カテゴリー: 2020年

  • リモートを楽しむ  【12月】

    今、会社の働き方や医療の不文律を変えたのは、社長でもなく、政府でもなく、ウィルスです。

    働き方として、リモートワーク、Zoom会議、ワーケーションが広がり、また、医療では、リモート診断、AI薬剤、モニタリング技術(診療アプリ)など稼働し始めています。

    こうした変化対応は、決して一時的なものでなく、これが新しいノーマルとなり、世の中を変えていきます。

    新常態となったのです。

    新常態について、チャールズ・ダーウィンの「自然淘汰説」※が最も近い考え方であります。

    生き残るモノは、強いからではなく、環境によりよく適応したものが生存し、繁殖するというものです。

    つまり、環境が変われば、チームが変わるということです。

    今回、ウィルスが社会のあり方というゲームを変えたのです。

    この文を考えている時、新型コロナウィルスワクチンを開発中の米製薬大手ファイザーと独ビオンテックが、90%超に効果があるというワクチンを創ったとの報道があった。

    めでたい。

    うまく行くことを願っています。

    春以降に日本でも接種が可能になるといいんですが…

    しかし本当の安心は、なかなか難しいと思います。

    コロナウィルスのRNAのRは変異しやすいので、どんどん新種が出来やすく、新種のRNAウィルスに対応するには、新しいワクチンが必要となるからです。

    また、ワクチン競争が始まるということになります。

    そうなると私たちは、既存の治療に耐える体力を養成しておくことが、コロナ対応備えの要諦です。

    次に大事なことは、どう新常態に適応するかです。

    私は、孔子さんの取組みを推奨したい。

    これを知る者はこれを好むものに如かず。

    これを好む者は、これを楽しむ者に如かず。

     コロナの制約をうまく使って、新しい楽しみの創造へと向かうことだと思います。

    通勤が要らない(自宅で、あるいは地方で、また都心のホテルでもと働く場の選択肢が増える)ことを喜びとしましょう。勿論、職種等によるのですが・・・

    通信環境とパソコンがあれば、日本中、いや世界中どこででも仕事ができる時代です。

    国立公園の中で、仕事もバケーションも楽しむという、ワーケーションもできる。

    身体的には、体を全機させ、免疫力を高める食事、そして年齢に応じてサプリメントの活用もいいでしょう。

    こうした楽しみを十分に活かして、新しい組み立てにより、仕事を創造したり、身体を強くしたり、仙人になったりして楽しみましょう。

    楽しめばすべてが好転しますよ!

    ※ハーバート・スペンサーの適者生存(Survival of the fittest)と、自然淘汰は違います。

    スペンサーの示したのは、社会は低次元から高次へと進歩していくというものです。

    ダーウィンは、環境に適しているか否かを問うている。

    理事長 井上健雄

  • 気候危機にそれぞれの対策を 【11月】

    海、2018年IPCCは、1.5度の温度上昇でサンゴでは70%が消滅する。2.0度となると99%となり、ほぼ絶滅である。たった0.5度で壊滅です。いろいろな種においてこうなるということです。

    ランセット委員会によると2015年大気も汚染が広がり、世界で900万人の死者が出ている。

    その中でもインドでは、250万人の死者となっている。

    インド、ニューデリーは、WHO基準の45倍と最悪の状態である。

    それらこれらで、2015年のパリ協定は2030年までにCO2を25%(2010年比)減らす。2050年までに45%減らすべきと提案した。

    また、この温度上昇の被害は、CO2を大量に出した富裕層ではなく、つつましい生活をしている貧困層に深刻な打撃を与えるという逆転現象となっている。

    今までの統計上分かっていることを整理すると次のようになる。

    「所得が。10%増えるとCO2排出は、9%増えるという事実がある。」

    つまり先進国が、CO2を出して発展途上国がそのダメージを受けている。

    一方で、中国が出しているCO2の多くは、消費している先進国にも責任がある。

    (勿論、中国の責任を除外するものではない。2010年度世界のCO2排出量323億tのうち、90.4億tで世界一の排出量である。)

    この炭素排出量を消費国に割り当てると、

    北米 22.5tCO2/一人あたり

    西欧 13.1tCO2/一人あたり

    中国 6tCO2/一人あたり

    南アジア 2.2tCO2/一人あたりとなり、消費勘定も先進国は考えるべきである。

    (日本単独 9.4tCO2一人あたり)(注)当該数値は、日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット2019年よるもので、中国生産の消費地勘定は入っていない。

    これを要約すると世界で最も排出量の多い上位10%は、世界のCO2排出量の50%を占めていることになる。

    一方で最も排出量の少ない50%は、世界CO2排出量のおよそ10%を占めるに過ぎないとしている。※

    ※Good Economies for Hard Times by Abhijit V, Banerjee & Ester Duflo

    こうした気候変動は、地球上で公平に起きているわけではない。

    従って対応すべき行動は一様ではない。

    こうした温暖化の対策として、私たちはCO2の排出を下げるそれぞれの工夫こそが大事である。

    正しい認識例の為にいくつかの紹介をした。

    大事なことは、その認識のもとに、私たちは正しい行動を心がけるべきである。

    例えば、日本の環境省の奨めるプランを個人レベルにおいて実行していくことだと私は考える。

    環境省は3つの社会づくりを提言している。

    1.脱炭素社会 再生エネルギー、原子力等

    2.循環型社会 消費→再生→循環→消費

    3.分散型社会 都市と地域の交流 リモートワーク等

    この中でも、私は、3つ目の都市集中型システムの是正として、地域分散型システムの形成を考えている。

    というのも、自然は分散されない賭けを嫌うからである。

    目指すは、地域創生健康事業を各プレイヤーと連携して創り上げたいと考える。

    これの母体として、E-Beingの多様な人々の集まるサステナウェブを展開する。

    皆さまも参画されませんか?

     

    理事長 井上健雄

  • 秋風をうけて 【10月】

    おっ、もう10月のそれも10日も過ぎているぞ。

    いや~この夏は暑かったですね。

    でも10月の風は秋です。

    たまには、風流にいこうではありませんか。

     

    菊の香や 奈良には古き 仏たち  芭蕉

     

    菊の開花期は、春菊、夏菊、秋菊、寒菊とありますが、私は秋菊。

    そして小菊が好きです。

    菊と言えば、9月9日の重陽の節句も好きです。

    しかし、日本の温暖化のあまり、9月は夏です。

    寒い間にやって来る立春は、春に思いを馳せて大好きですが、冷涼な秋の行事を残暑に楽しむのは野暮です。

    重三(3月3日)、重五(5月5日)、重七(7月7日)、重九と日本には、四つの節句があり嬉しいです。

    最初の三つが女・子供の祭りであり、重陽の節句は熟年者のお祭りです。

    平安時代には、9月9日(旧暦)の前夜から、菊の花に綿をかぶせておいて、翌朝、菊の香の露を吸い込んだ綿で身体を拭くと若返ると言われていました。

    英照皇太后は、孝明天皇から下された菊の着せ綿を終生大事にされていました。

    身を拭う時には、きっと涙も拭われたことでしょう。

    もう少しすれば、銀杏の黄葉を称えようではありませんか。

    私は、小学校のある時期、大徳寺(京都)の前を自転車で走り抜けていた頃があります。

     

    北は黄に 銀杏とみゆる 大徳寺  召波

     

    こうした歌は当時知りませんでしたが、秋の深まりに黄金色の焔に気持ちを高ぶらせたものです。

    ああ懐かしいです・・・

     

    理事長 井上健雄

  • スキルそして異次元ジャンプ【7月】

    前月は現代社会で多く求められている話す力(コミュニケーションスキル)について述べた。

    話す力(コミュニケーション能力)はいろいろな方面から重要視されている。

    経団連の新卒採用にあたって特に重視するポイントとして、コミュニケーション能力が、10年以上連続してトップにある。

    嘗ての学校内において、成績トップや運動№1が尊敬を集めていた。現在はコミュニケーション能力の高い人に人気がある。

    スキルというものは磨けば磨くほど洗練される。

    誰もがほぼ一線でスタートできるのがスキルである。ボクシングなら拳にグローブをつけ、相手の上半身と側面のみを攻撃するものであり、ジャブ、ストレート、フック、アッパーの打ち方、避け方、そして守る時のステップ、フェイント、クリンチなどのディフェンス力等々がある。

    野球も、投手ならストレート、フォーク、スプリット等々コントロール力、打者なら内角、外角、高低への対処力等々である。

    一世を風靡したスキルの古典的漫画として「あしたのジョー」や「巨人の星」がある。

    これらの主人公は、スキルを磨いた人である。ボクシングの矢吹 丈、野球の星 飛雄馬だ。

    一方で彼らのライバルの力石 徹は天才+@であったし、花形 満も天才でありセンスに恵まれ、IQや家格まで秀れていた。

    これらの漫画は、スキルの矢吹 丈、星 飛雄馬と天才の力石 徹、花形 満との闘いの物語である。

    スキルの努力家が天才に勝つという、だれもが納得するストーリーである。

    うさぎと亀の競争と同じで、うさぎが勝てば物語にならない。

    ここでスキルの重要性を述べてきたが、コロナウィルスを機に社会は大きく変わろうとしている。

    今まで同質競争している時であれば、スキルの優れたところが勝ちを納めた。

    しかし、現代社会のように変革期にあるときは、このスキルだけでは闘えない領域が、圧倒的に増えてきている。

    スキルだけでは、越せない新しい世界がある。

    それに立ち向かうには、独創的な創造力・新技術等が求められる。

    私たちの生きている世界は「破壊の時代」であり、今の体勢を壊し新しいものを構築するカンパニー・トランスフォーメーション(CX)が求められているのである。

    危険も一杯ですが、チャンスの時代でもある。

    自己を全機させて挑戦し、協働し、夢を実現させようではありませんか!

    理事長 井上健雄

  • コミュニケーション能力【6月】

    最近、コロナ対策として、対面を避けリモートワークやWEBミーティングなどが増えている。

    昔はやった「飲みニケーション」は何処へ。

    会って、一緒に歌えばクラスターなどとなんともやりにくい。

    デジタルコミュニケーションがふえる中でのコミュニケーションは、一層の科学的な取り組みが必要だ。

    今のコロナの時代のキーワードとしてDXが注目されている。

    DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、企業を取り巻く市場環境のデジタル化に対応するため、企業の行う経済活動やそれに伴うビジネスモデル、組織、文化、制度といった企業そのものをデジタル化により変革していく取り組みである。

    つまり、ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるという概念である。

    しかし、対面とリモートワークによる情報の総量は前者を4とすると後者は1の情報量しかないとされている。

    こうした状況の中でリモートコミュニケーションの成果を高めるために、コミュニケーションを科学的に組み立てる必要がある。

    今や、デジタルにあってもZOOMやTeamsなど声や顔を目の前に話し合える。

    この時、大切なことは笑顔である。

    「笑う門に福来る」

    人は赤ちゃんさえ、笑いかけられれば笑おうとする。

    これは、イタリアのパルマ大学のジャコーモ・リッツォラッティ氏のグループが1996年に発見したミラーニューロンと言われるものである。

    哲学者アラン(仏)も、「人々は幸福だから笑うわけではない。笑うから幸福なのだ。」としている。

    こうした笑顔の重要さを知ってコミュニケーションの要諦を始めよう。

    まず、コミュニケーションの望む心構えのルール(Ⅰ)について。

    (Ⅰ)-① 顔が見えるときは歯を出して笑って見せる。

    ・声だけの時も、声に笑顔にのせる。

    ・字だけの時はそれぞれが一工夫必要だ。

    ※人格、気品、親しさなどを出す…

    (Ⅰ)-② プレゼンや面接の時には背筋を伸ばす。

    これだけで、テストステロンという男性ホルモンが増加し、決断力、積極性が出て、採択率や共感力を高めることになる。

    これは、カルガリー大学のゴティの研究(1987年)で証明されている。

    つまり、笑って、背筋を伸ばせば、コミュニケーション力がぐ~んとアップするということだ。

    次なる、コミュニケーションルールとして、協調の約束事(Ⅱ)を提示する。

    (Ⅱ)-① 相手の問いかけに応じて適切な返辞を返す。

    (Ⅱ)-② ファクト(事実)を話すファクトの法則です。憶測や嘘は駄目。

    (注)ファクトの土台のもとにオピニオンがあるので逆ではない。

    (Ⅱ)-③ 相手の話題に関連する話題で展開する。

    (Ⅱ)-④ 順序よくあいまいさを避けて生産的なものとする。

    これら①~④の展開の中で「3アイ」もうまく絡めてください。

    (イ)相づち

    (ロ)合いの手

    (ハ)愛情(相手への)

    これはポール・グライスという言語学者が1975年に発表している協調の原理といわれるものだ。

    このコミュニケーションのキャッチボールから、ビジネスのソリューション、社会ソリューションが生まれるのを期待したい。

  • コロナウィルスとの戦い(Ⅲ)~生命の危機が語るもの~【5月】

    今、世界ではCOVID-19の嵐が吹き荒れている。

    令和2年5月2日ジョンズホプキンス大学の数値によると、世界の感染者数は、3,344,435人、死者238,788人にもなり、まだ増加の足は止まらない。

    この感染者数は、世界人口で除すると、0.03%である。

    世界的パンデミックとして、あらゆる人々がその対応に追われるのである。

     

    少し観点を変えて、環境省レッドリスト2020掲載種数表によると

    A B C D E F G H
    分類群 評価対象種数 絶滅 野生絶滅 絶滅危惧種 準絶滅危惧  情報不足 B~F計 G/A×100
    哺乳類 160 7 0 34 17 5 63 39%
    鳥類 700 15 0 98 22 17 152 22%
    爬虫類 100 0 0 37 17 3 57 57%
    ~~~
    維管束植物 7,000 28 11 1,790 297 37 2,163 31%
    人間 688,960万人 コロナ死亡 24万人 0.0035%

     

    ※維管束を持つ植物はシダ植物(広義)、裸子植物及び被子植物であり、これらをまとめて維管束植物という。https://ja.wikipedia.org/wiki/維管束

     

    哺乳類さんたちは、39%もの種が絶滅しそうだったりしているということです。

    爬虫類さんたちは、57%もの種がなくなりかけています。

    維管束植物さんたちだって31%もの種がなくなりかけています。

    人間が、声なき動物や植物さんたちの声を聴かずして、自分たちだけの不幸をあげつらうばかりでは動物さんたち、植物さんたち、またここで言及しなかった菌類さんたちだって「俺たち生きてるぜ」と主張するに違いない。

    ラテン語のBacterium(複数形:Bacteria)は、日本語で細菌である。

    彼らの絶滅しそうな率は、5.3%である。有用菌もあり、いろいろおつきあいが難しい。

    これらの人間以外の他生物さんたちの絶滅率22~57%に対し、人間の死亡率は0.0035%。

    他生物さんたちは、人間の1万倍以上もの絶滅率に瀕しているのである。

    今回は、SARS-COV2(COVID-19)さんがパンデミックの原因者である。

    これも、動・植物さんたちの声なき声を代表して、COVID-19として人類に生物代表としての共存を主張しているのかもしれない。

    人類が「人新世」の時代を驕ることなく、動・植物さんたちと、おっと菌類さんたちとも一緒になって住み良い地球を築くことが求められている。

    理事長 井上健雄

  • コロナウィルスとの戦い(Ⅱ) ~局地戦から地球環境そしてアニマルウェルフェアについて~【4月】

    前回の挨拶で「ウィルスとの戦い」において、人類とウィルスの生命史の長さからの強さ・優位性について、また、AI情報の取り入れ方について考察した。

    この回では、もう少し具体的な事実からコロナウィルスに迫ってみたい。

    近年“なぜインフルエンザウィルスがこれほどまでに猛威を振るい始めたのか”

    人類は、他の生命体よりほんの短期間で人口を爆発的に増加させ、ここたった100年位で地球の生態系や気候に大きな影響をもたらしている。

    恐竜時代を白亜紀といったように、現在はアントロポセン「人新世(じんしんせい)」と呼ばれるらしい。

    これは、ノーベル化学賞受賞のドイツ人化学者パウル・クレッツェン氏の考案である。

    人新世は、人類にとってあまり名誉ある行動の結果ではなく、資本主義や自由主義や利己主義を謳歌した結果であるように思える。

    人新世とは、不穏な未来を予感させる。

    ほんの一例でも、世界の湿地の50%が失われた。カリフォルニア州では90%、日本でも50%が消失している。

    田畑は休耕期をなくし通年耕作化し、カモなどの水禽類の越冬地は狭く過密になっている。

    なのに、人は増える一方で都市の人口密度は高まるばかり。

    そして、食糧培養の圧力が高まり、動・植物に多大な迷惑をかけ続けているのが現状である。

    例えば、ブラジル東南部のマンディケイラ農場では800万羽の鶏を飼育し、毎日540万個の卵を生産。

    自然光や外気がほとんど入らない閉鎖式鶏舎で身動きできないほどに多数の鶏をケージに入れている。

    餌は、遺伝子組み換えトウモロコシを与えられ、無理やり太らされている。

    40~60日間飼われると、ベルトコンベアーで自動的に食肉処理されている。

    かつては80日間は飼われていたものが、成長促進剤の投与で20日間も命を縮められている。

    豚にしても、世界で8億頭ほどがこうした仕打ちにあっている。

    つまり、嘗て庭先で飼われていた「庭鶏」が「工場トリ」に変わっている。

    豚さんも牛さんも、みな同じような扱いになっている。

    鳥インフルエンザや豚コレラは鶏さん、豚さんたちの今の境遇から逃げ出す手段じゃないかとまで思ってしまう。

    私は、動物さんたちの権利、活き活き生きる権利をもっと増やしていくことが必要だと思う。

    これがアニマルライト(動物の権利)、アニマルウェルフェア(動物の福祉)と呼ばれるものである。

    やはり、地球は、生物の多様性を欲している。

    今回、人間がオオコウモリまで食べたことが、新型コロナウィルス感染の広がりにつながったのではないかと言われている。

    今のように、地球上において人間様だけが偉ぶって、温暖化を招き、アニマルライトを侵している。

    この事態は、自然からの竹箆(しっぺ)返しと考えるべきでないだろうか。

    1918年 1957年 1968年 1977年 2020年
    スペイン風邪 アジア風邪 香港風邪 ソ連風邪 COVID-19
    H1N1型 H2N2型 H3N2型 H1N1型
    スペイン風邪と同じ

    こう考えると、人口の都市集中はいつでもパンデミックの危険を内包している。

    大局から考えると、今回の新型コロナウィルス対策は「地球温暖化をいかに止め、人間が都市集中せず、生物多様性を尊重し、動・植物をいかに自然の中で育てていくか」ということが、遅いように見えるかもしれないがこの疾病の小康後、本格的に取り組むべき着実な対策と言えるだろう。

    これらこそが、人新世の不穏な未来を回避する本道である。

    理事長 井上健雄

     

  • コロナウィルスとの戦い(Ⅰ)~悠久の流れの中で【3月】

    人類は、COVID-19との戦いに勝てるだろうか?

    白衣と手袋をつけたヒーローたち、そしてエッセンシャルワーカーの皆様に心からの感謝を送ります。

    マスコミでは、医学界の重鎮、大学教授、政治リーダーなどのメッセージや、スポーツ界等々のカリスマたちの音楽やコロナ対策への自己宣言、お家でできる体操など、いろいろな動きが出ている。

    やはり、日本は捨てたもんじゃないなぁと肝銘の日々を過ごしている。

    冒頭に投げかけた問いに触れよう。

    ほんの少し前の「20万年前」にアフリカに誕生した人類と、微生物(※1)は「40億年」生き抜いてきた強者との勝負である。

    この微生物の中でもインフルエンザウィルスは、HIV(※2)と同じくRNA(※3)ウィルスに属し、哺乳類が100万年かかる進化を1年でやってのけるらしい。

    つまり、絶えず変種を作り出しているので、ワクチンを作ってもうまく完成したころには姿を変えて効かなくなることもある。

    今回のCOVID-19は途轍もない強敵である。

    論点を少し変えて、この強敵が経済面に与えるインパクトはどんなレベルにあるのだろうか。

    米国の著名投資レイ・ダリオ氏が語っている。(資産規模17兆円)

    「私はリーマンショックの際にもプラスで乗り切った。リーマン後からAIの専門家を招き、人工知能を駆使して好成績を収めてきた。しかし、このコロナショックでは、年初来21%ダウンとなってしまった。当方のAIによると、このコロナショックは統計学的に1,600億年程度に一度の発生確率だ・・・」

    地球46億年の歴史の中で、こんな数値がでるのもちょっと馬鹿げていますよね。

    私には、経済系に特化したAIの限界のように思います。

    同じAIでも、米国の医療系企業メタバイオのベン・オッペンハイム氏は、同社のAIがパンデミックの兆候を2020年1月上旬に予見したとしています。

    WHOがパンデミックを発令したのは、2カ月遅れの3月11日です。

    オッペンハイム氏は、この情報を関係する複数の国・企業・人々に伝え、警告を出しています。

    先の、レイ・ダリオ氏は、AIに耳を傾け大失敗し、オッペンハイム氏の方は、AIに耳を貸す人がなく大惨事が広がってしまったことを後悔している。

    結局、AIというよりも情報の集め方・読み方・分析にもっと叡智であったり、人間力が必要であり、その結果として世界中の叡智を集めた挑戦と行動が求められている。

     

     

    ※の注について、読んでもらわなくても話は通じるはずです。飛ばしてもらって結構です。

    ※1 微生物は、ウィルス10nm~100nm<細菌1μm<真菌・原虫などを指す。

    例えば、インフルエンザウィルスは直径0.1μm

    n(ナノ)10憶分の1を表す単位

    μ(マイクロ)100万分の1を表す単位

    ※2 HIV(Human Immunodeficiency Virus)

    ※3 RNA(ribonucleic acid)リボ核酸 アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラ

    シル(U)の4種で構成されている。この4番目のウラシルが変異の元となっているらしい。

    参考:DNA(deoxyribonucleic acid)デオキシリボ核酸 アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チシン(T) の4種で構成されている。

    理事長 井上健雄

  • 「日本の農業」道普請【2月】

    春風に 夢いだきつつ 道普請  井美韻宮

    日本の暦は、万物の変化を本当にうまくとらえている。

    立春(2/4) 雨水(2/19) 啓蟄(3/5) 彼岸(3/17) 春分(3/20)

    こうした変化が、日本の奥ゆかしさ、複雑性、緻密性などを生みだしている。

    日本人はこのように感情的あるいは抒情的なセンスに秀れている。

    一方で、知の勝った方向には、疎いようである。

    ここで「知」について、農業の収穫量の比較から考えてみよう。

    コメの1haあたり収量の変化(A)   日本とイスラエルの1ha当たりの収量の経年変化(B)

    kome日本とイスラエルの1ha当たりの収量の経年変化つまりこの(A)表が語ることは日本では1960年から1970年にかけて米の収量が4.88tから6tまで伸びているが、1970年以降は6tから伸びていない。これは減反政策の結果である。

     

    人智に叛いた減反政策が、日本の農業を工夫なしにしたのではないだろうか。

    この傾向はほかの農作物の収量にも影響を及ぼしている。

     

    (B)表のピーマン、ニンジン、トウモロコシ…等の単位当たり収量の日本とイスラエルの比較を見て欲しい。殆どの品目について1960年代は、拮抗していたものが近年は大きく差をつけられている。そしてイスラエルの収量のギザギザは、収量が安定してないという見方もあるが、私は毎年毎年のチャレンジの結果だと思う。一方、日本の横ばいの線は、伝統を守るだけのチャレンジ性に欠けるのでないか。

    このようなことは、日本だけを見ていては分からない。

    日本で「農業とはお年寄り」というイメージ、そして伝統的、保守的な傾向が強すぎるのではないだろうか。

    例えば、イスラエルでは、農業は仕事、そして稼ぐことの出来るものだと考えられている。

    日本で、農業を「稼ぐ」視点で取り組むべきだと主張すると、「農業は、多面的機能」を持っていると応える。

    「土砂崩れを防ぐ」「景観の保全」「洪水を防ぐ」「生物多様性の住処」「子供たちの体験学習の場」…等々の重要な価値への矜持持ちを出すことになる。

    これも大変結構なことで誇りを抱くべき仕事ではあるけれど、一方で国際化の中で、農作物は、売って買われて、儲かることなしに持続性はない。

    その上、今は、3E時代でもあり、環境(entertainment)エネルギー(energy)、経済(economy)を同軸にwin-winの構造を築くことが求められている。

    とはいえその解決策は、組織化や株式会社化ではない。

    あのアメリカだって200万以上の農業経営体があっても、97%は家族経営である。目をヨーロッパに転じても96%は家族経営なのである。

    私は、日本の農業の問題点の一つは、農産物の栽培方法にあると思っている。

    さあ、春風に乗って農の道普請を始めようでないか。

    理事長 井上健雄