カテゴリー: 2015年

  • 地域おこしを6次産業化で(4)

    価値あり競争力のある商品づくり

    - 10あるイノベーションの一を紹介します -
    - 6化研資料一部転載 -

    6化研では、6次産業化を成功させる為には、10のイノベーションが必要だと提案しています。
    今回は、イノベーションの1番目であるプロダクト・イノベーションを紹介します。

    価値あり競争力のある商品づくりとは、ある意味で今までの商品づくりを否定するものである。(勿論、何十年も同一商品でトップを走り続けている企業は別である…)
    イノベーション(革新)は現状否定をスタートとする。
    ヨーゼフ・シュンペーターのイノベーション5つの定義を嚆矢(こうし)とする。

    イノベーションとは 6化研メモ
    1.新しい財貨の生産 (今まで世の中になかったものを創りだす)
    2.新しい生産方法の導入 (新しいやり方で劇的に生産力を高めるとか、安全衛生基準を大幅クリアするとか…)
    3.新しい販売先の開拓 (日本国内だけから海外とか…)
    4.原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得 (各現場製造からカミサリーに移行とか、原料から最終商品までの協働プログラム作成など…)
    5.新しい組織の実現 (独占の形成やその打破、6次産業化により異なった産業との連携を創造する、フランチャイズシステム創造等)

     

    今回のレポートのタイトル『価値あり競争力のある商品づくり』とは、1の新しい財貨の生産と思われるかも知れないが、私はこの5つの定義のどれもが当てはまるものであるなら、それが最高のイノベーションであると考える。
    つまりプロダクト・イノベーションとは、全く新しいプロダクトを開発するだけでなく、価値を加えるアップデートや、ラインの拡大なども重要である。
    また、パフォーマンスを簡素化したり、環境感度を向上させたり、顧客一人ひとりに合わせたカスタマイズもイノベーションの一種である。

    そして私たちの提案する6次産業化は、次の3つの視点も大事にしている。

    1. 地域創生をベースに置く。
    2. モノづくりの新連携を形成する。
    3. 生産物の安全・安心とか機能性について、検査による客観的なエビデンスを持った数値や自己宣言を含む概念を重要視するものであり、それについて社会的な仕組みとなった評価枠組み、TPAC認証を受けることを推奨している。

    もう少し補足してみる。

    • プロダクト・イノベーションとは、今後地域の特色ある産物(着目されていないものも含む)を中心に展開されること。
    • 他産業や多くの企業群、そして地域の人々との新連携を形成すること。
    • 各所で同様の取組みがなされることも増える。従ってその生産物がレッドオーシャン※1化することもある。そこで、その生産物の価値・機能性の検査を受け、その内容の客観的評価を受けることで、ブルーオーシャン※2の世界に入ることを提案するものである。

    3つの企業のプロダクト・イノベーションを紹介し、参考に供したい。
    例えば、ダイソンならデュアル・サイクロン技術で世界を席捲しつつある。その背景には、市場に出すまで15年、5,000以上の試作品を作っているのだ。
    OXOグッドグリップスは、その名前どおり手の不自由な人、握力の衰えた人にも握りやすい使いやすいもの、ヤカンや計量カップ等々を作っている。ユーザーフレンドリーを表明し、価格の高い商品ではあるが、市場の評価を得ている。
    P&Gのパンパースは、布のおむつより紙のパンパースの方が早く眠りに入り、長い間眠れるという調査結果を出して、シェア拡大に成功している。

    サァ!私たちもこうした各企業の取り組みを参考に、プロダクト・イノベーションに挑戦しようじゃありませんか!
    青い海、ブルーオーシャンを目指しましょう。

    ※1 レッドオーシャン   : 競争の激しい既存市場
    血で血を洗う競争市場で儲けが出ない市場
    ※2 ブルーオーシャン: 競争相手のいない、競争のない未開拓の市場

    理事長  井上 健雄

     

  • 「農業は神に近い職業①」

    山上憶良、1538番で始めよう。

    芽の花(はぎの花) 尾花 葛花 瞿麦の花(なでしこの花)
    姫部志(おみなえし)また藤袴 朝顔の花     -山上憶良-

    これが俗に言う秋の7草となる。

     

    (Q一) 萩の花がなぜ草なんだと…(鋭敏な方は)
    (A)  確かにこれはマメ科の小低木である。
    しかし大事なのは、7草と表記しているが、7種(ななくさ)という意味を持つと考えられている。

    (Q二) なんで8種でないんだ!という人もいるだろう。(日本なら縁起のいいものは末広がりの8でしょうと)
    (A)  山上憶良(660-733)は、歌人であり、遣唐使 粟田真人の書記官として長安を訪れたりしている。
    中国において7は陽数であり、喜ばれたものである。
    そこで憶良が中国の乞巧奠に供える意を兼ねて7草としたのでありましょう。

    これのどこが6次産業化なんだ!と憤慨されている人も…
    まず6次の絵をうまく成立させる為には、自然に親しみ、植物について知識を持つ努力が必要です。
    だって農業って、神様に一番近い職業だと思ってます。
    大自然との共存の道なんですから。
    だから植物の性質を、まず大きな枠組みで理解することが大事である。
    そして、それぞれの植物がとる戦略を知ることが必要である。

    1510

    CSR戦略については、一度説明しているが、再説明を加えたい。
    C型;強い種は、コンペティティブ、戦いを選ぶC型となる。(図を参照ください)
    これらの代表がイネや野菜である。

    S型;弱い種は、環境に耐えるストレス・トレランス、ストレス耐性型というS戦略をとる。
    水の乏しい所のサボテン、高山植物などはS型となる。
    例えば、サボテンの葉は、水分の蒸発を防ぐ為に針となり、また水分を針にのせて少しでも温度を下げるように、たくさんの突起を出している。
    また、針(本当は葉)では光合成できないので、茎で光合成をしている。光合成の為にまん丸の茎まである。
    水が、不足する時は、根を成長させ、土の中の水をグリップしようとしている。
    なんと素晴らしい自衛の戦略でありませんか!
    耐えるとは、こういうことです。

    第3の型がR型、ルデラルと呼ばれる。
    荒野に生きる植物をいい、日本では攪乱耐性型とも言う。
    R型の典型は雑草である。
    みなさんは雑草は強いと思われるかも知れませんが、雑草はいい環境にいるとC型に負けるんです。
    悪い環境に強く、いい環境に弱いのが特徴です。ちょっと天邪久です。
    「やはり野に置け蓮華草」で、蓮華草を家で植えたって、原っぱほどの感動はありません。
    それぞれ居場所があるのです。
    やはりうまい組み合わせがポイントです。
    つまりC・S・R型に応じた栽培を考え、対処することが法則です。
    そして植物の光合成の能力により成長しやすい性質も着目です。

    一般的な植物は、C3回路で光合成します。炭素数3個の3ホスホグリセリン酸を持っています。
    一方、C4回路を持つ植物は、炭素数4個のオキサロ酢酸を生じます。
    これらの一部の比較をまとめました。

     

    C3 C4
    光利用効率 低い 高い
    最大生育速度 0.5-2g乾物重/dm2/day 4-5g乾物重/dm2/day
    生育最適温度 10-20℃ 30-47℃
    蒸散速度 450-950gH2O/g乾物重 250-350gH2O/g乾物重

     

    C4がいかに生育が早く、水持ちが良いかが分ります。
    その上、最適温度も高く、温暖化する地球にとって考慮すべき分類概念である。

    今述べたようなことは、植物情報量※の1015(千兆ペタ)分の1にも過ぎないでしょう。
    その上、機械技術やマーケッティング、プロモーション、ブランド等々情報量は、1018百京エクサの世界です。
    だから、みんなで智慧を出しあって、足らない所を補いあい勉強をし続ける6次産業化研究会を目指しているんです。
    こうした不可知の世界へ飛び込む。これってドン・キホーテです。
    私たち、新資源6次産業化研究会の活動の栞の表紙に、ドン・キホーテを使っているのはこうした思いからなんです。
    みな様、夢ある、智慧あるドン・キホーテご一緒しませんか。

    ※情報量の単位・読み方
    106:百万メガ 109:10億ギガ 1012:1兆テラ 1015:千兆ペタ 1018:百京エクサ

    理事長  井上 健雄

  • 「赤とんぼ」

    ♪ 夕焼け小焼けの赤とんぼ
    負われて見たのはいつの日か… ♪
    山の畑の桑の実を
    小籠に摘んだはまぼろしか… ♪

    過日、吉野で「森まなび塾。」を実施した際、赤とんぼの群舞を見た。
    私の好きな赤とんぼ。
    昔は捕虫網を持って追いかけたものです。
    最近は目で愛でながら、子供の頃の郷愁に入ります。
    でも少なくなったなぁと思います。
    なかなか叙情的でしょう…
    極楽トンボと言われる私。面目躍如です。

    彼・彼女らは全世界に5000種、日本には200種。
    大型のオニヤンマから15mmほどのイトトンボまで。
    私は、夏の終りから初秋にかけて飛ぶ赤とんぼ、アキアカネが好きです。
    この辺りからこむずかしくなります。
    このアキアカネは、排熱性能が弱いため、夏は山の上で避暑をし、涼しくなると平地に下りてくる。
    まだアキアカネさんは吉野の山にいるんだと、暑い夏を噛みしめました。
    一方で熱の保持能力の高い赤とんぼさんは、体温を大気温より10~15℃上昇させて、涼しくなった平地で喜び舞うのです。(本当は小さな虫を求めて飛んでいるのでしょう)

    とは言え、夕焼けに映える姿に霊性さえ感じさせる赤とんぼさんは、なぜ少なくなったのでしょう?
    原因は農薬らしい。
    蜜蜂に多大な被害を与えたネオニコチノイド系農薬のフィプロニル(稲を食べる害虫を殺す)を使った水田では、ヤゴは全く羽化しなかったのです。
    農薬について、ケースに応じて最低限の使用は必要であると思います。
    が、ネオニコチノイド系は禁止すべきです。

    ヤゴも育てず、草も生やさない田んぼや畑は不自然です。
    そんな自然に囲まれたら、人生は寂寞の一言です。
    農事の基本にこんな言葉があります。「春蒔き急ぐな!秋蒔き遅れるな」
    こんなお天道さんの教えに身を任す自然を守りたい。

    春蒔きは、少々遅れても作物が育ちますが、秋蒔きは、日照力が弱く適時が短いのです。
    仕事は、いつも秋蒔きなのかも知れない。
    タイミングに合う仕事をしっかり提供し、社会に少しでも良い変化を与えたいものです。
    仕事は、いつも秋蒔きであることを忘れない様に励みましょう。
    やはり、最後は叙情的から叙事的になってしまいました。とほほ…

    ※森まなび塾。(H27 9/19~9/20):
    吉野で森林保全やカーボンオフセットについて学ぶセミナーと、森林ボランティアや森林セラピー等の体験をする1泊2日のイー・ビーイングのオリジナル体験学習です。

    ※フィプロニル系農薬:

    EUでは、2013年の暮れから使用禁止に。日本ではネオニコチノイド系の使用巾を緩和するなど真逆の対応をしている。悪い決定である。

    理事長  井上 健雄