

    モバイルバッテリー24000mAh LEDランプ付き(3000円前後)(例)

    モバイル・ケイタイの予備電源として

    大人用からだ拭き(50枚入り)

    cf. 断水など水は貴重なもの、出来る限り少なく使用
    身体を衛生的に保つ(200円前後)(例)

    救急セット 応急手当用8点セット(2000円前後)(例)
    猫の砂5L×4袋(2000円強)(例)  cf. 人使用として

    トイレの処理 便器にゴミ袋をつけて用足し後、猫の砂をかける

     こうやって書きあげてくると、普段いかに便利な生活を送っているかが分かります。
     私たちは、普段の生活を続けられることに常に周り(国や地域や近隣の人々…)に感謝し、地域社会への参画や貢献もすべきだし、国の国民を守る活動(自衛隊の方々の献身など…)にも支持し、感謝しなければなりません。
     このように自らを助ける自助があり、近隣コミュニティが果す共助があり、そして地域・国として公助が複層的にあって、はじめてレジリエンスの高い社会が実現できるのだと思います。
     災害にあわれた被災者の方々に対し、出来る限りの支援行動をすべきです。
     皆さん一緒に頑張りましょう。

    ※今回の放流から: ダムが決壊すると放流以上の甚大な被害が出る為に、限界まで貯まった水を流すこと。

    ①また当該ダムが多目的ダムとして発電や生活用水貯水を行っており、大雨予報に対し全放流ができなかったこと。
    ②ダム行政として造ることが優先され、強いダム創りまで及ばなかったこと。

    理事長 井上 健雄

  • ビジネスの世界を甦(よみがえ)らすファインアート【6月】

     現代は、VUCAの時代と言われる。

    V:Volatility -不安定- U:Uncertainty -不確実-
    C:Complexity - 複雑 - A:Ambiguity - 曖昧 -

     この4つのキーワードをつなげると、論理的・理性的に振舞うことが問題解決になるかと言えば、怪しいということになる。
     これまで論理的スキルは、問題を解決する一番の方法で、MBA卒業生たちが重宝された理由でもある。
     それがブーカ(VUCA)時代になると、論理スキルで分析しようにも読めない、分析麻痺を起こしてしまう。
     つまり、今まで論理的・理性的な情報スキルが、ブーカ時代に限界を迎えている。
     その一、そのスキルで出る答えは正解のコモディディ化となり、差別化を消失させている。
     その二、要素還元主義の論理思考アプローチからは、全体を捉えられないからである。

     しかし、こうしたブーカ時代に何の策も持たないリーダーが、新しい仕事に取り組むとなると、悲惨なことになる。
     せめて論理的思考や分析でもできれば、少しは救いとなるが、そんな素質もなく乱暴なビジネスモデルで猪突猛進、周りは死屍累々となる。
     デフォールト(初期設定)が間違った取り組みほどヒドイことはない。

     今、世界ではRCAが注目されている。
     英国の美術系大学院大学で、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートのことである。
     RCAはQS※世界大学ランキングのアート・デザイン分野で世界一(2015年)に選出されている。
     そしてここ数年、RCAは企業向けビジネスを拡大させつつある。
     「グローバル企業の幹部トレーニング」を設け、フォード、ビザ、グラクソ・スミスクライン等々の将来を担う幹部教育を行っている。
     もう遠い昔の2008年から、ハーバード・ビジネス・レビューは、The MFA is the new MBA.という記事を載せている。
     企業において、MFA(Master of Fine Arts)美術学修士が求められているのである。
     MBAで学ぶ分析的スキルより、MFAで学ぶ統合的コンセプチュアルスキルの重要性が高まっているのである。
     時代は「真・善・美」なんだ。特に美意識が求められている。
     ビジネス、学習、社会の組み立て、ソリューションもこの方向に進んでいる。
     そういえば、ダイソンの創業者、ジェームズ・ダイソンもRCAでプロダクトデザインを学んでいる…
     私たちも「美意識」をもって仕事を遂行しようではないか。

    ※QS:イギリスの高等教育機関の調査会社クアクアレン・シモンズ社のこと

    理事長 井上健雄

  • 価値混在のなかでの協働【5月】

     今、世の中は、コラボレーションの結果による解が求められていると思います。
     でも、どうもうまく動いているようには見えません。

     協働といえば、個性的な考え方や働きを、それぞれが本音で出して、それらが高いレベルに止揚してソリューションを創りあげていくものです。
     しかし現状は、コラボレーションという名の取り組みであっても、ある団体の一担当とか、また権威の名を借りた偽者とか…が仕切っている狂動もある。
     また、悪意などないのだが、古い価値観を振り回し、遅れている知識でもって、分け知りに仕切るなど、無知の弊害等も多い。
     それでも、各自がいい仕事をしていると錯覚をしているから、厄介だ。

     但し、いい出来の人は、会話の中から自分の主張についていろいろアンテナを張っており、客観化する能力に長けている。
     つまり、話しあう程に分りあえ、うまい協働をできる人もいる。

     厄介な人は、イノベーションに縁遠い職種であったり、内部プロセスに時間を要するセクションの人である。
     閉口するしかない。
     その上、これらの人がネットワークの充実とか言うのだから、呆れる。
     ネットとは、上下のない平等の世界なのに、お上意識で取り組むのである。
     これらの人への対処は、フォロワーシップと、高次の目標を再確認して、方向性を一致させることである。

     こうした価値混在の中での取り組み指針は、一つは、伝統を知り、それを学び、実践していくことである。
     例えば、日本で1300年もの間、繰り返されてきた「式年遷宮」などである。
     20年毎に遷宮を行うことで、技術の継承がうまく進む単位である。
     (現在のように長命の時代は、あと10~20年延ばしても、と考えたりもするが…)

     このように良い伝統を守り、継続する価値もあれば、一方で、改革が求められている世界もある。
     教育である。
     労働者として、言われたことをしっかりやり遂げることができる人。
     管理者となって、労働者を「ニコポン」で運営する人。
     こんな人々を作ってきたのが、今までの教育である。
     しかしこれらは、ロボットやAIがやってくれる時代になります。
     言われたことをやる、ニコポンマネジメントはもう要らないし、障害にさえなります。

     ではどうするか。
     「スクール」から離れることが、解決手段となります。
     つまり「アンスクーリング」です。
     もう子供たちにお仕着せのプログラムは不要です。
     彼・彼女らに必要なのは、セルフディレクテッド・ラーニングとすべきなんです。
     自分で学びたいものを決めて、どのように学ぶかも自分で決めるのです。
     すべて自己決定です。
     アンスクーリングとは、学校の枠組みを超えて「生きると学ぶ」が同軸にあるものです。

     まとめると、みながまっさらの目で見るまっさらに考えるまっさらに協働を試みる
     これらを実行することで、価値混在の中においてもみなが認めあい、リスペクトしあえる、パフォーマンスの高い社会の実現ができるのではないでしょうか。
     そして詰まるところ、クリエイティビティとパッションが個人の最強の武器となり、価値混在のなかでのリーダーシップとなるのだと思います。

    ※止揚(独 aufheven)

    事物が発展する場合、低い段階の否定によって高い段階へ進むが、その時も低い段階の実質は保存されることをいう。

    理事長 井上 健雄

  • うつりかわり【4月】

    年年歳歳花相似
    歳歳年年人不同  劉希夷
    (毎年美しい花は同じように咲くが、この花を見る人は毎年変わっている…)

     かつて、「紅顔の美少年」を誇りとした私も、いつの間にか「白髪厚顔のクソジジイ」になりました。
     美しく表現すれば、

    花の色は 移りにけりな いたずらに
    わが身世にふる 眺めせしまに     小野小町

    となるでしょう。
     時の身体への変化は美しくなくとも、こころへの変化は深く、それでいて淡い成熟を伴ってくれます。
     懊悩を超えた先に澄明で清快にあらわれる心根をもたらしてくれます。

     世の中はいつも、様々で、様々な変化が起きています。
     例えば、音楽教育の移り変わりを見ても、2002年に和楽器が中学校の必修となっています。
     グローバル化が進めば進むほど、ローカリティ(地域)が一層見直されるということだろう。

     また2017年、小・中学校の学習指導要領に「協働」が新たな学年目標として示された。
     かつては、合唱でもみんな同じ気持ちで同じ方向を向いて歌おうという、心を合わせるという協同でした。
     しかしこれからは、お互いに自分が感じたこと、考えたことを伝えあって、歌唱表現を高めていこうという風になっています。
     昭和の私の時代は、協同で同じように歌おうでした。
     それが厭で、合唱は好きではありませんでした。
     今の協働なら、破調を覚悟で得意気に歌うでしょう。

     つまり今後は、個を持った人々による創造をチームレベルで仕上げていく協働が求められている。
     さぁ私たちも、しっかりとした個性を磨きあげるとともに、新しいことを切りひらく創造性を高め、それらをチームとしての協働で新しい時代に立ち向おうではありませんか。Wao!

    理事長  井上 健雄

  • 生物多様性とは…【3月】

     1927年。
     野球ファンなら、この年の夏の終わりにニューヨークヤンキースのベーブルースが60本のホームランを放ち、大リーグ記録を塗り変えている。
     日本では大正文壇の寵児、芥川龍之介が自殺、35才であった。
     まぁ、一般的にそう取り立てられることのない年と言える。

     しかし私は、この年(1927年)に違ったことで注目している。
     それは、この年、アメリカから食用ガエルの餌として、アメリカザリガニが輸入されていた。
     100匹中、27匹だけが生きて到着し、鎌倉の養殖池に捨てられた。

     水の外来生物として、ブラックバス(オオクチバス)、鯉やアメリカザリガニは、駆除対象である。
     そして大捕食者のブラックバスをやっつけると、中位捕食者のアメリカザリガニが解放され、大爆発してしまうという困った現象を引き起こしたりするのである。
     このアメリカザリガニは、ため池などに侵入すると、底の泥を攪拌し、水も茶色にしてしまう。
     そうすると水中に太陽光が届きにくくなり、水草も貧弱となり、光合成も進まず、溶存酸素を少なくし環境を悪くしてしまう。
     またその食性は、人間の如く、若い間は動物食が好きで、ヤゴやゲンゴロー、二枚貝など水中昆虫を全滅させた例もある。
     二枚貝などがやられると、貝に産卵するタナゴ類も少なくなる。
     そして大きくなると、植物食に向かうのである。
     動物を減らし、植物も減らしてしまう、困ったカニなんである。

     その上、最近はアメリカザリガニを美しく(?)変身させた「タイゴースト」などが、登場している。
     この種は、タイの観賞魚養殖家によって産みだされた。(異説もある)
     ヒゲが白かったり、甲羅に色々な色(赤や青等)が入っていたり、ハサミが真赤だったりするのである。
     このカニ、発売当初200万円もの高値であったし、今でも数十万円のものから数千円のものまで流通している。

     こうした一方で、繁殖力の強さから、このアメリカザリガニを養殖し、将来の食料不足に備えようとする動きもある。
     こうして見てくると、アメリカザリガニは、駆除すべき動物なのだが、これからの食料資源として考えるべき広がりもある。

     鯉も同様である。
     鯉も外来魚といわれている。(最近の研究では、日本の古来からの鯉(ヤマトゴイ)もいたと発表されている)
     鯉は生命力が強く、長寿で20年以上、そして70年も生きるものもいる。
     30cmを超える大きさにもなると、天敵もなくなる。
     そして世界の侵略的外来種ワースト100に載せられているが、海から離れた地域では、古くから貴重な動物性タンパク源として重用されている。
     立場により対応は異なる。

     これらの侵略的外来種ワースト100の範疇に、ワカメ、ホテイアオイ、虎杖(イタドリ)、葛も入っている。
     ワカメ、イタドリ、葛は日本では食用として活用されているが、他ではあまり食用として用いていない為、単なる厄介物としての汚名をきている。
     こうした傾向は上記のコイやニジマスも同様である。

     生物多様性尊重は、今の科学発展の中であったり、食習慣であったり、また時代とともに変化していく。
     みんな生き残って地球の中にそれぞれの地歩を築いて欲しい。
     それが駄目と言うなら、それぞれの生き場所を用意してあげることが私たちの役目かも知れない。

    理事長 井上 健雄

  • 蘊蓄からNEXTへ【2月】

     昔、ローマ時代には紫色の石は二日酔いに効くと思われていたそうだ。
     色として、貴ばれる紫は、鉄イオンが放射能を受けて電子状態が変化したものにしか過ぎないのに…

     この石は、中国でも注目され一世を風靡し、また社会問題ともなった。
     何晏(かあん)という人が強壮強精薬 五石散(ごせきさん)として創薬したものである。

     この紫石は日本の秋田、新潟、宮城等でも産出されたが、現在ではほぼ絶産となっている。
     今はブラジルやウルグアイ、ジンバブエから輸入されている。

     この石、2月の誕生石、紫水晶である。
     英語名はアメシスト。
     ギリシャ語は、アメテュストスつまり“アルコールがない”という意味である。
     アルコールがない、つまり二日酔いに効くとされたようだ。
     そう言えば2月生まれの人は大酒飲みが多く、二日酔いにもならず元気である。
     紫水晶の粉でも飲んでいるのだろうか。

     さて2月は、小売業の世界においては「閑散のニッパチ」と呼ばれ、2月8月の対策は、前月のプロモーション、売り切り重点、次月からの積極攻勢の為の仕込みを中心としながら、人材育成に励む時なのである。
     忙しい月でない時に何をしているかが、事業の成否を決める最も重要な時である。

     こうした繁閑がある仕事は計画性が立て易くあるが、また残念ながら仕事は忙しい時に忙しいことが重なるという、繁の対策こそが重要である。
     今は、個々人の体力と頑張りで進んでいるが、繁の中における次の繁の計画品質がもう一つ落ちたりする恐れがある。
     このソリューションは、最初に述べたように「閑の時」に「繁」をむかえ打つ予測ドキュメントづくりを進めることにある。
     そして、もうあと少し足りない時に、協働を組織したり、応援体制を敷けるネットワークである。
     とすれば、私も2月を暇そうに蘊蓄を垂れたりせず、明日に向いNEXTを創ることが求められているのである。

     あぁ蘊蓄から繁忙の2月になってしまった。
     みなさん、協働のみなさん、一緒に頑張りましょう。

    理事長 井上 健雄

  • 謹賀新年【1月】

    謹んで新春のご祝辞を申しあげます

    今年もイー・ビーイングは挑戦します

    (一)「やってみる」をベースに進みます
    (二)一人ひとりが世界を舞台に自己表現できる武器をモノにしていきます
    (三)中強度の継続した運動で長寿遺伝子をONにします
    私たちは、今、発達しつづけるテクノロジーを、テクニックとして身につけ、その上で、それを世に役に立つスキルとしてプレゼンスしてまいります。

    理事長  井上 健雄