カテゴリー: 2017年

  • 新改元の情報を前にして【11月】

    おほぞらに そびえて見ゆる たかねにも
    登ればのぼる 道はありけり -峯-
    人もわれも 道を守りて かはらずば
    この敷島の 国はうごかじ -国-
    明治天皇
    世のなかも かくあらまほし おだやかに
    朝日にほえる 大海の原 昭和天皇

     天皇の御詠はおおらかで、品があり帝王の香気にあふれている。
     素晴しい。

     明治から大正、昭和、平成と時は移り、新時代は2019年5月1日改元となる。
     改元は、どういう時代を創りだし、変化に満ち満ちたチャンスを持ってきてくれるだろう。
     楽しみです。

     しかし、チャンスの一方で、旧来通りだと一層、脱落が早まってしまう。
     落ちる時代でもあります。
     そして先が不透明で不確実な時代こそ、変化対応より変化創造が求められています。

     改元を前に私たちは、変化創造することが必要です。
     時代の求める課題と自己の信念の結びついたものこそ、挑戦すべきものであり、チャンスです。
     恐れず邁進しようではありませんか。

    理事長 井上 健雄

  • 万物流転の筏(いかだ)から読みの舟へ【10月】

     この10月は、選挙があったりしたので、少し世論に触れてみます。

     先日の衆議院選挙で、希望の党が失望の党になったり、我が道を行かざるを得なかった立憲民主党が伸びたりしましたが、最後は、与党で2/3越えと「大山鳴動して鼠一匹」に終りました。
     社会は、今の与党の動きを是としたのでしょう。
     安倍首相は、外交的にはそれなりの活躍ですが、少し右翼的です。
     経済政策は方向の修正が必要だと思います。
     少なくとも驕りを戒め、謙虚に政策に向かって欲しいものです。

     翻って私たちも、いかばかりの思いと行動をしているのだろう。
     10月ももう終ります。
     あと2ヵ月で、新年になるなんて、吃驚です。
     万物流転するという時勢の危うい筏に乗せられて、流れているかのように(急流に入り濡れそぼったり、岩礁に当たったり…)多難な日々を過しています。
     忙しいに感(かま)けて、心を亡くしていたのでしょう。
     正常心をもって2ヵ月を過し、時勢の筏から読みの舟に乗りかえて、いい新年に備えようと思います。

     これまで春の花見、秋の月見を覚えずに、過したので、晩秋の紅葉は、しっかり楽しみたいのです。
     紅葉が美しい楓(かえで)、桜、柿、銀杏(いちょう)、漆(うるし)、櫨(はぜ)…
     それぞれ赤・黄など濃淡とりまぜて、山容を色どります。
     とすれば冬の雪見の為に遠出も厭いません。

     少なくとも季節だけですが、先を眺めました。
     これだけでも次の景色が目に浮かび、明日の力となります。
     時代の読みとは、ある種のタイムトラベルであって、うまいトラベルは最高の娯楽となります。
     いい旅の為に来年を読んで、いい仕事、いい仲間でケミストリーを創り、いい成果を築きたく考えている日々です。

    理事長  井上 健雄

  • 未来か、今か【9月】

     地球に現れた最初の脳は、5億年前。4億3000万年かけて徐々に進化した。
     そして7000万年かけて、人類の原型脳(700g)にまでなった。
     この脳が、たったの200万年で倍以上になった。
     他の脳の重さは変らずに、前頭葉と呼ばれる部分だけが大きくなったのである。
     生物の種の一つとして、人類が生き残る術として、手に入れたもの、それが前頭葉だったのである。

     このことにより、人類は、「現在」から「未来」へ脱走し始めたのである。
     この脳は、物事が起る前に、未来における結果を予測することができるようになったのである。

    • もうじき日が暮れるから家に帰ろう
    • あと○○○で寒い日(冬)がくるから、今の間に食べ物を貯蔵しよう
    • 隣村で凄い乱暴者がリーダーになったので、境に塀をつくったり武器を用意する

     今、私たちの周りで生きている人類は、こうした状況を生き抜いてきたのだから、未来への洞察を持っている。
     つまり先を読み状況をコントロールする能力を持った人たちが、現在の人々なのだ。

     しかしこの能力はクセ者でもある。
     人によると先を読み悲観的になったり、攻撃的になったり、引きこもったりして不適応をいろいろ起こしてしまう…

     それを防ぐために、「今、ここにいろ! Be here now.」が解決策として提案された。
     ハーバード大学心理学の教授が、インドに行ってグルに会い、悟った境地がこれである。
     この考えを是とするか否とするか、それぞれの状況の中で見つけ出すものであろう。

     読めない未来の為に悩むのは、賢明ではない。
     Let it be.   ケセラセラ   風車 風が吹くまで 昼寝かな(広田弘毅)
     しかし読めない未来を読めないままに、ポジティブな夢を持って前進することは美しい。
     未来を今の活動に織り込んで、どんどん美しい成果を創りだそうではないか。

    理事長 井上 健雄

  • オコゼ【8月】

     先日、内閣改造(H29年8月3日発足)があり、新農林水産大臣 齋藤健氏が面白いことを言っておられた。

     彼によると、カツオ(鰹)は弱い魚らしい。
     水槽に入れるとすぐに死んでしまうことが多い。
     しかしこの水槽にオニオコゼを入れてやると、カツオは長生きするらしい。
     私たちがオニオコゼを見ても、ギョッとする恐ろしい顔をしている。
     カツオさんも緊張を強いられて、いいストレスとなり長生きするらしい。
     私は農林水産省のオニオコゼとなりたいと述べられた。

     面白い挨拶である。
     気に入られたいとかの変なリップサービスをするよりずっといい。
     農林水産省のカツオ君、カツオさんたちよ、緊張の中でいい仕事をして欲しい。

     例えば、カツオの話が出たので、水産についての漁業生産高を見てみよう。
     1984年1,282万トンであったものが、30年で2014年479万トンと、1/3に激減している。
     これが一つの会社としたら、立ち行かず倒産となるだろう。
     しかるに、漁獲量の減少について、漁業者は温暖化のせいだと言うし、漁協は国際情勢が悪いと言い、水産庁は海外勢力の乱獲だと、お互いが責任転嫁をしている。
     またその日本の中でも、例えばエビ籠漁と底曳き網漁の調整もできない。前者は知事認可であるし、後者は大臣認可となっている。
     こんなことで、日本の漁業が将来に向かって立てるのか。
     世界で独り負けの日本の漁業よ、どこへゆく。
     農業の将来もどうなんだろう?

     さて、こうした問題にオコゼさんは、どう立ち向かうのか楽しみである。
     頑張れ!オニオコゼさん!
     頑張れ!カツオさんたち!

     私は、上品なのでオコゼにはなれない。
     しかし、ボヤーとしていたらオコるゼ。

    理事長 井上 健雄

  • 三鏡【7月】

     「貞観政要」というものがある。
     唐の2代皇帝太宗・李世民の言行録で、為政者のバイブルとも言われるものです。
     そこで語られる三鏡について述べてみたい。

     一、自分の姿、形を整える姿見があります。
     二、未来、将来を考える鏡として歴史があります。
     三、組織のリーダーが組織をしっかり運営する為に、人という鏡があります。

     一番目の鏡なら、朝起きてから何度も見ていますね。
     しかし服装などは本来でなく、自分の目が静かに澄んで強さを持っているかを確認すべきでしょう。
     二番目の鏡は、時代も、人も、場所も、気候さえ変わる歴史を鏡にするには、万古の書物の渉猟と自分の現在の状況をよく把握した上で、深い哲理による洞察が必要です。
     三番目も、人の意見を聴くということは簡単なようで難しい。
     だから「相手という人」を考えずに、自らが相手の人に誠実であるかを問い質すことです。
     そして考えるべきはその人の「言」であって、力量ではありません。
     ほんの少しでも良いリーダーの為に三鏡をしっかり学びたいものです。

    理事長  井上 健雄

  • 花を愛で自然と共に…【5月】

     この間「梅」と言っていたのに、桜は濃い緑の葉を繁らせ、つつじも終ろうとしている。
     3ヵ月も何をしていたのだろう。
     自然界の花を愛で時を過ごしていた訳ではなく、人間界でバタバタしていただけである。
     気がつけば藤(金ぐさりとも)が自慢げに黄色の房を垂らし、あじさいは既に装飾花をつけている。
     花さんたちは何と健気なことだろう。
     ヒトは、何かにかまけていても、自然界は、なんとか四季の秩序を保っている。

     人は自然の理(ことわり)に則って動いていないのだろう。
     思い出して花見などすることがあっても。
     自然を忘れていることが多い。
     そうすると自然は、大雨や続く干天、ひどい寒さ、煮えかえる暑さと、どんどん人にやさしくしなくなる。
     この現象にもう逆らいようがないと、適応ということになったらしい。
     一頃は、温暖化緩和と言って省エネを中心としたCO2削減をメインにしていたものが、もう駄目と適応となったらしい。
     地球が、繰り返し発する警告を無視せずにきちっと受け止めることが必要です。
     こうした意味において、自然への畏敬の念をもって生物多様性を考えることは、その一歩となりましょう。

    理事長 井上 健雄

  • 閑話休題 -梅-【2月】

     家に今、紅梅が咲いている。可憐で凛然としている。美しい。
     楚辞に梅なく、万葉に梅あり、と私は言う。

     楚辞は戦国時代(前343~前278年頃)に屈原とその後継者がまとめたものである。
     不思議である。
     漢の宮廷には、奇花異木3000余種を上林苑で栽培していたのに…
     そこでは梅だけでも猴梅(こうばい)、朱梅、同心梅、紫葉梅、紫華梅、麗枝梅、燕梅と7種類もあったとされている…

     日本では万葉集に梅の歌は119首もあり、萩(142首)についで多く、いかに日本の庶民から宮廷人までに好まれたかが分る。
     梅は花を眺めるだけでなく、挿頭(かざ)しにされたり、手折りや盃に浮かべたり、袖に扱入(こき)れたり、いろいろな使い方がされてきた。
     なんと優雅のことでないか。
     梅の代表歌は、いろいろ説もあるが、私は

    折りつれば 袖こそにほへ 梅の花

    有りとやここに うぐひすのなく   よみ人しらず(古今和歌集)

     ちょっと抒情に浸ってみました。
     私は、春が来たから梅が咲くのでなく、「梅が咲くから春がくる」という感覚派ですから。

     みな様、花粉の飛ぶ前に梅見に興じてみませんか。
     新しい自己が、香り立つことになるでしょう。
     御身大切に。いつもありがとうございます。

    理事長  井上 健雄